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木曜日, 5月 16, 2013

菖蒲根

○菖蒲根(しょうぶこん)

 日本で一般に菖蒲といわれているものには、アヤメ科のハナショウブ(Iris ensata)とサトイモ科のショウブとがある。菖蒲園などで有名なのはハナショウブ(花菖蒲)のことがあるが、薬用にする菖蒲はサトイモ科のショウブ属の植物(ショウブ)でまったく別である。

 かつてサトイモ科のショウブは葉のすじが文目模様になっていることからアヤメ(文目)と呼ばれた。ところが葉がよく似ている花の美しい植物をハナアヤメと呼ぶようになり、いつしかアヤメといえばこの方のことを指すようになった。このため本来のアヤメを中国語名でショウブと呼ぶようになったが、今度はアヤメ科の園芸品種を誤ってハナショウブと名付けたため、今日でもショウブといえばハナショウブの方が有名になっている。

 ところでサトイモ科のショウブにも2種類あり、ショウブ(Acorus calamus)とセキショウ(A.gramineus)とに区別されている。日本で菖蒲根といえばショウブの根茎を用いるが、これを中国では水菖蒲という。一方、中国で単に菖蒲といえば、セキショウの根茎のことで、石菖蒲ともいう。

 セキショウは本州以西に分布し、おもに谷用の岩場などに群生し、花は3~5月に咲く、ショウブは北海道から九州まで広く分布し、池沼の水辺に自生して花は5~7月に咲く。いずれの花も黄緑色の肉穂花序であまり目立たない。

 ショウブの根茎はセキショウよりも大きくて収穫しやすいため、日本では一般にショウブのほうを薬として用いてきた。ショウブには強い香りがあり、葉が剣状のため、古くから魔除けとしても利用され、くたショウブが尚武に通じることから尊ばれてきた。端午の節句にショウブを軒に挿して戸口にヨモギを吊るす風習やショウブの葉を風呂に入れる菖蒲湯の慣習がある。

 日本の民間療法で肺炎、発熱、ひきつけ、創傷などの治療に根を煎じたものやおろしたものを利用していた。打ち身には根をおろして患部にすり込んだり、歯痛には薄荷やうどん粉を混ぜてはる治療法もある。また菖蒲湯は神経痛やリウマチに効果があるともいわれている。

 漢方では水菖蒲と石菖蒲に区別されるが、開竅・去痰・化湿・解毒の効能はほぼ同じで、癲癇や熱病による意識障害、健忘症、耳聾、、神経症、胃痛、関節痛、打撲傷などに用いる。ただし石菖蒲のほうが香りが強く、意識障害に対する通竅作用もすぐれているのでよく使用される。また新鮮なもの(鮮菖蒲)の方が意識障害に対する効果が強い。

火曜日, 5月 14, 2013

薔薇花

○薔薇花(しょうびか)

 日本、朝鮮半島に分布するバラ科のつる性に落葉低木ノイバラ(Rosa multiflora)の花を用いる。ノイバラの果実(偽果)は営実であり、葉を薔薇葉、根を薔薇根という。また花を蒸留したものは薔薇露という。

 ノイバラは最もよく見られる野生のバラで、バラの接ぎ木の台木としても栽培される。花は白色で芳香があり、成分にはアストラガリンなどが含まれる。一方、ヨーロッパでは古くから薬用バラ(Apothecary Rose)としてバラの原種であるガリカ種(R.gallica)の花びら(ローズペタル)が消化薬や口内炎の治療、疲労回復や精神安定などのためにハーブティーとして利用されてきた。

 漢方では解暑・健胃の効能があり、暑気払いや健胃薬として用いる。口内炎や咽頭の腫痛などに桔梗・甘草などと配合する(薔薇湯)。なお薔薇露も口内炎の治療に用いる。また薔薇葉は排膿薬として化膿症に用いる。薔薇根は去風湿・活血・解毒の効能があり、下痢、関節炎、鼻血、痔出血、化膿症などに用いる。

