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土曜日, 4月 20, 2013

棕櫚

○棕櫚(しゅろ)

 中国あるいは南九州を原産とするヤシ科の常緑高木シュロ(Trachycarpus fortunei)の葉や葉鞘を用いる。中国では葉柄が短く葉もやや小さいトウジュロ(T.wagnerianus)を用いる。日本では棕櫚葉として、中国ではおもに葉鞘の繊維を棕櫚皮として用いる。

 シュロはヤシ科であるが、耐寒性が強く、東北地方まで栽培されている。葉は幹の頂部から傘のように広がって生え、葉柄の基部の幹は葉鞘部が腐ってできた黒褐色の繊維、つまりシュロ毛に覆われている。このシュロ毛は耐水性があり、ロープや縄、蓑、敷物などに利用される。また若葉や帽子や籠なども作られる。

 中国では棕櫚皮の古いものを陳棕皮というが、廃棄されたシュロ縄などを用いる。また棕櫚皮を容器の中に入れて黒焼きにしたものを棕櫚炭、あるいは陳棕炭という。

 中国医学では棕櫚皮に収渋・止血の効能があり、鼻血、吐血、血尿、血便、性器出血などに用いる。一般に炭にすると止血作用は強まり、陳旧なものほど効果がよいとされている。煎じるよりも棕櫚炭の粉末を直接服用することが多く、また外用薬として鼻血に粉末を直接入れる方法もある。

 日本の民間では棕櫚葉の軽く焙じたものを茶剤として、高血圧や脳卒中に用いる。脳卒中による顔面麻痺や半身不随には棕櫚葉を紅花・白僵蚕などと配合する(強神湯)。また果実の棕櫚実は腎臓病や浮腫の治療に用いられる。

金曜日, 4月 19, 2013

○朮(じゅつ)

 キク科に属する多年草オケラ(Atractylodes japonica)およびその同属植物の根茎を朮という、オケラは、秋にはアザミに似た白い花が咲き、花の周囲は魚の骨のような総苞で覆われている。

 大晦日の夜に京都の八坂神社で行われているオケラ祭りは、オケラを燻べてつけた神灯の火を縄につけて家に持ち帰り、それでつくった雑煮を食べて無病息災を祈念する行事である。また俳句の季語に「蒼朮焼く」とあるように、衣類や書籍がカビないようにオケラを焼きいぶす風習もあった。

 現在、生薬の朮には白朮と蒼朮の2種類があり、日本のオケラ(和白朮)や中国産のオオバナオケラ(A.macrocephala)は白朮に、ホソバオケラ(A.lancea)やシナオケラ(A.chinensis)は蒼朮として区別されている。ただし中国ではオケラを蒼朮のひとつとして扱っている。

 ただし中国ではオケラを白朮として用いず、地方によってはオケラを蒼朮のひとつとして扱っている。もともと日本にはオケラ(白朮)の一種しか自生していなかったが、江戸時代に中国から渡来したホソバオケラ(蒼朮)が栽培されるようになった。かつて日本ではオケラの根茎の周皮を削ったものを白朮とし、そのまま蒼朮としていたこともあった。中国でも6世紀まで、朮はあまり区別されておらず、処方で蒼朮に区別するようになったのは明代になってからである。

 神農本草経に収載されている朮は産地から蒼朮が推定されているが、傷寒論の朮に関しては中国では白朮としているが、吉益東洞は蒼朮にすべきであると主張している。本草綱目では朮とは別に蒼朮をあげ、朮を白朮のこととしている。

 成分的な分析による鑑別として日本薬局方ではアトラクチロンを主成分としてアトラクチロジンを含まないものを白朮、アトラクチロジンを多く含んでほとんどアトラクチロンを含まないものを蒼朮と規定している。

 漢方ではいずれも病的な水分を改善するという燥湿の効能があるが、とくに白朮は胃腸間の水分、蒼朮は体表部の水分を除くのに優れている。また白朮には健脾、補気、元気をつけるのに対し、蒼朮には去風湿の効能があり、関節の浮腫や湿疹などに効果がある。一般に白朮は蒼朮よりも薬性が緩和である。

