○まこも
マコモ(真菰)は、古くから日本各地に群生しているイネ科の植物で、一般的にはコモ、コモガヤ、カツミ、チマキグサと呼ばれる。湖沼や川の水際に自生し、古くはマコモの実を粥に炊いて食べていたこともあったという。また、アメリカでも、原住民が「野のコメ」と呼んで食していたり、中国では食品として市販されている。
日本ではいまも神仏に供せられるケースがよく見かけられる。東京の神田明神をはじめ、千葉の香取神宮、大分の宇佐神宮、島根の出雲大社など、多くの神社に神事として残っている。たとえば神田明神では毎年六月にマコモで編んだ輪の中をくぐらせている。出雲大社ではマコモの上を歩かせて、一年間の無病息災を願う行事が古くから引き継がれている。こうした例は、マコモの持つ薬効や生命力、食糧としての価値などを経験で知っていたことによるものであろう。
その効用については、古くは、『本草綱目』などにも記載されている。また、マコモの根は「無毒、止小便、止渇、利腸胃」に、マコモの実は「止渇、利五臓、利大小便」などに、また中心茎は「滋人歯、止渇、胸中浮熱風気、水痢」などの有効性があるという。これを現代的に解釈して、高血圧、糖尿病、肝炎、胃腸病などに卓効があることを示しているものもある(『和漢薬』1974年、医歯薬出版)。
このマコモを現代人が手軽に食べられるようにした健康食品があり、この作用について医学的研究が行われ、注目を集めている。その報告内容を紹介すると、次のようなことである。
第一に、「安全性」については皮下投与、経口投与、いずれにおいても急性中毒性は認められない。第二に、「胃腸に対する働き」である。動物実験の結果、消化器官の運動がよくなり、消化を促進する。また、腸内の大腸菌を顕著に減らし、慢性疾患などに予防意義が認められた。
第三に、「脳障害の予防」であるが、高血圧自然発生ラットによる実験を行った結果、①血圧上昇の抑制傾向がある、②与えなかったグループが脳障害を起こした(50%)のに、与えた方は、まったく起きなかった、という結果を得た。この脳障害については、微小動脈瘤の形成とその壁組織の壊死による崩壊が主体とされており、脳卒中等の予防に役立つとみられる。
第四に、「補体の活性への影響」である。人間の免疫機構の中で補体(免疫作用をもつ酵素タンパク)の役割が重要視され、①微生物による炎症を防ぐ働き、②ガン細胞を抑制、破壊する因子を提供する、などが知られているが、実験では、マコモによって、補体の活性が62~82倍となり、健康状態の30~50倍を上回った。これはマコモが免疫力あるいは抵抗力の賦与などに積極的に役立つことを示している。
そのほか、性ホルモンの活性化、糖代謝の促進などの有効性が認められた。マコモを原料にした健康食品については、(財)日本健康・栄養食品協会が1988年5月に「まこも加工食品規格基準」(93年7月1日一部改正)を制定しており、「まこも食品」と「まこも発酵食品」のそれぞれについて定義等を行っている。
マコモ
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