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火曜日, 3月 19, 2013

蒺藜子

○蒺藜子(しつりし)

 世界各地の温帯から熱帯にかけて広く分布するハマビシ科の一年草ハマビシ(Tribulus terrestris)の果実を用いる。一般に海辺の砂浜に自生し、果実が菱の実に似ているためハマビシ(浜菱)の名がある。

 古来、蒺藜と呼ばれる生薬には蒺藜子とは別に潼蒺藜がある。潼蒺藜というのはマメ科のツルゲンゲの種子のことで、今日では沙苑子と呼ばれている。さらにアカザ科のハマアカザ(Atiplex sibirica)の果実のことを軟蒺藜というのに対し、ハマビシの果実は硬くて刺のある五角形をしているため、硬蒺藜とか刺蒺藜と呼ぶこともある。生薬には一般にハマビシの未成熟果実を用いる。

 ハマビシの果実にはケンフェロールなどのフラボノイド、種子にはハルミンなどのアルカロイドが含まれ、鎮痙作用、降圧作用、利尿作用が知られている。漢方では平肝・明目・止痒の効能があり、肝陽上亢に伴うめまいや頭暈、眼科疾患、皮膚搔痒感、腹痛などに用いる。またインドの民間では利尿薬として用いている。

 一方、ヨーロッパではハマビシ(トリビュラス)の全草が、古くから強壮薬、筋肉増強剤として利用されていた。トリビュラスに含まれているサポニンは脳下垂体から黄体ホルモンの分泌を刺激し、男性ではテストステロンの分泌を促進して精子の量や運動性を高めるとともに、性機能の低下を改善し、女性ではプロゲステロンの分泌を促進し、月経前緊張症や更年期障害などを緩和すると説明されている。テストステロンにはタンパク同化作用があり、最近でもスポーツ選手の筋肉増強に応用されている。

月曜日, 3月 18, 2013

紫壇

○紫壇(したん)

 インドから東南アジア、マレー半島など熱帯から亜熱帯にかけて分布するマメ科の常緑高木シタン(Pterocarpus indicus)の心材を用いる。

 シタンの心材は黄褐色で美しく、家具や床柱、工芸品として利用されている。ただし日本で一般に紫壇と呼ばれている木材はこのシタンではなく、ビルマやインドシナに分布するツルサイカチ属Dalbergiaの心材であり、暗紫褐色から紫黒色である。このためシタンの心材は花櫚と呼ばれている。

 シタンにはプテロテカルビン、アンゴレンシンが含まれる。また同属植物のサンダルシタン(P.santalinus)には紅色色素やサンタリンなどが含まれ、紅色染料はヒンドゥー教徒の額を染めるのに用いられている。

 漢方では消腫・止血の効能があり、腫れ物や外傷による出血などに用いる。煎じて服用することもあるが、一般に紫壇の粉末を腫れ物や傷口に塗布する。口内炎や歯痛に乳香・細辛などと配合する(乳香散)。日本漢方では婦人の生理を延期させる経口薬、延経期方に続断・蒲黄などと配合されている。

金曜日, 3月 15, 2013

紫蘇子

○紫蘇子(しそし)

 中国原産のシソ科の一年草シソ(Perilla frutescens var.acuta)やチリメンジソの種子を用いる。シソの葉は蘇葉、茎は紫蘇梗という。日本にも古くから伝わり、各地で野生化している。

 かつて紫蘇子の油は灯火油として用いられていた同じシソ科のエゴマの代用にされていた。ちなみにエゴマは白蘇といい、現在、シソ油として市販されているものはしばしばエゴマが利用されている。

 シソの種子の主成分としてアピゲニン、ルテオリンなどのフラボノイド、ロスマリン酸などのポリフェノール、またシソ油の脂肪酸としてα-リノレン酸が多く含まれ、ヒスタミンの遊離を抑制し、花粉症などのアレルギー症状を緩和することが報告されている。

 漢方では降気・去痰・止咳・潤腸の効能があり、咳嗽や喘息、便秘などに用いる。とくに痰が多いときの咳嗽や呼吸困難、胸苦しさに効果がある。また油脂成分が多く、便秘に麻子仁・杏仁などと配合する。逆に、下痢や軟便の時には用いない。使用方法は軽く炒って砕いて用いる。

木曜日, 3月 14, 2013

紫蘇梗

○紫蘇梗(しそこう)