木曜日, 4月 18, 2013

朱砂

○朱砂(しゅしゃ)

 天然の硫化水銀、辰砂(Cinnabar)の鉱石を用いる。湖南省の辰州に良品を産することから辰砂といい、色が赤いことから朱砂、丹砂など呼ばれる。品質の最もよいものを光明砂という。

 中国では湖南・四川・貴州省などで産出する。大きさや形はまちまちで塊状、薄片状、顆粒状があり、暗紅色ないし鮮紅色で光沢があり、重く、無味無臭である。上等の印肉の朱は朱砂が使われている。

 朱砂の主成分は硫化水銀(HgS)であり、天然品は少量の土や有機物を來雑する。朱砂を過熱し、遊離した水銀の蒸気を冷却すると水銀が得られる(HgS+O2→Hg+SO2)。また逆に水銀と硫黄を用いた合成朱砂もあり、これを霊砂といい、重慶や昆明などで作られている。天然品は非常に高価なので、合成品も使用されている。

 硫化水銀は水に不溶性のためほとんど毒性がないとされるが、そうすると薬理的に作用しないことになる。漢方では重鎮安神薬のひとつで、安伸・定驚の効能があり、痙攣発作や熱性痙攣、めまい、不安、不眠、動機などの精神状態に用いる。一般に丸剤、散剤で用いるが、湯剤としては使用しない。

 不眠や神経症などで不眠、動悸、多夢、煩躁、口渇などの症状のみられるときには黄連・生地黄などと配合する(朱砂安伸丸)。大便が乾燥して秘結するときには芦薈と配合する(更衣丸)。梅毒による皮膚症状や筋肉痛などに亀板・石決明と配合する(紫金丹)。口内炎や歯肉炎、咽頭頭炎などに竜脳・硼砂などと配合した口中に含む(氷硼散)。化膿した傷口には炉甘石・滑石などと配合して外用する(生肌散)。ただし水銀中毒に注意し、長期、多量の服用は避けたほうがよい。

水曜日, 4月 17, 2013

縮砂

○縮砂(しゅくしゃ)

 インドシナ半島や中国の雲南省に分布するショウガ科の多年草シュクシャミツ(Amomum xanthioides)やヨウシュンシャ(A.villosum)の種子塊を用いる。日本薬局方ではシュクシャミツが規定されているが、中国ではおもにヨウシュンシャを用いている。

 種子塊は直径1~2cmくらいの団子状で、3室に分かれており、角室は10~20個の種子が集まってできている。種子は多角形の粒状で、砕くと独特の芳香があり、味は辛い。生薬には白くなっている縮砂もあるが、これは石灰を用いて乾燥させたものである。日本ではショウガ科のハナミョウガの種子を伊豆縮砂といい、かつては縮砂の代用とした。

 種子にはカンファー、ボルネオールなどが含まれ、芳香性健胃薬として知られる。近年、ボルネオールの配糖体であるアモムサイドに鎮静作用のあることが報告されている。

 漢方では理気・化瘀・寛胸・安胎の効能があり、食欲不振、下痢、胎動不安などに用いる。とくにストレス(気滞)による膨満感や腹痛、痞えなどに効果がある。また妊娠のときの悪阻には縮砂を噛んで服用する。

火曜日, 4月 16, 2013

熟地黄

○熟地黄(じゅくじおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を加工したものを用いる。熟地黄には蒸気で蒸す蒸熟地黄と紹興酒などの醸造酒を加えて蒸す酒熟地黄とがある。

 ジオウの根を酒に漬け、それを蒸し器で蒸し、日干しして半乾きしたものを再び酒に漬けるといった行程を全体が黒くなるまで何度か繰り返して行い、九回繰り返して製造したものは九蒸九といわれ、最上品とされている。

