スポンサーリンク

木曜日, 2月 14, 2013

糸瓜

○糸瓜(しか)

 熱帯アジア原産であるウリ科のつる性一年草ヘチマ(Luffa cylindrica)の新鮮で柔らかい果実を用いる。また果皮は糸瓜皮、果実内の繊維を糸瓜絡、種子を糸瓜子、茎の中の水は天羅水(和名:ヘチマ水)という。

 日本には江戸時代初期に渡来し、観賞用やヘチマたわし用などに栽培されている。熟した果実を水につけ、外皮や果肉を腐らせて洗い去り、乾かすとヘチマたわしができる。またヘチマの若い果実は似て食べられ、沖縄県や鹿児島では繊維の少ない品種を食用ヘチマとして栽培している。

 果実にはサポニン、苦味質のルフェイン、多量の粘液、シトルリン、ククルビタシンなどが含まれ、鎮咳作用や利尿作用がみられる。漢方では清熱・去痰の効能があり、熱病による口渇、化膿、痘疹、下痢、咳嗽、喘息、乳汁が出ないときなどに用いる。煎じて内服するだけでなく、焼いて灰にしたものを粉末にして服用する。また虫歯に乾燥粉末を擦り込む方法もある。

水曜日, 2月 13, 2013

紫苑

○紫苑(しおん)

 朝鮮半島から中国北部、モンゴル、シベリアにかけて分布するキク科の多年草シオン(Aster tataricus)の根を用いる。中国では軟紫菀ともいう。これに対しキク科のオタカラコウ(Ligularia fischeri)などの根を硬紫菀あるいは山紫菀といつて区別する。

 シオンは日本にも古くから伝えられ、平安時代にすでに観賞用として植えられており、また九州や中国地方では野生化している。一般に中国では薬用として、日本では観賞用として栽培されている。秋に直径2.5cmくらいの藤紫色の花が咲き、また根が紫色がかっているため紫苑という。朝鮮では若芽を煮て乾燥し、野菜として利用している。

 根にはサポニンのシオンサポニンやフリーデリン、シオノンなどが含まれ、薬理的に鎮咳・去痰作用、抗菌作用が認められている。漢方では止咳・去痰の効能があり、咳嗽や喘息、血痰、喉痺に用いる。おもに慢性の咳嗽に用い、とくに痰が多く、痰の喀出が悪かったり、血痰の混じるときに応用される。慢性気管支炎や気管支喘息などで呼吸困難や喘鳴のみられるときは射干・麻黄などと配合する(射干麻黄湯)。風邪や気管支炎などで咳嗽が強く、痰の多いときには百部・桔梗などと配合する(止嗽散)。

木曜日, 2月 07, 2013

地黄

○地黄(じおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を用いる。ジオウにはアカヤジオウ(R.glutinosa var.purpurea)とカイケイジオウ(var.hueichingensis)の2つの系統がある。

 カイケイジオウは河南省懐慶を主産地とする品種で、アカヤジオウよりやや大型であり、根の一部が肥大するという特徴がある。日本で単にジオウといえばアカヤジオウのことをいい、古名をサオヒメともいう。日本でも、古くはアカヤジオウが栽培されていたが、昭和30年代よりおもにカイケイジオウが栽培されるようになり、必要量のほとんどを国産品で賄っていた。しかし、現在では北海道、奈良、長野県などで僅かに栽培されているのみである。近年、武田薬品によってアカヤジオウとカイケイジオウを交配した新品種、フクチヤママジオウが開発されている。

 現在、日本市場に流通している地黄のほとんどは輸入品で、その多くは中国産の懐慶地黄である。ところで生薬としての地黄は、修治により生地黄、乾地黄、熟地黄に大別される。生地黄は採取後3ヶ月以内の新鮮な根のことで、乾燥した砂の中で保存したものであり、乾地黄は日干し、あるいは過熱した乾燥させたものであり、熟地黄は新鮮な根を酒などで蒸した後で乾燥させたものである。