 中国原産のシソ科の一年草シソやチリメンジソの茎を用いる。シソの果実は紫蘇子、葉は蘇葉という。シソはアントシアニン系の赤い色素の有無によって赤ジソと青ジソに分けられ、薬用にはおもに赤ジソ、とくにチリメンジソが用いられる。

 シソは全草に精油を多く含むが、青ジソはおもにペリラアルデヒドを主成分とする精油を含む。かつてペリラアルデヒドから紫蘇糖(ペリラルチン)と呼ばれるショ糖の2000倍の甘さといわれる甘味料が作られた。しかし熱や唾液などで分解されやすいため、今日ではおもにタバコの味付けとして利用されている。日本では一般に茎は用いないが、中国では茎と葉を区別して用いている。

 紫蘇梗は漢方では理気・安胎の効能があり、気分の鬱した症状、胸の痞え、食物の滞り、胃腸の疼痛、胎動の不安などに用いる。とくに妊娠中の悪阻や胃腸障害、胎動の激しいときに用いる。

 蘇葉・紫蘇梗のいずれにも解表・理気・安胎の効能があるが、蘇葉が発散・解表の作用が強いのに対して、紫蘇梗は理気・安胎の作用に優れている。日本の民間では葉を採取した株を刻んで乾燥し、体を温める浴湯料として用いている。

水曜日, 3月 13, 2013

柿霜

○柿霜(しそう)

 干し柿の表面に生じる白粉を柿霜という。成熟したカキ(Diospyros kaki)の果実の外皮をむき、1ヶ月間、日や夜露に当てて乾燥し、さらに1ヶ月は室内でムシロの中に放置すると柿餅、つまり中国式の干し柿ができる。このとき表面に生じる白い粉を柿霜という。

 この白粉の成分はマンニトール、ブドウ糖、果糖、ショ糖などである。これを加熱して飴状にしたものを柿霜餅という。口に含むと甘くて清涼感がある。漢方では潤肺・止咳の効能があり、咽頭痛や咳嗽、口内炎の治療に用いる。トローチ剤のようにも服用できるので小児の咳嗽・去痰薬として適している。

火曜日, 3月 12, 2013

蓍草

○蓍草(しそう)

 日本の中部以北、北海道を始め東アジアから北米に分布するキク科のノコギリソウ(Achillea alpina)の全草を用いる。葉が深く切れ込みノコギリ状になっているためノコギリソウの名がある。

 ノコギリソウの属名、アキレア(Achillea)という名はギリシャ神話の英雄アキレスが、これで切り傷のときの止血に用いたという故事に由来している。近年、日本ではノコギリソウとして観賞用に栽培されているのはおもにセイヨウノコギリソウ(A.millefolium)で、最近ではこのセイヨウノコギリソウが野生化している。

 ノコギリソウにはイソ吉草酸、サリチル酸、タンニン、フラボノイド、ステロールが含まれ、また精油成分としてカマズレン、アキリン、シネオールなどが含まれる。漢方では活血・止痛・解毒の効能があり、打撲傷、リウマチ、腹部の腫塊などに用いる。

 ヨーロッパでは古くからセイヨウノコギリソウは解熱薬として風邪や熱病に用いられている。また生の葉を揉んで、汁を傷口につけると止血作用があり、ノーズブリード(鼻血)という別名もある。そのほか痔や無月経、リウマチの治療に、また健胃薬や止咳薬としても利用されている。

月曜日, 3月 11, 2013

紫石英

○紫石英(しせきえい)

 紫石英は紫水晶(アメジスト:Amethyst)のことであったが、現在ではおもに紫色の蛍石(フルオライト:Fluorite)の鉱石が用いられている。また中国南部では方解石の紫色のものを紫石英として用いている。

 蛍石はおもに熱鉱脈中に産し、加熱すると蛍光現象を示す。蛍石はハロゲン化鉱物のひとつで、主成分はフッ化カルシウム(Caf2)である。

 漢方では重鎮安神薬のひとつで、安神・定驚の効能があり、動悸、不眠、頻脈、精神不安などに用いる。また止咳・強壮の効能もあり、老人の咳嗽や不妊症、性器出血などにも用いる。熱性痙攣や癲癇、脳卒中、麻痺の治療に竜骨・牡蠣などと配合する(風引湯)。神経衰弱や精神障害に人参・茯苓などと配合する(茯苓補心湯)。

土曜日, 3月 09, 2013

紫珠

○紫珠(ししゅ)

