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土曜日, 5月 23, 2015

水牛角

○水牛角(すいぎゅうかく)

 中国南部、東南アジアなどで飼育されているウシ科のスイギュウ(Bubalus bubalis)の角を用いる。黒褐色の湾曲した中空の角で、基部は方形~三角形になっている。

 成分は犀角とほぼ同じであり、水牛角にも強心作用、血液凝固時間短縮作用、鎮静作用などがある。漢方では清熱涼血・解毒の効能があり、発熱時の頭痛、意識障害、熱性痙攣、出血症状、紫斑などに用いる。サイの捕獲がワシントン条約により禁止されているため、犀角の代用として使用されることが多い。

水曜日, 5月 20, 2015

蕤核

○蕤核(ずいかく)

 中国の内モンゴル自治区、山西・甘粛・河南省などに分布するバラ科の落葉低木、プリンセピア・ウニフローラ(Prinsepia uniflora)の成熟した果実の種子(核果)を用いる。

 7~8月頃に直径1~1.5cmくらいの球形の果実がなり、黒く熟す。熟した果実を摘みとり、果肉を除いて核果を取り出して乾燥する。使用するときには割って内果皮を除いて心臓形の種仁を用いる。

 種仁は脂肪油を多く含む。漢方では明目の効能があり、目の炎症や鼻血、不眠に用いる。眼病の要薬といわれ、結膜炎などで目が赤く腫れたり、涙や眼脂の出るときに用いる。内服にも用いるが、おもに点眼薬として外用する。外用には油分を除いて練って膏として点眼薬にしたり、煎液を眼洗浄に用いる。

火曜日, 5月 19, 2015

○酢(す)

 米、麦、高梁などの穀物や酒などを醸造して得られる酢酸を含む酸性の液体、酢のことである。醸造酢の作り方は、穀物などのデンプンや糖分原料を糖化し、アルコール発酵させた後、酢酸菌によって酢酸発酵させて作るものである。

 酢は酸拝した酒が起源と考えられ、かつて中国では苦酒と呼ばれ、日本でも「からさけ」といわれていた。紀元前5000年頃にバビロニアで樹液や果汁から酒やビネガーをつくったという記載があり、中国では周の時代に酢を司る役人がいたということが周札に書かれている。

 日本には応神天皇の時代、約5世紀のころには中国から酢の製法が伝えられていたといわれてる。米酢などの成分として酢酸(3~5%)、フマル酸、蟻酸、乳酸、コハク酸、クエン酸などの有機酸のほか、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンなどのアミノ酸、糖類などを含み、複雑な酸味や香気がある。酢はその酸によって細菌類のタンパク質を変成させる性質があるため、殺菌作用や防腐作用があり、酢洗い、酢漬け、酢じめなどの料理方法に応用されたり、夏の食品保存にも利用される。

 また酸味はストレスを和らげ、酸味の刺激により、胃液の分泌を高め、食欲を増進させる。胃酸分泌の低下しているときには、胃酸の代わりにペプシンなどの消化酵素を活性化させ、タンパク質の消化を促進すると同時に、食物中の雑菌を殺す。

 酸味の感じ方は感情の変化を受けやすく、ストレスや情緒不安定の時には酸味の感覚が鈍るといわれる。また妊娠している人も酸味に対する味覚が鈍るため、酸味の強いものを好むようになる。またーー高血圧ーや動脈硬化の予防、水虫などの白癬菌に対する治療効果なども知られている。

 漢方では肝胃に入り、活血・止血・解毒の効能があり、産後のめまい、黄疸、盗汗、鼻血や吐下血、腫れ物などに用いる。咽に炎症があり、声が出にくいときには半夏と醋を卵殻の中に入れて沸騰させたものを冷やして服用する(半夏苦酒湯)。また金匱要略の中に黄汗の治療に黄耆・芍薬・桂枝を苦酒と水を混和した液で煎じる方法がある(黄耆芍薬桂枝苦酒湯)。腫れ物には大黄の粉末を酢で調えて塗布する。ちなみに薬用には古いほどよいといわれている。

 近年、鹿児島県のー福山町ーなどで伝統的に作られてきた黒酢が注目されている。ーー黒酢ーは玄米を原料として陶製の壺(アマン壺)の中で1年以上にわたって糖化・発酵させて熟成したもので、一般の米酢に比較するとアミノ酸の含有量が著しく多いという特徴がある。また、中国の鎮江でもち米を長期に熟成させて作られる香酢(香醋)。沖縄県で泡盛の製造過程でできるもろみを原料にしたもろみ酢なども健康食品として登場している。

