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土曜日, 3月 22, 2014

夏皮

○夏皮(なつかわ)

 ミカン科の常緑低木ナツミカン(Citrus natsudaidai)の成熟した果実の果皮を用いる。未熟果実はダイダイなどとともに枳実、枳殻としても用いられる。ナツミカンは18世の初め、山口県長門市青梅島の海岸に漂着した果実の種子を蒔いたものが原木とされている。ナツカン(夏柑)、ナツダイダイ(夏橙)ともいう。

 酸味が強いため、江戸時代には食酢として用いられていたが、夏に食べると美味しいことから栽培されるようになった。昭和初期にナツミカンの突然変異種で酸味の少ないアマナツが大分県の果樹園で発見され、現在では生産されているほとんどがアマナツである。

 夏皮には特異な芳香と苦味があり、d-リモネンを主成分とする精油、フラバノン配糖体のナリンギン、クマリン誘導体などが含まれている。夏皮は橙皮などの代用や芳香性健胃薬の家庭薬、芳香料として浴剤などに用いられる。

 新鮮な果皮はオレンジ油やミカン油の原料となる。またナツミカン、ダイダイなど柑橘類の果皮の油分を除いた後に末としたものは柑皮末といい、賦形剤として用いられる。

木曜日, 3月 20, 2014

豚脂

○豚脂(とんし)

 イノシシ科動物のブタ(Sus scrofa domestica)の脂肪を用いる。ブタは古くから家畜として飼育されていた動物で、薬用にもあらゆる臓器が利用されている。ブタの脂肪はラードともいわれ、食用や石鹸の原料のほか軟膏基剤としても重要である。

 組成は飼料や品種、採油する部位により著しく異なるが、一般に成分はオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、βパルミトディオレインのグリセリドなどが含まれる。豚脂は常温で無色半透明の半固体であり、融点は36~42℃と人間の体温とほぼ同じである。

 軟膏基剤として利用される利点は四季を通じて半固体で、皮膚に対する刺激が少なく、皮膚への浸透性も優れている。一方、欠点としては臭いやベトつきがある。薬用には一般に腹部の脂肪が用いられ、臭いの少ないものが良品である。

 漢方では補虚・潤燥・解毒の効能があり、皮膚の亀裂や便秘、咳嗽などに用いる。火傷や霜焼け、ひび、痔患などに胡麻油・紫根・当帰などと配合する(紫雲膏)。金匱要略の中に、黄疸で尿利の悪いときの内服薬として猪膏に血余炭と配合した猪膏髪煎が収載されている。

水曜日, 3月 19, 2014

登呂根

○登呂根(とろこん)

 日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するナス科の多年草ホウズキ(Physalis alkekengi)の根を用いる。中国では根を酸漿根といい、全草を酸漿、がくを挂金灯という。日本では果実を登呂実という。

 花の後ろにがくが肥大し、果実を包みこみ、鮮やかな赤に変化する。中には赤い液果があり、中の種子を取り出してや手遊びに用いられる。がくの様子から燈籠草ともいわれ、日本の登呂根の名はそれに由来する。液果には酸味があるため、中国では酸漿と呼ばれている。

 全草には苦味成分のフィサリンやフラボノイドルテオリン、根にはチグロイルオキシトロバンが含まれている。薬理的に煎液に抗菌作用、子宮興奮作用などがあり、また果実には解熱・強心作用がみられる。

 漢方では清熱・利水の効能があり、マラリアや黄疸、浮腫に用いる。全草には活血・化痰・止痛の効能があり、咳嗽、吐血、打撲傷、腫れ物などに用いる。原南陽も咳止めの妙薬として果実の黒焼きを用いた。また生の果実は虫下し、根や全草は発熱や咳嗽、淋病、婦人病、、母乳不足などに用いる。

 かつてホウズキの青い果実を鎮静剤に、赤い果実は腹痛など胃腸病全般に用いた。いずれの部分も子宮を収縮させるため、妊娠中には用いないほうがよい。古くは堕胎薬としても知られていたが、堕胎には根を煎じて服用するだけでなく、根を子宮に入れる方法もあった。

月曜日, 3月 17, 2014

土木香

○土木香(どもっこう)

 ヨーロッパ、北アジア原産で北米などでも野生化しているキク科の大型多年草オオグルマ(Inula helenium)の根を用いる。日本には江戸時代に薬用として渡来し、大和や信濃などで栽培されていたと伝えられている。

 木香とはインド原産のキク科のモッコウ(Saussurea lappa)の根をいうが、木香の代用にされることから土木香の名がある。木香よりも弱いが、土木香にも芳香がある。欧米ではリキュールやベルベットの香料、菓子原料として、またドイツではスープなどにも入れられる。

 根にはアラントラクトンを主成分とする精油やイヌリンが含まれ、アラントラクトンは家畜の駆虫作用や抗菌作用などがある。本来、ヨーロッパの薬草(エレキャンペーン)であり、発汗、利尿、去痰薬として知られている。かつては結核の特効薬といわれ、今でも喘息や気管支炎などの呼吸器系の治療に用いられている。また疥癬やヘルペスなどの皮膚病の外用薬としても用いられる。

 漢方では木香と同様に健胃・理気・止痛の効能があり、脇腹部の脹満や疼痛、嘔吐、下痢、マラリアなどに用いる。江戸時代には腹痛や胃腸炎の製薬として知られた木香丸には香附子・黄柏・胡黄連とともに土木香が配合されていた。現在でも家庭薬の賦香料として用いられている。

木曜日, 3月 06, 2014

土茯苓

○土茯苓(どぶくりょう)

 中国からインドにかけて分布するユリ科のつる性落葉低木ケナシサルトリイバラ(Smilax glabra)の根茎を用いる。生薬名を中国では土茯苓というが、日本では一般に山帰来と呼んでいる。

 ところで日本にはケナシサルトリイバラは自生していないが、よく似た同属植物のサルトリイバラ(S.china)が自生し、サルトリイバラには刺があるがケナシサルトリイバラには刺はない。このサルトリイバラの根茎を、日本ではとくに和山帰来と呼んでいるが、中国では菝葜と称して別に扱っている。

 ケナシサルトリイバラの根茎にはサポニン、タンニン、樹脂などが含まれているが、薬理作用は明らかでない。漢方では清熱・解毒・去湿の効能があり、梅毒や慢性の皮膚疾患、化膿性疾患、頸部結核に用いる。とくに古くから梅毒の治療薬および水銀剤の解毒薬として知られている。今日でも家庭薬の便秘薬や皮膚疾患治療剤にサンキライの名でしばしば配合されている(複方毒掃丸)。

 香港のデザートとして有名な亀苓膏(亀ゼリー)にも配合されている。また近年、中国ではレプトスピラ病や麻疹の予防や治療に用いられている。中央アメリカに産する同属植物のサルサパリラ(S.officinalis)の根は、かつて梅毒、感染などの皮膚病、リウマチなどの血液浄化薬、強壮薬として利用されていた。このサルサパリラはカリブ海地方の清涼飲料水(ルートビアー)の香味料としても有名である。

水曜日, 3月 05, 2014

独活

○独活(どっかつ)

 日本では本州、四国、九州、中国などに分布するセリ科の多年草シシウド(Angelica pubescens)およびその近縁植物の根や根茎を用いる。日本産の独活(和独活)はウコギ科のウド(Aralis cordata)の根茎(宿根)のことをいい、側根は羗活(和羗活)という。

 中国産の独活のひとつに四川や雲南省に産する九眼独活が含まれるが、これは日本産と同じウドの根茎と根である。現在、日本の市場では中国産の唐独活と日本産の和独活が流通しており、単に独活といえば和独活のことをいい、中国産の独活はとくに唐独活と呼ばれている。

 シシウドの根にはクマリン誘導体のほか、アンゲロール、アンゲリコン、オストールやアンゲリシンなどが含まれている。このうちオストールには鎮痛・抗炎症作用が認められている。漢方では去風湿・止痛・通経絡の効能があり、筋肉や関節の痛み、手足の痙攣、腰痛、熱病、頭痛、歯痛などに用いる。

