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火曜日, 12月 18, 2012

胡麻

○胡麻

 アフリカ大陸が原産と推定され、世界各地で栽培されているゴマ科の一年草ゴマ(Sesamum indicum)の成熟種子、つまり食用にされるゴマの乾燥したものを用いる。紀元前1世紀に張騫によって西域(胡)から中国に伝えられたといわれ、現在では中国が世界一の産国である。

 一般に中国では胡麻といわず、芝麻あるいは脂麻という。日本でも奈良時代には栽培され、食用や薬用、灯火用にも使用された。ゴマは種子の色によって黒ゴマ、白ゴマ、黄ゴマなどがあるが、薬用には黒ゴマが用いられる。

 種子は脂肪とタンパク質が豊富で、含油率は40~55%もあり、炒って砕いた後に蒸して圧搾すれば風味のよいゴマ油が得られる。種子には脂肪酸としてオレイン酸やリノール酸が多く含まれるほか、カルシウム、鉄分、γ-トコフェロールやセサミン、セサモリン、セサモール、セサミノールなどのリグナン化合物などが含まれている。

 ゴマリグナンの大半を占めるセサミンには抗酸化作用、アルコール分解促進作用、血中コレステロール低下作用などが認められている。ゴマ油が植物油に比較して酸化変敗しにくいのは、強力な抗酸化作用があるセサミノール、セサモールなどによることが知られている。またゴマペプチドには降圧作用があり、特定保健用食品の成分として認められている。ただ、生ゴマの種皮は硬くて消化されないため、砕いて用いる。

 漢方では補陰・潤腸・補肝腎の効能があり、虚弱体質や高齢者、病後、腸燥便秘などに用いる。老人性皮膚掻痒症などには当帰・地黄などと配合する(消風散)。高齢者のめまい、視力の低下には何首烏・杜仲などと配合する(首烏延寿丹)。また胡麻油は紫雲膏や中黄膏などの軟膏基剤として用いられている。

月曜日, 12月 17, 2012

牛蒡子

○牛蒡子(ごぼうし)

 ヨーロッパからシベリア、中国東北部にかけて分布するキク科の越年草ゴボウ(Arctium lappa)の種子を用いる。

 日本にゴボウの野生種はないが、千数百年前に中国から渡来し、日本で改良されて作物化した。ゴボウの根は日本独特の野菜で、日本人以外はほとんど利用しない。ヨーロッパでは新葉をサラダに用いる。

 種子には脂肪油のほか、リグナン系誘導体のアルクチゲニンやアルクチインが含まれ、最近ではアルクチゲニンの抗腫瘍作用が注目されている。欧米ではゴボウの根をバードック(Burdock)と呼び、血液の浄化や発汗、解毒、利尿の作用があるとして感冒、関節炎、リウマチ、皮膚疾患、浮腫などに利用し、根から抽出されたオイル(Bur oil)はフケや頭皮の痒みの治療に用いられている。

 漢方では疏散風熱・去痰・止咳。解毒の効能があり、涼性の解表・解毒薬として風熱型の感染症や扁桃炎、麻疹の初期、咳嗽、皮膚化膿症などに用いる。ただし牛蒡子には寒で滑利の性質があり、下痢気味のものには用いないほうがよい。日本の民間では生の根の汁が痰が咽に絡んだときや胃の痛みに用いたり、生の葉の汁を関節腫痛や腫れ物に用いる。

土曜日, 12月 15, 2012

牛皮消根

○牛皮消根(ごひしょうこん)

 日本の各地、南千島などに分布するガガイモ科のつる性多年草イケマ(Cynanchum caudatum)の根を用いる。北海道や新潟の山野林中に産し、イケマとはアイヌ語の「大きな根」という意味で、アイヌの霊草として知られている。

 有毒植物であるが、アイヌは若苗や根を水にさらし、煮て食用にしていたほか、薬用として食中毒や腹痛、感冒、切り傷などの治療に用いていた。ところが生馬という漢字を用いたため馬の治療薬という誤解が生じたこともある。