 日本産の新鮮なものを生地黄というが、市場には出回っていない。現在、日本薬局方ではジオウのみ規定しているが、生地黄は流通しておらず、乾地黄と熟地黄の2種類が流通している。かつて日本漢方ではあまり熟地黄を用いなかったため、地黄といえば乾地黄のことを指す。一方、中国では生地黄と熟地黄が流通しているが、中国では生地黄を鮮地黄(鮮生地)と干地黄(干生地)に区別しており、中国で流通している生地黄と日本に輸入されている乾地黄は、ほぼ同じものと考えられている。ちなみに金匱要略では生地黄と乾燥地黄のみが用いられており、熟地黄は宋代の本草図経(1058)において初めて登場する。

 地黄の成分にはイリドイド配糖体のカタルポール、レオヌライド、レオニオサイド、糖類のスタキオース、マンニトール、アミノ酸のアルギニンなどのほか、βシトステロール、カロテノイドなどが含まれている。地黄エキスやカタルポールには血糖降下作用や緩下、利尿作用などが認められている。生地黄から熟地黄へ修治の過程でカタルポールなどのイリドイド配糖体が消失し、フェネルアルコール配糖体のアセトサイドやプロサイドが生成され、生地黄のスタキオースが分解して果糖などの単糖類が増加する。

 漢方的にも区別され、生地黄、乾地黄、熟地黄へ移行するにつれ、性味は苦甘から甘へ、大寒から微温へと変化し、効能に関しても生地黄は清熱・涼血、乾地黄は清熱・養血、熟地黄は滋陰・補血と移行する。

水曜日, 2月 06, 2013

雌黄

○雌黄(しおう)

 温泉や火山付近の低温熱水鉱脈に産出する硫化ヒ素鉱、雌黄(Orpiment)である。通常、雄黄や輝安鉱などとともに産する。

 雄黄と雌黄はいずれも硫化ヒ素であるが、雄黄はAs4S4であるのに対し、雌黄はおもに三硫化ニヒ素As2S3を含む。しかし従来、雄黄や雌黄、鶏冠石などの用語は混乱しているため、ここでは中薬大辞典の内容に従う。

 雌黄は全体がレモン色をした不規則な塊で、脆くて砕けやすく、特異な臭いがある。成分には三硫化ニヒ素が含まれ、抗菌・抗真菌作用が認められている。有毒であるため舐めてはならない。

 漢方では雄黄と同様に殺虫・解毒の効能があり、おもに粉末を外用薬として疥癬や頑癬、化膿疹、虫や蛇の咬傷などに用いる。また内服として胃痛、咳嗽、癲癇などの治療に丸剤が用いられていた。しかし現在では有毒のため薬としての使用が禁止されている。

火曜日, 2月 05, 2013

刺猬皮

○刺猬皮(しいひ)

 中国各地の山林や草原に生息しているハリネズミ科の動物、ナミハリネズミ(Erinaceus europaeus)あるいはダウリアハリネズミ(Hemiechinus dauuricus)の皮を用いる。

 これらハリネズミは夜行性でおもに昆虫や小動物を食べている。体長は約20cm、1.5~2cmの硬くて鋭いとげで背部が密に覆われている。敵にあうと体を丸めて、とげの球になる。

 冬眠時に捕獲しやすく、捕られたハリネズミの皮を剥ぎ、裏返して石灰を薄くまき、風通しのよいところで陰干しにする。一般に用いるときには炒めたものや焼いて灰にしたものを粉末にして用いる。

 漢方では収渋・止血の効能があり、嘔吐や下痢、腹痛、下血、遺精に用いる。とくに痔の治療薬として有名で、槐角・地楡などと配合する(舒痔丸)。

土曜日, 2月 02, 2013

三稜

三稜(さんりょう)