 漢方理論によると風湿の邪による痛みやしびれに用い、しばしば羗活と配合する。独活と羗活との違いは、風湿の邪のうちで風を主とするときは独活、水湿を兼ねるときには羗活がよいといわれる。また羗活は芳香の気が強く上部を治療し、独活は味厚で足腰を治療するという説がある。

 ちなみに滋賀県の伊吹山の名産、伊吹百草はシシウドの地上部を刻んだものとヨモギが配合されており、浴湯料として神経痛、リウマチ、冷え性などに応用されている。

火曜日, 3月 04, 2014

土通草

○土通草(どつうそう)

 日本の北海道から九州にかけて分布するラン科の大型の多年草ツチアケビ(Galeola septentrionalis)の果実を用いる。ツチアケビはナラタケと共生する腐生ランで、葉がなく、全体が黄褐色をしている。草丈は50~100cmで、秋に赤いバナナのような肉質の果実をつける。

 この果実がアケビに似て、土から生えることからツチアケビと呼ばれ、アケビの漢名である通草(現在は木通)をつけて生薬名を土通草と称している。つまり土通草というのは和製漢名であり、日本独自の薬草で中国では用いられていない。

 日本では古くから強壮・強精・利尿の効能があるとされ、果実を煎じて服用する。甘草とともに煎じて淋病に用いる。また黒焼きにして頭髪油と混ぜて頭部のできものに塗布する。

月曜日, 3月 03, 2014

杜仲






○杜仲(とちゅう)

 中国原産であるトチュウ科の常緑高木トチュウ(Eucommia ulmoides)の樹皮を用いる。日本産の和杜仲はニシシギ科のマサキ(Euonymus japonicus)であり、成分や薬効が異なり代用にはならない。最近では長野県の伊那谷や広島県の因島などでトチュウの栽培が行われている。

 トチュウの葉や樹皮には2~7%のグッタペルカが含有され、このため杜仲の樹皮を剥ぐと、綿状の繊維の木綿がある。薬材を選ぶ際には折ると白糸を引くものが良品とされている。グッタペルカというのは東南アジアで栽培されているアカテツ科のグッタペルカノキ(Palaquium gutta)の木の幹から得られる乳液中のゴム質の成分と同じものである。

 グッタペルカは絶縁材料や歯科用セメントなどに用いられているが、トチュウでは含有量が少なく経済性がない。グッタペルカと薬効の関係は不明であるが、杜仲のエキスには降圧・利尿・中枢抑制作用などが知られている。

 漢方では肝腎を補い、腰や膝の筋骨を強め、流産を防止する効能があり、足腰の萎弱や酸痛、排尿困難、陰部湿疹、帯下、不正子宮出血、高血圧などに用いる。高齢などで足腰の衰えや性機能障害のみられるときには地黄・山薬などと配合する(右帰丸)。リウマチや脚気などで下肢が麻痺して痛むときには防風・羗活などと配合する(大防風湯)。

 中国では杜仲をコウリャン酒に漬けた杜仲酒が強精剤として有名であるが、日本でも薬用養命酒の中に配合されている。近年、日本では、杜仲の葉を用いた杜仲茶が健康茶として市販されている。

 杜仲茶に含まれるイリドイド配糖体のゲニポシド酸は、副交感神経に作用して血管を弛緩させ、血圧を低下させる作用があり、特定保健用食品として認められている。その他、杜仲葉には尿や便の排出を促進し、体内脂肪を低下させる働きも報告され、生活習慣病に対する予防・改善効果が期待されている。

土曜日, 3月 01, 2014

杜松実

○杜松実(としょうじつ)

 日本の関東地方以西、朝鮮半島、中国に分布しているヒノキ科の常緑低木、ネズ(Juniperus rigida)の球果を用いる。ネズサシともいうが、葉の先が針のように尖っていて、この葉のついた小枝をネズミ穴に差し込んでおくとネズミが通らなくなるためその名がある。

 ヨーロッパでは同属植物のヨウシュネズ(J.cimmunis)の球果が古くから薬(ジュニパー)として用いられていた。17世紀、オランダの医師が熱性疾患の治療を目的として蒸留酒にその果実を加えた薬酒を用いたが、これが蒸留酒のジンの起源とされている。

 果実の精油成分には利尿・発汗作用のあるジテルペン酸などが含まれている。欧米では古くからジュニパーベリー(Juniper berry)のハーブティーを発汗・利尿薬として膀胱炎や尿道炎、浮腫、風邪、痛風、疝痛などに用いている。

 ジュニパーベリーの製油はアロマテラピーなどにも利用され、蒸気吸入やアロマバス、オイルマッサージなどで、ストレスの緩和、排尿障害や痛風や神経痛などの改善に用いられている。ただし、過量に使用すると胃腸粘膜を刺激したり、タンパク尿や血尿が出ることがあるので注意が必要である。中国でも近年になって利尿・去風湿薬として浮腫や痛風に用いている。またリウマチに果実の汁を塗布する。

金曜日, 2月 28, 2014

菟絲子

○菟絲子(としし)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するヒルガオ科のつる性一年草ネナシカズラ(Cuscuta japonica)の種子を用いる。そのほかハマネナシカズラ(C.chinensis)およびマメダオシ(C.australis)の種子も用いる。日本では中国産のハマネナシカズラを小粒菟絲子と呼んで区別している。

 ネナシカズラは寄生植物で他の植物にからみつき、吸盤で養分を吸収しながら成長する。宿主植物が決まると根に続くころが枯れて根がなくなるためネナシカズラの名がある。

 種子の成分にはカロテンやタラキサンチン、ルテインなどが含まれる。漢方では補陽・固精・明目・止瀉・強壮の効能があり、足腰の酸痛、遺精、消渇(糖尿病)、視力低下、排尿障害などに用いる。おもに滋養強壮剤として腎陰虚や腎陽虚になどに用いる。

 疲労、腰痛、耳鳴、胃腸障害には熟地黄・山薬・枸杞子などと配合する(左帰飲・右帰飲)。インポテンツや遺精、頻尿、下肢倦怠感などには鹿茸・附子などと配合する(大菟絲子丸)。視力低下や白内障には石斛・菊花などと配合する(石斛夜光丸)。日本でも滋養強壮の薬用酒として菟絲子酒が知られている。

木曜日, 2月 27, 2014

吐根

○吐根(とこん)

 ブラジル南部を原産とし密林に自生するアカネ科の木本状の多年草トコン(Cephaelis ipecacuanha)の根を用いる。3年以上の株の値を乾燥させ、一定期間貯蔵したものを用いる。マレー半島やスリランカでも栽培されている。

 成分のトコンアルカロイドにはエメチンやセファエリンなどが含まれる。エメチンにはアメーバに対する強い毒性や知覚神経を刺激による催吐作用、去痰作用もみられ、またセファエリンにはエメチンより強い催吐作用がある。もともとブラジルの原住民は下剤として用いていたが、ヨーロッパに伝えられてアメーバ赤痢の特効薬として知られるようになった。

 少量では食欲増進、去痰剤としても使用される。今日でも代表的な催吐剤である。日本では余り普及していないが、欧米では胃洗浄の代わりに吐根シロップを用いることのほうが多い。日本では浅田飴など市販薬の鎮咳・去痰薬にしばしば配合されている。

月曜日, 2月 24, 2014

杜衝

○杜衝(とこう)

 中国の江蘇、省を産地とするウマノスズクサ科の多年草トコウ(Asarum forbesii)の根または全草を用いる。日本では近縁植物のカンアオイ(A.nipponicum)の根を杜衝あるいは土細辛という。トコウの根は近縁植物のウスバサイシン(生薬名:細辛)の根と似ているため土細辛という名があるが、根の香りは細辛よりも弱い。

 トコウの根には精油中に芳香性のメチルオイゲノール、サフロール、エレミシンや鎮咳作用のあるピペコール酸などが含まれている。漢方では散寒・止痛・平喘の効能があり、感冒時の頭痛や咳嗽、歯痛、胃痛、肋間神経痛などに用いる。細辛の代用品として用いられることもあるが、香気・薬効ともに細辛には及ばない。