 熟地黄は内外ともに漆黒で、光沢があり、柔らかく、断面はしっとりとして、非常に甘味がある。地黄は、修治により生地黄、乾地黄、熟地黄に大別されるが、日本薬局方では両者をジオウとして規定しているため、一般に地黄といえば乾地黄のことをいう。

 生地黄と熟地黄の成分の違いとして、熟地黄への修治の過程でカタルポールなどのイリドイド配糖体が消失し、フェネチルアルコール配糖体のアセトサイドやプロサイドが生成され、オリゴ糖のスタキオースが分解して果糖などの単糖類が増加するといわれている。薬性も生地黄の甘苦・大寒から、熟地黄の甘・微温へと変化し、清熱作用から滋養作用へと効能も変化している。

 漢方では補陰・補血の効能があり、膝や腰の萎弱、性機能低下、泌尿器疾患、月経不順、耳や目の衰えなどに用いる。ただし、熟地黄は吸収されにくいため、胃腸が虚弱な場合には腹が張ったり、便が緩んだりすることがある。ちなみに傷寒論、金匱要略では生地黄と乾地黄のみが用いられており、熟地黄は宋代の本草図経(1058)において初めて登場する。

月曜日, 4月 15, 2013

十薬

○十薬(じゅうやく)

 日本の各地をはじめ東アジアに広く分布するドクダミ科の多年草ドクダミ(Houttuynia cordata)の全草を用いる。平地ややや湿ったところに普通にみられ、独特の臭気がある。

 この臭いのため中国では魚腥草という。和名は毒が入っていそうなので「毒溜み」、あるいは解毒作用から「毒矯み」といわれている。十薬の語源については十種の効能があるためというのは俗説で、漢名に由来する蕺薬を十薬あるいは重薬に当てたものである。

 一般に花が咲いている5~6月に根を含む全草を採取する。独特の臭気はデカノイルアセトアルデヒドやラウリルアルデヒドによるが、乾燥すると悪臭は消える。そのほか葉や花にはフラボノイドのクエルシトリンやイソクエルシトリンなども含まれる。

 デカノイルアセトアルデヒドに抗菌・抗真菌作用があるが、乾燥すると酸化されてメチルノニルケトンに変化してその作用が失効する。このため乾燥させたドクダミの煎液にあまり解毒作用は期待できないが、利尿、緩下作用や抗動脈硬化作用などが知られている。

 漢方では清熱・解毒・利水・消腫の効能があり、肺炎や気管支炎、腸炎、膀胱炎、腫れ物、痔、脱肛などに用いる。日本漢方では梅毒や腫れ物、湿疹、痔患に金銀花・荊芥などと配合した五物解毒湯が有名である。しかし乾燥させると解毒作用が失効するためか、専ら生のまま外用薬として利用される。

 たとえば新鮮な生の葉を火にあぶって柔らかくしたものを腫れ物の患部に当てて膿を吸い出すのに用いる。蓄膿症にはドクダミの葉を揉んで汁を出したものを鼻に挿入する。また葉の汁を湿疹や痤瘡、水虫、かぶれなどに外用する。痔や脱肛には坐浴用として、あせもには浴湯料として乾燥した葉を用いる。今日ではどくだみ茶として便秘や高血圧、皮膚病などの体質改善に利用されている。

金曜日, 4月 12, 2013

秋石

○秋石(しゅうせき)

 明石には淡秋石と鹹秋石とがあり、人尿を加工したものを淡秋石、石塩を加工したものを鹸秋石あるいは盆秋石という。

 淡秋石の作り方は、秋に童尿を集め、石膏を加えて沈殿させ、上澄み液を捨てるという行程を何回か繰り返し、白く練り上げて小方形の塊にする。鹹秋石の作り方は、石塩に泉水を加えて濾過し、その濾液を加熱蒸発させてできた粉末(秋石霜)をとり、これを蓋のついた磁器の碗に入れて強火で加熱し、塊状の固体にする。