 日本の各地、東アジアにかけて分布し、池や沼などの浅い水中に生えるミクリ科の多年草ミクリ(Sparganium stoloniferum)やエゾミクリ(S.simplex)、ヒメミクリ(S.stenophyllum)の塊茎を用いる。しかし、中国東北部や内モンゴル自治区、西省などでは沼沢地の水中に生えるカヤツリグサ科の多年草ウキヤガラ(Scirpus fluviatilis)の塊茎を三稜として用いている。

 ミクリとウキヤガラはともに茎の断面が三角形である三稜という名があるが、花や葉はまったく異なる。これらを区別するため生薬名では荊三稜と黒三稜と呼ばれている。ところが、生薬名ではミクリ(植物名:黒三稜)のほうを荊三稜、ウキヤガラ(植物名:荊三稜)のほうを黒三稜といい、中国の植物名生薬名が全く逆になっている。

 三稜として日本ではウキヤガラがよく知られているが、中国ではおもにミクリが用いられている。また日本に輸入されている三稜もおもにミクリの荊三稜である。成分や薬理作用は明らかではないが、一般に区別されずに用いられる。

 漢方では活血・理気・消癥・止痛の効能があり、腹部の腫痛や腹痛、胸痛、月経障害、打撲傷などに用いる。主に瘀血や気結、食滞、積聚など滞って腫瘤になったものを除く、つまり「堅いものを削る」作用があるといわれている。

 三稜と莪朮とはともに消積の効能がありよく似ているが、活血・去瘀の作用は三稜が強く、理気・止痛の作用は莪朮が強い。両者を合わせると活血・理気の作用はさらに強まるため、しばしば併用される。

 小児で寄生虫などにより腹中にしこりが触れ、熱のみられるときには柴胡・胡黄連などと配合する(浄府散)。腹中にしこりが触れ、腹痛や腰痛のみられるときには陳皮・香附子などと配合する(大七気湯)。越中富山の名薬として知られる反魂丹に配合され、今日でも小児の疳虫などの家庭薬にも配合されている。

金曜日, 2月 01, 2013

山羊血

○山羊血(さんようけつ)

 中国東北部および内モンゴルの山中に生息するヤギに似たウシ科の動物ゴーラル山羊・青羊(Naemorhedus goral)の血を乾燥したものを用いる。ゴーラルは体長約1m、雄雌とも短いまっすぐな角を持ち、全体の色は灰褐色である。多くは高山の森林に棲み、山頂の岩場などでよく見かけられる。

 ゴーラルの角は山羊角、肉は山羊肉、肝臓は山羊肝として薬用にされる。山羊血は捕獲した後、抜いた血を鉢に入れて日干ししたものである。乾燥血は塊状または片状で、濃く褐色で光沢がある。水の中に少量の血を入れて、碗の底から糸状に上昇し、拡散しないものが本物とされている。

 漢方では活血・止血の効能があり、打撲傷や骨折、吐血や鼻血、狭心痛などの治療に用いる。一般に粉末にしたものを酒で服用する。ちなみに山羊角は小児のひきつけ、山羊肉は疲労や体力の低下、山羊肝は夜盲症の治療薬として知られる。

水曜日, 1月 30, 2013

山薬

山薬(さんやく)

 本州以南、台湾、中国大陸に分布するヤマノイモ科のつる性多年草ヤマノイモ(Dioscorea japonica)または中国中南部原産のナガイモ(D.opposita)の根茎を用いる。

 一般に野生のものはヤマノイモまたは自然生といい、中国から渡来した栽培品種補をナガイモという。サトイモに対して自然に山に生えているのでヤマノイモ、栽培されていないので自然生という。

 ナガイモは中世に日本に伝わり、しばしば野生化している。肥大した根茎はまっすぐ棒状に地中直下に伸び、その芋の部分は担根体に相当し、茎の根の中間的な性質を持っている。また葉腋にできるムカゴは零余子という。現在、八百屋で市販されているトロロイモは一般にナガイモであり、またイチョウイモやツクネイモなど芋の形が異なる栽培品種も出回っている。