 近年、ガリカ種などのバラの花びらエキスにポリフェノールの一種であるオイゲニンが含まれており、抗酸化作用や抗アレルギー作用(ヒスタミン遊離抑制作用)が認められ、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和する効能が期待されている。

月曜日, 5月 13, 2013

小麦

○小麦(しょうばく)

 カスピ海南岸を原産とするイネ科の越年草コムギ(Triticum aestivum)の種子あるいは粉を用いる。コムギは紀元前7000年ごろから栽培が始まり、世界で最も生産が多い穀物である。

 この栽培されるコムギの9割はパンコムギで、日本のコムギも全てこれである。コムギはおもに小麦粉にされるが、小麦粉には主成分のデンプンのほかにグルテンの特性により水を加えてねると粘弾性をもったドウ(パン生地)を作ることができる。

 近年、健康食品素材として小麦胚芽が注目されている。小麦胚芽に含まれる栄養素としてビタミンE、ビタミンB1・B2・B6などのビタミン類、カルシウム、鉄などのミネラル、アミノ酸などのほか、オクタコサノールが含まれている。オクタコサノールは、酸素利用を高めて、エネルギー産生を促進する働きがあるとされ、持久力の向上、運動後の筋肉痛の予防などへの効果が報告されている。

 また、外皮は小麦ふすま(小麦ブラン)と呼ばれ、食物繊維が多いため、かつては専ら飼料に利用されていたが、近年、おなかの調子の整える特定保健用食品の素材として認定されている。

 薬用には種子のまま、あるいは小麦粉として用いる。水で研ぐと浮き上がる未成熟な小麦を特に浮小麦という。漢方では安伸・清虚熱・止汗・止渇の効能があり、ヒステリーや煩熱、糖尿病、下痢、癰腫、自汗、盗汗に用いる。

 自汗や盗汗には浮小麦のほうがよいとされ、浮小麦を焦げるまで炒って粉末にしたものを重湯で服用する。女性のヒステリーや子供の夜泣きには甘草・大棗などと配合する(甘麦大棗湯)。自汗や盗汗には黄耆・牡蠣・麻黄根などと配合する(牡蠣散)。また切り傷の止血や火傷には粉を外用する。

土曜日, 5月 11, 2013

樟脳

○樟脳(しょうのう)

 関東地方以南、四国、九州、台湾、中国南部に分布するクスノキ科の常緑高木クスノキ(Cinnamomum camphora)の根、幹、枝、葉を蒸留精製した顆粒状結晶を樟脳という。

 クスノキは枝や葉をはじめ樹木全体に独特の香りがある。樟脳は特有の芳香を持った極めて消化しやすい白色の結晶でカンフルともいい、水には難溶であるが、エーテルなどの有機溶剤に溶ける。

 樟脳は紀元600年ごろアラビアで貴重な薬として用いられ、アラビア語のカフールがカンフルの語源である。日本には江戸時代に製法が伝わり、薩摩や土佐でつくられ、明治時代には日本の特産品として盛んに輸出された。

 精油成分にはカンファ、カンフェン、カジネン、アセトアルデヒド、ピネン、シネオール、ボルネオール、オイゲノールなどが含まれ、カンファは局所刺激作用、防腐作用のほか、中枢性に血管や呼吸を興奮させ、血圧を上昇して呼吸数を増加させる。また生体内での酸化物であるアロパラオクソカンファは直接的な強心作用がある。

 樟脳は防虫剤や薫香料のほか、セルロイドやフィルム、ボルネオールなどの原料として用いられている。またパイオキソカンファは強心作用のある注射薬(ビタカンファー)として用いられる。

 漢方では開竅・止痛・殺虫の効能があり、意識障害、腹痛、腹部膨満、脚気、歯痛、皮膚病、打撲傷などに用いる。現在ではおもに軟膏やチンキなどの外用薬として神経痛、しもやけ、火傷、打撲傷、皮膚病などに用いる。

