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水曜日, 7月 23, 2014

砒石

○砒石(ひせき)

 ヒ素を含む生薬には雄黄、雌黄、砒石、砒霜、石譽などがある。砒素の「砒」とは天然に産する無水亜ヒ酸(三酸化ヒ素)の砒華鉱石、つまり砒石のことである。

 しかし、現在では硫化物の鶏冠石やヒ化鉱物の石譽(硫砒鉄鉱:FeAsS)などを加工したものが砒石として用いられている。また砒石を昇華させて精製したものは砒霜という。無水亜ヒ酸(As2O3)は単に亜ヒ酸とも呼ばれ、これは細胞を変成、壊死させる細胞毒で、内服すれば胃腸に出血性炎症を生じ、肝障害や腎障害、皮膚にヒ素疹などをひきおこす。

 致死量は約0.1gであり、急性中毒ではコレラ様の胃腸症状、筋肉痙攣をおこし、昏睡となり、死亡する。慢性中毒では食欲不振、皮膚の色素沈着や白斑、抹消神経障害や頭痛などがみられる。また発癌性物質として取り扱われている。

 かつてヒ素化合物のサルバルサンが水銀に代わる駆梅薬としてよく知られていた。ヒ素をごく微量だけ飲むと体力がつき、女性は肌が美しくなるという説もあり、アジア丸などが強壮薬として用いられたこともあった。

 漢方では性味は辛酸・熱・大毒で、去痰・抗瘧・殺虫・去腐の効能がある。おもに痔や瘰癧(頸部リンパ腺腫)、歯槽膿漏、皮膚潰瘍などの外用薬として利用された。内服ではごく微量を慢性気管支炎やマラリアに用いる。

金曜日, 7月 18, 2014

榧子

○榧子(ひし)

 中国の揚子江以南に分布する常緑高木シナガヤ(Torreya grandis)の種子を用いる。日本では同属植物のカヤ(T.nucifera)を榧と書いているが、本当の榧は日本には自生していない。ただし日本や韓国ではカヤの種子を榧子の代用にしていたこともある。

 カヤは東北地方から屋久島、済州島に分布し、その柾木材は碁盤、将棋盤の最高級品として知られる。カヤの実の油は食用や頭髪油、灯火油としてり利用されていた。シナガヤの種子は脂肪酸を多く含有し、パルミチン酸をはじめステアリン酸、リノール酸、オレイン酸などのグリセリド、ステロールが含まれる。抽出エキスにはの条虫の駆除作用が知られている。日本産のカヤの種子にはアルカロイドが含まれ、子宮収縮作用が報告されている。

 漢方では殺虫・潤肺の効能があり、穏やかではあるが広範囲の駆虫薬として用いる。鉤虫や蟯虫、条虫、フィラリアなどへの効果が報じられている。煎剤や丸剤としても用いるが、単独で炒ったものをよく噛んで食べる方法もある。日本ではカヤの実を炒って粉末にしたものを寄生虫や小児の夜尿症の治療に用いる。また民間では堕胎薬としても用いられた。

木曜日, 7月 17, 2014

萆薢

○萆薢(ひかい)

 日本の各地や中国大陸に分布するヤマノイモ科のつる性の多年草オニドコロ(Dioscorea tokoro)やタチドコロ(D.gracillima)などの根茎を用いる。そのほか中国では粉背署蕷、叉心署蕷、繊細署蕷などの根茎も用いている。

 オニドコロやタチドコロは日本各地の山野や道端に自生し、全体にヤマノイモに似ている。オニドコロはトコロとも呼ばれ、根は肥大せずに横走し、ヒゲ根が多く、長寿の象徴として正月の飾りに用いられることもある。また根には苦味はあるがデンプンを含み、飢饉のときの食用にもされた。ただし、そのまま食べると嘔吐や胃腸炎を起こすため、灰汁で煮て水に晒して調理することが必要である。

 根茎にはステロイドサポニンのジオスシン、ジオスコリン、グラシリン、ジオスコレアサポトキシンAなどが含まれる。この根を砕いて川に流し、魚をしびれさせて漁をする魚毒としても利用される。

 漢方では去風湿・利水の効能があり、リウマチなどによる関節痛や足腰の疼痛、排尿障害や混濁尿、湿疹などに用いる。古くから萆薢は「治湿に最も長じ、治風これに次ぎ、治寒はそれに次ぐ」といわれている。膀胱炎や淋疾、膣炎、前立腺炎には烏薬・益智仁などと配合する(萆薢分清飲)。湿疹や丹毒には黄柏・牡丹皮などと配合する(萆薢滲湿湯)。リウマチや神経痛には防風・牛漆などと配合する(萆薢酒)。

