○卵黄油(卵油)
卵黄油は、いつの頃からか家庭で作られ、貴重な健康法のひとつとして利用されてきた。現代家庭療法の古典ともいえる「家庭における実際的看護の秘訣」(通称・赤本)が1925年(大正14年)に発刊されたが、その中には心臓病、若白毛などが卵黄油によって良くなった実例が紹介されている。それ以降の用例を見ても、卵黄油が血行を良くし、肩こりや腰の痛みなどを取り、疲労感を和らげ、体全体に活力を吹き込むものとして利用されている。
人間の体は60兆個ともいわれる膨大な数の細胞からできている。その細胞全てが十分に栄養を摂取し、新陳代謝が行われていれば、健康体を維持できるわけであるが、卵黄油は血液循環を活発にして、体の隅々まで栄養を行き届かせる効用がある。
卵優の含有成分を見ると、生命の基礎的物質であるレシチンや、血管に溜まった余分なコレステロールを取り除くリノール酸などの不飽和脂肪酸があり、血液循環や新陳代謝を活発するのに役立っていると考えられる。
こうした卵黄油の効用・作用は、①筋肉に良い栄養となる、②筋力だけでできている心臓の働きに良い、③血の巡りをよくして禿や白髪を防ぐ力がある、④血行不良が原因となる肩こり、筋肉痛の改善に役立つ、⑤外用すれば、痔にも有効である、⑥女性が最も気にする自然の美肌作りにも大いに役立つ、というように多彩である。いずにせよ血液の循環は健康の基本なので、そのほかにも派生的に様々な効能が期待されるのである。
卵黄油の作り方は、鶏卵の黄身だけを取り出して、長時間にわたって、とろ火で焼き上げていく。終わり頃に少量の油が残る。これが卵黄油である。
家庭で作るには2時間ほど要する。用意するものは、鶏卵の黄身を10~20個、そしてフライパン、しゃもじ(柄の長いもの)。作り方は、はじめに黄身だけを取り出してフライパンにいれ、とろ火にかける。①火にかけてから煎り卵を作るときのように、良くかき混ぜる。②次第に煎り卵のように黄身がボロボロになってくる。それをしゃもじで押しつぶしながら、平均に焼けるようにかき回す。③ボロボロの塊は細かいつぶになる。④さらにかき混ぜていくと、全体が狐色になり、やがて濃い茶色に変わる。この頃には濃い異臭が立つようになる。⑤黄身はボロボロになり、これを押しつぶすようにかき混ぜる。⑥徐々にベトベトシタ液体になり、黒い液体がにじみ出てくる。この頃にはフライパンを一方へ傾け、黒い液(卵黄油)だけを留めるようにする。⑦十分に油が出たところで、火を止める。(あまり長く焼きすぎると、油がなくなってしまう。)これをさらに取っておく。
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