 イケマの根には強心配糖体やシナンコゲニンなどをアグリコンとする配糖体が多く含まれ、強心利尿作用がある。茎を切ると白い乳液が出るが、この茎を食べるとよだれが出て嘔吐し、さらに痙攣を引き起こす毒性がある。この有毒物質はシナンコトキシンという。近年、これに含まれるプレグナン配糖体の免疫増強作用や抗腫瘍作用が発表されている。

 浅田宗伯によれば牛皮消には和血・止痛の効能があり、打撲、出血に用いるほか、帯下の奇方としても用いていた。華岡青洲は八珍湯に牛皮消・川骨を加えた調栄湯を金創などの出血に用いた。また会津地方ではカラス退治にイケマの根を団子に入れて用いたと伝えられている。一般に利尿薬として用いられるが、毒性が強いため現在はほとんど使われない。

金曜日, 12月 14, 2012

琥珀

○琥珀(こはく)

 古代マツ科やスギ科植物の樹脂が長い期間、地中に埋没して凝結し、化石となったものを琥珀という。産地としてバルト海の沿岸地方が最も有名で、中国の撫順やドミニカ共和国、日本では岩手県の久慈地方がよく知られている。江戸時代には琥珀のことを薫陸香と読んでいたこともある。

 粘土層や砂層、炭層、堆積岩の中に産する黄褐色~赤褐色の塊状で、透明及び不透明、断面は貝殻状で光沢があり、中には昆虫などが混入していることもある。燃やすと容易に溶け、芳香を放ち、また有機媒体などにも溶ける。一般に装飾品の原石として有名である。

 成分にはアビエチン酸やコハク酸などが含まれ、コハク酸の名はコハクの乾留によって初めて得られたことに由来する。漢方では定驚・安神・利水・通淋・活血の効能があり、不眠症や神経症、痙攣、排尿障害、無月経、腹部腫瘤などに用いる。

 産後の浮腫には商陸・猪苓などと配合する(琥珀湯)。腹水や下肢の浮腫が著明で、尿が出ないときには五苓散に滑石などと加える(茯苓琥珀散)。精神が不安定で不眠や動悸がみられるときに遠志・羚羊角などと配合する(琥珀多寐丸)。

木曜日, 12月 13, 2012

五倍子

○五倍子(ごばいこ)

 ウルシ科のヌルデの葉に寄生しているアブラムシ科のヌルデシロアブラムシ(ヌルデノミミフシ)などが樹木に作った虫癭(虫こぶ)を用いる。

 このアブラムシは幼虫で越冬し、翌年の春に羽化してヌルデの木に産卵する。そこで雌雄の無翅雌虫を産み、これらが交尾した後さらに無翅雌虫を産み、この雌虫がヌルデの若葉に寄生する。その汁液を吸う刺激のため葉の組織が次第に増殖し、虫癭を形成する。その中で雌虫は単性生殖を行って仔を産み、それが秋に有翅雌虫となって飛散する。

 秋に虫の入ったまま採取し、熱湯で数分煮たのち乾燥する。日本では虫癭を一般に木附子、また加熱して乾燥したものを白附子、熱湯を通したものを黒附子ともいう。

 成分には多量のタンニンが含まれ、タンパク質と結合して凝固し、止血、止瀉、抗菌作用が認められる。工業的にはなめしや黒色染料、インク製造原料などに用いられる。かつて日本には五倍子の粉末を鉄汁で黒く発色させたもので歯を染める御歯黒の風習があった。

 漢方では収斂・固渋薬として止瀉・止咳・止汗・止血の効能があり、慢性の下痢や咳嗽、脱肛、盗汗、鼻出血や痔出血に用いる。かつて五倍子の粉末に茶を加えて麹で発酵させた百薬煎が止瀉薬として用いられた。

水曜日, 12月 12, 2012

胡桃仁

○胡桃仁(ことうにん)

 西アジア原産のクルミ科の落葉高木ペルシャグルミ(Juglansregia)の種仁を用いる。種仁とはクルミの種子の子葉、つまり固い殻の中の可食部である。この未成熟果実の外果皮は胡桃青皮といい、また殻の中の薄い隔壁を分心木といって薬用にする。現在、ペルシャグルミはアメリカやヨーロッパをはじめ、日本の長野県や山形県など世界各地で広く栽培されている。この胡桃は漢の時代に張騫が西域から持ち帰ったといわれ、胡桃の名がある。