金曜日, 2月 21, 2014

土荊芥

○土荊芥(どけいがい)

 メキシコおよび西インド原産のアカザ科の一年草アリタソウ(Chenopodium ambrosioides)の花穂のついた全草を用いる。日本には天正年間に南蛮人によって伝えられ、ルウダソウの別名もある。アリタソウの名は佐賀県有田で栽培されていたという説やスペイン語のルーダに由来するという説がある。近年では毛の多いケアタリソウやアメリカアリタソウなどが北米大陸から帰化して日本各地に自生している。

 アリタソウの全草に独特の強い臭いがあり、この草を家の入り口にかけておけば災いを免れるといった言い伝えもある。全草には精油のヘノポジ油が含まれ、その主成分はアスカリドールである。

 アスカリドールは加熱すると爆発する性質があり、寄生虫に対する強い駈虫作用がある。またアメーバ赤痢や白癬菌症に対しても効果がある。しかし、過量に服用し、吸収されると悪心、嘔吐を起こし、ひどければ腸管麻痺や耳鳴り、難聴、視覚障害、痙攣や意識障害などの副作用があるため、必ずヒマシ油などの下剤と併用する。

 漢方では性味は辛・温・有毒であり、駆虫・殺虫の効能がある。中国では駆虫薬として用いるほか、関節リウマチや脱肛にも用いられる。また頭虱や湿疹、毒蛇咬傷、出血などに外用する。メキシコや中南米ではエパソーテ(Epazote)と呼ばれ、独特の匂い科のある香辛料として利用され、薬用としては腹部膨満や無月経、マラリア、喘息などに効果のあるハーブとして知られている。

木曜日, 2月 20, 2014

土槿皮

○土槿皮(どきんぴ)

 中国の浙江・安徽省などの高地に分布するマツ科の落葉高木イヌカラマツ(Pseudolarix amabills)の樹皮および根皮を用いる。カラマツに似た樹高40mに達する高木で、秋に鮮やかな黄色に染まるため金銭松とか金松の名がある。華東地方で用いられていた民間薬であるため本草書にはなく、近年になって注目されてきた生薬である。

 樹皮や根皮にはフェノール性物質やタンニンなどが含まれ、抗真菌作用や止血作用が知られている。中国では専ら水虫やたむしの外用薬として有名である。土槿皮という名はアオイ科のムクゲ(Hibiscus syriacus)の樹皮である木槿皮の効能と似ていることに由来する。

 土槿皮のチンキ剤には強い抗真菌作用が認められるが、水浸液には抗真菌作用はみられない。皮膚真菌症、湿疹、神経性皮膚炎にはアルコールに浸したエキス、またはすり潰して粉末にしたものを患部に塗布する。日本でも複方土槿皮チンキという名で水虫の治療薬として販売されている。

水曜日, 2月 19, 2014

土瓜根

○土瓜根(どかこん)

 日本、台湾、中国の各地に分布しているウリ科のつる性多年草カラスウリ(Trichosanthes cucumeroides)の根を用いる。

 カラスウリは神農本草経では土瓜と呼ばれ、金匱要略に土瓜根という名で記載されているが、現在では一般に王瓜根と呼ばれている。種子も王瓜子と呼ばれ薬用にされる。同属植物のキカラスウリ(栝楼)の根は栝楼根としてよく知られているが、土瓜根はしばしば栝楼根の代用としても利用されてきた。

 カラスウリの根には多量のデンプンやアルギニン、コリンが含まれる。漢方では清熱・止渇・利尿・活血の効能があり、熱による口渇や尿量減少、扁桃炎、月経異常、打撲傷などに用いる。

 月経困難症や月経の回数が多いときには桂枝・芍薬・シャ虫と配合する(土瓜根散)。日本の民間では催乳薬としても知られ、母乳の出をよくするために用いる。また根のデンプンを天花粉あるいは「汗しらず」と称して夏の汗疹に用いられている。ただし天花粉というのは、本来、栝楼根のことをいう。

月曜日, 2月 17, 2014

銅緑

○銅緑(どうりょく)

 銅を湿った空気中に放置すると表面に緑色の銹ができる。この成分は塩基性炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2)である。また銅に酢酸の蒸気をかけるとやはり緑色の塩基性酢酸胴の銹ができる。これらの銹を銅緑という。

 日本では一般に緑青と呼んでいる。また天然の塩基性炭酸銅を主成分とする緑色の鉱物に孔雀石(マラカイト:Malachite)があり、これを砕いて生薬としたものは緑青という。これらは古くから猛毒があると信じられていたが、国立衛生試験場の研究で、それほど毒性の強い物質ではないことが明らかにされた。

 漢方では退翳・去腐・瘡の効能があり、角膜混濁や結膜炎、瘡、痔、歯槽膿漏などに用いる。ただれ目の挿入薬として鉛粉・艾と配合する(金竜散)。

土曜日, 2月 15, 2014

藤梨根

○藤梨根(とうりこん)

 日本各地、朝鮮半島、中国東北部に分布するマタタビ科の落葉つる性藤本サルナシ(Actinidia arguta)、シナサルナシ(A.chinensis)の根および根皮を用いる。シナサルナシはキウイの原種であり、中国ではキウイのことを獼猴桃という。サルナシは小さいながらもキウイと同様の果実がなり猿が好んで食べることからその名がある。

 中国の民間薬として清熱・利尿・活血・消腫の効能があり、肝炎や浮腫、関節痛などに用いられている。また、中国では古来より、胃癌、直腸癌、乳癌等に対する効果が知られており、現在でも検討されている。

金曜日, 2月 14, 2014

桃葉

○桃葉(とうよう)

 中国を原産とするバラ科の落葉小高木モモ(Prunus persica)あるいはノモモ(P.persica var.davidiana)の葉を用いる。モモの種子は桃仁、花および蕾は白桃花と称して薬用にされる。モモは多くの果実をつけることから木に兆と書き、日本でもももも(百々)という名がある。

 モモの葉にはタンニンやニトリル配糖体が含まれ、鎮咳作用やボウフラ殺虫作用が知られている。漢方では去風湿・清熱・殺虫の効能があり、頭痛や関節痛、湿疹などに用いる。

 近年、中国では桃葉によるマラリアや膣トリコモナス、蕁麻疹などの治療が報告されている。日本ではモモの葉は浴湯料してよく知られ、刻んだ葉を風呂に入れて夏場のあせもや湿疹、かぶれ、荒れ性などに応用する。

 かつてツツガムシ病の特効薬として、焼き石の上に桃の葉を並べ、その上に座って足についたツツガムシを殺したり、桃の枝で作った針でほじり出したと伝えられている、また、ふけ症には葉の煎液で洗ったり、脱肛に濃く煎じた液で坐浴する方法もある。

水曜日, 2月 12, 2014

動物胆






○動物胆(どうぶつたん)

 さまざまな動物の胆嚢および胆汁を薬用に用いる。魚類では鯉魚胆やヤツメウナギの胆、爬虫類ではヘビの蛇胆、鳥類ではニワトリの鶏胆、哺乳類ではクマの熊胆、ブタの猪胆、ウシの牛胆などが薬用にされている。

 近年、熊胆の入手が困難なため、その代用として牛の胆汁を濃縮した牛胆が用いられている。また牛黄はウシの胆嚢や胆管にできた胆石である。胆嚢は肝臓で作られた胆汁を蓄え、濃縮する臓器であり、食事によって胆嚢の収縮が起こり、胆汁が腸に排泄される。

 一般に動物の胆汁には胆汁色素、胆汁酸塩、脂肪酸、コレステロール、レシチンなどが含まれている。胆汁酸塩は胆汁酸がナトリウムやカリウムと結合したもので、胆汁酸はコール酸、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸などがグリシンと結合したグリリコール酸か、タウリンと結合したタウロコール酸として存在する。動物によってこのグリリコール酸とタウロコール酸の比が異なっているるちなみに牛黄の主成分はデオキシコール酸、熊胆はウルソデオキシコール酸である。