 筋肉痛や打ち身、捻挫にはカンフルにハッカ油、チョウジ油などと配合する(タイガーバーム)。チンキ剤を腹部につけると腹部膨満感や腹痛が軽減する。また内服では湿疹や有熱時の意識障害の気付け薬として用いる。ただし服用しすぎると眩暈、頭痛、興奮症状が出現し、さらには痙攣や呼吸衰弱を起こし死に至ることもある。

金曜日, 5月 10, 2013

鍾乳石

○鍾乳石(しょうにゅうせき)

 石灰岩の洞窟に産出し、つらら状に下がった鍾乳石(スタラサイト:Stalactite)を用いる。

 炭酸塩類の鉱物で、石灰岩の炭酸カルシウム(CaCO3)の水溶液が滴り落ちて長い間に晶出したものである。太いものを鍾乳石といい、細く管状のものは滴乳石という。ただし滴父石は鵝管石のひとつとして扱われることもある。鍾乳石は白色で直径5cmくらいの円柱ないし円錐形したもので硬くて重い。滴乳石は直径1cmくらいの管状で厚さは1mm程度である。

 成分は主に炭酸カルシウムで少量のマグネシウムを含む。漢方では止咳・補陽・通乳の効能があり、咳嗽やインポテンツ、乳汁不足などに用いる。

木曜日, 5月 09, 2013

松藤

○松藤(しょうとう)

 日本の各地、朝鮮半島の南の済洲島に分布するモクレン科の落葉つる性低木、マツブサ(Schisandra repanda)の蔓や葉を用いる。日本の固有種のため、中国名はなく、中国の松藤とは関係がない。

 樹皮はアカマツに似て、蔓を折るとマツヤニに似た匂いがする。晩秋に果実がつる性の茎にブドウの房のように垂れ下がるため、マツブサ、松藤といった名前がある。

 蔓や葉には精油成分のボルネオール、βピネン、セスキテルペンなどが含まれている。一般に薬湯料として用いられ、皮膚を刺激して血行を改善する作用があり、湯冷めしにくく、リウマチや神経痛、腰痛などの痛みを和らげるといわれている。黒く熟した実は酒に漬けて果実酒として利用されている。

水曜日, 5月 08, 2013

松節

○松節(しょうせつ)

 中国の中南部の各地に分布しているマツ科の常緑高木タイワンアカマツ(Pinus massoniana)やユショウ(P.tabulaeformis)などのマツの枝や幹の節を用いる。松を基原とする生薬には、幹からとった樹脂の松香、樹皮から抽出したピクノジェノール、葉の松葉、果実の海松子、化石となった琥珀などがある。

 松は赤松、黒松などの五葉松類に区別され、タイワンアカマツなどは二葉松類であり、五葉松に比較すれば材質は硬くて樹脂が多い。松節にはセルロース、リグニン、精油のほか、ピクノジェノールに類似した松ポリフェノールが含まれている。

 漢方では去風湿の効能があり、止痛薬としてリウマチ、こむら返り、膝関節腫張、脚力低下、打撲傷に用いる。煎じて服用するほか、酒に浸したものを内服したり、塗布して用いる。

火曜日, 5月 07, 2013

硝石

○硝石(しょうせき)

 乾燥地帯の地表や洞窟に風化物として少量産する鉱物、硝石(Niter)を生成してできた結晶を用いる。通常、チリ硝石や瀉利塩、灰硝石、石膏などと同じ場所にある。

 窒素を含む物質や動物質に硝化バクテリアという細菌が作用して産することもある。エジプトやチベットなどの乾燥地帯では糞尿に木灰や石灰を混ぜて堆積し、細菌によって硝酸塩を生じさせ、水で抽出して硝石を作ったという。

 硝石はKNO3を組成とするカリウムの硝酸塩鉱物であり、白色の粉末で水に溶け、焼くと爆発する。黒色火薬の原料であり、日本でも加賀藩がカイコの糞と雑草などを堆肥として生産していた。