 日本には18世に朝鮮半島を経て、また明治初年にはアメリカから伝えられた。これとは別に日本全域からサハリンかけて同属植物のオニグルミ(J.mandshurica)やヒメグルミ(J.subcordiformis)が自生しており、これらの種仁も胡桃仁として用いる。

 胡桃仁は脂肪油を40~50%含み、その主成分はリノール酸のグリセリドである。またタンパク質や炭水化物、カルシウム、鉄、カロテンなども含み、栄養価に富む。漢方では止咳・潤腸・補陽の効能があり、高齢者や虚弱体質者の滋養薬として、また老人の喘息や咳嗽、腰痛、下肢倦怠、便秘などに用いる。

 高齢者など肺腎両虚の喘息や咳嗽には人参・生姜と配合する(人参胡桃湯)。腸燥便秘には単独あるいは麻子仁・当帰などと配合する。腎陽虚による足腰の衰えには杜仲・補骨脂などと配合する。腎結石による腰痛にも用いる。

 一般に滋養薬として用いるときには皮を除くが、喘息には薄皮をつけたまま用いる。なお分心木は収斂薬として遣精・帯下・頻尿などに、胡桃青皮は腹痛や下痢などに用いる。民間療法では未熟な果肉をすりおろして、水虫や湿疹に外用する。アメリカでは古くから先住民がクログルミ(ブラックウォルナット:J.nigra)の樹皮を殺菌・駆虫薬として、また整腸剤や皮膚病の治療薬として利用している。

火曜日, 12月 11, 2012

梧桐子

○梧桐子(ごとうし)

 日本の紀伊半島、伊豆半島、四国、九州、台湾、中国、インドシナに分布するアオギリ科の落葉低木アオギリ(Firmiana simplex)の種子を用いる。青桐は街路樹や公園樹としても利用される。

 種子は船状に開いた果皮の周辺に付着した直径が6~8mmぐらいの球形のもので、炒って食べることもできる。ちなみに梧桐子大といって古くから丸薬の大きさの基準とされていた。

 種子にはカフェインや不乾性油などが含まれている。漢方では健胃・消食の効能があり、消化不良や腹痛、小児の口内炎などに用いる。小児の口内炎には梧桐子は焼いて粉にしたものを貼付する。胃痛や下痢には炒ったものを煎じて服用する。

 また樹皮にはガラクタンやアラバンなどの粘液質が含まれ、コルク皮を取り去ったもの(梧桐子)を打撲傷やリウマチの関節痛、痔、丹毒などに用いる。しかし近年は日本でも中国でも余り用いられない。

月曜日, 12月 10, 2012

骨砕補

○骨砕補(こつさいほ)

 中国の南部や台湾などに自生しているシダ植物ウラボシ科のハカマウラボシ(Drynaria fortunei)などの根茎を用いる。そのほかの基原植物にはウラボシ科の中華槲蕨(D.baronii)、石蓮姜槲蕨(D.propinqua)、光亮密網(Pseudodrynaria coronans)のほか、シノブ科のシノブ(Davallia mariesii)や大葉骨砕補(D.orientalis)の根茎などが用いられる。

 ハカマウラボシの根は淡褐色ないし暗褐色で、黄褐色の毛のように柔らかい鱗片に覆われている。一般に根茎の鱗片を除去したものを骨砕補といい、毛状の鱗片をつけたままのものを猴姜とか、申姜という。骨砕補という名は骨折の治療に効果のあることに由来し、毛状の形から猴姜・申姜・毛姜などとも呼ばれている。