 淡秋石の成分は主に尿酸カルシウムとリン酸カルシウムであるが、鹹秋石の成分は塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムである。漢方では補陰・清虚熱の効能があり、結核による発熱、咳嗽、咽頭腫痛、頻尿、遺精、混濁尿、帯下に用いる。高齢者の体力低下、精力減退、手足のしびれやだるさ、尿失禁などに全鹿・人参・地黄などと配合する(全鹿丸)。

木曜日, 4月 11, 2013

臭梧桐

○臭梧桐(しゅうごとう)

 日本の各地、朝鮮、中国などに分布するクマツヅラ科の落葉低木クサギ(Clerodendrum trichotomum)の若い枝や葉を用いる。根は臭梧桐根という。キリ(梧桐)の葉に似て特異な臭いがあるため臭梧桐とか、クサギ(臭木)という名がある。

 クサギの成熟した果実は碧色となり、江戸時代にはこれを常山の実と呼んで浅青色(はなだ色)の染料として利用していた。現在でもしばしば草木染めに利用されている。また若芽は食用になる。

 茎葉の成分にはクレロデンドリンが含まれ、降圧作用、鎮痛作用が認められている。漢方では去風湿の効能があり、リウマチなどによる疼痛や半身麻痺などの症状に用いられる。

 近年、製剤化したものを高血圧の治療に応用している(風湿豨桐片)。臭梧桐根も同様の効果があり、筋肉痛や関節痛、麻痺などに桑枝・虎杖根などと配合する(桑枝虎杖湯)。

水曜日, 4月 10, 2013

戎塩

○戒塩(じゅうえん)

 古い地質時代に内海や塩湖が干上がって沈殿した食塩が、再結晶してできた岩塩(ハーライト:Halite)を用いる。中国では古くから戎地(西戎)と呼ばれた青海省の塩湖から産出している。

 天然の食品の結晶は光明塩といい、海水を日干しして結晶化させたものは食塩という。いずれも塩化ナトリウム:NaClを主成分とするが、戎塩には來雑物としてカルシウムやマグネシウム、鉄や微量のヒ素なども含まれている。

 漢方では性味は鹸・寒で、止血・明目の効能があり、血尿や歯肉出血、歯痛、結膜炎などに用いる。また滋腎の効能があり、尿失禁の治療に用いる固脬丸には桑螵蛸・菟絲子などと配合されている。金匱要略では尿の出にくいときに茯苓・白朮とともに戎塩を反佐薬として用いている。

火曜日, 4月 09, 2013

茺蔚子

○茺蔚子(じゅういし)

 日本の各地、朝鮮半島、中国から東アジアに賭けて分布するシソ科の越年草メハジキ(Leonurus sibiricus)の果実を用いる。メハジキの花をつけた全草は益母草という。

 果実は長さ2~3mmくらいの小さな褐色の三稜形をしている。成分にはレオヌリニンやビタミンA、脂肪油が含まれる。漢方では益母草と同様に活血・調経・明目の効能があり、月経を整え、目の充血や視力の低下を改善する。ただし多量に服用すると全身虚脱の副作用が出現することもある。

月曜日, 4月 08, 2013

しゃ虫

しゃ虫

 ゴキブリ科の昆虫シナゴキブリ(Eupolyphaga sinensis)、またはマダラゴキブリかに属するサツマゴキブリ(Opistoplatia orientalis)の雌の成虫全体を乾燥して用いる。

 シナゴキブリは中国全土に分布し、スッポン(鼈)に似た形をしているため、地鼈虫とか土鼈虫と呼ばれている。サツマゴキブリには前方に淡黄色の縁取りがあるため金辺土鼈とも呼ばれ、中国南部、台湾、日本などに分布している。中国では民家などで普通に見られるゴキブリであるが、薬用として各地で飼育もされている。いずれも体長3cmくらいの黒く光沢のある偏平な虫で雌には翅がなく腹節が見える。