土曜日, 4月 11, 2015

秦皮

○秦皮(しんぴ)

 日本の本州中部以北に自生するモクセイ科の落葉高木トネリコ(Fraxinus japonica)などの樹皮を用いる。中国ではオオトネリコ(F.rhynchophylla)やヒメトネリコ(F.bungeana)などの樹皮を用いる。

 これらの幹や皮にイボタロウムシが白色の蠟を分泌することから白蠟樹の名があり、これを練ったもので戸のすべりをよくしたことから、戸ねり粉という語源説もある。市場にはクルミ科のヒメグルミの樹皮も秦皮として出ているが、適当ではない。

 秦皮にはクマリン類のエスクリンやエスクレチン、タンニンなどが含まれ、エスクリンのために切り口を水をつけると水は青い蛍光をする。薬理的には消炎、鎮痛、尿酸排泄作用が知られている。

 漢方では止瀉・清熱燥湿・明目の効能があり、下痢、帯下、目の充血などに用いる。裏急後重を伴う細菌性下痢には白頭翁や黄連・黄柏と配合する(白頭翁湯)。目の充血に秦皮の煎液で洗眼したり、目の痛みには菊花や黄連と配合して服用する。ヨーロッパや北アジアに分布する近似種のセイヨウトリネコ(F.excelsior)は通風の治療薬として知られている。

人尿

○人尿(じんにょう)

 健康人の小便の中間尿を用いる。とくに10歳以下の男子の小便を童便といい、良品とされている。また妊娠2~3ヶ月の健康な妊婦の尿を妊娠尿として用いることもある。

 用法は新鮮な尿をそのまま1~2杯飲むか、薬湯に混ぜて飲む。成分は電解質や尿素、硫酸、尿酸、アンモニアなどのほかビタミンやホルモンも含まれる。妊娠尿では2ヶ月前後に尿中HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の含量が最も多くなる。妊娠尿は尋常性乾癬に効果があるという報告もある。

 漢方では滋陰清熱・止血・活血化瘀の作用があり、結核などの発熱や喀血、高齢者や病後の衰弱に用いる。傷寒論では下痢で陰液まで損なわれたときに白通湯に猪胆汁とともに人尿を配合する。

 古くから世界各地に民間療法として自分が排泄した尿を飲む飲尿療法が行われている。かつてヨーロッパで歯磨き粉や口腔洗浄液の原料として人尿が利用されていたといわれている。また人尿を癌治療に応用する試みも行われており、中国で人尿から抗癌作用がある成分が抽出されたとの発表もある(CDA-Ⅱ)。

 今日、医薬品として人尿から血栓溶解剤のウロキナーゼや酵素阻害剤のウリナスタチンが抽出精製されている。また尿中の沈殿物が便器に付着したものを人中白、童尿と石膏で加工したものを秋石という。

金曜日, 4月 10, 2015

沈丁花

○沈丁花(じんちょうげ)

 中国原産のジンチョウゲ科の常緑低木ジンチョウゲ(Daphne odora)の花を用いる。中国では宋の時代から栽培されているが、今日では栽培種ばかりで、自生種は発見されない。日本に渡来した年代は不明であるが、室町時代にはすでに栽培されていたという。

 早春に芳香の強い花をつけるため、中国では瑞香と呼ばれている。また沈丁花という和名は沈香と丁香をあわせた匂いの花という意味である。ただし花弁のように見えるのは萼である。  花や葉にはクマリン類のダフニン、ウンベリフェロンなどが含まれる。民間療法では利咽・止痛の効能があり、咽頭の腫痛や歯痛にうがいや、内服薬として用いる。また中国では乳癌の初期に外用したり、リウマチの痛みに内服する民間療法もある。日本にも花や葉の煎じ汁で、腫れ物を洗う治療法がある。

水曜日, 9月 03, 2014

白薇

○白薇(びゃくび)

 日本の全土、中国、朝鮮半島などに自生するガガイモ科の多年草フナバラソウ(Cynachum atratum)の根を用いる。そのほか中国東北部に自生する蔓生白薇(C.versicolor)の根も用いる。