 成分にはナリンギンやナリンゲニンなどが含まれる。漢方では補腎・活血・強筋骨の効能があり、骨折や打撲、捻挫、腎虚の歯痛や耳なり、下痢、腰痛などに用いる。リウマチなどによる関節痛や運動障害に威霊仙・地竜などと配合する(舒筋活絡丸)。骨折・捻挫などの外傷には自然銅・シャ虫などと配合する(接骨Ⅱ号方)。また外傷の患部に骨砕補の粉末をワセリンに混ぜて塗布する。歯痛や歯肉炎には牛車腎気丸と一緒に服用したり、黒く炒めて粉にしたものを歯肉に擦り込む。

土曜日, 12月 08, 2012

胡荽子

○胡荽子(こずいし)

 地中海東部沿岸を原産とするセリ科の一~二年生コエンドロ(Coriandrum sativum)の果実を用いる。全草は生薬として芫荽と呼ばれる。現在、インドやロシア、モロッコ、東欧諸国、アメリカなどで栽培されている。

 胡荽子は香辛料のコリアンダーとしても知られ、独特の芳香がある。コリアンダーという名は、ギリシャ語で南京虫という意味のコリスに由来し、事実、若い果実にはカメムシのような臭いがある。ヨーロッパや南米、インドなどで果実が香辛料としてよく利用され、ピクルスやカレー粉、ソーセージなどに用いられている。

 古代ギリシャ・ローマ時代から医薬のひとつとしてよく使われ、消化不良や腹痛、めまい、腎臓病、胆石の治療のほか、中世には媚薬としても有名であった。中国には漢代に張騫が西域から持ち帰ったといわれ、種子を食べると不老不死が得られるという伝説がある。日本には9世紀頃に伝えられ、コニシと呼ばれたこともあるが、臭いが日本人に好まれなかったため普及しなかった。和名のコエンドロはポルトガル語のコエントロに由来している。

 果実に含まる精油の主要成分はd-リナロールで、そのほかリモネンやピネンなども含まれている。漢方では透疹・健胃の効能があり、発疹しにくい麻疹や天然痘、食欲不振、痔核などに用いる。歯痛には煎じた液を口に含んだり、痔疾患に乳香などと混ぜたものを焼いて患部を燻す方法がある。

金曜日, 12月 07, 2012

虎杖根

○虎杖根(こじょうこん)

 日本各地、朝鮮半島、台湾、中国などに自生するタデ科の多年草イタドリ(polygonum cuspidatim)の根と根茎を用いる。地方によってはスカンポやスイバとも呼ばれているが、一般にスイバといえば別のタデ科の植物のことをいう。

 春先に出る若芽には酸味があり、生のままや塩漬けにして食用にする。ただし、シュウ酸を多く含むため多食すると下痢や尿路結石の原因となることがある。戦時中には乾燥したイタドリの葉をタバコの代用にしたこともある。イタドリという名は「痛み取り」に由来するといわれ、中国では若い茎の紅紫斑を虎の模様に例えて虎杖という。

 成分にはアントラキノン誘導体のポリゴニンなどが含まれ、加水分解するとエモジンを生じる。また、赤ワインに含まれていたことで知られるポリフェノールの一種、レスベラトロールも多く含まれており、レスベラトロールの原料として利用されている。

 漢方では清熱解毒・止痛・退黄・活血の効能があり、関節痛や黄疸、生理不順、火傷などに用いる。リウマチなどによる関節の痛みや手足のしびれに桑枝・臭梧桐などと配合する(桑枝虎杖湯)。中国の報告では抗菌作用、特に緑膿菌に対する抗菌作用があり、火傷に虎杖の粉末を茶や食用油で練って患部に塗布する治療が行われている。

 また急性肝炎や新生児黄疸、気管支炎、骨髄炎などの治療効果も報告されている。民間では生の若芽を切り傷の薬として、また根を煎じて便秘や蕁麻疹などに用いる。

木曜日, 12月 06, 2012

呉茱萸

○呉茱萸(ごしゅゆ)

 中国の長江流域、広東省、海南省、広西チワン族自治区、陝西省などに分布するミカン科の落葉低木ゴシュユ(Evodia rutaecarpa)の成熟する少し前の未成熟果実を用いる。そのほかホンゴシュユ(E.officinalis)の果実なども利用される。