 日本各地に分布しているクマツヅラ科の落葉低木ムラサキシキブ(Callicarpa japonica)やコムラサキ(C.dichotoma)の葉及び根を用いる。中国ではホウライムラサキ(C.formosana)の葉や若枝を紫珠という。

 ムラサキシキブの名は鈴なりになった紫色の小さな美しい実を紫式部に例えたもので、日本ではおもに観賞用に植えられている。中国では紫珠草ともいうが、高さ2~3mの木である。ムラサキシキブの材は硬いため、げんのうや箸の材料として利用されている。また南洋諸島では枝葉の汁を流して魚を捕っている。

 葉の成分にはトリメトキシテトラメトキシのフラボンやオレアノール酸が含まれ、フラボノイドには解毒作用や抗菌作用がある。漢方では止血・解毒の効能があり、外傷や手術時の出血、鼻血、血尿、血便、痔などさまざまな出血に用いる。

 近年、中国では紫珠の注射液の臨床研究が行われ、血小板増加、出血時間や凝固時間の短縮、血管収縮などの作用を報告している。また外用として粉末や煎液を創面や火傷の治療に応用している。日本の民間療法では葉の汁を寄生性皮膚病などの患部に直接塗布する。

金曜日, 3月 08, 2013

磁石

○磁石(じしゃく)

 世界各地に産する天然の磁鉄鉱(マグネタイト:Magnetite)である。通常、火成岩や変成岩の中に入っており、鉄の原料としても用いられる。おもに成分は四酸化三鉄(Fe3O4)であり、酸化マグネシウムや酸化アルミニウムを含むこともある。

 鉄を吸引する磁性という特徴があるが、採取後放置しておくと磁性が減退する。磁性のあるものを活磁石、磁性の失ったものを死磁石という。表面が黒色で光沢があり、磁性の強いものほど良品とされる。

 漢方では肝腎を補い、精神を安定させ、咳を止める効能があり、高血圧、不安、不眠、煩躁、咳嗽などに用いる。高血圧(肝陽上亢)に伴う眩暈、頭重感、のぼせ、動悸などには竜骨・牡蠣などと配合する。熱病による高熱、煩躁、意識混濁、痙攣などには犀角・羚羊角などと配合する(紫雪丹)。腎虚による喘息には熟地黄・五味子などと配合する。腎虚による視力の低下、不安感、動悸、不眠などには朱砂・神麹と配合する(磁朱丸)。腎虚による耳鳴には六味丸に配合する(耳鳴丸)。

火曜日, 3月 05, 2013

柿漆

○柿漆(ししつ)

 カキノキ科のカキ(Diospyros kaki)の渋を用いる。カキの未熟な果実(青柿)を容器に入れて搗き砕き、水を加えてときどき攪拌しながら3週間ほど放置して発酵させ、滓を除くとニカワ状の液が得られる。これを柿漆あるいは柿渋という。

 かつては傘や渋紙、渋ウチワなどの紙や絹糸、皮革などに塗布して防水、防腐などの強化に用いていた。現在ではおもに日本酒製造における清澄剤として知られている。

 柿渋にはシブオールを主成分とする多量のタンニンが含まれる。このタンニンのため柿の果肉には渋味があるが、熟していくにつれタンニン細胞が凝固、収縮して褐色斑に変化し、タンニンが不溶性となって渋味がなくなる。

 柿漆には血圧効果作用が認められ、高血圧や脳卒中の後遺症などに少量ずつ服用する。夜尿症にも有効である。そのほか扁桃炎や含嗽薬として、火傷や湿疹などでは冷湿布として用いる。また凍傷の塗布薬としても用いる。

月曜日, 3月 04, 2013

紫根

○紫根(しこん)

 日本の各地や中国、朝鮮半島に分布しているムラサキ科の多年草ムラサキ(Lithospermum erythrorhizom)の根を用いる。中国では紫根を硬紫根と軟紫根とに区別し、ムラサキの根を硬紫根というのに対し、同じムラサキ科の新疆紫草(Arnebia euchroma)の根を軟紫根という。いずれの根も紫色で、ナフトキン誘導体のシコニン、アセチルシコニンなどの紫色色素が含まれる。

 日本でもムラサキの根は天平の頃から紫色の染色に用いられ、江戸時代には江戸紫として有名であった。今日、軟紫根は日本薬局方の適用外であるが、かなりの量が流通している。

 薬理的にはシコニン、アセチルシコニンには抗炎症、肉芽促進作用などの創傷治癒促進作用があり、紫根の抽出液には抗菌、抗浮腫作用などがある。また近年、抗腫瘍作用が注目され、絨毛上皮腫や白血病、乳癌などへの臨床応用が研究されている。