 胆汁酸は水に不溶性の脂肪や脂溶性ビタミンなどを乳化させ、酵素作用を活性化させる作用があり、動物の胆嚢および胆汁には抗菌作用、利胆作用、鎮咳作用、鎮痙・止痛作用などのあることが知られている。

 漢方では性味は苦寒であり、清熱・解毒・平肝・鎮驚・明目・通便などの効能があるとされている。日本の大衆薬である救心などには動物胆、敬震丹には牛胆・鯉胆が配合されている。また中国の片仔癀には蛇胆が含まれている。

火曜日, 2月 11, 2014

橙皮

○橙皮(とうひ)

 ヒマラヤ原産のミカン科の常緑低木ダイダイ(Citrus aurantium)やアマダイダイ(C.sinensis)の成熟した果実の果皮を用いる。ダイダイの未成熟果実は枳実・枳殻として用いる。

 ダイダイは奈良時代に日本に伝来し、古くはカムスとも呼ばれていた。ダイダイという名は果実は枝についたまま数年(代々)も落ちないことにより、カムス(蚊無須)と名は干した皮を焚いて蚊よけにしたことによる。ちなみに果肉をしぼった汁をポン酢というのは、オランダ語のポンスから出ている。

 アロマオイルでは、ダイダイはビターオレンジとして有名で、花から得られた精油はネロリ(Neroli:橙皮油)、果皮からの精油はビターオレンジ、木の葉と小枝から抽出した精油はプチグレン(Petitgrain)と呼ばれている。

 果皮には主としてd-リモネンからなる精油やナリンギン、ヘスペリジンなどが含まれる。橙皮は西洋医学的に芳香性苦味健胃剤として苦味チンキや橙皮シロップの原料にも使われている。漢方では理気・健胃・去痰の効能があり、陳皮の代用として消化不良、二日酔いなどにも用いる。

 民間療法ではダイダイを酒に漬けた液で手や顔の荒れを治したり、果皮を干したものを煎じて車酔い、風邪、咳のときに服用する。また疝気や婦人の腹痛などに用いられた。

月曜日, 2月 10, 2014

桃仁

○桃仁(とうにん)

 中国北西部を原産とするバラ科の落葉小高木モモ(Prunus persica)あるいはノモモ(P.persica var.davidiana)の核の中にある種子を用いる。花は白桃花、葉は桃葉と称して薬用にする。日本には古くから伝えられ、弥生時代の遺跡からモモの種子が発見されている。すでに平安時代から栽培されていたが、専ら花の観賞用だったといわれている。

 果樹としての記録は江戸時代からであるが、当時の桃は小さく果肉が硬かったと考えられ、今日のような栽培品種は明治以後に導入されたものである。ただ薬用の桃仁としては、果物用の白桃や水蜜桃では種子が小さいため適さない。

 桃仁の成分として脂肪油40~50%、青酸配糖体のアミグダリン、酵素のエムルシンなどが含まれ、薬理作用として抗炎症作用、鎮痛作用、血小板凝集抑制作用、綿溶系活性作用などが知られている。月経障害、腹部腫瘤、下腹部痛、神経痛、打撲傷、内臓の化膿症、便秘などに用いる。

 漢方では活血・排膿・潤腸の効能があり、白桃花は利尿・緩下剤として浮腫や脚気、便秘の治療に、桃葉は浴湯料として皮膚病などに用いられる。

金曜日, 2月 07, 2014

冬虫夏草






○冬虫夏草(とうちゅうかそう)

 中国の四川・貴州・雲南省、チベット自治区などに産する蛾の幼虫に生えたキノコの一種を用いる。バッカクキン科のフユムシナツクサタケ(Cordyceps sinensis)と呼ばれる菌類で、とくにコウモリガ科の昆虫の幼虫に寄生する。

 幼虫(栄養体)の体内に入った菌は菌糸をのばして生長し、やがて体内を完全に占領し、さらに細い柄(子実体)を出してキノコが発生する。幼虫の長さは3~8cm、子実体は4~10cmの棍棒状で頭部がやや膨らんでいる。市販されている薬材は全長が10cm前後、黄褐色である。

 冬には虫の姿をし、夏に変じて草になると信じられていたため冬虫夏草の名があり、古来、ウドンゲとともに吉祥の印として知られていた。夏至の頃に雪が残っている山に入って、雪の表面から露出している子実体を見つけて掘り出す。かつて冬虫夏草という名はこの中国産のみの名称であったが、現在では一般に昆虫寄生菌に対する総称となっている。日本でも同様の昆虫寄生菌が発見されることもあり、またセミの幼虫に寄生したセミタケを特に金蝉花という。

 近年、中国では冬虫夏草の代替品として北虫草が人工栽培されている。北虫草はイコガの幼虫に冬虫夏草菌の一種C.militarisを寄生させたもので、冬虫夏草と比べ、亜鉛、セレン、ビタミンの量が多いことが認められている。

 冬虫夏草の成分には各種アミノ酸、ビタミンB12、ミネラルのほか、コルディセピン(虫草酸)、ジオクシアデノシン(虫草素)、ポリサッカライド(虫草多糖)、マンニトール(甘醇露)、エルゴステロールパーオキサイドなどが含まれ、抗菌作用、気管支拡張作用、血糖降下作用、降圧作用、免疫賦活作用、抗腫瘍作用などが報告されている。

 漢方では肺腎を補い、去痰・止咳の効能があり、肺結核などによる慢性の咳嗽、喀血、自汗、盗汗、インポテンツ、病後の体力低下などに用いる。虚弱体質の改善に人参、鹿茸などと配合する(双科参茸丸)。

 冬虫夏草は古くから不老不死、滋養強壮の妙薬といわれ、薬酒(冬虫夏草酒)や薬膳料理などにも珍重されている。1993年の世界陸上選手大会で活躍した中国の女子陸上チームが「冬虫夏草入りドリンク」を愛飲していたと大きく報じられ、ブームとなったためそれ以後価格が大きく上昇した。

木曜日, 2月 06, 2014

稲草






○稲草(とうそう)

 イネ科のイネ(Oryza sativa)の茎葉を用いる。コメはその粘性によって粳と糯に区別されるが、いずれの茎葉も稲草として用いる。一般にはもち米(糯米)を収穫した後の地上部を用いる。種子はうるち米を粳米、もち米を糯米といい、もち米の根と根茎を糯稲根鬚といい、二番芽を餅苗という。

 稲草には理気・消食の効能があり、消化不良、食滞、下痢、腹痛、糖尿病に用いる。糯稲根鬚には止渇・止汗・清虚熱の効能があり、病後の衰弱や盗汗、口渇、微熱などに用いる。糯米には補気・健脾の効能があり、多尿、発汗、下痢などに用いる。

水曜日, 2月 05, 2014

刀豆

○刀豆(とうず)

 熱帯アジア原産のマメ科のつる性多年草ナタマメ(Canavalia gladiata)の種子を用いる。ミャンマーや中国雲南省に自生し、インドや東南アジア、中国南部では栽培されて食用とされる。ナタマメや刀豆の名はさやの形が刀や鉈に似ていることによる。

 ナタマメはタンパク毒を有するが、水煮のあと数時間水にさらせば食用二できる。日本にも江戸時代に渡来し、現在ではおもに若い豆果を福神漬けとして用いている。

 一般にナタマメ属の完熟種子にはサポニンや青酸配糖体、有毒性アミノ酸のカナバニンやコンカナバリンAなどの有毒成分が含まれている。ナタマメ属の毒性は品種により異なり、タチナタマメ(C.ensiformis)やタカナタマメ(C.microcarpa)などには強い毒性がある。

 日本で栽培されているナタマメには、アカナタマメとシロナタマメの品種がある。アカナタマメにはある程度の毒性があるが、水煮の後、数時間水にさらせば食用にできる。一方、シロナタマメには毒性はほとんどないといわれている。

 カナバニンはアルギニンとよく似た化学構造をしており、タンパク質を生合成するときにアルギニンと識別できないため、生命に重大な支障をきたすといわれている。一方、カナバニンの排膿作用、抗炎症作用、血行促進作用なども報告されている。