 成分にはd-ガラクトサミンなどが含まれ、肝障害抑制作用などが報告されている。漢方では水蛭・虻虫と同様の強い駆瘀血薬のひとつで、活血・化瘀・消癥の効能があり、婦人の無月経や産後の腹痛、腹部腫瘤、打撲傷に用いる。

 産後の腹痛や瘀血による月経閉止には大黄・桃仁と配合する(下瘀血湯)。腹部の腫瘤や無月経、皮膚の甲錯には水蛭・虻虫などと配合する(大黄しゃ虫丸)。骨折や捻挫には骨砕補・続断などと配合する(接骨Ⅱ号方)。ただし、流産の恐れがあるので妊婦には使用しない。

 また香港や台湾の市場にはしゃ虫としてゲンゴロウ科のコガタノゲンゴロウが混入されている。これは俗に水鼈虫・水亀子といわれるもので、正式な生薬名を龍虱という。

土曜日, 4月 06, 2013

蛇退皮

○蛇退皮(じゃたいひ)

 各種のヘビ(蛇)の脱皮した抜け殻を用いる。中国産の蛇退皮はサキシマスジオ(Elaphe taeniurus)、シュウダ(E.carinata)、ウショウダ(Zaocys dhumnades)などの脱皮膜である。日本産はアオダイショウ、シマヘビ、ヤマカガシなどの抜け殻が用いられる。

 神農本草経には蛇蛻の名で収載され、古くから薬用にされていた。漢方では止痙・定驚・退翳・消腫の効能があり、小児のひきつけ、口内炎、角膜混濁、乳腺炎、腫れ物、皮膚病などに用いる。一般に火であぶって粉にしてから使用する。

 内服と外用のいずれにも用いられる。小児のひきつけにや咽頭腫痛に粉末を服用する。腫れ物に粉末を豚脂で調整して塗布する。民間では黒焼きにして胡麻油と混ぜ、中耳炎に点滴する。

木曜日, 4月 04, 2013

車前子

○車前子(しゃぜんし)

 日本各地、東アジアに広く分布するオオバコ科の多年草オオバコ(Plantago asiatica)の種子を用いる。中国ではムジナオオバコ(P.depressa)も用いられる。オオバコの全草は車前草という。

 花穂が成熟したころに刈り取って、手で揉み選別して種子を集める。なお車前子はおもに花期に採取する。路傍によく生えているため車前の名があり葉が大きいことから大葉子という。

 全草には配糖体のアウクビンやプランタギニン、種子には粘液質のプランタゴムシラーゲAやアウクビン、プランテノール酸、アクテオシドなどが含まれ、プランタギンには鎮咳・去痰作用がある。薬理的には車前草に気道粘液の分泌作用による去痰作用、車前子に利尿作用が認められる。車前草のエキスには鎮咳・去痰薬として医療用にも用いられている(フスタギン)。

 漢方では利水・通淋・居痰・止咳・明目の効能があり排尿障害や膀胱炎、血尿、下痢、咳嗽、多痰、関節痛、結膜炎などに用いる。車前草にも清熱・利水・去痰・明目の効能があり、同様の症状に用いる。一般に利水作用は車前子、清熱・去痰作用は車前草が優れている。

 民間では葉をあぶって腫れ物に貼り、毒を吹き出すのに用いられる。ヨーロッパでも同属のヘラオオバコ(P.lanceolata)やプシリウム(P/psyllium)の葉をオオバコと同様に肺疾患や膀胱炎に、またそれらの種子を緩下薬として用いている。

火曜日, 4月 02, 2013

沙参

沙参(しゃじん)

 中国東北部の遼寧・杏林・黒龍江省に分布するキキョウ科の多年草サイヨウシャジン(Adenophora terraphylla)、中国中部に分布するトウシャジン(A.axilliflora)およひ同属食部の根を用いる。