水曜日, 7月 16, 2014

繁縷

○繁縷(はんろう)

 世界各地に広く分布するナデシコ科の越年草コハコベ(Stellaria media)の全草を用いる。一般にコハコベとミドリハコベ(S.neglecta)を合わせてハコベと称し、いずれも薬用にできる。春の七草の一つで若い茎や葉は食用とされる。またヒヨコグサの別名もあって小鳥の餌としてもよく知られているが、英語ではChickweedと呼ばれている。

 成分は不詳であるが、青汁には葉緑素やカルシウム、酵素などが含まれる。日本の民間では動悸や息切れの妙薬として、また催乳薬、胃腸薬として用いられている。昭和初期には虫垂炎の妙薬として騒がれたこともある。中国でも民間薬として知られ、活血・催乳・解毒の効能があるとして、産後の腹痛や母乳不足、嘔吐や下痢、腸癰などに用いる。

 茎や葉をカラカラに干したものや炒ったものをすりつぶし、できた緑色の粉と塩を混ぜたものが「はこべ塩」である。今日でも歯茎の出血や歯槽膿漏の予防に用いられる。欧米でもハコベはパップ剤や軟膏として皮膚の化膿症や潰瘍の治療に利用されている。

火曜日, 7月 15, 2014

板藍根

○板藍根(ばんらんこん)

 アブラナ科に属するホソバタイセイ(Isatis tinctoria)やタイセイ(I.indigotica)、キツネノマゴ科のリュウキュウアイ(Storobilanthes flaccidifolius)の根茎および根を用いる。これらの葉や枝葉は大青葉、精製された藍色の色素は青黛として生薬に用いられる。ホソバタイセイはヨーロッパや南西アジアが、タイセイは中国が原産とされている。

 これらの植物はインジゴを含み、古くから世界各地で藍色の染料として用いられた。植物に含まれるインジカンは、発酵させることにより加水分解されてインドキシルとなり、さらに空気による酸化を受けインジゴとなる。薬理学的には抗菌作用、抗ウイルス作用が認められている。

 漢方では清熱涼血・解毒の効能があり、高熱や発疹、咽頭痛を伴うような感染性熱性疾患、脳炎、髄膜炎、丹毒、肺炎、耳下腺炎などに用いる。顔面の丹毒や腫れ物、中耳炎、耳下腺炎などで熱のみられるときには黄芩、黄連などと配合する(普済消毒飲)。

 近年、中国では日本脳炎、インフルエンザ、ウイルス性肝炎などに対する臨床研究が行われ、板藍根の注射液なども開発されている。また、中国では一般家庭でも板藍根うがい薬や風邪薬としてよく知られており、最近ではSARS(重症急性呼吸器症候群)にも有効だとしてブームとなった。

金曜日, 7月 11, 2014

斑蝥

○斑蝥(はんみょう)

 中国各地に分布するツチハンミヨウ科の昆虫、南方大斑蝥(Mylabris phalerata)やヨコジマハンミョウ(M.cihorii)の乾燥した全虫を用いる。

 南方大斑蝥は体長1.5~2cmくらいの細長い昆虫で、背には黄色と黒の縞模様があり、大豆やナスなどの葉や花を食べる害虫としても知られている。ヨコジマハンミョウの外形は南方大斑蝥とよく似ているが、体長は1~1.5cmくらいと小さい。日本でミチオシエともいわれるハンミョウ(ハンミョウ科)とは別の科の昆虫であり、ツチハンミョウ科のマメハンミョウ(Epicauta gorhami)に近い昆虫である。

 かつて日本ではミチオシエを和斑蝥と称し、斑蝥の代用として用いられたこともある。しかし和斑蝥には、斑蝥などツチハンミョウ科の昆虫に含まれているカンタリジンが含まれていない。カンタリジンはツチハンミョウ科の昆虫が外敵から身を守るために分泌する刺激性の物質で、皮膚に付着すると炎症を起こし、水疱ができる。

 カンタリジンの薬理作用として発疱作用や抗腫瘍作用が知られ、内服すると利尿作用があり、また尿道を刺激するため催淫剤としても用いられた。漢方では攻毒・逐瘀の効能があり、瘰癧(頸部リンパ腺腫)や狂犬病、堕胎などに用いた。