 コンカナバリンAは、世界で始めて精製、結晶化された植物性の赤血球凝集素であり、抗腫瘍作用が知られている。漢方では温裏・止嘔・補陽の効能があり、しゃっくりや嘔吐、下痢、腰痛などに用いる。日本の民間では膿とりの妙薬といわれ、蓄膿症や歯槽膿漏痔漏などに用いられる。近年、豆を焙煎したナタマメ茶が慢性的な炎症体質者の健康茶として利用されている。

火曜日, 2月 04, 2014

灯心草

○灯心草(とうしんそう)

 日本全土、朝鮮、中国に分布し、水田の畦や湿地に自生するイグサ科の多年草イグサ(Juncus effusus)の茎および髄(灯心)を用いる。日本でもトウシンソウともいうが、古くからあるいはイグサと呼ばれ、その茎は畳表や花むしろの材料として利用されてきた。

 とくに江戸時代以後に瀬戸内海地方(備後・備中)で盛んに栽培されていた。イグサの髄は白くて弾力性があり、それをとってロウソクや灯明の芯に用いた。このため灯心草と呼ばれ、江戸時代には生活の必需品であった。薬材としてもこの髄を乾燥したものが市場に出ている。

 全草にはキシラン、アラバンなどの多糖類やフラボノイドのルテオリンなどが含まれているが、薬理作用は明らかでない。漢方では利水・通淋・除煩の効能があり、膀胱炎などによる排尿障害、浮腫、不眠、心煩、小児夜泣きなどに用いる。

 全身性に浮腫があり、呼吸困難のみられるときには茯苓・沢瀉などと配合する(導水茯苓湯)。肝硬変などによる腹水には蒼朮・白朮などと配合する(分消湯)。気分がすぐれないときには桂枝・蘇葉などと配合する(分心気飲)。「和方一万方」には黒焼きにして末にしたものを乳首に塗り、小児の夜泣きのときに飲ませる方法が記されている。民間療法ではイグサを噛み砕いて傷の止血に用いる。

月曜日, 2月 03, 2014

党参

○党参(とうじん)

 中国の山西・陝西・四川省などに産するキキョウ科のつる性多年草ヒカゲツルニンジン(Codonopsis pilosula)および同属植物の根を用いる。潞洲上党産の人参という意味である上党人参という名から党参と呼ばれていたが、清代になってウコギ科の人参とは別のものとして区別されるようになった。

 四川・河北省に産する同じキキョウ科のトウジン(C.tangshen)も川党と称され、党参のひとつとして用いられている。またセリ科のミントウジンの根を明党参というが、これは止咳・去痰薬であり党参の代用とはならない。

 成分にはサポニンやイヌリンが含まれるが、詳細は不明である。漢方では補中・益気・生津の効能があり、疲労倦怠、食欲不振、口渇、下痢、脱肛、咳嗽、呼吸困難などに用いる。一般、中国では人参が高価であるため、党参を人参の代用品として幅広く用いている。

 党参は補益作用は人参よりも弱く、人参の量の2~3倍を必要とするがね胃腸機能を高める作用は強く、また性質が穏やかで血圧に影響することも少ない。また貧血改善作用もあるといわれている。補気には黄耆と配合し、補血には当帰と配合し、健脾には白朮と配合し、補陰には麦門冬と配合する。

金曜日, 1月 31, 2014

硇砂






○硇砂(どうしゃ)

火山の溶岩の中や温泉に存在する天然のハロゲン化合物類の鉱物、塩化アンモン石の結晶を用いる。アンモニウムはエジプトのアンモンの神殿の付近で採れた岩塩ということに由来する。古くは腐敗尿から採取したが、現在ではアンモニア水を塩酸で中和したり、アンモニアソーダ法により炭酸ナトリウムを製造する際の副産物として得られる。

硇砂は透明ないし半透明の繊維状、粒状の白色結晶であるが、純水の塩化アンモニウム(NH4Cl)は無色透明の結晶である。硇砂には塩化アンモニア無のほかに少量のFe、SO4、Ca、Mgなどが含まれている。塩化アンモニウムは塩安ともいわれ、肥料としてよく知られている。また医薬品として利尿剤、去痰剤として用いられたこともある。

漢方では性味は鹹・苦・辛・温・有毒で、消積・消癥・軟堅散結の効能があり、腹部の腫瘤、嘔気、痰飲などに内服薬として、腫れ物、腫瘤、疣贅などに外用薬として用いる。嘔気や嘔吐、げっぷ、胸の痞えに平胃散に生姜とともに加える(硇砂丸)。

木曜日, 1月 30, 2014

透骨草

○透骨草(とうこつそう)

 透骨草の基原植物としてさまざまな種類の植物が利用されているが、一般にはトウダイグサ科のダイダイグサ(Speranskia tuberculata)やツリフネソウ科のホウセンカ(Impatiens balsamina)の全草が用いられる。ただしホウセンカには全草を鳳仙、その種子を急性子という生薬名もある。

 そのほか透骨草としてシソ科のメハジキ、マメ科のツルフジなども知られている。また香港ではシソ科のカキドオシ(連銭草)が透骨草として流通している。

 漢方では去風湿・止痛の効能があり、リウマチなどによる筋肉痛や関節痛、筋肉の痙攣、脚気、腫れ物などに用いる。しかし漢方薬というより、むしろ痛み止めの民間薬としてよく知られている。外用薬として用いることも多く、化膿性の皮膚炎などで腫れて痛むところを煎液で洗ったり、外相や蛇咬傷などに生のまま貼付して用いる。また咽に刺さった骨の治療には新鮮な汁を用いる。

水曜日, 1月 29, 2014

冬葵子






○冬葵子(とうきし)

 ヨーロッパ原産で世界各地に分布しているアオイ科の多年草フユアオイ(Malva verticillata)の種子を用いる。しかし、現在では、冬葵子として市場に流通しているものの中にはアオイ科の一年草イチビ(Abutilon avicennae)の種子も含まれている。ちなみにイチビの中国名は茼麻または莔麻といい、種子の本来の生薬名は茼実という。

 イチビはインド原産であり、日本には古い時代に繊維植物として中国から渡来し、栽培されていた。イチビの種子、茼実の効能はフユアオイの種子とは異なっているため、冬葵子の代用となり得るかどうか定かではない。

 漢方では利水・通淋・通便・通乳の効能があり、排尿障害、膀胱炎、浮腫、乳房の腫脹などに用いる。尿量が減少して浮腫のみられるときには茯苓などと配合する(葵子茯苓散)。尿路結石などには車前子・金銭草などと配合する。産後に母乳の出が悪かったり、乳腺が腫れて痛むときにも用いる。便秘には桃仁・郁李仁などと配合する。

 なお、中薬大辞典にはよると茼実は下痢、翼状片、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、腫れ物に用いるとある。近年、韓国ではフユアオイの葉に便通を促進する効能があるといわれ、冬葵茶(トンギュンチャチャ)が便秘やダイエットの健康茶として話題になっている。

火曜日, 1月 28, 2014

当帰






○当帰(とうき)

 日本では奈良県や北海道で栽培されているセリ科の多年草トウキ(A.acutiloba)の根を用いる。日本の本州中部より北の山地にはミヤマトウキ(var.iwatensis)が自生しており、日本で栽培されているのはこの栽培種のトウキ(日本当帰・東当帰)である。中国産のものはカラトウキ(A.sinensis)といわれ種類が異なっている。

 日本で栽培されている当帰には昔から吉野地方で栽培されてきた大和当帰(別名:大深当帰)と昭和になって北海道で作られた北海当帰の2種類がある。品質は大和当帰、収量は北海当帰が優れているため、現在では北海当帰が多く出回っているが、交配種も多く栽培されている。

 当帰は甘味のある甘当帰系と辛味のある辛当帰系があり、大深当帰は甘当帰系であるが、北海当帰や中国産・韓国産は辛当帰系といわれている。日本では根の全体、すなわち全当帰を用いるが、中国では根の頭部を当帰頭、主根部を当帰身、支根部を当帰尾あるいは当帰鬚として区別することもある。日本薬局方では中国産のカラトウキは除外しているが、近年、日本のトウキを中国や韓国で栽培加工した生薬も日本で流通している。

