○核 酸
核酸が発見されたのは1869年、スイスの化学者ミーシャーによる。動植物全ての細胞(特にその核)に含まれる高分子有機化合物で、酸性を示すことから核酸と名づけられ、以後、遺伝的性質に関与する物質として研究された。今世紀前半には遺伝子DNAとRNAが含まれていることが明らかにされ、1953年にはJ・ワトソン(米国)とF・クリック(英国)がその分子構造を明らかにして、1962年にノーベル生理・医学賞を受賞している。この頃からアメリカではヘルスフードへの応用が模索され始めて、1976年にはアメリカの開業医B・フランクが臨床経験を踏まえて、核酸を多く含む食品の摂取が有益であることを発表して話題をさらった。
数年後にはわが国にも紹介されたが、当時用いられていたのは低分子の核酸であったために大きい効果が得られず、大きな市場を形成するまでには至らなかった。しかし基礎的研究は続行され、現在主流を占める鮭の白子から精製されるような高分子の核酸の登場によって、高い評価を得ることになったのである。
生物の細胞は、細胞壁に包まれた細胞質の中に浮かぶ核があり、その中に染色体という物体があるが、これはすべての遺伝情報を保持したDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)とタンパク質とならなっている。人の例を述べると、1個の受精卵がまず2つに分裂するが、そのとき遺伝子も全く同じものが複製され、分かれたほうの核に組み込まれる。2つは4つに、8つにと倍々に増えていき、ついには60兆個もの細胞となって1個の肉体が完成するのであるが、その全ての、細胞がその人に固有の同じ遺伝子を持っているのである。遺伝子DNAには、その人の生命活動に関わる一切の遺伝子暗号が書き込まれており、RNAはそれに基づいて特定のアミノ酸からタンパク質を合成するとき、細胞内にその場所を作ったり、必要な遺伝情報をDNAからそこへ運んだり、あるいは細胞内のアミノ酸を集める役割をする。
人体では脳や心臓の細胞などを除く全ての細胞が常に新陳代謝して入れ替わり、約200日で全身の細胞が新しく生まれ変わるために、たくさんの核酸を消費している。その核酸は肝臓で生合成(デノボ合成)されるか、食品中の核酸から再合成(サルベージ合成)する形で補われる。ところが20歳を過ぎると肝臓でのデノボ合成機能が衰えるため、食品による核酸補給への依存度が高まってくる。しかし、普通の食品の中に含まれる核酸成分は低分子なので、腸内で消化されてしまってサルベージ合成の役に立ちにくいのである。
その点、鮭の白子や酵母などの核酸は高分子であるから最後まで分解されてしまうことなく、低分子の状態で吸収されて各細胞に運ばれ、再合成の原料になることができる。このことを逆に考えれば、核酸の補給が不自由分だと細胞の新陳代謝が遅くなり、それだけ組織や器官の老化が促進されるということである。
人体では、紫外線や外傷の害を受けやすい皮膚や毛髪、あるいは生殖器官は特に新陳代謝が盛んで、したがって核酸を多く消費するのであるが、核酸食を十分に摂っていると皮膚や髪の若々しさが保たれる。性的機能が高まるという経験的事実は、上記のような考え方の妥当性を裏付けるものといえよう。
また、核酸は塩基とリン酸からなるヌクレオチドが多数連なったものであるが、小腸内でヌクレオチドから、さらにヌクレオシド(塩基に糖が結合したもの)にまで分解され吸収される。これらのヌクレオシドの中のアデノシンは、脂肪細胞内の脂肪合成を促進すると同時に、脂肪分解を抑制するインスリン様作用を持つ。また、ノルアドレナリンの細動脈収縮を阻止するα-ブロッカー様作用も併せ持っている。かなわち成人糖尿病を改善し、抹消循環をスムーズにして、肩こりや冷え性をよくする可能性を持つ物質である。
もう一つ見逃せないのは、活性酸素の被害への対応である。農薬や食品添加物、大気汚染など種々の原因で体内に発生する活性酸素が、老化現象をはじめ動脈硬化など多くの疾病の原因となり、細胞内に入って核酸を酸化し、DNAの遺伝情報を損傷する恐れがあることが、近年随所で指摘されている。核酸は、そのようなダメージを受けた細胞を修復するための貴重な材料物質としても、有効に作用すると考えられているのである。
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