 呉茱萸は中国原産であり、呉というのは江蘇省一帯のことである。日本にも江戸時代に薬木として渡来し栽培されているが、雌株だけだったため種子のない果実しかできなかった。なお日本ではグミに茱萸の漢名を当てているが、これは誤用であり、中国で茱萸といえば呉茱萸あるいは山茱萸のことである。ちなみに中国ではゴシュユの種子から油を搾ったり、葉を黄色染料に用いている。

 薬用にされる未成熟果実は直径5mmくらいの小さな偏球形で基部に果柄がついている。独特の強い臭いがあり、味は辛くて苦い。呉茱萸の成分にはアルカロイドのエボジアミン、ルテカルピン、シネフリン、鎖状テルペンのエボデン、苦味成分のリモニン、芳香成分のオシメン、サイクリックGMPなどが含まれ、駆虫、抗菌、鎮痛、健胃作用などが知られている。近年、エボジアミンにカプサイシンと同様のバニロイド受容体を介した脂質代謝促進作用が認められ、肥満防止に効果があるとして注目されている。

 新鮮な果実は服用すると嘔吐を起こすこともあり、1年以上経過したものを用いる。また多量に服用すると咽に激しい乾燥感が生じる。漢方では呉茱萸は大熱の性質があり、厥陰肝経の主薬とされ、温裏・疏肝・止痛の効能がある。とくに虚寒による腹痛や脇痛の常用薬であり、嘔吐や頭痛などにも用いる。この効用は乾姜とよく似ているが、乾姜が上焦を温めるのに対し、呉茱萸は下焦を温めるといわれ、とくに下腹部痛や生理痛、下痢などに効果がある。民間では浴湯料として知られ、腰痛や冷え性などに用いられている。

火曜日, 12月 04, 2012

胡椒

○胡椒(こしょう)

 南インド原産のコショウ科の常緑つる性植物コショウ(Piper nigrum)の果実を用いる。コショウはすでに紀元前4~5世のヨーロッパで有名なスパイスの一つで、防腐効果や食欲増進の効果が知られていた。中世ヨーロッパでは金と同じくらいの価値があり、このためヨーロッパ列強諸国は東方へ進出し、大航海時代をもたらすこととなった。

 中国へはインド産のものが中央アジア経由で伝わり、西域(胡)の山椒に似た辛いものということで胡椒と呼ばれた。日本にも古くから伝えられ、奈良時代の文献には薬種として記載されている。現在、インド、スリランカ、東南アジア、ブラジルなどで栽培されている。

 コショウには黒コショウと白コショウの2種類があるが、未成熟の青い果実を数日間天日乾燥した黒くなったものが黒コショウであり、赤く成熟した果実を流水に漬けた後、果皮を取り去って乾燥したものが白コショウである。香味成分は果皮に多いため、芳香性と辛味は黒コショウのほうが強い。サプリメントやアロマでは辛味成分が多く含まれているブラックペッパー(黒コショウ)が用いられる。

 辛味成分はアルカロイドのピペリンやシャビシンであり、香気成分は精油の中のフェランドレンやピネン、リモネンなどである。ピペリンには、抗菌・防腐・殺虫作用、消化促進作用などがあり、血管を拡張し、血流を促進し、エネルギー代謝を高め、消費カロリーを増やす効果がある。また、黒コショウエキス(バイオペリン)にはビタミンやミネラルなど各種栄養素の吸収率を高める効果のあることが注目されている。

 漢方では温裏・止嘔・止瀉・解魚毒の効能があり、冷えによる腹痛や嘔吐、下痢、食中毒などに用いる。冷えによるシャックリには半夏・乾姜などと配合する(治吃逆一方)。胃寒による嘔吐や腹痛、下痢には硫黄などと配合する(澄涼丸)。小児の遣尿には補骨脂などと配合する(尿牀丸)。

月曜日, 12月 03, 2012

コケモモ葉

○コケモモ葉(こけももよう)

 本州、四国、九州では高山、北海道や北半球の寒帯・針葉樹林帯では低地に分布するツツジ科の常緑小低木コケモモ(Vaccinium vitis-idaea)の葉を用いる。中国では越橘葉という。