 根には精油成分としてリグスチライド、サフロール、ブチリデンフタライド、そのほかクマリン誘導体のベルガプテン、ファルカリノール、脂肪酸などが含まれている。薬理作用として鎮痛・消炎作用や中枢系や循環器に対する効果が報告されている。漢方で重視されている作用は明らかではない。

 漢方では補血・活血・調経・潤腸の効能があり、月経不順、虚弱体質(血虚)、腹痛、腹腔内腫瘤、打撲傷、しびれ、皮膚化膿症、便秘などに用いる。

 トウキは婦人科領域の主薬であり、また「血中の気薬」ともいわれ、中国医学では当帰頭は補血、当帰身は養血、当帰尾は破血、全当帰には活血の効能があるといわれているが、日本では区別することは少ない。また中国では当帰の味を甘・辛としているが、日本産の大深当帰には辛味がほとんどない。

 近年、米国のハーバリストは当帰のことを”Dong Quai”とか、”Chinese angelica”と呼んで、月経不順や月経前症候群、更年期障害などの治療に用いている。一方、西洋では西洋アンゼリカ(A.archangelica)が、婦人病などの治療に用いられている。

月曜日, 1月 27, 2014

唐辛子






○唐辛子(とうがらし)

 南米原産で世界各地で栽培されているナス科の多年草トウガラシ(Capsicum annuum)やシマトウガラシ(C.frutescens)の成熟果実を用いる。唐芥子というが、日本には桃山時代のころにポルトガルから伝来し、中国にはそれより遅く明朝末期に導入されたといわれている。

 明代に著された「本草綱目」にはその名はなく、蕃椒という中国名は南蛮から伝わったことを表したものである。辛味の強い香辛料としてレッドペパー(Red pepper)と呼ばれ、カレー粉や七味唐辛子などに配合されている。とくに朝鮮料理の代表的な香辛料で、コチュと呼ばれている。

 果実には辛味成分のカプサイシンなどが含まれ、皮膚刺激作用や健胃作用が認められている。またカプサイシンは、交感神経を刺激し、発汗作用や熱産生作用があり、脂肪燃焼を促進させることから、ダイエット素材としても注目されている。

 近年、同様の効能を有するカプシエイトを含むトウガラシの品種改良も行われている。また、カロテノイドとして赤色色素成分のカプサンチンのほか、クリプトキサンチン、β-カロテン、ルテインなどが含まれている。中国医学では辛熱の温裏薬と分類され、健胃薬として食欲不振、消化不良に用いている。

 ただし、トウガラシは漢方薬ではなく、オランダ医学の流れをひいた薬草である。家庭薬は外用薬や温湿布として神経痛、筋肉痛や凍瘡などに対して用いられている。また発毛刺激剤としても古くから利用されている。

 民間療法ではトウガラシを腹でも頭でも痛む部位に貼り付ける。そのほか蚊を忌避させる作用があり、常食していると蚊に刺されないといわれる。ただし、皮膚刺激作用によりただれなどの皮膚炎を起こしやすく、また多量の摂取は胃腸の炎症や痔を悪化させる。

土曜日, 1月 25, 2014

冬瓜子






○冬瓜子(とうがし)

 熱帯アジア原産とされるウリ科のつる性の一年草トウガン(Benincasa hispida)の成熟種子を用いる。また果実を冬瓜、果皮は冬瓜皮といい薬用にする。

 トウガンは古くに中国から渡来し、10世紀ころには日本でも栽培が行われていた。今日では一般に8~9月に収穫されるが、古くは霜の下りるころに収穫され、また貯蔵性に優れており、冬の食べ物としてよく利用されていた。このため冬瓜の名がある。果肉の味は淡白で、独特の風味があり、スープや煮物、漬物などに利用される。

 種子にはサポニン、脂肪、タンパクのほか、アデニン、トリゴネリンなどが含まれる。漢方では清熱化痰・排膿の効能があり、肺炎による咳嗽や肺化膿症、虫垂炎などの化膿性疾患に用いる。

 肺癰(肺化膿症)などで咳嗽、喀痰、胸痛などの症状のあるときには芦根・薏苡仁などと配合する(葦茎湯)。腸癰(虫垂炎)などで右下腹部に痛みのあるときには大黄・牡丹皮などと配合する(大黄牡丹皮湯・腸癰湯)。また冬瓜や冬瓜皮には利水・消腫の効能があり、浮腫や排尿障害などに茯苓・沢瀉・猪苓などと配合する。

金曜日, 1月 24, 2014






○銅(どう)

 は古くから中国や日本では(小金)・(白金)と並んで三品といわれ、今でも銅のことをアカガネ(赤金)とも呼んでいる。銅は日本に比較的多く産出する金属で、銅鉄鋼としては黄銅鋼が最も重要である。鉱物学的にいえば天然に単体で産する銅を自然銅というが、生薬の自然銅は黄鉄鉱のひとつである。

 銅(Cu)は動物にとって必須元素であるが、ほとんどの食物に微量ながら含まれているため、一般に銅の欠乏症はみられない。金属銅は無害であるが、水に溶けた銅イオンは有毒である。足尾銅山鉱毒事件は鉱山から流出した銅イオンが稲や小麦の生育に障害を与えた公害問題であった。しかし銅イオンの人に対する毒性は低く、体内の蓄積や重篤な組織障害はみられない。

 一方、銅は造血に関与し、骨折に対して良好な影響がある。ただし、硫酸銅、酢酸銅などは内服すれば迷走神経を刺激して反射性の嘔吐を引き起こす。また銅塩の稀溶液は局所的な収斂作用があり、とくに眼科に応用される。

 銅を含む漢方生薬として硫酸銅の胆礬、炭酸銅や酢酸銅の銅緑、炭酸化合物の扁青、塩化化合物の緑塩などがある。扁青は深銅鉱を砕いたもので、2CuCO3・Cu(OH)2を成分とし、緑塩はCu2(OH)3Clを成分とする緑色の結晶体で、細かく研って点眼薬として角膜混濁や充血、流涙、眼脂などに用いる。

木曜日, 1月 23, 2014

天羅水

○天羅水(てんらすい)

 ウリ科のヘチマ(Luffa cylindrica)の茎中の汁を用いる。ヘチマの果実は糸瓜といい、果実の繊維を糸瓜絡という。盛夏から夏の終わりごろ、ヘチマの茎の地上50cmのところで切り、雨水が入らないように根のほうの切り口を瓶の中に入れておくと一昼夜でヘチマ水がとれる。普通、一株から2L以上のヘチマ水がとれる。このままでは腐敗しやすいため、煮沸してから濾過し、リスリンやアルコール、さらに安息香酸ソーダを混和する。

 ヘチマ水はかつて美人水ともいわれ、江戸時代には幕府の奥女中のために献上されたことが記されている。民間では化粧水に用いるときはヘチマ水にホウ砂を少し加え、よく振って溶かして用いる。入浴後にヘチマ水を顔や手足につけると、肌の潤いが保たれる。またヒビやしもやけ、湿疹などに外用薬として用いる。

 足によく擦り込んでおくと、足の冷えがよくなるともいわれている。このほか咳が出て痰が切れないときは内服せずに、含嗽料として用いる。「痰一斗、ヘチマの水も間に合わず」は正岡子規の辞世の句として知られている。

水曜日, 1月 22, 2014

天雄





○天雄(てんゆう)

 キンポウゲ科の多年草トリカブト類の細い根を天雄という。一般にトリカブト類の根は附子という名でよく知られているが、根は茎に続く塊根(母根)の周囲に数個の新しい塊根(子根)が連成している。

 本来、この母根を烏頭といい、子根を附子という。しかし、子根を有しない細長い根のこともあり、この根は子を産まない天性の雄ということから、とくに天雄と呼ばれている。一説によると早春に茎を伸ばし始めたころの新しい母根のことともいわれている。