 フナバラソウは黒紫色の花が咲き、裂けた果実の形が舟に似ていることから船腹草の名がある。茎を切ると白い乳汁が出る。蔓生白薇の花は最初黄緑色だが次第に黒紫色に変化する。白薇の名は根が微細で白いことに由来するといわれ、古来より同じガガイモ科の白前と混合されることがしばしばあった。

 根にはキナンコールや強心配糖体、精油が含まれている。漢方では清虚熱け除煩・利尿の効能があり、結核や術後などの発熱、煩躁、膀胱炎などに用いる。発熱では実熱にも虚熱にも用いられ、とくに産後の発熱によく用いられる。

 陰虚体質の感冒症状には玉竹・豆豉などと配合する(加減葳蕤湯)。産後や授乳期の発熱で、煩熱や嘔気があり、薬を受け付けないときに竹皮・石膏などと配合する(竹皮大丸)産後の衰弱によりふらつきや卒倒、発熱、発汗などのみられるときには当帰・人参・甘草などと配合する(白薇湯)。出産前後の尿失禁や排尿障害に白薇と白芍を粉末にしたものを酒で服用する。

金曜日, 8月 29, 2014

白檀

○白檀(びゃくだん)

 インドネシアやマレー半島を原産とするビャクダン科の常緑小高木ビャクダン(Santalum album)の心材を用いる。中国では一般に白檀香という。ビャクダンは半寄生植物で幼樹は他の植物の根に寄生するが、葉には葉緑素をもち、生長すると10mぐらいの樹木となる。白檀には独特の香りがあり、燃やすとさらに濃厚になる。「栴檀は双葉より香し」の栴檀とは白檀のことである。

 古くから香料としてインドで栽培され、仏教やヒンズー教とともに世界各地に広がり、中国語の栴檀という名はサンスクリット語のチャンダナに由来する。白檀の心材は赤くて芳香があるが、辺材は白色で香りが少ない。このため線香などの香料や薬用には心材を用いる。材は硬く、緻密であるため、小細工物や仏像、美術品、数珠などに利用される。

 心材には精油が2~6%含まれ、、主成分はα・βサンタロールである。漢方では理気・止め痛の効能があり、胸が苦しい、胃が痞える、食欲がない、冷えて胸や原が痛むときに用いる。心材を蒸留して抽出したビャクダン油(サンダルウッド)は、アロマテラピーのエッセンシャルオイルとして、ストレスを緩和させる効果、抗炎症、殺菌・消毒作用、肌を柔らかくする効果などがあり、咽頭の炎症や尿路感染症、ニキビ・吹き出物に効果があるとされている。

 そのほか、石鹸や化粧品の賦香料として利用されている。現在、インドでは白檀は国家管理とされ、インドネシアでは輸出禁止、伐採禁止などの規制が行われている。

水曜日, 8月 27, 2014

白前

○白前(びゃくぜん)

 中国南部に分布するガガイモ科の植物、柳葉白前(Cynachum stauntonii)や花葉白前(C.glaucescens)の根と根茎を用いる。古くから同じガガイモ科のふらフナバラソウ(C.atratum)の根と混合されることも多かった。

 成分にサポニンが含まれるといわれるが、詳細は不明である。漢方では降気・止咳・去痰の効能があり、「肺家の要薬」ともいわれる。とくに降気効果に特徴があり、気が下りると痰が消え、咳が止まると説明されている。

 前胡と同様の効能があり、両者を併せて「二前」とも称されるが、前胡は風熱表証の咳嗽に、白前は寒熱に拘らず痰が多く、喘鳴や呼吸困難のみられるときに適している。たとえば気管支炎などの咳嗽には桔梗・紫苑などと配合する(止嗽散)。

月曜日, 8月 25, 2014

白豆蔲

○白豆蔲(びゃくずく)

 インド南西部を原産とする熱帯地方で栽培されているショウガ科の多年草カルダモン(Amommum cardamomum)の果実を用いる。カルダモンの薬材にはいくつかの種類があり、その基原についてもいくつかの説がある。

 一般に市場で白豆蔲と呼ばれているものは、直径1.5cmくらいの円球形のもので、円形カルダモンとも呼ばれている。そのほかインド東部、東南アジア、中国で栽培されているAmommum類の果実も白豆蔲の名で用いられている。一方、直径0.5~1cm、長さ1~2cmの長卵型をしたカルダモンは小豆蔲とも呼ばれ、ショウガ科のElettaria cardamomumを基原としている。これも市場では白豆蔲として流通している。

