○食物繊維(ダイエタリーファイバー)
植物は炭酸ガスと水から光合成によって炭水化物(炭素・酸素・水素の化合物である単糖類や多糖類)を作り、動物はそれを摂取して栄養とするが、その場合、それらを消化できる消化酵素がなければ、糖質の分子が大きすぎて腸管から吸収することができず、栄養として役立てることができない。したがって、草食動物ならそれを消化吸収できる植物の硬い繊維質(粗組織)を、人間は利用できない無用の残りかすとして、栄養価のない、便量を増やすくらいの働きしかないものと見なして来たのが従来の古典的な栄養学であった。
しかし近年、これら難消化性の繊維質が、全く別の積極的な役割を持つことが順次明らかにされて注目を集めるようになったばかりか、それらを含めて食物繊維(ダイエタリーファイバー)を新たに栄養素のひとつに加えようという考え方が主流になってきている。
また日本では「五訂日本食品標準成分表」において(現在は六訂)、従来は単に炭水化物のうちの繊維としていたものを食物繊維として独立させ、その総量、水溶性、不溶性を食物ごとに明示することになった。
そして「食物繊維は人の消化酵素では消化されない、食品中の難消化成分」とし、主要成分は炭水化物(一部はキチンのような非炭水化物も含まれる)であり、その性質から植物ガム、粘質物(マンナン)、海藻多糖類・ペクチン・ヘミセルロースの一部などの水溶性食物繊維と、同じく海藻多糖類・ペクチン・ヘミセルロースの一部、セルロース、リグニン、キチンなどの不溶性食物繊維とに区分した。
このように食物繊維の働きが世界的に注目されるようになったのは、医学上の統計的研究によるところが大きく、そのひとつに欧米諸国とアフリカ原住民とを比較した英国医師バーキットの研究(1971年)がよく知られている。
それによれば、いわゆる文明国では、心臓病、糖尿病、脳卒中、ガンなどの病気が大幅に増えてきているのに比べて、アフリカ原住民には糖尿病、動脈硬化、大腸炎、虫垂炎、大腸ガン、結腸ガンなどか少なく、さらに、同じ種族であって、欧米式の食生活をしている住民にはそれらの病気が多かった。
この結果の背後にある要因として、アフリカ原住民のカロリー源には穀類や野菜など炭水化物が多く、そのため繊維質(粗組織)の摂取量が多いのに対し、欧米人は肉食中心で、またパン類の原料も繊維質を除いた精白小麦粉であるから、食事全体を比べると両者の繊維質の摂取量は極端に違うという事実がクローズアップされたのである。
こうした先駆的研究を追う形で、それまで栄養にならない不要の成分と見られてきた食品中の繊維質(粗組織)に関する研究が急テンポで進み、初期の研究としては、例えば動物実験で高コレステロール食に繊維質(いずれか一種)を加えて飼育すると、加えないグループよりコレステロール値は著しく低く、肝機能も正常で、特にペクチン、こんにゃくマンナンに効果があったとするものや、あるいは多量の亜鉛や砒素、有害食品添加物である赤色2号を食餌に混入しても、同時に大根、人参、ゴボウ、タケノコなど粗繊維の多い食物を与えたラットは正常や成長過程をたどることを見出した実験なども報告されている。
このような初歩的実験が近年行われたことからもわかるように、食物繊維に関する認識は遅れをとっていたのであるが、その後急速にその機能性が解明されて、コレステロールの吸収抑制、摂取ナトリウムの対外排泄、糖質の消化吸収抑制、腸内有用菌の増殖効果、便秘の改善、血圧の正常化、美肌、虫歯予防、大腸ガンや憩室症の予防効果などが報告されている。
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