 ナガイモは古くは薯蕷といっていたが、唐の代宗の諱である預をさけて薯薬と呼ばれ、宋の英宗の諱である曙を改めて山薬といわれるようになった。また中国の河南省で産するものは集荷地の懐慶府にちなんで懐山薬または淮山薬と称されている。

 成分には多量のデンプンと粘液質のマンナンのほか、糖類やアミノ酸、コリン、アラントイン、グルコサミンが含まれる。漢方では脾胃や肺、腎を補う効能があり、下痢や咳嗽、糖尿病の治療、さらに滋養薬として胃腸虚弱や体力低下の改善に用いる。民間でもヤマノイモを焼酎に漬けた山薬酒が滋養薬として知られている。また零余子も滋養強壮薬として用いる。

火曜日, 1月 29, 2013

山扁豆

○山扁豆(さんへんず)

 沖縄県や世界の熱帯から亜熱帯にかけて分布するマメ科の一年草リュウキュウカワラケツメイ(Cassia mimosoides)の全草を山扁豆という。日本では日本各地に分布するマメ科のカワラケツメイ(C.nomame)の果実をつけた全草を山扁豆と称している。

 リュウキュウカワラケツメイはカワラケツメイとよく似た植物であるがね果実はカワラケツメイよりも細長い。山扁豆には清熱・解毒・利湿の効能があり、黄疸や下痢、浮腫、疳積などに用いる。外用として腫れ物やかぶれ、咬傷などに用いる。

 一方、カワラケツメイの全草を中国では水皂角という。この全草にはクリソファノール、エモジンなどのアントラキノン類やルテオリン、ビテキシンなどのフラボノール類が含まれ、利尿・緩下の作用がある。

 近年、カワラケツメイに含まれているポリフェノール(カシアノール)に脂肪分解酵素、膵リパーゼを阻害する作用が見出され、ダイエット効果が注目されている。日本の民間ではカワラケツメイの全草を刻んで煎じたものを弘法茶、浜茶、豆茶といい、便秘や浮腫、消化不良などに効果のある健康茶として利用している。また目ヤニや充血、疲れ目などに煎液を洗眼薬として用いる。中国では水皂角に明目・利水の効能があるとして、夜盲症、片頭痛、浮腫などに用いると記載されている。

月曜日, 1月 28, 2013

山菜

○山菜(さんな)

 インド、マレー半島原産で中国の南部に産するショウガ科の多年草バンウコン(Kaempferia galanga)の根茎を用いる。日本には江戸時代に渡来して、観賞用に栽培されている。日本のバンウコンは蕃欝金と書き、南蛮から渡来したウコン(欝金)という意味である。同じショウガ科の日本のサンナ(Hedychium spicatum)という植物があるが、これは別の植物である。

 バンウコンは東南アジアで広く栽培され、地下茎はカレー粉の原料などの香辛料、食用色素などに用いられている。また線香の薫香料としても利用されている。地下茎は塊状で芳香があり、辛味がある。

 根茎にはボルネオール、ケイアルデヒド、カンファン、ケンフェロールなどが含まれ、抗真菌作用や消炎作用が知られている。漢方では温裏・消食・止痛の効能があり、冷えによる腹痛や消化不良、歯痛の治療に用いる。

土曜日, 1月 26, 2013

山茶花

○山茶花(さんちゃか)

 本州、四国、九州、沖縄県、朝鮮半島や中国に分布するツバキ科の常緑高木ツバキ(Camellia japonica)などの花を用いる。一般に蕾がふくらんで花が咲こうとする直前に採取する。

 山茶花と書くと日本ではサザンかと読むが、中国語ではツバキのことであり、サザンカの漢名は茶梅と書く。また椿と書けば、中国語ではセンダン科のチャンチンのことを指す。

 ツバキの種子には35~45%の脂肪油やサポニンが含まれ、わが国特有の椿油として毛髪油、刀剣油、食用油、軟膏や軟膏基材に利用されている。花にはロイコシアニジンやタンニンのカメリインA、Bなどが含まれている。漢方では止血の効能があり、鼻血、下血、性器出血などに用いる。