 近年、中国では外用薬としてリウマチや神経痛、顔面神経麻痺、脱毛症に、内服薬として肝臓癌の治療に試みられている。しかし、刺激発疱剤としては毒性が強すぎ、用いる機会も少ないため日本薬局方から削除された。なおツチハンミョウ科の昆虫生薬として芫青、葛上亭長(マメハンミョウ)、地胆(ヒメツチハンミョウ)などがある。

木曜日, 7月 10, 2014

半辺蓮

○半辺蓮(はんぺんれん)

 日本の各地、朝鮮半島、中国、東南アジアなどに分布するキキョウ科の多年草ミゾカクシ(Lobelia chinensis)の全草を用いる。中国では花が下方だけに広がるために半辺蓮と呼ばれ、日本では田んぼの畦道などで溝が隠れるほど繁殖するのでミゾカクシ、あるいはアゼムシロと呼ばれている。

 日本にも普通に分布するが、一般にミゾカクシ属は有毒植物として知られ、薬用としてはほとんど利用されていなかった。中国で住血吸虫病による肝硬変の腹水に有効であることが報告されて以来、非常に注目されている。

 成分にはアルカロイドのロベリン、ロベラニン、ロベラニジンなどが含まれ、利尿作用や呼吸興奮作用、循環系に対する作用を有する。漢方では利水・消腫・解毒の効能があり、下痢や浮腫、腹水、皮膚化膿症、毒蛇咬傷などに用いる。とくに住血吸虫による腹水と毒蛇咬傷の治療は有名である。

 毒蛇に咬まれた時には生汁あるいは煎液を内服すると同時に生汁を患部に貼付する。同属の薬用植物としては北米に分布するロベリア草(L.inflata)がある。

水曜日, 7月 09, 2014

反鼻

○反鼻(はんび)

 クサリヘビ科マムシ属のマムシ(Agkistrodon halys)の内臓を除去した全体を用いる。マムシは体長50cm前後で、全体は褐色で黒褐色の円形の斑紋が少しずれて並び、頭は小さく三角形である。日本全土に生息する唯一の毒蛇で、水辺に近い草むらに生息し、夜行性でネズミやカエルなどを捕食する。卵を体内で孵化する卵胎生である。

 中国、韓国にも分布しているが、反鼻と称されるものの中にはハブ、アオハブ、ヒメハブなども含まれている。日本では滋賀県や九州南部が産地として有名であるが、現在ではほとんどが韓国産のマムシである。

 薬材ではマムシを皮を剥いで棒状にしたものを反鼻あるいは五八霜といい、皮付きのまま蒸して円盤状にしたものをマムシの蒸し焼きと呼んでいる。五八霜の名は、五十八本で1斤(600g)になることに由来する。マムシの蛇毒は血液毒成分と神経毒成分が含まれ、血液循環障害や出血、壊死、浮腫などが出現する。

 漢方では性味は甘温、有毒で、解毒・攻毒・強壮の効能があり、ハンセン病や腫れ物、皮膚のしびれ、腹痛、痔疾などに用いる。健忘症やうつ病などによる放心状態には茯苓・香附子などと配合する(反鼻交感丹)。夜尿症には丁子と配合する(香竜散)。

 日本では古くからマムシの黒焼きも有名で、おもに伯州散などの解毒剤に配合されて用いられている。マムシは明治以後には滋養強壮剤として用いられることが多く、今日でも栄養剤やドリンク剤などにハンビチンキの名前で配合されている。また民間療法ではマムシの生き血や生胆、生きたまま漬けたマムシ酒などが疲労回復や冷え性などの治療に用いられている。

月曜日, 7月 07, 2014

胖大海

胖大海(はんたいかい)

 インドから東南アジアにかけての熱帯に分布するアオギリ科の落葉高木ハンタイカイ(Sterculia scaphigera)の種子を用いる。ベトナム、タイ、インドネシア、マレーシアなどで産するが、ベトナム産の品質が最もよいとされている。

 乾燥した種子は長さ2~3cm、直径1~1.5cmの楕円形で表面には細かい不規則なしわがある。水に浸けると大きく膨らんで海綿状となるので胖大海の名がある。このような種子として同属植物のハクジュ(S.lychnophora)の種子は莫大海と呼ばれ、水に入れると寒天質のゼリーをつくるため、中国では薬膳料理などに利用され、日本でも刺身のつまとして利用されている。