 コケモモの果実は未熟なときは赤くて酸味が強いが、熟すと赤紅色に変わって甘酸っぱくなるため、ジャムや果実酒の原料となる。古代ギリシャ時代から果実が赤痢に効果のあることが知られ、口内炎や腸内異常発酵にも用いられる。また漿果の色素であるアントシアニンは網膜の血管障害や夜間の視力低下に効果があるといわれている。

 葉には配糖体のアルブチン、メチルアルブチン、フラボノイドのイソクエルシトリン、ハイドロキノンなどが含まれ、利尿、防腐作用がある。コケモモ葉が日本で薬用植物と知られるようになったのは昭和初期で、本来はウワウルシ(クマコケモモ)の代用品として取り上げられ、膀胱炎や腎盂炎などの尿路感染症に用いられたが、味が悪いため最近ではあまり用いられない。

 ヨーロッパでは葉に熱湯を加えた浸出液を糖尿病の治療に用いている。また果実を漬けたコケモモ酒を疲労回復に用いる。日本では高山植物を保護する立場から、一般に高山帯での採取が禁止されている。

土曜日, 12月 01, 2012

虎耳草

○虎耳草(こじそう)

 本州以南、中国などに分布しているユキノシタ科の常緑多年草ユキノシタ(Saxifraaga stolonifera)の葉または全草を用いる。湿った所や岩場に生え、観賞用として庭先などにもよく栽培されている。一説に冬に雪の下にあっても葉が枯れないことからユキノシタといわれ、肉厚の毛深い葉の形から虎耳草の名がある。葉はテンプラにしたり、茹でて食べることもある。

 成分には硝酸カリウム、塩化カリウム、クェルシトリン、アルブチン、ベルゲニンなどを含み、抗菌作用や利尿作用が知られている。漢方ではあまり使用しないが、民間療法として日本でも中国でもよく知られている。

 清熱・解毒・涼血の効能があり、湿疹や皮膚化膿症、中耳炎、気管支炎、痔患などに用いる。湿疹や蕁麻疹、咳嗽、膿痰には煎じて服用する。ミミダレグサという方言もあるように、葉から搾った汁を化膿性中耳炎に点耳する。痤瘡や腫れ物に生葉の汁をつけたり、煎液で湿布する。葉を火であぶって貼り付けてもよい。

 子供のひきつけには生葉の搾り汁を口に含ませる。また痔の痛むときに乾燥させた虎耳草をくすべて患部に当てるという方法もある。近年、ユキノシタ全草のエキスに紫外線がもたらすDNA障害の修復を促進する効果が報告され、アンチエイジングや美白作用を目的とした化粧品に配合されている。

金曜日, 11月 30, 2012

虎骨

○虎骨(ここつ)

 大型哺乳度物であるネコ科のトラ(Panthera tigris)の骨を用いる。トラはアジアに広く分布しているが、中国東北地方にはシベリア虎とか満州虎と呼ばれている東北虎、華南地方には華南虎が生息している。

 トラは体長約2m、全身は橙黄色で黒の横縞があり、狂猛な性質でほかの獣類を捕食する。シベリア虎はやや大型で毛が長いのに対し、華南虎は小型で縞模様の幅が広い特徴がある。虎骨として全身の骨を薬用にするが、とくに脛の骨を虎脛骨として重んじる。なかでもシベリア虎の中年の雄が最良とされている。虎骨を長時間にわたって煎じつめたものを虎骨膠という。

 主成分はリン酸カルシウムであるが、虎骨膠には抗炎症作用や鎮痛作用が報告されている。漢方では強筋骨・止痛・定驚の効能があり、四肢の関節痛や下肢の萎弱、麻痺、痙攣、ひきつけなどに用いる。リウマチや神経痛による関節や筋肉の痛みやしびれには木瓜・当帰などと配合する(舒筋丸)。老化により腰や膝がだるく、四肢のしびれや歩行障害のみられるときには熟地黄・牛膝などと配合する(虎潜丸)。また虎骨を蒸留酒に浸した虎骨酒や木瓜などと配合した木瓜虎骨酒も足腰の痛みや神経痛の治療薬としてよく知られている。