 カルダモンは古来インドで薬用とされていたものが、香辛料としてヨーロッパに伝えられ、アラブでは古くから最もポピュラーなスパイスとして知られている。香辛料のカルダモンとしては小豆蔲の方が利用され、カレー粉やウスターソース、肉製品に用いられる。またカルダモンの香りは、コーヒーにもあい、カルダモンコーヒー、デミタスコーヒーなどに利用されている。

 市場では香気を保つために果皮をつけたままで扱われているが、用いるときには果皮を取り去る。また果皮は白豆蔲殻として用いる。種子には樟脳に似た芳香があり、味は辛くややほろ苦い。インドでは食後に口中を爽やかにするために種子を噛むことがある。

 白豆蔲にはボルネオール、カンファー、シネオール、リモネン、小豆蔲にはシネオール、テルピニルアセテート、テルピネオールなどの精油成分が含まれている。これらの精油には芳香性の健胃作用がある。

 漢方では芳香化湿・健胃・理気の効能があり、消化不良や食欲不振、悪心などに用いる。消化不良や腹満感には蒼朮、縮砂、陳皮などと配合する(香砂養胃湯)。インドやサウジアラビアなどでは媚薬としても知られている。

火曜日, 8月 19, 2014

白朮

○白朮(びゃくじゅつ)

 日本の本州、四国、九州、朝鮮半島、中国の東北部に分布しているキク科の多年草オケラ(Atractylodes japonica)の根茎を用いる。中国ではオオバナオケラ(A.macrocephala)の根茎を白朮として用いている。このため日本産のオケラの根茎を和白朮といい、中国産は唐白朮という。

 中国ではオケラ(A.japonica)は関蒼朮と呼ばれ、蒼朮のひとつとして扱われている。かつて日本では国産で自給できていたが、現在では韓国や朝鮮から和白朮が輸入されている。中国から唐白朮も輸入されてるいるが、日本薬局方の精油含量の規格に適合するものが少ない。

 中国産の白朮の中では浙江省の於潜に産する白朮の品質が最良とされ、とくに於朮と称されている。日本漢方では、白朮と蒼朮をあまり区別せずに用いていたが、現在では日本薬局方ではアトラクチロンを主成分としてアトラクチロジンを含まないものを白朮、アトラクチロジンを多く含んでアトラクチロンを余り含まないものを蒼朮として区別している。

 白朮にはアトラクチロン、アトラクチレノリッドⅠ、Ⅱ、Ⅲなどが含まれ、アトラクチロンは嗅覚を刺激して胃液の分泌を促進する。そのほか利尿・血糖降下・抗潰瘍・抗炎症作用などが認められている。漢方では補脾・益気・燥湿・利水の効能があり、胃腸薬や滋養薬の多くに配合されているほか、浮腫や関節痛、下痢などにも用いられる。

火曜日, 8月 12, 2014

白芍

○白芍(びゃくしゃく)

 中国北部原産のボタン科の多年草シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根の外皮を除いたものを白芍といい、外皮をつけたままのものを赤芍という。日本漢方では赤芍を用いないため、芍薬といえばこの白芍のことをいう。

 白芍はおもに4年以上栽培したものを用い、洗浄した後にあら皮を削り取り、そのまま乾燥したものを生干芍薬という。そのままではなく沸騰した湯の中で少し煮てから柔らかくした後、日干し乾燥したものを真芍という。一般に日本では生干芍薬が「芍薬」として、中国では真尺が「白芍」として流通している。中国では安徽・四川・浙江省が白芍の品質が最もよいといわれる。シャクヤクは日本でも長野・奈良県、北海道などで栽培されている。

 成分にはモノテルペン配糖体のペオニフロリン、ペオノールなどが含まれ、ペオニフロリンには鎮痛、鎮痙、抗炎症、抗潰瘍、血管拡張、平滑筋弛緩などのさまざまな作用が認められている。漢方では補血・止痛の効能があり、血虚の治療や腹痛、筋肉痛などの治療に用いる。とくにストレス(肝気欝結)のために生じた腹痛に効果があり、これを柔肝止痛、あるいは柔肝緩急という。