 漢方では清熱涼血・解毒・透疹の効能があり、水痘や麻疹の初期の発疹ができらないとき、紫斑、黄疸、吐血、鼻血、血尿、腫れ物などに用いる。近年では麻疹の予防や肝炎の治療に用いている。また湿疹や外陰部の炎症に外用する。

 紫根を主薬とした紫雲膏は火傷や凍瘡、痔などの外用薬として有名である。また乳腺炎や乳癌の治療には牡蠣・忍冬などと配合する(紫根牡蠣湯)。ちなみに北米インデイアンはセイヨウムラサキ(L.officinale)の全草を避妊の目的で煎じて服用している。

金曜日, 3月 01, 2013

地骨皮

○地骨皮(じこっぴ)

 本州以南、朝鮮半島、台湾、中国などに分布するナス科の落葉低木クコ(Lycium chinense)の根皮を用いる。クコの果実は枸杞子、葉は枸杞葉といい薬用にする。枸杞葉はクコ茶、枸杞子はクコ酒としても親しまれている。

 クコの根皮にはベタイン、シトステロールなどが含まれ、血糖降下作用、解熱作用、降圧作用などが認められている。枸杞子は滋養薬として知られるが、地骨皮は去熱を冷ます作用がある。

 漢方では清熱涼血・清虚熱・止血の効能があり、滋養作用のある解熱薬として結核などの慢性的な微熱や体力の低下に用いられるほか、盗汗、咳嗽、吐血、鼻血、血尿、糖尿病、高血圧などに応用される。吐血や血尿には新鮮な地骨皮の汁を用いることもある。

木曜日, 2月 28, 2013

刺五加

○刺五加(しごか)

 北海道、朝鮮半島根中国北部、シベリアに分布するウコギ科の落葉低木エゾウコギ(Acanthopanax senticosus)の根及び根茎を用いる。従来、エゾウコギは中国では五加皮の基原植物の一つとされていたが、近年、とくに刺五加あるいは五加参という名で区別され、黒龍江省で良品が栽培されている。ウコギには刺がないため、トゲのあるエゾウコギを刺五加という。

 1960年代、旧ソ連の保健省はエゾウコギの根の液状エキスを強壮薬として認可し、またソ連化学アカデミーの研究でも人参サポニンより優れていると発表して世界中で注目された。

 成分には各種ビタミン、ミネラルのほか、トリテルペノイド系配糖体のエレウテロサイドA~G、イソフラキシジン、クロロゲン酸、サポニン配糖体、多糖類などが含まれ、免疫力の強化、抗疲労、抗ストレス、鎮静、降圧、抗アレルギー作用、滋養強壮作用などが知られている。

 漢方では五加皮と同様に去風湿・強筋骨・強壮の効能があり、リウマチなどによる関節痛や筋肉痛、腰や膝の筋力低下、インポテンツなどに用いる。製剤されたものに五加参精、狭心症、足腰の萎弱、性機能低下などに用いる。

月曜日, 2月 25, 2013

嗜好料

○嗜好料(しこうりょう)

 一般に刺激や芳香、爽快感、催酔性を楽しむためのもので、とくに栄養価や薬用的な目的を持たずに習慣的に利用されるものを嗜好料という。本来は宗教的、儀礼的な目的や、薬用的な意味を持ったものが、いつの間にか嗜好品になったものがほとんどである。ガムや噛みタバコのような噛み料、タバコなどの嗅ぎ料がある。

 現在、世界中で利用されている嗜好料にはアジア原産の茶、エチオピア原産のコーヒー、南アメリカ原産のタバコやカカオなどがある。また東アフリカ海岸部からインド、東南アジア、オセアニアにかけては檳椰子を石灰にまぶし、キンマの葉で包んで噛むという、ベテル・チューイングの習慣がある。そのほか南アメリカにはモチノキ科のマテの葉を乾燥したマテ茶、ムクロジ科の種子を砕いて練り固めたガラナを飲料として飲む風習、またコカの葉を噛む習慣がある。

 中東のイエメンやソマリア、エチオピアなどでは、興奮作用のあるカーと(アラビアチャノキ)を集まって噛む風習がある。西アフリカにはアオギリ科の高木、コーラの実を噛み砕いて食べる習慣がある。またオセアニア地域にはコショウ科の低木、カバカバ(カワカワ)の根を乾燥させ、砕いて混ぜて搾り出したものを飲む習慣がある。