 かつて日本にも虎骨が配合されている舒筋丸、活絡丸、海馬補腎丸、健歩丸、虎骨酒などが輸入されていた。現在トラの生息数が減少しており、ワシントン条約でも虎骨の含まれる漢方薬は制限されている。そのため近年ではイヌ(狗)の狗骨などで代用されている。

木曜日, 11月 29, 2012

五穀虫

○五穀虫(ごこくちゅう)

 クロバエ科のオビキンバエ(Chrysomyia megacephala)などの幼虫を乾燥したものを用いる。オビキンバエは中国をはじめ東洋では普通にみられるハエで、腐肉や人糞、獣糞に集まって産卵する。本草綱目では蛆とある。かつて日本ではハナアブの幼虫である尾長蛆を五穀虫と称していた。

 オビキンバエの成虫の体長は1cmくらいであるが、幼虫は1.5cmくらいでサバサシといって釣りの餌に用いられる。かつてアメリカで南北戦争のときに膿の除去にクロバエの蛆を用いた治療を行ったといわれるが、最近でも、欧米を中心に難治性潰瘍に蛆(マゴット)を用いた腐肉の除去、デブリードメントが再び注目されている。日本でも岡山大学などで、クロバエ科のヒロズキンバエ(Phaenicia sericata)を用いた糖尿病性潰瘍によるマゴット療法が行われている。

 幼虫の成分にはタンパク分解酵素のエレプシンやトリプシンが含まれている。幼虫を水中で洗って内容物を排出したあと日干しし、弱火で黄色くなるまで炒めたものを生薬とする。漢方では清熱・消疳の効能があり、小児の疳積の治療や解熱・解毒薬として用いる。

水曜日, 11月 28, 2012

蜈蚣

○蜈蚣(ごこう)

 中国や日本の全土に分布する節足動物、オオムカデ科のトビズムカデ(Scolopendra subspinipes mutilans)などのムカデを乾燥した全虫を用いる。主産地は浙江・湖北・湖南省などであり、江蘇省のものは脚が赤く良品であるため、蘇浙江省という。

 ムカデの体長は10~15cmくらいで20数節の環節があり、各環節から一対の歩脚があり、百足の異名をもつ。頭部の脚は歩行に関係せず、顎に変化して口器の役目をしており、この顎脚に毒腺を有する。冬から春にかけて採取し、市場には一頭ずつ竹串に刺して乾燥させたものが出ている。一般に体が長く、頭が赤く、背中が黒緑で、腹が黄色いもので、折れにくいものが良品とされている。

 ムカデの毒には蜂毒に類似したヒスタミン様物質と溶血性タンパク質の2種類の有毒成分が含まれ、咬まれるとしびれるような痛みがあり、発赤して数日間も腫れがひかない。蜈蚣には抗結核菌・抗真菌作用や新陳代謝を促進する働き、筋肉痙攣に拮抗する作用などが報告されている。

 漢方では平肝・止痙・解毒消腫の効能があり、脳卒中の後遺症、痙攣、破傷風、顔面神経麻痺、結核、瘡瘍などの皮膚病、火傷などに用いる。鎮痙作用は全蝎よりも強く、全蝎が熱性の痙攣に適しているのに対して蜈蚣は風寒の痙攣に適している。

 熱性痙攣やひきつけ、破傷風、激しい頭痛や関節痛には全蝎と配合する(止痙散)。また皮膚の潰瘍や疔、癰などの化膿、中耳炎、痔などに外用薬として使用する。日本の民間ではゴマ油や椿油にムカデを漬けたムカデ油が傷薬や火傷の治療薬として知られている。

火曜日, 11月 27, 2012

黒大豆

○黒大豆

 中国原産で世界各地で栽培されているマメ科の一年草ダイズ(Glycine max)の栽培品種であるクロマメの種子を用いる。普通、ダイズといえば黄大豆のことであるが、薬用には黒大豆が珍重されている。またクロマメの黒い種皮は黒大豆皮あるいは黒豆衣、モヤシのように発芽させたものは大豆黄巻、納豆にして乾燥させたものは豆豉と呼ばれ薬用にされる。