金曜日, 1月 25, 2013

酸棗仁

○酸棗仁(さんそうにん)

 中国原産と推定されるクロウメモドキ科の落葉小高木、サネブトナツメ(Zizphus jujuba)の成熟種子を用いる。ナツメ(var.inermis)よりもすっぱいので酸棗といい、種子が大きいのでサネブトナツメという。

 サネブトナツメはナツメの母種で枝にトゲが多く、葉や果実はナツメよりも小さい。ナツメは果肉を大棗として用いるが、サネブトナツメは種子を酸棗仁として用いる。

 種子の成分にはベツリンやベツリン酸、サポニンのジュジュボシドA・Bなどが知られ、煎液には鎮静・催眠作用や鎮痛、抗痙攣作用、抗ストレス作用などが報告されている。漢方では肝を養い、心を寧んじ、精神を安定させ、汗を収斂する効能があり、古くから鎮静・安眠薬として用いている。

 酸棗仁の安眠作用は継続的な服用により次第に効果が発揮され、麻酔作用や中毒作用はない。一説によると炒して用いると不眠を治すが、生で用いると多眠を治すといわれており、吉益東洞は酸棗仁を不眠症とは逆の嗜眠症に用いて治療したという話もある。また発汗過多を抑制する作用もある。

木曜日, 1月 24, 2013

山豆根

○山豆根(さんずこん)

 中国南部に分布するマメ科の低木広豆根(Sophora subprostrata)の根を用いる。日本ではかつてマメ科のミヤマトベラ(Euchresta japonica)の根を山豆根として用いていたが、これは誤りである。また中国北部の地方ではツヅラフジ科のコウモノカズラ(Menispermum dauricum)の根を山豆根あるいは北豆根と呼んでいる。

 広豆根の成分にはマトリン、アナギリンなどのアルカロイド、ソフォラジンなどのフラボノイド、そのほかシトステロール、ルペオールなどが含まれている。ソフォラジンを基本として開発されたのが胃粘膜保護作用のあるソフォルコン(ソロン)である。

 漢方では清熱解毒・利咽の効能があり、咽頭の腫痛、歯肉の腫痛、黄疸、痔疾、腫れ物などに用いる。咽頭や歯肉が晴れて痛むときに単独であるいは射干・牛蒡子などと配合して用いる。梅毒などによる咽頭の腫痛には桔梗・土茯苓などと配合する(喉癬湯)。また口内炎や痔などの外用薬としても用いられる。近年、中国では抗癌薬として研究されており、肺癌・喉頭癌の初期治療に用いられている。

水曜日, 1月 23, 2013

山椒

○山椒(さんしょう)

 日本の北海道から九州、朝鮮半島の南部に分布するミカン科の常緑低木サンショウ(Zanthoxylum piperitum)およびアサクラザンショウ(Z.piperitum f.inerme)の果皮を用いる。種子は淑目という。中国では同属植物の果皮を花椒として用いるが、これを日本ではサンショウに代えて用いる。しかし、近年では中国産の花椒が、日本薬局方で規定されている山椒の代わりに利用されることもある。

 アサクラザンショウは兵庫県の朝倉で偶然発見されたサンショウの品種で、ほとんど刺がなく果実が大きいため日本各地で栽培されている。サンショウの木材は硬く、すりこぎに賞揚されている。サンショウは日本固有の香辛料で、春先の新芽や若い葉は「木の芽」、花は「花ざんしょう」、青い果実は「実ざんしょう」、熟した赤い果実は粉にして「粉ざんしょう」とさまざまに用いられている。

 果実は完熟すれば辛味が少なくなる。しかし未熟なときは辛味が強いが、乾燥しても種子が出ない。このため品質には採取時期が重要である。薬用には果柄や種子がよく除かれているものを用いる。また辛味成分は保存期間が長くなると減少するので注意を要する。