 漢方では有毒といわれ、消癥、通便・解毒の効能があり、腹部膨満や腫瘤、腹痛、便秘、腫れ物などに用いる。腹部が硬く膨満して便秘するときには大黄などと配合する(承気丸)。頭痛や頭風、耳聾などに硫黄と配合する(如神丹)。ちなみに傷寒論、金匱要略の中の硝石は芒硝と同じ硫酸マグネシウムであったと考えられている。

月曜日, 5月 06, 2013

生漆

○生漆(しょうしつ)

 中国、インドを原産とする漆科の落葉高木ウルシ(Rhus verniciflua)の樹脂を用いる。この樹脂を乾燥させて固めたものを乾漆という。ウルシの幹に深い傷をつけ、しみ出てくる半透明で乳白色の粘調な樹液を採取する。

 中国では殷・周の時代から漆液が利用され、日本にも太古に渡来したと考えられ、縄文時代の遺跡から漆塗りの容器が出土している。漆液は空気にさらされると酸化して硬くなり、化学変化に強く、耐久性があるため塗料や接着剤として利用されてきた。

 ウルシに含まれるウルシオールはしばしばアレルギー反応を引き起こし、漆かぶれの状態になる。ちなみに漆かぶれには沢蟹をつぶしたものをつけるという民間療法がよく知られている。

 日本産のウルシの主成分はウルシオールであるが、ベトナム産のアンナンウルシはラッコール、ビルマ産のビルマウルシはチチコールを主成分とし、日本産の品質が最も優れている。一般に薬用には乾漆を用いるが、生薬を丸薬として用いることもある。

木曜日, 5月 02, 2013

生地黄

○生地黄(なまじおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を用いる。生地黄というのは、採集後3ヶ月以内の新鮮な根のことで、採取した後、乾燥した砂の中で保存したものである。

 日本では国産の新鮮な地黄を生地黄と呼び、入手可能な期間は12~1月と限られている。ただし、実際には日本の市場にはほとんど流通していない。中国では生地黄として鮮地黄(鮮生地)と干地黄(干生地)の両者を含むが、ここでは鮮地黄のことを説明し、干地黄は別項に記す。

 地黄にはイリドイド配糖体のカタルポール、レオヌライド、アウクビン、糖類のマンニトール、スタキオースなどのほか、β-シトステロール、カロテノイドなどの成分が含まれている。地黄エキスでは血糖降下作用や強心・利尿作用、肝庇護作用、抗菌作用などが認められている。

 漢方では清熱・涼血・止血・生津の効能があり、熱病による脱水状態で口渇が激しいとき、斑疹がみられるとき、血熱妄行による出血などに用いる。例えば、熱病に伴う斑疹には犀角・牡丹皮を配合する(犀角地黄湯)。血熱妄行による吐血や下血に搾った汁を単独で、あるいは側柏皮・茜草根などと配合する(四生丸)。発熱時の便秘には玄参・麦門冬などと配合する(増液湯)。微熱や盗汗があり、舌が鏡面舌を呈し、口腔内が乾燥している多ときには沙参・麦門冬なとど配合する(一貫煎)。

 金匱要略ではベーチェット病などと想定されている百合病に対して、百合の煎液に生地黄の汁を加えた処方の記載がある(百合地黄湯)。そのほか傷寒論、金匱要略で生地黄が用いられている処方として炙甘草湯、防已地黄湯がある。ちなみにジオウの汁などを原料とした練り薬に瓊玉膏というのがある。これはジオウの搾汁を3日3晩、蒸しながら練り続けて製造され、薬性を熟地黄へと変化させたものであり、古くから不老長寿の薬として知られているものである。

水曜日, 5月 01, 2013

常山

○常山(じょうざん)

 東南アジアやインド、中国の南部に自生するユキノシタ科の常緑低木ジョウザンアジサイ(Dichroa febrifuga)の根を用いる。同じユキノシタかにアジサイがあり、やや似ているためにジョウザンアジサイという名がある。