土曜日, 2月 23, 2013

紫梗

○紫梗(しこう)

 インドやビルマなどに産するカイガラムシ科(アリマキ科)のラックカイガラムシ(Laccifer lacca)が樹木に分泌した膠物質を用いる。中国でも雲南省や四川省に産し、一般に紫草茸といわれている。日本ではこれを没薬あるいは花没薬といい、正倉院にも没薬の名で収蔵されている。

 ラックカイガラムシの雄は体長2~3mmくらいで朱紅色をしているが、雌には肢がなく円球状をしている。孵化した後に寄生している樹木の枝葉に集まり、雌は樹液を吸って紫色の膠質のものを分泌する。最初は半流動体であるが、乾燥すると固くなる。次第に枝はこの膠質物質で取り巻かれ、十分に形成された頃に収穫する。これをスティック・ラックといい、紫梗として用いる。

 外観は紫色で堅く、熱にあうと軟化して粘る。これからアルカリ性水溶液で抽出された赤色染料はラック色素(胡臙脂)であり、絵の具や食品の着色料などに用いられる。残りを精製したものからセラックができるが、これはワニスや絶縁材料、錠剤などのコーティング剤として用いられる。紫梗の色素成分はアントラキノン化合物の一種であるラッカイン酸である。

 漢方では清熱解毒の効能があり、麻疹や斑疹、月経過多、帯下などに用いる。粉末を外用薬として出血や湿疹、潰瘍に用いる。近年、紫梗エキスが皮膚ケラチノサイトからのサイトカイン産生を抑制し、皮膚症状を改善する効果があると報告されている。ちなみに中南米ではウチワサボテンに寄生するエンジムシ(臙脂虫:コチニールカイガラムシ)に由来するコチニール色素が染料などとして同様に利用されている。

金曜日, 2月 22, 2013

使君子

○使君子(しくんし)

 熱帯アジアに分布するシクンシ科のつる性常緑低木シクンシ(Quisqualis indica)の果実を用いる。日本では石垣島や西表島などで植えられ、半野生化している。果実の形はクチナシに似て紡錘形で五稜を有し、中に紡錘形の種子がひとつ入っている。

 種子にはキスカル酸カリウムが含まれ、薬理的に駆虫作用および皮膚真菌の抑制作用が認められている。漢方では駆虫・消積の効能があり、寄生虫症や消化不良、疳積などに用いる。毒性が少なく甘い味なので古くから小児の駆虫薬としてよく知られ、単独あるいは檳椰子と配合して回虫症などに用いる。多量に服用すると悪心や眩暈の服作用が現れる。また服用時に熱い茶で飲むと下痢を起こす。

 寄生虫症で壁土などを欲しがるときには黄芩・胡黄連などと配合する(治小児愛吃泥方)。小児の疳積といわれた寄生虫症や消化不良症などの治療薬として肥満丸や如聖丸が中国ではよく知られている。

木曜日, 2月 21, 2013

紫金牛

○紫金牛(しきんぎゅう)

 日本全土や朝鮮半島、中国に分布するヤブコウジ科の常緑小低木ヤブコウジ(Ardisia japonice)の茎葉を用いる。日本の民間薬ではヤブコウジの根を用いる。中国では根を紫金牛根というが、茎葉を薬用とすることが多い。冬に赤い実をつけるので盆栽として、また正月の床の間に飾る植物として親しまれている。

 成分にはベンゾキノン誘導体のラパノン、ベルゲニンなどが含まれ、ラパノンは回虫、条虫に対して強力な殺虫作用があり、ベルゲニンは鎮咳作用が報告されている。紫金牛は中国の民間薬として有名で、かつては牛馬の駆虫薬として知られていた。

 中国医学では止咳・利水・活血の効能があり、慢性気管支炎や肺結核などによる咳嗽のほか、黄疸、膀胱炎、慢性腎炎、下血、打撲傷などにも用いる。咳嗽や喘息などに用いる中成薬の中に平地木の名でしばしば配合されている。

 日本では胸の痞えを捕る効能があるとして消化不良や腹痛に用いたり、湿疹や腫れ物、膀胱炎、咳止めなどに用いる。小児の頭にできた湿疹に煎液で患部を洗う方法もある。

水曜日, 2月 20, 2013

ジギタリス

○ジギタリス

 ヨーロッパ南部原産のゴマノハグサ科の多年草ジキタリス(Digitalis purpurea)の葉を乾燥させたものを用いる。一般に内服には葉を粉末にしたジギタリス末を用いる。