 果実には精油成分のリモネンやシトロネラール、辛味成分のサンショールやサンショウアミド、痙攣毒のキサントキシンなどが含まれる。キサントキシンは魚類に強い痙攣を起こすが、他の動物に対する毒性は弱い。辛味成分には殺虫作用や局所刺激作用のほか、健胃、整腸、利尿作用が認められている。山椒は一般薬にも芳香辛味性健胃薬や苦味チンキの原料として利用されている。

 漢方では温裏・止痛・駆虫の効能があり、冷えによる腹痛や下痢、回虫症などに用いる。また湿疹や掻痒症、ひび、あかぎれに煎液を外用する。漢方処方で蜀椒とあるのは中国では花椒を用いるが、日本では山椒に代えて用いている。山椒のほうが花椒よりも良質とされているが、現在では薬用や食用としてカホクザンショウ(花椒)やイヌザンショウ(Z.shinifolium)の果実が輸入されている。ちなみに打ち身や捻挫の外用薬として知られる楊柏散にはイヌザンショウの葉のついた枝を乾燥して粉末にしたものが配合されている。

火曜日, 1月 22, 2013

山茱萸

山茱萸(さんしゅゆ)

 中国や朝鮮半島に分布している落葉小木ミズキ科のサンシュユ(Cornus officinails)の果肉を用いる。この核には毒があるので、取り除いた果肉を用いる。

 日本には江戸時代に朝鮮から伝えられ、観賞用として庭園などに植えられている。早春に黄色い花が咲くためハルコガネバナという和名もあり、秋には真っ赤なグミに似た果実がなり、生食できる。

 成分にはイリドイド配糖体のモロニサイド、スウェロシド、ロガニン、ウルソール酸、タンニンなどが含まれ、山茱萸のエキスでは抗糖尿病作用や免疫賦活作用などが知られている。

 漢方では肝腎を補い、固精・止汗の効能があり、性機能低下などの強壮薬として、また足腰の痛みや眩暈、夜尿などの治療に用いる。民間では酒に漬けた山茱萸酒が滋養強壮の薬酒として知られている。なおミカン科の呉茱萸とは植物的には関係がない。

月曜日, 1月 21, 2013

蚕沙

○蚕沙(さんしゃ)

 カイコガ科のカイコ(Bombyx mori)の幼虫の糞の乾燥したものを用いる。ときに秋蚕(晩蚕)の糞が重用されたため晩蚕沙という名もある。

 2~3mmぐらいの青黒い顆粒状のもので、質は硬いが容易に溶け、砕くと青臭さがある。カイコの糞は薬用だけでなく、家畜の飼料や活性炭や樹脂、塗料、鉛筆の芯などにも応用され、かつては人口の砥石の原料としても利用された。

 糞の製粉にはヒスチジンやロイシン、リジンなどのアミノ酸、ビタミンA・B、尿酸、リン酸などが含まれている。漢方では去風湿・活血・止痛の効能があり、四肢の関節痛や麻痺、腹痛や下痢、皮膚掻痒症などに用いる。関節リウマチで関節が痛み、湿熱証の強いときには防已・薏苡仁などと配合する(宣痺湯)。また結膜炎などの炎症に外用薬として用いる。

土曜日, 1月 19, 2013

三七

○三七

 雲南省から広西省にかけての限られた地域に産するウコギ科の多年草サンシチニンジン(Panax notoginseng)の根を用いる。呼称にはいくつかあり、三七人参、あるいは田三七、田七などと呼ばれている。また非常に高貴な生薬なので金不換という名もある。

 田というは産地が広西省田陽、田東のためであり、三七というのは地上葉が3つの葉柄にそれぞれ7枚の葉がつくことによる。人参や竹節人参と同じウコギ課のよく類似した植物である。三七は本草綱目に初めて収載された比較的歴史の浅い生薬であるが、民間では古くから金瘡の要薬として用いられ、止血の神様ともいわれている。

 漢方では止血・化瘀・消腫・止痛の効能があり、外傷による出血や内出血、消化性潰瘍の出血や疼痛、性器出血などに用いる。用法としては煎じたり、粉末にした服用したり、患部に塗布する。近年では冠不全や急性・慢性肝炎の治療薬として注目されている。