 この若葉も蜀漆と呼ばれて薬用にされる。薬材の根の質は堅くて重く、鶏骨のようであることから、かつて鶏骨常山といわれていた。中国ではクマツヅラ科のクサギ(Clerodendron trichotomum)の根を海洲常山といい、アカネ科のコンロンカ(Mussaenda parviflora)を白常山、ミカン科のコクサギ(Orixz japonica)を臭常山などといい、常山の代用にしていた。

 成分にはアルカロイドのジクロイン(フェブリフジン、イソフェブリフジン)が含まれ、抗マラリア・抗アメーバ赤痢、解熱作用などが認められている。動物のマラリアにはキニーネよりも作用が強いが、人間のマラリアではキニーネより効力が劣る。

 漢方でも抗瘧の効能があり、マラリア(瘧)の治療薬としてよく知られている。マラリアには知母・椰椰子などと配合する(常山飲)。しかし、キニーネよりもはるかに毒性があり、悪心、嘔吐、下痢、胃腸粘膜の充血などの症状がみられる。逆に、この催吐作用を応用して、生のままか大量に用いて痰や毒物を吐かせることもできる。

火曜日, 4月 30, 2013

松香

○松香(しょうこう)

 中国の中南部の各地に分布しているマツ科の常緑高木タイワンアカマツ(Pinus massoniana)やユシュウ(P.tabulaeformis)などのマツの幹からとった樹脂を用いる。枝や幹の節は松節、葉は松葉といい薬用にする。

 マツの幹を刀でV字に削り、流出した油状樹脂を採取する。この粘着性の樹脂は生松脂あるいはテレビンチナ(テレメンチナ)という。テレビンチナには皮膚刺激性があり、吸出し膏としても用いる。このテレビンチナを水蒸気で蒸留した精油がテレビン油であり、精油を除いた残りの滓を冷却して固形にしたものを松香あるいはロジン(マツヤニ)という。

 松香とロジンは成分は同じであるが、ロジンのほうがより精製されている。松香は不規則、半透明な琥珀色の塊で、常温では堅くて断面には光沢がある。成分にはアビエチン酸、ピマール酸などが含まれる。ロジンは絆創膏や硬膏の基剤として用いる。また野球の投手が滑り止めに用いている袋に入った粉末もロジンである(ロジンバック)。

 漢方では排膿・生肌・止痛の効能があり、皮膚化膿症や皮膚病、掻痒症、痔、外傷、筋肉痛、歯痛などに用いる。一般に研って粉末にしたものを外用にしたり、丸剤、散剤として服用する。

 排膿薬としてよく知られる吸出し青膏などの基剤として木蠟などとともに配合されている。またテレビン油はリウマチ、神経痛の塗布剤としても用いる。

水曜日, 4月 24, 2013

小薊

○小薊(しょうけい)

 九州の対馬列島、朝鮮半島、中国の東北部にかけて分布するキク科の多年草アレチアザミ(Breea segetum)の全草又は根を用いる。アレチアザミの花はアザミに似ているが、葉の形は全く異なり、アザミ属ではない。

 一方、アザミとして代表的なノアザミ(Cirsium japonicum)の全草や根は大薊と呼ばれている。また東北地方や北海道、中国東北部からシベリアにかけて分布するエゾノキツネアザミ(B.setosa)も小薊として用いる。

 詳細は不明だがアレチアザミの全草にアルカロイドやサポニンが含まれ、止血、抗菌作用などが報告されている。小薊は大薊と同様に清熱涼血・止血の効能があり、鼻血、喀血、血尿、血便などの症状に用いる。小薊はとくに血尿に効果があり、尿路結石や膀胱炎などによる血尿に藕節蒲黄などと配合する(小薊飲子)。

 新鮮な生のものほど止血作用に優れ、搾った汁を単独で用いる。煎じる場合でも長時間煎じないほうがよい。また皮膚の腫れ物や化膿に内服あるいは外用として用いる。近年、中国では急性肝炎や腎炎、高血圧などに対しての臨床効果が報告されている。

火曜日, 4月 23, 2013

生姜

○生姜(しょうきょう)