 日本でも古くからトウシャジンが栽培され、東北地方では野生化している。また同属植物のツリガネニンジン(A.triphylla)の根も沙参として扱われ、日本産や韓国産はおもにこれを用いている。ところで中国市場には北沙参と南沙参の2種類があり、日本でも沙参としっているのは南沙参のことである。北沙参はハマボウフウ(Glehnia littoralis)の根であるが、これは日本の浜防風に相当する。

 沙参の成分にはサポニンやイヌリンが含まれ、局所刺激作用や去痰作用が知られている。漢方では補陰・止咳・去痰の効能があり、肺熱による咳嗽や咽頭腫痛、口渇、咽乾などに用いる。北沙参と南沙参の薬効はほぼ同じであるが、補陰作用は北沙参のほうが強く、去痰作用は南沙参が強い。

月曜日, 4月 01, 2013

蛇床子

○蛇床子(じゃそうし)

 中国東北部、モンゴル、シベリア、朝鮮半島に分布するセリ科の越年草オカゼリ(Cnidium monnieri)の成熟果実を用いる。日本では一般に同じセリ科のヤブジラミ(Torilis japonica)の成熟果実を蛇床子(和蛇床子)といっている。ただし、中国ではヤブジラミの果実を鶴虱のひとつである華南鶴虱にあてている。

 オカゼリの乾燥した果実は、長さ2mm、直径1mmの小さな楕円形で、芳香があり、味は辛くしびれる感じがある。成分にはピネン、カンフェン、ボルネオール、イソバレレイトなどの精油のほか、オストールなどのクマリン類が含まれ、抗トリコモナス・抗真菌作用、性ホルモン作用などが知られている。

 漢方では補陽・止痒・殺虫の効能があり、陰部湿疹、外陰部掻痒症、湿疹、インポテンツ、不妊症などに用いる。古くから婦人の陰部疾患の治療に用いられ、トリコモナス膣炎や陰部掻痒症、陰囊湿疹などに蛇床子の煎液で洗浄する。

 金匱要略の中では婦人の陰部を温める坐薬として蛇床子と白粉の粉末を真綿にくるんで使用している(蛇床子散)。また湿疹、掻痒症の治療には蛇床子の煎じた液や粉末にしたもの、最近ではワセリンに配合した蛇床子油膏などを外用する。

 また補腎・強壮作用もあり、インポテンツや冷感症、不妊症の治療に菟絲子・五味子を配合する(三子丸)。また痔患の治療に燻じて用いる方法もある。日本の民間ではヤブジラミの果実を明礬と煎じてやはり外陰部の腫れ物の洗浄に用いる。近年、アメリカの精力剤にクニディアム・モニアーの名前で配合されている。

土曜日, 3月 30, 2013

麝香

○麝香(じゃこう)

 中国東北部からチベット、ヒマラヤにかけて生息しているシカ科の動物ジャコウジカ(Moschus moschiferus)の雄のジャコウ腺分泌物を用いる。ジャコウジカはシカを小型化したような動物で雌雄ともに角はなく、上顎の犬歯が下に伸びて牙のようになっている。岩石の多い高山地帯に生息し、夜行性で単独あるいは一対で生活する。

 オスの陰茎と臍の間に外皮と密着して袋状のポッド(麝囊)と呼ばれるは器官があり、その中に含まれる分泌物が麝香(ムスク)である。発情期の雄は雌を誘うためにこのムスクを少量ずつ排出する。

 ジャコウジカの麝という字は鹿と「鼻を突き刺す匂い」をあわせたものであるが、ムスクはそのままでは糞尿以上に強烈な悪臭が鼻を刺す。ところが、これを千分の一以下に薄めると芳香を放つ。中国では古くから薬用にしているが、ヨーロッパやアラビア人が愛好している。健在でもシャネルの5番など高級な香水の原料になっている。

 かつては捕獲したジャコウジカを殺してポッドごと摘出したいたが、絶滅の恐れがあるとして現在では生きたままポッドから分泌物のみを採取している。分泌物は新鮮なときは黒褐色の軟膏状であるが、乾燥すると黄褐色や赤紫色の粉末となる。とくに黒褐色の顆粒状のものを当門子という。