 漢方では去風湿・温裏・補陽の効能があり、烏頭や附子とほぼ同様である。強い毒性があるため、一般に強火であぶったり、乾姜などで調整加工して用いる。現在、日本では流通していない金匱要略に収載されている天雄散はインポテンツや滑精、腰や膝が冷えて痛むときに用いられている。

火曜日, 1月 21, 2014

天門冬

○天門冬(てんもんどう)

 日本の関東地方以南、台湾、中国などの暖かい海岸の砂地に自生するユリ科のつる性多年草クサスギカズラ(Asparagus cochinchinensis)の塊根を用いる。スギの葉に似た葉状枝のあることからクサスギカズラといわれ、同属植物にはアスパラガスがある。短い根茎に紡錘形に肥大した塊根が多数付いている。

 根には粘液質やアスパラギン、βシトステロール、サポニンなどが含まれ、抗菌作用やインターフェロン誘起作用が報告されている。漢方では滋陰清熱・化痰の効能があり、咳嗽、吐血、口渇、咽頭の腫痛などに用いる。作用は麦門冬とほぼ同じで、おもに陰虚による咳嗽や微熱、炎症に用い、しばしば二冬と称して両者を併用する。とくに肺陰虚による高齢者などの慢性の咳嗽や粘稠痰の症状に適している。

 慢性気管支炎や気管支拡張症などで痰が粘稠で切れにくく、咳が続くときには黄芩・桔梗などと配合する(清肺湯)。高齢者の肺結核などで慢性的な咳嗽や粘稠痰のあるときには地黄・麦門冬などと配合する(滋陰降火湯)。口腔や歯肉、咽頭に潰瘍や炎症があって腫れて痛むものに枇杷葉・地黄などと配合する(甘露飲)。

 民間では滋養・強壮や咳止めの効果があるとして薬酒に用いている(天門冬酒)。天門冬の蜂蜜漬けも強壮・咳止めに利用されている。近年、中国において天門冬の抗癌作用が研究されており、白血病や乳腺癌などに対する効果が検討されている。

土曜日, 1月 18, 2014

天名精

○天名精(てんめいせい)

 日本の全土、朝鮮半島、中国などに分布するキク科の越年草ヤブタバコ(Carpesium abrotanodes)の根や茎を用いる。根から出た葉の形が卵形でタバコの葉に似ているためヤブタバコという。ちなみにヤブタバコの果実は鶴虱といい、駆虫薬として知られている。

 全草には精油、イヌリンが含まれ、果実にはカルペシアラクトンなどが含まれる。漢方では清熱解毒・去痰の効能があり、扁桃炎や咽頭炎、気管支炎などに用いる。また歯痛のある部位に生の天名精を詰めたり、外傷や腫れ物などを煎じた液で洗う。また全草の粉末をゴマ油で練って作った軟膏を火傷の患部につける。

金曜日, 1月 17, 2014

天麻

○天麻(てんま)

 日本、中国、台湾などに分布するラン科の多年草オニノヤガラ(Gastrodia elata)の根茎を用いる。雑木林の中の陰湿地に生える腐生ランの一種で、塊茎でナラタケの菌糸と共生して栄養分を作るため、オニノヤガラには葉緑素はなく、茎も黄赤色で背丈1mくらいに直立している。枝や葉もなく、赤っぽい棒状の様子を鬼の用いる矢に例えて「鬼の矢柄」と呼んでいるが、同じように神農本草経にも赤箭と記載されている。

 地価には直径が10cmくらいの偏平で楕円形の塊茎ができるが、これを薬用にする。アイヌはこの塊茎を煮て食用にしたともいわれる。一般に冬と春に採集し、春の方が多く採れるが、冬に採取したもの(冬麻)の品質が優れているとされる。

 天麻は高価な生薬のためジャガイモを乾燥させた「洋天麻(貴天麻)」と称する偽品も出回っている。しかし、1980年頃からオニノヤガラの栽培品が輸入されるようになり、価格はかなり下落した。

 天麻の有効成分の詳細は不明であるが、多量の粘液質やバニリルアルコール、バニリンなどが含まれ、バニリルアルコールには胆汁分泌作用や癲癇発作抑制作用が、また天麻のエキスには鎮痛作用が報告されている。漢方では平肝・定驚・止痙・止痛の効能があり、眩暈や意識障害、痙攣、頭痛、ヒステリー、関節痛などに用いる。

木曜日, 1月 16, 2014

天南星

○天南星(てんなんしょう)

 サトイモ科の多年草マムシグサ(Arisaema serratum)やウラシマソウ(A.thunbergii ssp.urashima)などの同属植物の塊茎を用いる。中国産の基原植物には天南星(A.consamguineum)、ヒロハテンナンショウ(A.amurense)、マイヅルテンナンショウ(A.heterophyllum)などが挙げられている。

 これらはいずれもマムシグサに似た花が咲くが、葉の形はそれぞれ異なっている。花序は仏焰苞といわれる独特の筒状にあり、同科のカラスビシャクなどと共通している。マムシグサは日本各地、朝鮮半島、中国に分布し、偽茎の模様がマムシの文様に似ていることからその名がある。

 ウラシマソウも日本各地に分布し、その名は花序の付属体が細長く延びて垂れ下がるのを浦島太郎の釣り糸に見立てたものである。神農本草経には虎掌という名で記載しているが、これは葉の形に由来する。

 生の球茎にはコニインに類似した有毒成分が含まれ、食べると強烈な刺激がある。そのほかの成分としてトリテルペンサポニンや安息香酸なども含まれ、鎮静作用、去痰作用、抗腫瘍作用が報告されている。一般に加工していない天南星を湯液に用いるときには生姜を配合して十分に煎じることが必要である。

 修治したものには、晒した天南星に新鮮な生姜を加えて苞製した製南星、晒した天南星の粉に牛の胆汁を混ぜて製した胆南星(別名:胆星)などがある。漢方では燥湿化痰・止痙の効能があり、眩暈、麻痺、痙攣、ひきつけなどに用いる。

 天南星は半夏と同様に乾湿化痰の代表薬であるが、半夏が胃腸の湿痰を除くのに対し、天南星は経絡の風痰を治療するといわれている。この風痰とは脳卒中や癲癇の病態と考えられている。民間では生の塊茎をすりおろして酢に混ぜ、腫れ物や肩こり、乳房の腫れなどに外用する。

水曜日, 1月 15, 2014

天竺黄

○天竺黄(てんじくおう)

 イネ科マダケ(Phyllostachys bambusoides)や青皮竹(Bambusa texilis)、大竹節(Indosasa crassiflora)などのタケに寄生する竹黄蜂によって穴が開き、竹の節の間に溜まった塊状のものを天竺黄という。しかし、自然に産するものは少ないので、竹を人工的に過熱して出てきた液体、つまり竹瀝を凝固させ、乾燥させてできたものを用いる。軽くサクサクとした白っぽい塊で、砕けやすく断面にはつやがある。なめると舌に粘り、甘くて涼感がある。

 成分には水酸化カリウムやケイ酸などが含まれる。漢方では清熱・化痰・定驚の効能があり、熱病で意識が混濁したり、脳卒中で痰が胸に詰まって苦しいとき、癲癇や小児のひきつけなどに用いる。小児での痰熱驚風の要薬といわれ、とくに小児の熱病にみられる呼吸困難やひきつけ、夜泣きなどに用いる。

 小児のひきつけや発熱時の呼吸困難などに白僵蚕・牛黄などと配合する(小児回春丹)。日本でも脳卒中や小児のひきつけなどに用いる伝統的な練り薬、烏犀圓の中に天竺黄が配合されている。また竹瀝の代用として用いることがある。

火曜日, 1月 14, 2014

天葵子

○天葵子(てんきし)

 中部地方以西、朝鮮半島、中国などに分布するキンポウゲ科の多年草ヒメウズ(Semiaquilegia adoxoides)り全草を天葵といい、塊根を天葵子という。塊根が烏頭に似て小型なためヒメウズといい、その形がネズミの糞に似ているため千年老鼠屎という異名がある。田端のあぜや石垣の隙間などに生える雑草で、4~5月頃に小さな花を下向きにつける。