 また斂陰作用といって発汗しすぎるのを抑制する作用もある。たとえば桂枝湯では桂枝の発汗作用を抑え、風邪の症状があってもすでに自汗のみられるときに適している。盗汗には牡蠣・五味子などと配合する。

月曜日, 8月 11, 2014

白芷

○白芷(びゃくし)

 本州の近畿・中国地方、九州、朝鮮半島、中国東北部などに分布するセリ科の多年草ヨロイグサ(Angelica dafurica)などの根を用いる。中国東北部ではこのヨロイグサの根を独活として用いるところもある。

 中国ではヨロイグサとは別に杭白芷(A.formosana)の根もよく用いられ、四川・山東省では川白芷、浙江・江蘇省では杭白芷の名で流通している。かつて日本産を和白芷、中国産を唐白芷として区別していたが、今日、日本での生産はほとんどない。薬用には地上部が黄変して枯れかけたときに根を掘り出すが、ヨロイグサの根には特異な臭いがある。

 根にはフロクマリン誘導体のビャクアンゲリシン、ビャクアンゲリコールなどが含まれる。フロクマリン誘導体はセリ科の類縁植物に多く含まれ、羌活や独活にも含まれている。一般にフロクマリン類は魚毒であるが、高等動物に対しては血管拡張や鎮痙しか認められない。ただし中枢神経を興奮させるアンゲリコトキシンも含まれており、華岡青洲が用いた全身麻酔薬の通仙散にも配合されている。

 漢方では解表・止痛・止帯・排膿などの効能があり、頭痛、歯痛、前額部痛、鼻炎、腹痛、下痢、帯下、湿疹、腫れ物などに用いる。とくに頭痛のときの代表的な生薬で、「太陽には羌活、陽明には白芷、小陽には柴胡、太陰には蒼朮、厥陰には呉茱萸、少陰には細辛」といわれている。また白芷の気は芳香で「丸竅(耳目などの穴)を通じる」といわれている。

木曜日, 8月 07, 2014

百合

○百合(びゃくごう)

 日本の各地や朝鮮半島、中国などに分布するユリ科の種々の植物の鱗茎を用いる。日本ではヤマユリ(Lilium auratum)やオニユリ(L.lancifolium)、ササユリ(L.japonicum)の鱗茎、中国では百合(L.brownii)、細葉百合(L.pumilum)、テッポウユリ(L.longiflorum)などの鱗茎が用いられる。苦味の少ないオニユリ、ヤマユリなどの鱗茎は「ゆりね」として食用にもされる。

 鱗茎の成分としてデンプンや脂肪、タンパク質のほか、アルカロイドが少量含まれていることしかわかっていない。漢方では潤肺・止咳・安神の効能があり、乾燥性の咳嗽や熱病後の虚煩に用いる。

 肺結核などで微熱が続き、乾燥性の咳嗽が長引いたり、喀血のみられるときには生地黄・熟地黄・麦門冬などと配合する(百合固金湯)。咳や喘息が続き、咽が乾いて声が出ず、痰に血が混じるときには款冬花と配合する(百花膏)。慢性的な咽頭の炎症で鼻汁や鼻づまりなど、鼻炎症状のみられるときには辛夷・山梔子などと配合する(辛夷清肺湯)。

 熱病が回復した後も微熱が続き、動悸や煩躁感、不眠、多夢、精神不安のみられるときには知母・地黄などと配合する(百合知母湯)。大病後のこのような状態を金匱要略の中では「百合病」と呼んでいる。

 ヨーロッパではユリの根を古くから婦人病に用いており、食べるとお産が軽くなるといわれている。また日本の民間ではユリの花粉をゴマ油で練ったものを切り傷やあかぎれの外用薬にしている。

火曜日, 8月 05, 2014

白芨

○白芨(びゃくきゅう)

 関東以西の西日本、朝鮮、中国、台湾などに分布するラン科の多年草シラン(Bletilla striata)の球形を用いる。日本には奈良時代に渡来したとされる。

 紫蘭の名のとおり紅紫色の花が咲き、観賞にも栽培されているが、白い花のシロバナシランというのもある。花は蘭茶として飲まれることもある。地下にはカタツムリのような偏圧球形の数個連なっている。この球形を蒸したり、湯通しした後で乾燥する。