 熱帯アジア原産で日本にも古くに渡来したショウガ科の多年草ショウガ(Zingiber officinale)の根茎を用いる。ショウガは食料や香辛料のジンジャーとしても広く用いられている。

 中国で生姜といえば生のヒネショウガのことである。日本でも本来、生姜といえば八百屋にあるヒネショウガのことであったが、日本薬局方では生のものは扱わずに乾燥させたものを生姜とした。このため日本では生のショウガを特に鮮姜といって区別するが、ほとんど用いられていない。また日本でいう生姜は乾燥させているため乾生姜ということもある。

 一般に乾生姜を用いる場合、処方中の生姜の重さの1/3~1/4の量にして代用する。中国と日本での呼称が異なるため注意する必要がある。ここでは本来の生姜、つまり生のヒネショウガについて説明する。

 成分には辛味成分のジンゲロールやショウガオールが含まれ、解熱・鎮痛・鎮咳・鎮吐作用などが認められている。漢方では解表・止嘔の効能があり、外感風寒証や胃寒による嘔吐などに用いる。解毒の効能もあり、半夏や天南星の刺激性や毒性を緩和する。

 そのほか健胃作用もあるため多くの補益剤に大棗・甘草とともに配合されている。ちなみに欧米では育毛のため生の汁や浸出液で頭皮をマッサージするといわれている。

月曜日, 4月 22, 2013

紫陽花

○紫陽花(しょうか)

 日本の各地で栽培されているユキノシタ科の落葉低木アジサイ(Hydrangea macrophylla)の根や葉、花を用いる。アジサイは日本でガクアジサイ(H.macrophylla.f.normalis)から改良された品種で、鎌倉時代に園芸化され、江戸時代には一般に広まった。それとともに中国にも伝えられ、さらに18世紀後半にはイギリスにも紹介された。シーボルトが愛人のお滝さんにちなみH.otaksaと命名したことも有名である。

 アジサイの花は土壌の酸性度と関係し、酸性度の高いときには青色、低いときには桃色が強くなる。花にはルチン、葉にはスキンミン、根にはヒドラナゲノール、フェブリフジンなどが含まれ、抗マラリア作用が報告されている。日本の民間でも花や葉を煎じて解熱薬として用いる。

 アジサイと同じユキノシタ科の薬用植物にジョウザンアジサイ(生薬名:常山)があり、マラリアの治療薬としてよく知られている。有特桂里は方輿輗の中でマラリアには常山よりアジサイの葉の方がよいと記している(紫陽散)。ちなみにアマチャ(甘茶)はアジサイの変異種である。

 北アメリカの先住民はアジサイの近縁種のハイドランジア(H.arborescens)の根を尿路結石や前立腺炎などのときの利尿薬として用いていた。近年、飲食店で料理に添えたアジサイの葉を食べて、吐き気、嘔吐、目眩などの中毒症状を起こしたが、これは生葉に含まれている青酸配当体によるものと断定された。

土曜日, 4月 20, 2013

棕櫚

○棕櫚(しゅろ)

 中国あるいは南九州を原産とするヤシ科の常緑高木シュロ(Trachycarpus fortunei)の葉や葉鞘を用いる。中国では葉柄が短く葉もやや小さいトウジュロ(T.wagnerianus)を用いる。日本では棕櫚葉として、中国ではおもに葉鞘の繊維を棕櫚皮として用いる。

 シュロはヤシ科であるが、耐寒性が強く、東北地方まで栽培されている。葉は幹の頂部から傘のように広がって生え、葉柄の基部の幹は葉鞘部が腐ってできた黒褐色の繊維、つまりシュロ毛に覆われている。このシュロ毛は耐水性があり、ロープや縄、蓑、敷物などに利用される。また若葉や帽子や籠なども作られる。