 種子の外層には多量の粘液質のバッソリン、果皮にはガラクトース、アラビノース、ペントースなどの糖類が含まれる。食べると腸の内容物を増大させるので緩下作用があり、また降圧、利尿、鎮痛作用などが知られている。漢方では利咽・潤肺・通便の効能があり、扁桃炎などによる咽の痛みや嗄声、乾燥性の咳嗽、歯痛、便秘などに用いる。煎じるほか、お茶に浸して服用する。インドネシアでは喘息の治療に利用している。

木曜日, 7月 03, 2014

蕃石榴

○蕃石榴(ばんせきりゅう)

 熱帯アメリカ原産で、熱帯および亜熱帯の世界各地で栽培されているフトモモ科の常緑小高木バンジロウ(Psidium guajava)の果実や葉を用いる。生薬では未成熟の果実を番石榴乾といい、葉を番石榴葉という。

 バンジロウは紀元前から古代いんかインカ族によって栽培されていたといわれ、16世紀にスペイン人によってフィリピンに伝えられた。17世紀ごろには台湾や沖縄県にも伝えられ、現在、琉球諸島で野生化している。果実がザクロに似ていることから中国では番石榴といい、その漢字を日本でバンザクロ、バンジロウと呼んでいる。

 日本では、グァバとしても知られているが、グァバとはスペイン語の果実という意味に由来する。また、学名をシジュウム・グァバというが、近年、南米産の葉をシジュウムとも呼んでいる。グァバの果実はビタミンに富み、そのまま食用にしたり、ジュースやジャムに利用される。台湾では葉をパーラ茶と呼んで飲用する習慣がある。

 果実にはビタミンC、カロテン、シトステロール、ケルセチンなどが含まれ、葉には多量のタンニンなどのポリフェノール(グァバ葉ポリフェノール)が含まれている。中国やインド、東南アジアでは果実や葉を収斂性の止瀉薬として下痢に用いている。台湾では古くから糖尿病の治療や肥満防止の効果が知られている。

 グァバはポリフェノールにはαアミラーゼ、αグルコシダーゼなどの糖質分解酵素の働きを阻害し、糖分の吸収を抑制して、血糖上昇を抑える効果が確かめられており、血糖が高い人のための特定保健用食品の機能性成分として認められている(蕃爽麗茶)。また、グァバの一種と考えられているシジュウムの葉には、ヒスタミンやロイコトリエンの遊離抑制効果が報告されており、花粉症やアトピーなどのアレルギー症状に効果があるといわれている。

水曜日, 7月 02, 2014

半枝蓮

○半枝蓮(はんしれん)

 中国の各地、台湾などに分布し、湿地に生えるシソ科の植物スクテラリア・バルバータ(Scutellaria barbata)の全草を用いる。コガネバナ(生薬名:黄芩)やタツナミソウと近縁植物である。中国の江蘇省地域の民間薬で、古い本草書には収載されていない。

 成分にはアルカロイド、フラボノイド配糖体などが含まれるが、詳細は明らかではない。水製エキスにて白血病細胞に対する軽度の抑制作用が認められている。民間薬として止血・止痛・清熱・解毒の効能があり、外傷や鼻血、吐血、下血、肝炎、咽頭腫痛、皮膚化膿症、肺化膿症などに用いる。

 乾燥したものを煎じて用いたり、新鮮な絞った汁を服用する。また皮膚病や打撲傷、毒蛇咬傷などに新鮮な汁を外用する。近年、中国で白花蛇舌草と併用し、胃癌、大腸癌、肝癌などの消化器系癌や肺癌、子宮癌、乳癌に対してある程度の効果があることが報じられている。

金曜日, 6月 27, 2014

半夏

○半夏(はんげ)

 日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するサトイモ科の多年草カラスビャクシ(Pinellia ternata)の球茎を用いる。半夏の名は夏の半ばに花が咲く(そのころに採取する)ことに由来し、カラスビャクシの名は仏炎の形をビャクシに例えたものである。農家の主婦の小遣い稼ぎになることからヘソクリという俗名もある。もっとも塊茎から葉柄をとった中央の窪みがヘソのようであるという説もある。