 成分には多糖類で粘液質のブレティラグルコマンナンやデンプンが含まれ、止血、抗潰瘍、抗菌作用などが報告されている。この粘液は陶磁器の絵つけや七宝などの工業用の糊としても用いられている。

 白芨は収斂止血の要薬とされ、古くから肺癆などで喀血するときに用いられている。最近の中国では肺結核や硅肺の治癒を促進する補肺作用もあると考えられている。肺結核や気管支拡張症などには白芨を粉末にして単独で用いることが多い。煎じると効力が落ちるという説もある。

 肺結核には枇杷葉・節藕・阿膠などと配合する(白芨枇杷丸)。胃潰瘍の出血には烏賊骨と配合する(烏白散)。また腫れ物や外傷には粉末を単独、あるいは石膏などと併せて外用する。裂肛や皮膚皸裂には粉末を胡麻油などと混ぜて用いる。

月曜日, 8月 04, 2014

白花蛇舌草

○白花蛇舌草(びゃくかじゃぜっそう)

 本州から沖縄県、朝鮮半島、中国、熱帯アジアに分布するアカネ科の一年草フタバムグラ(Oldenlandia diffusa)の全草を用いる。田畑に生える雑草で、二枚の葉が対になっているためフタバムグラの名がある。中国の広東省などで研究されている薬草で、マレーシアの民間療法に影響されたものである。

 成分にはヘントリアコンタン、ウルソール酸、オレアノール酸、クマリンなどが含まれ、抗菌・消炎作用がみられる。漢方では清熱解毒・通淋の効能があり、肝炎、扁桃炎、肺炎、虫垂炎、急性腎炎、膀胱炎、毒蛇の咬傷などに用いる。

 民間療法では生で用いることも多い。最近では細胞性免疫を強化し、癌の進展を抑える抗腫瘍作用が注目され、とくに胃癌や大腸癌、肝癌などへの効果が研究されている。一般に半枝蓮と併用されることも多いが、単独の注射液や複合内服液(天心液)も製品化されている。

木曜日, 7月 31, 2014

白芥子

○白芥子(びゃくがいし)

 中央アジア原産とされ、ヨーロッパや中国で栽培されているアブラナ科の一年草~越年草、シロガラシ(Brassica alba)の種子を用いる。種子の色が淡黄白色のため白芥子というが、単に芥子といえばカラシナ(B.juncea)の種子のことをいう。

 香辛料としてシロガラシの種子は「洋がらし」すなわちマスタード、カラシナの種子は「和がらし」の原料に用いられる。一般に漢方では白芥子を用い、日本の民間療法では芥子が用いられる。

 白芥子の辛味成分はシナルビンであり、芥子の辛味成分はシニグリンである。シナルビンは共存する酵素のミロシンの作用により加水分解され、イソチアン酸パラヒドロオキシルベンジルを生じる。ただし揮発性がないため鼻に対する刺激はない。芥子と同じく皮膚刺激性があり、また抗菌作用もみられる。

 漢方では温裏・理気・去痰・止痛の効能があり、咳嗽、喀痰、嘔吐、腹痛、中風による言語障害や麻痺、脚気、歯痛、腫れ物などに用いる。白芥子は温化寒痰の常用薬で、痰の多いときに適している。

水曜日, 7月 30, 2014

蓖麻子

○蓖麻子(ひまし)

 北部アメリカを原産とするトウダイグサ科の木質の草本トウゴマ(Ricinus communis)の種子を用いる。ヒマやカラエとも呼ばれ、日本では冬に枯れるので一年草とされるが、熱帯では多年にわたり生長を続けて草丈が6mを越えることがある。

 種子の大きさは長さ15mm、直径8mmくらいの扁平楕円形で、種皮には光沢があり、暗褐色の斑紋が見られる。古代エジプトの最古の医学書にも薬物として収載されているもので、日本には中国から9世紀ころに渡来した。このため唐胡麻という名がある。種子を圧搾して得られる脂肪油をヒマシ油という。

 現在ではブラジルやインドなど世界各地で栽培され、その油は印刷用インクなどの工業用や化粧品原料などに利用されている。かつては航空エンジンの潤滑油としても利用されたことがある。

 種子には30~50%の脂肪油が含まれ、成分としてリシノール酸やステアリン酸などのグリセリドのほか、毒性タンパクのリシン、有毒アルカロイドのリシニンなどが含まれている。リシンやリシニンには催吐、降圧、呼吸中枢麻痺などの毒性があり、小児では5~6個、成人では20個より多く食べると死亡するといわれる。