 三七の配合された製薬としては、外傷による出血、疼痛に用いる雲南白薬、急性・慢性肝炎の治療薬として知られる片仔癀がある。ベトナム戦争時にはアメリカ兵の間でも雲南白薬が評判となり、世界中に知られるようになった。

金曜日, 1月 18, 2013

山梔子

山梔子(さんしし)

 日本、台湾、中国に分布するアカネ科の常緑低木コリンクチナシ(Gardenia jasminoides)の果実を用いる。果実が秋を過ぎても口を開けないことから口無しと呼ばれ、実の形が巵という底の丸い酒杯に似ているため梔子の名がある。

 中国ではコリンクチナシの果実を梔子といい、クチナシ(G.jasminoides var.frandiflora)やコクチナシ(G.jasminoides var.radicans)などの大型で長めの果実をとくに水梔子という。水梔子は、一般に染料に用いて薬としては劣るものとされている。日本ではクチナシは飛鳥時代から黄色染料として知られ、無毒のためにきんとんや沢庵漬けなど食品を染めるのにも用いられている。

 果実にはイリドイド配糖体のゲニポシド、ガルデノシド、カロテノイド色素のクロシン、クロセチン、そのほかシトステロール、ノナコサン、ノン似トールなどが含まれている。近年、クロセチンは目の毛様体に作用して、眼精疲労を改善し、老眼に効果があると期待されている。

 山梔子の煎液には利胆、鎮静、降圧作用、抗真菌作用があり、またゲニポシドには利胆作用や鎮痛作用がある。漢方では清熱燥湿・清熱解毒・除煩・退黄の作用があり、感染症や炎症、煩躁や黄疸、出血などに用いる。また外用薬として打撲や捻挫に生山梔子の粉末を、痔の炎症に山梔炭を用いる。

木曜日, 1月 17, 2013

山慈姑

○山慈姑(さんじこ)

 日本の全国各地に広く分布するラン科の多年草サイハイラン(Cremastra appendiculata)などの鱗茎を用いる。茎の一方法に花をつけるためサイハイ(采配)の名がある。

 この鱗茎は焼いたり、茹でて食用にされることもある。またユリ科のアマナ(Tulipa edulis)の鱗茎も山慈姑というが、光慈姑として区別して扱われることもある。日本では江戸時代にオランダ医学から伝えられたラン科の植物(Orchis morio)などの根、サレップ根の代用にサイハイランの鱗茎を用いたこともある。サレップ根は粘滑薬といわれ、ひびやあかぎれ、胃炎の治療薬である。

 山慈姑にはマンナンなどの粘液やデンプンが含まれる。漢方では清熱解毒・消腫の効能があり、腫れ物や蛇や虫の咬傷に用いる。また頸部リンパ結核や耳下腺炎などにも効果がある。瘟疫による嘔吐や下痢、咽喉腫痛、痰鳴、小児のひきつけなどの治療に用いられる紫金錠に麝香・朱砂などと配合されている。近年、中国では食道癌や乳癌、リンパ肉腫なとべの臨床効果が研究されている。

水曜日, 1月 16, 2013

山蒜

○山蒜(さんさん)

 日本各地、朝鮮半島、中国に分布するユリ科の多年草ノビル(Allium grayi)の全草を用いる。ノビルとは野のヒル(蒜)という意味で、ヒルとはネギやニンニクなど口の中に入れると辛味があるものの総称である。

 日本で春の山菜として古くから食用にされ、酢味噌和えや雑炊などに用いる。日本の民間流法では強壮・強精の効果があるとされ、鱗茎の部分を焼酎に漬けて薬用酒にしたり、黒焼きにして扁桃炎や咽頭痛、咳嗽などに用いる。生の葉の汁は傷口や毒虫に刺されたときに外用し、打ち身や火傷には鱗茎をすりおろして貼る。