 採取した球茎を水洗いしてから塩水に入れ、上皮を除去した後、塩抜きして乾燥する。生で用いると弱い毒性や刺激性があるため、中国では一般に修治した製半夏を用いる。通常、10日間ほど冷水に浸し、その後、明礬で煮て処理したものを清半夏、明礬や甘草、石灰で処理したものを法半夏、明礬と生姜で煮て処理したものを姜半夏という。生の半夏を用いるときには生姜と配合して煎じる。

 半夏を口に含むとえぐみが強く、チクチクと口腔粘膜を刺激するが、これはシュウ酸カルシウムの針晶あるいはジグリコシリックベンズアルデヒドが原因ではないかといわれている。

 半夏の成分にはホモゲンチジン酸、ジヒドロキシベンズアルデヒド、エフェドリン、コリンなどが含まれ、鎮吐、鎮咳、唾液分泌亢進、腸管内輸送促進などの薬理作用が報告されている。漢方では理気・止嘔・去痰の効能があり、悪心、嘔吐、消化不良、咳嗽、喀痰、不眠などに用いる。

 半夏の性質は温で燥湿の作用もあるため胃内停水などの痰飲や嘔吐の常用薬である。なお半夏の毒性による口腔内のしびれ感や灼熱感、嗄声などには生姜を用いるとよい。

木曜日, 6月 26, 2014

蕃杏

○蕃杏(ばんきょう)

 日本の海岸をはじめ、太平洋沿岸の各地の砂地に分布するツルナ科の多年草ツルナ(Tetragonia tetragonoides)の全草を用いる。ツルナの果実は海流に乗って分散するため、東南アジアやオーストラリア、南米などにも広く分布している。

 茎や葉は肉質であり、新芽や葉はホウレンソウのように食用にでき、英語ではニュージーランドスピナッチともいう。日本にもツルナ(蔓菜)はハマナ(浜菜)、ハマヂシャ(浜千舎)などと呼ばれて食用にされることもあるが、アクが強くてざらつく感じが残るためあまり利用されない。

 成分には鉄やカルシウム、ビタミンA・Bなどのほか、酵母菌属に対して抗菌作用のあるテトラゴニンなどが含まれている。一般に「浜ぢしゃ」の名で日本の民間薬として知られ、胃炎などの胃の痛みに効果がある。昭和10年代の初期に胃癌や食道癌に効果があるとしてブームになったが、とくに根拠はなさそうである。

火曜日, 6月 24, 2014

馬蘭子

○馬蘭子(ばりんし)

 中国の北部から東北部、朝鮮半島に分布するアヤメ科の多年草ネジアヤメ(Iris pallasii)の種子を用いる。神農本草経には蠡実、名医別録には茘実とある。根は馬蘭根、花は馬蘭花、葉は馬蘭葉といい、これらも薬用とする。花が小型のアヤメのように美しいため日本でも観賞用に植栽され、葉がねじれているためネジアヤメ(捩菖蒲)と呼ばれている。

 種子にはパラソームA・B・Cなどが含まれ、避妊作用や抗癌作用などが報告されている。漢方では清熱燥湿・止血の効能があり、黄疸型の肝炎や下痢、性器出血、鼻血、咽頭腫痛などに用いる。蛇の咬傷やキノコ中毒にも効果があるといわれている。

 馬蘭根、馬蘭花、馬蘭葉にはいずれも清熱・解毒の効能があり、おもに咽頭の炎症に用いられる。中国では古くから抗癌薬として使用されており、1996年には製剤化されている。

水曜日, 4月 23, 2014

白果

○白果(びゃっか)

 中国原産で、平安時代以降に渡来して日本全土に植栽されているイチョウ科の落葉高木イチョウ(Ginkgo biloba)の種子(胚乳)を用いる。中国ではイチョウのことを成長が遅く孫の代にならないと実がならないことから公孫樹、種子が白くて銀のようであるとして銀杏、葉の形が鴨の水かきに似ているために鴨脚の中国音、ヤーチョオに由来する。

 ギンナンの名も銀杏の中国北部の発音であるギンアンに由来する。イチョウは雌雄異株の裸子植物で、秋に雌株だけに実(植物学的には種子)がなる。実の多肉質な外種皮は熟すと独特の異臭がある。

 果肉にはアナカルデイア酸、ギンコール酸、ピロボールが含まれ、皮膚に付着するとかぶれを生じる。その中に硬い殻のギンナンがある。薬用には成熟した果実を土に埋めたり、水に漬けたりして外種子を腐敗させた後、洗浄し、日干しする。ギンナンはタンパク質やデンプンに富み、食用とされるが、多食すると中毒を起こし、小児では死亡することもある。

