○高麗人参
高麗人参は中国東北部から朝鮮半島にかけて自生しているウコギ科の多年草で、朝鮮人参ともいい、和名を御種人参という。一般の食用人参はセリ科に属し、これとは全く異なる植物である。
中国最古の医学書・神農本草経では、高麗人参を上薬に分類し、「五臓を補い...。久しく服すれば身を軽くして、長寿延命す」と、その効能を述べている。つまり、心・肺・肝・腎・脾に作用して、その活動を活発にするのをはじめ、様々な効果を発揮し、長期に連用すれば命が長引くというわけである。
高麗人参の作用には優れた2面性があり、たとえば「最初は精神的に興奮しても結果的にはへばって、ファイトを失う」というタイプにも、逆に「初めからやる気が起きず、ファイトも湧かない」というどちらのタイプにも効果を発揮する。これは高麗人参には鎮静作用と興奮作用という全く逆の作用を併せ持つ有効成分が含まれているためで、ジンセノサイドという人参サポニンは大脳を鎮静させる作用がある反面、体の細胞や臓器の働きを活発にして体調を整える作用もある。そのため、心身症や不定愁訴症候群、慢性肝炎(肝炎の患者はすぐにカッとなったりイライラする人が多い)などに対して鎮静作用が期待される。
人参サポニンについては多岐の薬効薬理試験が実施されているが、愛媛大学医学部の研究グループは、インスリン作用物質として人参サポニン以外にもアデノシン、ピログルタミン酸などを明らかにし、さらに紅参(人参を蒸してから熱風乾燥したもの)に血管を弛緩させる物質として、アルギニル-フルクトシル-グルコース(AFG)を見出している。この事実は、紅参が抹消循環改善作用を有し、冷え性などを改善する可能性を示している。
さらに肉体的抗疲労作用とともに精神的な疲労にも有効で、作業効率を向上させることが科学的にも明らかになっている。また、人間の体を正常な方向へ誘導する正常化作用、すなわち化学物質による刺激や微生物汚染、精神的ストレスなどに対して体に働きかけてホルモンのバランスを保ち、とくに副腎皮質ホルモンの分泌を調整することによって、体の抵抗力を強め、病気に対抗する力をつける効用もある。こうした代謝機能の正常化作用には、もうひとつの側面、つまり、疲れた五臓を活発化させ、その結果、性的機能を回復させる効果もある。
そのほか、具体的な効能としては、健胃・整腸・胸痛・嘔吐・低血圧・冷え性・貧血・病後の滋養回復・疲労回復・スタミナ増強・老化防止・自律神経失調症の治療など、多くの臨床例が報告されている。
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