 麝香は非常に高価な薬材であり、現在、中国の四川省などでジャコウジカの人工飼育が行われている。同様の動物性の香料としてジャコウネコの霊猫香があり、同じく薬用にもされる。麝香の芳香主成分はムスコンであり、また少量のノルムスコンや男性ホルモンが含まれ、薬理的に中枢神経刺激、強心、呼吸増加、降圧、抗菌・抗炎症作用、性ホルモン作用などが報告されている。

 漢方では開竅・活血・催産の効能があり、おもに芳香開竅薬として高熱時の意識障害や脳卒中、痙攣発作、危急の症状などに用いる。そのほか狭心痛、腹痛、分娩促進、腫れ物などに用いる。

 脳卒中や高熱時の意識障害には牛黄・竜脳などと配合する(至宝丹)、興奮状態やひきつけ、高熱に伴う精神不安などには牛黄・羚羊角などと配合する(牛黄清心丸)。難産や後産が遅れたときには肉桂と粉末にして服用する(香桂散)。咽頭の腫痛や癰疔などの皮膚化膿症に牛黄・蟾酥などと配合する(六神丸)。日本でも気つけ薬として知られ、動悸や胸痛に用いる六神丸救心、小児の発熱や痙攣に用いる宇津救命丸や樋屋奇応丸などの家庭薬にも配合されている。ただし子宮に対する興奮作用があり、妊婦は服用しないほうがよい。

金曜日, 3月 29, 2013

鷓鴣菜

○鷓鴣菜(しゃこさい)

 温暖な地域の沿岸や河口付近に分布する海藻コノハノリ科のセイヨウアヤギヌ(Caloglossa leprieurii)の全藻を用いる。かつて鷓鴣菜を日本の駆虫薬である海人草の別名とする説もあったが、海人草は紅藻類のフジマツモ科のマクリ(Digenea simplex)のことである。ちなみに鷓鴣とは中国南部に生息する鶉に似た鳥のことである。

 アヤギヌは1~4cmくらいの紫色の偏平な海藻で岩や防波堤に付着している。鷓鴣菜は海人草と同様にカイニン酸を含み、鷓鴣菜の煎液には回虫の駆虫作用が認められる。内服による副作用はほとんどないが、とき下痢、悪心、めまいがみられることがある。

 漢方でも駆虫の効能があり、回虫や蟯虫の駆虫薬として大黄・甘草と配合して用いる(三味鷓鴣菜湯)。また南西諸島から台湾、フジマツモ科のハナヤナギ(Chondria armata)を南西諸島ではドウモイと呼んで、古くから駆虫薬として用いていた。その有効成分はドウモイ酸と呼ばれ、カイニン酸より強力といわれる。

木曜日, 3月 28, 2013

芍薬

○芍薬(しゃくやく)

 白芍は外皮を除いて湯通ししたもの、赤芍は中国東北部の野生種の皮を去らずに乾燥したものを使用する。現在、四川省で栽培された芍薬の皮を去らずに乾燥させたものが日本薬局方のシャクヤクに適合することから、日本で赤芍として使用されている。

 中国北部原産のボタン科の多年草シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根を用いる。日本には、奈良時代に渡来したといわれ、室町時代には栽培の記録がある。現在では奈良県や北海道で栽培されている。シャクヤクの属名をペオニアというが、これはギリシャ神話の医神、パイオンに由来するもので、西洋でも古くから薬用植物として知られていた。

 同属植物にボタン(P.suffruticosa)がある。ボタンは落葉低木であるのに対し、シャクヤクは多年草であり、冬にはその地上部が枯れてしまう。シャクヤクは初夏に大きな花を咲かせるためよく観賞用として栽培されているが、薬用にするときには蕾を全部摘み取ってしまい、植え付けから4~5年栽培した後の肥大した根を用いる。日本の芍薬は「第13改正日本薬局方」では乾燥重量でペオニフロリン2%以上を含むものを規定されている。

