○乳タンパク質(ラクトフェリン)
動物の子は全てある時期までは母乳だけで成長するのであるが、その意味で母乳は、子にとっては単にカロリー源なのではなく、あるゆる栄養素と必要な生理活性物質を含んだ完全食品であるということができる。
こうした認識はすぐに早くからあったが、成人病の多発や難治の疾病が増大する状況の中で根源的な栄養の問題まで掘り下げて研究する必要が叫ばれ、そこで健康の維持と健全な成長に欠かせない生理活性物質の宝庫として母乳(人乳や牛乳)が見直されるようになったのは、近年の新しい潮流である。その結果、これまでにも非常に多くの物質が発見されてきた。
直接生理作用を持つ物質(顕在因子)としては、例えば副腎皮質ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなどのホルモンや、ガングリオシド、ラクトフェリン、オリゴ糖、免疫グロブリン、酵素類などがあり、また母乳中のカゼイン(乳タンパク質の主要成分)が分解してできた二次的物質(潜在因子)としては、カルシウムの吸収に深く関与しているカゼインホスホペプチドや降圧効果ペプチド、線維芽細胞成長因子などが数えられる。
※カゼイン
完全栄養食品といわれる牛乳には、タンパク質が2.9g(牛乳100g中)含まれているが、その75~85%を占めているのがカゼインで、生乳中に巨大分子として存在し、酸を加えると沈殿物として得られる。カゼインは体内で各種のペプチドに分解される。
ペプチドには、カルシウムやナトリウムの吸収促進、鎮痛効果、腸の蠕動運動の抑制などの作用がある。腸の働きが抑制されることで食べ物の腸の滞在時間が長くなり、栄養素がより吸収できるようになる。
※ラクトフェリン
鉄結合性を持つ糖タンパク質で、母乳以外に唾液なども含まれ、また、腸管内でも合成されている。抗菌作用(乳児の感染症を防ぐ)のほかに、腸内でビフィズス金の増殖を促して大腸菌など有害菌の繁殖を抑える効果、炎症を抑制する作用、免疫系のバランスを整えるなどの作用が明らかになっている。
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