 ギンナンには4’-メトキシピリドキシンという物質が含まれているが、これはビタミンB6と構造が似ているため、ビタミンB6の働きを競合的に阻害し、その結果、脳内の神経伝達物質、γ-アミノ酪酸(GABA)の生成を抑制して痙攣、嘔吐、眩暈、呼吸困難といった中毒症状を表すと考えられている。

 漢方では収渋薬のひとつで止咳・平喘・化痰・縮尿の効能があり、咳嗽、喘息、帯下、頻尿、遺尿などに用いる。たとえば肺熱の咳嗽や呼吸困難、とくに痰の多い喘息に麻黄・杏仁・桑白皮などと配合する(定喘湯)。

 日本には夜尿症の治療に年齢の数だけギンナンの焼いたものを食べさせるという療法がある。またイチョウの葉をしおりに使うとシミがわかないとか、落葉を根元に敷いて肥料にすると駆虫効果があるとして利用されている。近年、イチョウの葉に血流改善作用が認められ、認知症などへの効果が注目されている。

火曜日, 4月 22, 2014

佩蘭

○佩蘭(はいらん)

 日本の関東地方以西、朝鮮半島、中国に分布するキク科の多年草フジバカマ(Eupatorium fortunei)の茎葉を用いる。中国原産であるが、古くから日本に帰化している植物で、秋の七草の一つである。

 かつて中国で蘭といえばフジバカマのことを指し、蘭草とか香水蘭と呼ばれ、香草のひとつとして風呂に入れたり、香料として身につけていた。現在、中国市場では佩蘭としていつくかの基原植物が混じっており、とくにシソ科のシロネ(Lycopus lucidus)の全草である沢蘭と混同されることが多い。逆に沢蘭としてフジバカマを用いている地区もある。

 生のフジバカマには香りはないが、乾燥させると成分のクマリン配糖体が分解されてオルトクマリン酸となり、桜餅のような香りがする。また水性エキスには血糖降下作用や利尿作用がある。漢方では芳香化湿・健胃・解暑の効能があり、とくに夏の胃腸風邪(暑湿)の常用薬である。

 中国医学では佩蘭は芳香化湿薬のひとつであり、脾胃を覚醒させ、胃腸に溜まった湿濁の気を除く作用があると説明している。また佩蘭は湿濁によって生じる「脾癉の要薬」といわれ、口が甘い、口が粘る、口臭がある、みぞおちが張る、食欲不振、消化不良、吐き気、嘔吐、軟便、倦怠感などの症状に用いる。民間薬として糖尿病や浮腫に用いられている。そのほか皮膚の痒みに対して浴湯料として用いる。

月曜日, 4月 21, 2014

貝母

○貝母(ばいも)

 中国原産で日本でも切り花や鉢植えに栽培されているユリ科の多年草アミガサユリ(Fritillaria verticillata)の鱗茎を用いる。貝母という名は2つの厚い鱗片が、母貝が小貝を抱いたように合わさっていることに由来する。日本の古名のハハクリ(母栗)の語源も形が栗のようで、子を抱く母の姿に似ていることによる。また花の内側に紫色の網目模様があるためアミガサユリ(編笠百合)の名がある。

 日本産の貝母は奈良県で栽培され、大和貝母と呼ばれている。中国では貝母は川貝母と浙貝母に区別され、浙貝母は日本産と同じアミガサユリの鱗茎であるが、川貝母はその他の同属植物、巻葉貝母、烏花貝母、稜砂貝母などの鱗茎である。ただし日本の輸入されているほとんどは浙貝母である。

 浙貝省象山県を原産とするため浙貝母といい、また象貝母ともいわれる。川貝歯は四川省を主産地とする。いずれの貝母も化痰・止咳の効能があり、咳嗽、喀痰、咽頭痛などに用いる。川貝母のほうが薬性は穏やかで、潤す性質があるため、慢性化した気管支炎や痰の少ないときに用いる。浙貝母は清熱作用にすぐれ、急性の気管支炎やなどで炎症が激しく粘稠痰の出るときに適している。なお土貝母というのはウリ科の植物の塊茎で薬材の形は似ているが貝母とは全く別の生薬である。

金曜日, 4月 18, 2014

梅肉膏

○梅肉膏(ばいにくこう)