 和名のキツネノテブクロという名は英語のフォックス・グローブ(Fox-glove)を訳したものである。日本には明治12年に薬用として渡来したが、赤紫色をした釣鐘状の多数の花が連なって咲くので観賞用としても栽培されている。

 1775年、英国で民間療法によって改善した浮腫の症例からウィザリング博士がジギタリスに利尿作用のあることを発見した。ジギタリスの葉にはプルプレアグリコシドA・Bの形で存在するが、採取後にそれが酵素により分解されてジトキシンなどの強心配糖体を生じる。

 ジギタリス強心配糖体には心筋に直接作用して収縮力を強め、排出量を増やし、脈拍数を減少させる作用がある。かつてうっ血性心不全にはジギタリス末が用いられていたが、今日では有効成分が抽出され、錠剤や注射剤の形で強心利尿薬として用いられている。

 ジギタリスは劇薬に指定されている薬物である。適量を間違えると危険である。中毒症状には黄視症、嘔吐、不整脈、頻脈、頭痛、眩暈、耳鳴り、痙攣などがあり、さらには心停止を来たして死亡することもある。ジギタリスのほか強心配糖体を有する植物としてスズラン(鈴蘭)、フクジュソウ(福寿草)、キョウチクトウ(夾竹藤)、オモト(万年青)、トウワタなどがあり、一般に有毒植物として扱われている。

火曜日, 2月 19, 2013

糸瓜絡

。○糸瓜絡(しからく)

 ウリ科のヘチマ(Luffa cylindrica)のよく熟した果実の網状繊維を糸瓜絡という。枯れた果実をとり、揉んで外皮と果肉を取り去ったり、水に長く漬けて果皮と果肉を腐らして洗い流し、種子を除いて日干しにして網状の繊維だけを残す。これはヘチマたわしと同じもので、そのまま垢すりやタワシの代わりに用いることができる。成分にはキシランおよびセルロースが含まれる。

 漢方では去痰・止痛・活血・消腫の効能があり、気管支炎や肺炎による咳嗽や打撲、捻挫による腫張疼痛、リウマチなどによる関節痛に用いる。また乳が腫れて痛むときや下血、痔出血などの出血に糸瓜絡を黒焼きにしたものを服用する。

月曜日, 2月 18, 2013

紫河車

○紫河車(しかしゃ)

 ヒトの胎盤を乾燥したものを用いる。人胞・胞衣・胎衣・混沌衣・佛袈裟・混元衣などの別名もある。また新生児の臍帯も利用されることがあり、生薬名を坎気という。紫河車は健康な産婦の分娩時に排出された胎盤の血管を切り、何度も水で洗い、煮たり、蒸したりした後に乾燥したものである。

 薬材は直径10~15cmくらいの皿状で、一面は全体が凹凸があり、もう一面は半膜に覆われて平滑で、中央に臍帯の残りがある。かつて胎盤埋没療法が旧ソ連で研究され、リウマチやアレルギー疾患などに効果があると注目された。日本では医療用としてヒトプラセンタに由来する胎盤製剤(メリスロン注、プラセンタ注)が更年期障害や乳汁不足、肝機能障害の治療に用いられている。

 胎盤には糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル、核酸物質、ムコ多糖体、ヒアルロン酸、酵素類などが含まれ、そのほか、さまざまな活性ペプチド、細胞増殖因子(グロースファクター)、サイトカイン、ホルモン成分などが含まれている。ただし、製造中に数回の高圧蒸気滅菌などの工程があり、ホルモンなどは分解されていると説明されている。

 健康食品や化粧品に用いられているプラセンタエキスは、牛や豚などの胎盤から抽出したものであり、BSEの影響で、専ら豚プラセンタが利用されている。自律神経・内分泌調整、免疫賦活、基礎代謝向上、細胞の増殖再生、抗炎症・抗アレルギー、抗酸化、美白・保湿作用などが報告されている。

 漢方では補気・補血・補養の効能があり、不妊症、習慣性流産、インポテンツ、虚弱体質、結核、喘息、神経衰弱などに用いる。一般に滋養強壮薬として長期間服用すると効果がみられる。肺結核や慢性気管支炎、慢性腎炎など慢性の消耗性疾患には杜仲・亀板などと配合する(河車大造丸)。また坎気には補陽・止汗の効能があり、腎虚による喘息や盗汗に用いる。