 ダイズは中国では約5000年前から栽培され、日本でも紀元前2000年ごろより食用にされていたと推定されている。現在、世界一の主産地はアメリカであるが、黒船で来日したペリーが日本からアメリカに持ち帰ったのがはじまりといわれている。

 日本でマメといえば大豆のことを指すように、日本の食生活に欠かせないものである。大豆を原料とした豆腐、納豆、きな粉、湯葉、味噌、醤油などの伝統食品のほか、ダイズ油としても利用価値が高い。しかし、現在、国内生産量は5%程度で、そのほとんどはアメリカから輸入している。

 ダイズの種子にはタンパク質、脂質、糖質、食物繊維、ビタミン、カルシウム、ファイトケミカルなどが豊富に含まれ、健康食品などの素材として利用されている。大豆タンパク質やリン脂質結合大豆ペプチドは血中コレステロール低下作用が認められ、特定保健用食品素材として利用されている。また大豆オリゴ糖は腸内細菌叢を改善し、便通を整える作用があり、大豆イソフラボンは女性ホルモン様作用のある植物エストロゲンのひとつで、更年期障害や骨粗鬆症などへの効果が期待されている。また、黒大豆の種皮には抗酸化作用のあるポリフェノールの一種、アントシアニンやプロアントシアニジンが含まれている。

 漢方では活血・利水・去風・解毒の効能があり、浮腫や脚気、筋肉の引きつり、化膿などに用いる。また烏頭や巴豆の中毒の解毒薬としても用いる。水銀療法の副作用による口内炎、歯肉炎、嚥下困難の治療に桔梗・紅花などと配合する(黒豆湯)。癰腫、湿疹、火傷などの皮膚疾患には濃く煮た大豆汁や大豆を削って粉末にしたものを外用する。なお、黒大豆皮には滋養(補血)作用があり、盗汗や眩暈、頭痛などに用いる。

月曜日, 11月 26, 2012

穀精草

○穀精草(こくせいそう)

 本州以西、台湾、中国などに分布するホシクサ科の一年草オオホシクサ(Eriocaulon buergerianum)の花序をつけた花茎を用いる。湿地や水田に自生し、穀物を刈り取った後に生えることから穀精草といわれ、茎の先に小さな白い花が咲くため日本ではホシクサ、中国では戴星草とも呼ばれる。

 成分は不明であるが、抗菌・抗真菌作用が報告されている。漢方では解表・止痛・明目・退翳の効能があり、頭痛、歯痛、鼻出血や眼科疾患に用いる。穀精草の性質は軽いため、上焦に行き、頭部の風熱を疏散し、頭痛や眼科疾患に効果がある。結膜炎や角膜の混濁、夜間の視力減退に鴨の肝臓と一緒に煮て服用する。

金曜日, 11月 23, 2012

穀芽

○穀芽(こくが)

 イネ科のイネ(Oryza sativa)のもみをつけたままの種子を発芽させたものを穀芽という。イネの茎と葉は稲草、うるち米は粳米、もち米は糯米、もち米の根と根茎は糯稲根鬚と呼ばれ、役用にされている。これに対して発芽したオオムギを麦芽という。

 発芽期の種子には消化酵素のジアスターゼが含まれている。漢方では開胃・消食の効能があり、消化不良で胃がもたれたときや食欲が低下したとき、また胃腸が弱い体質の改善に用いる。単独では効力が弱いため麦芽と一緒に使用したり、人参・白朮などと配合して用いる。穀芽の消化作用は麦芽とほぼ同じであるが、嘔気や嘔吐があるときには穀芽、吸収の悪いときには麦芽がよいといわれる。

 近年、玄米を1~2日、32℃で水分を含ませ、1mmほど芽を出させた発芽玄米が商品化されている。発芽玄米にはアミノ酸の一種であるγ-アミノ酪酸(ギャバ、GABA)が白米の10倍含まれていることが注目されている。ギャバは、中枢神経系における抑制系の神経伝達物質として知られ、脳の血流を改善し、血圧や精神を安定する作用なとがあることで知られている。