 リシノール酸のグリセリドが腸管の中で分解されてリシノール酸ナトリウムを生じ、これが小腸粘膜を刺激して腸管の蠕動を亢進させる。それと同時に油やグリセリンの粘滑作用も加わり、2~4時間で排便がみられる。このため食中毒のとき、あるいは検査や手術の前処置として健やかな便の排出を目的として利用される。

 漢方ではあまり用いられず、民間療法では生のまま削ったり、炒ったものを瀉下剤として単独で服用する。しかし、一般にはおもに殻を除いて泥状につぶしたものを外用薬として用いる。たとえば腫れ物の初期や火傷、犬の噛傷の患部に塗布する。

 また独特の治療法として顔面神経麻痺には患部および手掌、子宮下垂や脱肛には百会、難産の時には湧泉といった経穴に塗布する方法がある。

火曜日, 7月 29, 2014

蓽茇

○蓽茇(ひはつ)

 東南アジアに分布するコショウ科のつる性常緑木本植物ヒハツ(piper longum)の未熟な果穂を用いる。ヒハツは長い房になったまま用いるのでナガコショウとも呼ばれている。

 現在、カレー粉などの香辛料として現地の人しか用いていないが、ギリシャ・ローマ時代にはコショウよりもナガコショウ(ヒハツ)のほうが一般的であった。実際、英語のpepperとヒハツは、サンスクリット語のPippeliに由来する。

 果穂にはアルカロイドのピペリン、チャビシン、ピペルロングミンなどが含まれ、抗菌作用や血管拡張作用が報告されている。漢方では散寒・止痛の効能があり、冷えによる嘔吐、腹痛、下痢に用いる。そのほか、頭痛や歯痛、鼻水や鼻づまりにも用いる。虫歯の歯痛には蓽茇と胡椒の粉を蝋で固めたものを穴に詰めるとか、片頭痛には蓽茇の粉末を温水で鼻に通すといった方法がある。

 近年、ヒハツが血流を促進し、新陳代謝を高め、体温を上昇させて、脂肪の燃焼を促進させることから、ダイエット素材として利用されている。ちなみに沖縄県(八重山列島)でピハーツ、フィファチ、沖縄コショウと呼ばれているのは、ヒハツモドキ(P.retrofractum)のことで、インドナガコショウに対して、ジャワナガコショウ(Java long pepper)という別名もある。

月曜日, 7月 28, 2014

蓽澄茄

○蓽澄茄(ひっちょうか)

 ジャワ原産で東南アジア、インドなどに分布するコショウ科のつる性常緑木本植物ヒッチョウカ(Piper cubeba)の果実を用いる。これをクベバ実ともいう。そのほか中国南部、台湾、インドネシアなどの東南アジアに分布するクスノキ科の落葉低木リツェアクベバ(Litsea cebeba)の果実を用いることもある。

 このリツェアクベバは、タイワンヤマクロモジ(別名リトセア:L.citrate)やアオモジ(L.citriodora)としばしば混同されている。いずれも果実からシトラールを含む精油が得られる。本来、ヒッチョウカの果実が中国に伝わり、中国に産するリツェアクベバの果実と色や形状、気味などが類似しているためヒッチョウカの代用にされたと考えられている。しかし、成分に関しては全く異なっている。

 ヒッチヨウカの果実には精油の成分としてサビネン、カレン、シネオールなどのほか、リグナンのクベビン、クベビノライドなどが含まれ、日本住血吸虫の早期治療やアメーバ赤痢に効果がある。かつてヨーロッパなどでは健胃・利尿作用があるとされ、専ら淋病の治療薬として用いられた。リツェアクベバの果実には精油成分としてシトラール、メチルヘプテノン、リモネンなどが含まれ、喘息およびアレルギー性ショックに対して効果がある。

 漢方では温裏・止痛・理気の効能があり、冷えによる嘔吐、吃逆、ゲップ、腹部膨満感、腹痛や小便不利に用いる。インドネシアでは下痢や感冒、喘息などに用いている。アロマセラピーでは、リツェアクベバの果実はメイチャン(May Chang)とも呼ばれ、エッセンシャルオイルとして知られている。