 中国では棕櫚皮の古いものを陳棕皮というが、廃棄されたシュロ縄などを用いる。また棕櫚皮を容器の中に入れて黒焼きにしたものを棕櫚炭、あるいは陳棕炭という。

 中国医学では棕櫚皮に収渋・止血の効能があり、鼻血、吐血、血尿、血便、性器出血などに用いる。一般に炭にすると止血作用は強まり、陳旧なものほど効果がよいとされている。煎じるよりも棕櫚炭の粉末を直接服用することが多く、また外用薬として鼻血に粉末を直接入れる方法もある。

 日本の民間では棕櫚葉の軽く焙じたものを茶剤として、高血圧や脳卒中に用いる。脳卒中による顔面麻痺や半身不随には棕櫚葉を紅花・白僵蚕などと配合する(強神湯)。また果実の棕櫚実は腎臓病や浮腫の治療に用いられる。

金曜日, 4月 19, 2013

○朮(じゅつ)

 キク科に属する多年草オケラ(Atractylodes japonica)およびその同属植物の根茎を朮という、オケラは、秋にはアザミに似た白い花が咲き、花の周囲は魚の骨のような総苞で覆われている。

 大晦日の夜に京都の八坂神社で行われているオケラ祭りは、オケラを燻べてつけた神灯の火を縄につけて家に持ち帰り、それでつくった雑煮を食べて無病息災を祈念する行事である。また俳句の季語に「蒼朮焼く」とあるように、衣類や書籍がカビないようにオケラを焼きいぶす風習もあった。

 現在、生薬の朮には白朮と蒼朮の2種類があり、日本のオケラ(和白朮)や中国産のオオバナオケラ(A.macrocephala)は白朮に、ホソバオケラ(A.lancea)やシナオケラ(A.chinensis)は蒼朮として区別されている。ただし中国ではオケラを蒼朮のひとつとして扱っている。

 ただし中国ではオケラを白朮として用いず、地方によってはオケラを蒼朮のひとつとして扱っている。もともと日本にはオケラ(白朮)の一種しか自生していなかったが、江戸時代に中国から渡来したホソバオケラ(蒼朮)が栽培されるようになった。かつて日本ではオケラの根茎の周皮を削ったものを白朮とし、そのまま蒼朮としていたこともあった。中国でも6世紀まで、朮はあまり区別されておらず、処方で蒼朮に区別するようになったのは明代になってからである。

 神農本草経に収載されている朮は産地から蒼朮が推定されているが、傷寒論の朮に関しては中国では白朮としているが、吉益東洞は蒼朮にすべきであると主張している。本草綱目では朮とは別に蒼朮をあげ、朮を白朮のこととしている。

 成分的な分析による鑑別として日本薬局方ではアトラクチロンを主成分としてアトラクチロジンを含まないものを白朮、アトラクチロジンを多く含んでほとんどアトラクチロンを含まないものを蒼朮と規定している。

 漢方ではいずれも病的な水分を改善するという燥湿の効能があるが、とくに白朮は胃腸間の水分、蒼朮は体表部の水分を除くのに優れている。また白朮には健脾、補気、元気をつけるのに対し、蒼朮には去風湿の効能があり、関節の浮腫や湿疹などに効果がある。一般に白朮は蒼朮よりも薬性が緩和である。

木曜日, 4月 18, 2013

朱砂

○朱砂(しゅしゃ)

 天然の硫化水銀、辰砂(Cinnabar)の鉱石を用いる。湖南省の辰州に良品を産することから辰砂といい、色が赤いことから朱砂、丹砂など呼ばれる。品質の最もよいものを光明砂という。

 中国では湖南・四川・貴州省などで産出する。大きさや形はまちまちで塊状、薄片状、顆粒状があり、暗紅色ないし鮮紅色で光沢があり、重く、無味無臭である。上等の印肉の朱は朱砂が使われている。

 朱砂の主成分は硫化水銀(HgS)であり、天然品は少量の土や有機物を來雑する。朱砂を過熱し、遊離した水銀の蒸気を冷却すると水銀が得られる(HgS+O2→Hg+SO2)。また逆に水銀と硫黄を用いた合成朱砂もあり、これを霊砂といい、重慶や昆明などで作られている。天然品は非常に高価なので、合成品も使用されている。