 芍薬は最古の本草書「神農本草経」の中品に収載され、「シャクヤク、味苦、平、邪気腹痛を主り、血痺を除き、堅積、寒熱、疝瘕を破り、痛みを止め、小便を利し、気を益す」とあり、赤白の区別はされていなかったが、宋代の頃から区別されるようになった。今日、中国では芍薬は赤芍と白芍に区別され、通常、古くは白い花のものを白芍、赤い花のものを赤尺といっていたこともある。

 現在、日本では赤尺は日本薬局方に適合しないことが多いため、白芍のみを芍薬として用いている。また日本では皮を去って生干しした芍薬が用いられているが、中国では皮を去った後、湯通ししてから乾燥させた芍薬(真芍)が白芍として流通している。中国医学において白芍と赤尺の効能は異なり、白芍はおもに補血・止痛として、赤芍はおもに活血・清熱薬として用いる。

水曜日, 3月 27, 2013

赤石脂

○赤石脂(しゃくせきし)

 中国の各地で採掘される赤褐色ないしは淡紅色のケイ酸塩類の粘土状鉱物ハロイサイト(Halloysite)の一種を用いる。神農本草経には五色石脂として収載されているが、古来よりおもに赤石脂と白石脂が薬用にされてきた。

 赤石脂の主成分は含水ケイ酸アルミニウム(Al2O3・2SiO2・4H2O:カオリナイト)であるが、酸化第二鉄(Fe2O3)を多く含むため赤色を帯びている。また脂のような滑らかさや光沢があるため赤石脂の名がある。

 鉄分のほかにもマグネシウム、カルシウム、マンガンなども少量含まれている。アルミニウム類薬物は胃腸ではほとんど吸収されず、内服では胃腸の局所作用が種であるといわれる。一般に収斂・吸着作用が強いとされ、下痢や出血、潰瘍などに効果がある。

 漢方では止瀉・止血・生肌の効能があり、慢性の下痢や血便、脱肛、遺精、子宮出血、皮膚潰瘍などに用いる。遷延化した細菌性腸炎などによる下痢、粘血便、膿便、腹痛に粳米・乾姜などと配合する(桃花湯)。不性器出血や帯下などに代赭石・五霊脂などと配合する(震霊丹)。

 内蔵下垂や脱肛などには黄耆・柴胡などと配合する(提肛散)。熱病に伴う痙攣やひきつけ、半身不随、顔面神経麻痺などに竜骨・牡蠣などと配合する(風引湯)。また外傷や皮膚潰瘍にも外用する。

火曜日, 3月 26, 2013

柿餅

○柿餅(しへい)

 東アジアの温帯に分布するカキノキ科の常緑高木カキの果実を加工して餅状にしたものを用いる。英語でもkakiというが、奈良時代に中国から渡来したという説が有力である。

 樹のままで渋みが抜ける甘柿と自然には脱渋しない渋柿とがあり、前者はお温暖地に多く、後者は寒冷地でも栽培できる。おもに渋柿の成熟した果実の外皮をむき、1ヶ月間、日や夜露にあてて乾燥し、さらに1ヶ月は室内でムシロの中に放置すると柿餅ができる。そのうち、日干ししたものを白柿、火で薫じたものを烏柿という。

 柿の果実は糖類、ペクチン、カロテノイド、ビタミンC、タンニン、酵素類が含まれ、栄養価は高い。カキの渋みはシブオールを主成分とするタンニンのためであるが、熟していくにつれタンニン細胞が凝固、収縮して褐色班に変化し、タンニンが不溶性となって渋味がなくなる。熟した柿には止咳・止渇の効能があり、二日酔いなどの酒毒を解する作用がある。

 漢方では潤肺・止血・止瀉の効能があり、咳嗽や血痰、喀血、痔、下痢などに用いる。なま生のカキは冷やす性質が強く、食べ過ぎると腹痛や便秘の原因となる。