 梅肉膏はバラ科のウメ(Prunus meme)の未成熟果実を加工したもので、日本独自の民間薬である。ウメは梅干しや梅酒として日本人に親しまれているが、これらは薬用としても利用される。

 梅干しは食中毒の予防や食欲増進に、梅酒は夏の暑気あたりや夏まけに効果がある。また民間療法に梅干しを熱灰に埋めて黒焼きにした梅の黒焼きがある。風邪の熱や咳には黒焼きを熱湯に入れて飲んだり、歯が痛むときには患部に黒焼きをすり込んで治療する。頭痛に梅干しの果肉をこめかみに貼ることもよく行われていた。

 江戸時代から伝わる民間薬、梅肉膏は昭和初期に筑田多吉の著した「家庭における実際看護の秘訣」(通称:赤本)によって日本中に広く知られるようになった。最近では梅肉エキスとして有名である。

 梅肉膏は、生の青梅をすりおろし、布巾でしぼった汁を天日で濃縮、あるいは過熱してゆっくりと煮つめたものである。弱火で煮つめると泡が立つが、混ぜているとドロッとなり、黒っぽい水飴のような酸味が強いものできる。これが梅肉膏である。

 梅肉膏は下痢や食中毒の改善効果やピロリ菌に対する抗菌作用などが認められ、また感冒や咳嗽、咽頭炎などにも用いられる。外傷や皮膚真菌症などに外用する方法もある。

 近年、梅を加熱する過程で、クエン酸と糖質(HMF)がエステル結合した化合物、ムメフラールが生成されることが明らかとなった。このムメフラールには血小板凝集能抑制効果や赤血球変形能改善効果が認められ、血流状態を改善することが注目されている。

水曜日, 4月 16, 2014

貝歯

○貝歯(ばいし)

 貝歯には白貝歯と紫貝歯とがあり、一般には紫貝歯がよく知られている。いずれもタカラガイ科の貝であるが、白貝はタカラガイ科のキイロダカラ(Monetaria moneta)やハナビラダカラ(M.amulus)などの貝殻、紫貝歯はハナマルユキ(Erosaria caputserpentis)やヤクシマダカラ(Mauritia arabica)などの貝殻を用いる。

 一般に白貝歯は小型種で全体が黄白色、紫貝歯は大型種で黄褐色や紫色の斑紋がみられる。いずれも南方の海洋に分布し、海南島や台湾、福建省などに産する。

 成分はほとんど炭酸カルシウムで、少量の有機酸、マグネシウム、鉄、ケイ酸塩、硫酸塩、塩化物を含む。漢方では紫貝歯の味は鹸、性は平で、清熱・平肝・明目・安神の効能があり、眩暈、頭痛、結膜炎、不安、不眠などに用いる。白貝歯の味は鹸、性は涼で、清熱・利尿の効能があり、浮腫や膀胱炎などに用いる。

火曜日, 4月 15, 2014

敗醤

○敗醤(はいしょう)

 日本各地や朝鮮半島、中国名とに分布するオミナエシ科の多年草オトコエシ(Patrinia villosa)やオミナエシ(P.scabiosaefolia)を正条品としている。根のついた全草を敗醤あるいは敗醤草、根だけを敗醤根という。

 神農本草経の中品に収載されている敗醤もオトコエシのこととされている。しかし、現在の中国市場に出ている基原植物はおもにアブラナ科のグンバイナズナ(Thlaspi arvense)やキク科のアキノノゲシ(Lactuca indica)などの全草といわれ、はなはだ混乱している。日本産の敗醤根はオミナエシの根である。

 敗醤の名は乾燥させた根茎が醤油の腐った臭いのすることに由来する。オトコエシ(男郎花)やオミナエシ(女郎花)の名の由来は定かではないが、オトコエシの方が茎が太くて毛で覆われ男性的である。またオミナエシの花は黄色く、オトコエシの花は白い。

 オトコエシの果枝にはシニグリン、根には苦味配糖体のロガニンが含まれ、オミナエシの根にはオレアノール酸などが含まれている。漢方では清熱解毒・排膿の効能があり、虫垂炎、下痢、帯下、腫れ物などに用いる。おもに虫垂炎に用いるため「腸癰の要薬」ともいわれる。

 急性虫垂炎や虫垂炎周囲には薏苡仁・附子などと配合する(薏苡附子敗醤散)。また皮膚の化膿などには金銀花・連翹などと配合して煎服したり、生のものを患部に添付する。