 硫化水銀は水に不溶性のためほとんど毒性がないとされるが、そうすると薬理的に作用しないことになる。漢方では重鎮安神薬のひとつで、安伸・定驚の効能があり、痙攣発作や熱性痙攣、めまい、不安、不眠、動機などの精神状態に用いる。一般に丸剤、散剤で用いるが、湯剤としては使用しない。

 不眠や神経症などで不眠、動悸、多夢、煩躁、口渇などの症状のみられるときには黄連・生地黄などと配合する(朱砂安伸丸)。大便が乾燥して秘結するときには芦薈と配合する(更衣丸)。梅毒による皮膚症状や筋肉痛などに亀板・石決明と配合する(紫金丹)。口内炎や歯肉炎、咽頭頭炎などに竜脳・硼砂などと配合した口中に含む(氷硼散)。化膿した傷口には炉甘石・滑石などと配合して外用する(生肌散)。ただし水銀中毒に注意し、長期、多量の服用は避けたほうがよい。

水曜日, 4月 17, 2013

縮砂

○縮砂(しゅくしゃ)

 インドシナ半島や中国の雲南省に分布するショウガ科の多年草シュクシャミツ(Amomum xanthioides)やヨウシュンシャ(A.villosum)の種子塊を用いる。日本薬局方ではシュクシャミツが規定されているが、中国ではおもにヨウシュンシャを用いている。

 種子塊は直径1~2cmくらいの団子状で、3室に分かれており、角室は10~20個の種子が集まってできている。種子は多角形の粒状で、砕くと独特の芳香があり、味は辛い。生薬には白くなっている縮砂もあるが、これは石灰を用いて乾燥させたものである。日本ではショウガ科のハナミョウガの種子を伊豆縮砂といい、かつては縮砂の代用とした。

 種子にはカンファー、ボルネオールなどが含まれ、芳香性健胃薬として知られる。近年、ボルネオールの配糖体であるアモムサイドに鎮静作用のあることが報告されている。

 漢方では理気・化瘀・寛胸・安胎の効能があり、食欲不振、下痢、胎動不安などに用いる。とくにストレス(気滞)による膨満感や腹痛、痞えなどに効果がある。また妊娠のときの悪阻には縮砂を噛んで服用する。

火曜日, 4月 16, 2013

熟地黄

○熟地黄(じゅくじおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を加工したものを用いる。熟地黄には蒸気で蒸す蒸熟地黄と紹興酒などの醸造酒を加えて蒸す酒熟地黄とがある。

 ジオウの根を酒に漬け、それを蒸し器で蒸し、日干しして半乾きしたものを再び酒に漬けるといった行程を全体が黒くなるまで何度か繰り返して行い、九回繰り返して製造したものは九蒸九といわれ、最上品とされている。

 熟地黄は内外ともに漆黒で、光沢があり、柔らかく、断面はしっとりとして、非常に甘味がある。地黄は、修治により生地黄、乾地黄、熟地黄に大別されるが、日本薬局方では両者をジオウとして規定しているため、一般に地黄といえば乾地黄のことをいう。

 生地黄と熟地黄の成分の違いとして、熟地黄への修治の過程でカタルポールなどのイリドイド配糖体が消失し、フェネチルアルコール配糖体のアセトサイドやプロサイドが生成され、オリゴ糖のスタキオースが分解して果糖などの単糖類が増加するといわれている。薬性も生地黄の甘苦・大寒から、熟地黄の甘・微温へと変化し、清熱作用から滋養作用へと効能も変化している。

 漢方では補陰・補血の効能があり、膝や腰の萎弱、性機能低下、泌尿器疾患、月経不順、耳や目の衰えなどに用いる。ただし、熟地黄は吸収されにくいため、胃腸が虚弱な場合には腹が張ったり、便が緩んだりすることがある。ちなみに傷寒論、金匱要略では生地黄と乾地黄のみが用いられており、熟地黄は宋代の本草図経(1058)において初めて登場する。