 根にはアルカロイド、ラクトンなどが含まれ、抗菌作用が知られている。漢方では清熱・解毒・利尿の効能があり、皮膚の化膿や腫れ物、乳腺炎、蛇による咬傷や打撲傷、膀胱炎などに内服あるいは外用として用いる。

 外用としては新鮮な天葵子の根をすりつぶした汁を用いる。近年、中国では注射液による上気道炎の治療や乳癌や肝癌、リンパ肉腫などに対する臨床研究が行われている。

金曜日, 1月 10, 2014

テリアカ

○テリアカ

 古代ローマ帝国で創製されたといわれる万能解毒剤のことをいう。紀元前1世紀に国会の南にあるポントス王国の国王ミトリダテス作ったとされる解毒剤ミトリダトをローマ皇帝ネロの侍医であるダモクラテスが改良し、これに、やはりネロの侍医であるアンドロマコスが毒蛇の肉を加えて完成させたと伝えられている。

 テリアカはアラビア人によって盛んに用いられ、ヨーロッパでも有名で、19世紀の終わりごろまで西洋諸国の薬局方にも収載されていた。テリアカは中国にも伝えられ、唐代に著された本草書「新修本草」(659年)の中に底野迦と記されている。この新修本草を通じて奈良時代に日本にも紹介され、医心方にも底野迦は収載されていた。ただし、実際のテリアカは16世紀の戦国時代にポルトガル人によって伝えられたと推定されている。

 テリアカの中味は毒蛇の肉以外ははっきりせず、60種以上の薬草や土、動物の糞などが混ぜられているといわれ、後世のテリアカには阿片が主薬として配合されていたと推定されている。テリアカの有効性は不明だが、毒蛇や動物による咬傷に用いられた。

 このほうヨーロッパで知られていた解毒剤として牛黄(東洋解毒石)馬糞石(西洋解毒石)があり、中世には一角(ウニコルン)なども解毒剤として用いられた。

木曜日, 1月 09, 2014

○鉄(てつ)

 紀元前1500年ごろからインドや黒海北岸で木炭を燃料として製鉄が始まったとされている。中国では紀元前6世紀ごろから鉄器の製造が始まった。

 製鉄の原料はおもに赤鉄鉱(Hematite)、褐鉄鉱(Limonite)、磁鉄鉱(Magnetite)であるが、天然の鉄鉱石で薬用になるものには赤鉄鉱の代赭石、褐鉄鉱の禹余粮、磁鉄鉱の磁石などがある。また緑礬や自然銅、蛇岩石なども鉄を含む鉱石である。

 精錬されたは含まれる炭素量の多いものから生鉄、鋼鉄、塾鉄に区別される。薬用にされる鉄としては、生鉄をはじめ、生鉄を赤くなるまで熱した外側が酸化したとき叩き落された鉄屑の鉄落、鋼鉄を精錬するときにできる粉末の鉄粉、鋼針の製造のときにできる屑の鍼砂、空気中に放置してできる赤褐色の錆の鉄錆、水に浸して錆が出た後にできる溶液の鉄漿などがある。

 鉄が人間の健康に役立つことは古代ギリシャ時代から知られていたが、貧血の治療に有効であるとわかったのは17世紀のことである。金属鉄は一般に吸収されないが、一部は胃酸の作用でイオン化されて吸収される。還元鉄は吸収されるが、吐き気や下痢などの胃腸障害が強い。このため増血剤として除放製鉄剤や有機酸鉄が利用されている。また、肉や魚のミオグロビンやヘモグロビンに由来するヘム鉄は、野菜や穀類に含まれる非ヘム鉄よりも数倍も吸収率が高いため、健康食品にはしばしばヘム鉄が用いられている。鉄は吸収されると造血が促進され、中枢神経の機能が改善される。

 漢方ではこれらの鉄に平肝・安神・定驚・消腫・解毒の効能があるとし、癲癇やひきつけ、興奮、発狂、不安、動悸などに用いるほか、丹毒や疔瘡などにも用いる。丹毒や疔瘡などの皮膚化膿症には内服だけでなく、外用薬としても用いる。日本では江戸時代に鉄粉を黄胖といわれる貧血の治療に応用している。

 痔の出血が続き、貧血による浮腫や動悸のみられるときには鉄粉に茵蔯蒿・荊芥・蒲黄などを配合する(茵荊湯)。貧血症による浮腫、動悸、息切れ、眩暈には当帰・茯苓などを配合する(当帰散)。一方、慢性肝炎から肝硬変、肝癌へと移行する過程に、鉄が存在すると悪化が促進されるため、体内から鉄を減らす瀉血などが薦められている。

水曜日, 1月 08, 2014

葶藶子

○葶藶子(ていれきし)

 日本では各地に広く分布しているアブラナ科の越年草イヌナズナ(Draba nemorosa)の種子を葶藶子という。中国産は日本にも帰化植物として普通にみられるアブラナ科のマメグンバイナズナ(Lepidium virginicum)やヒメグンバイナズナ(L.apetalum)、クジラグサ(Descurainia sophia)の種子である。

 マメグンバイナズナやヒメグンバイナズナの種子は北葶藶子(苦葶藶子)、クジラグサの種子は南葶藶子(甜葶藶子)ともいわれる。現在、日本で流通しているものは、おねもに甜葶藶子である。葶藶子の成分として強心配糖体のヘルベチコシドなどが知られている。

 漢方では逐水・止咳・消腫の効能があり、喘息や浮腫などに用いる。とくに葶藶子は「気を下し、水を行らす」作用があるといわれ、肺に滞った水分を除き、胸水や肺水腫、多量の痰などの状態を改善する。また通便作用もあるが、他の逐水薬とは異なり、激しい下痢にはならない。ただし胃に対する刺激性があるため、一般に大棗の煎液で服用する。

 心臓喘息や百日咳で咳や痰が多く、呼吸困難や浮腫のみられるときには大棗と配合する(葶藶大棗瀉肺湯)。胸水や腹水があり、呼吸困難、顔面や四肢の浮腫などのみられるときには防已・椒目・大黄と配合する(已椒藶黄丸)。

火曜日, 1月 07, 2014

通草

○通草(つうそう)

 中国南部の各地方に自生するウコギ科の常緑低木カミヤツデ(Terapanax papyriferum)の幹の白い髄を用いる。日本でも温暖地で観賞用に栽培されている。和名のカミヤツデは「紙八手」と書き、ヤツデによく似た茎や掌状の葉を有している。

 茎の幹を30cmほどに切り出し、幹の髄を新鮮なうちに取り出し、特殊な刃物で紙のように薄く四角くのばして日干しにする。これはチャイニーズライスペーパー(通草紙)といわれ、かつて造花の材料にも利用された。薬用にも方通草といって、このような薄片を用いることもある。

 ところで神農本草経にある通草とは木通のことで、傷寒論の当帰四逆湯に配合されている通草も一般には木通が使用されている。カミヤツデの髄にはリグニン、ペントサン、ガラクタンなどが含まれているが、薬理作用に関しては不明である。漢方では利水・通淋・通乳の効能があり、膀胱炎などの排尿異常や浮腫、母乳不足などに用いる。

土曜日, 1月 04, 2014

陳皮

○陳皮(ちんぴ)

 日本ではミカン科のウンシュウミカン(Citrus unshiu)の果皮を用いる。本来は新鮮なものを橘皮、その古くなったものを陳皮といっていたが、日本では区別しない。中国ではオオベニミカン(C.tangerina)やコベニミカン(C.eryhrosa)など多種の果皮が用いられる。やや未成熟なウンシュウミカンの果皮は青皮という。

 ウンシュウミカンは日本原産で、江戸時代に偶然にみつけられたものである。すなわち、この品種は南中国から九州に渡来したミカンの変種で、鹿児島県の長島が原生起源地とされている。ウンシュウとはミカンの栽培で有名な中国の浙江省温州のことであるが、この品種と温州とは直接の関係はない。

 江戸時代には紀州ミカンが全盛であったが、明治以降、九州から日本各地にウンシュウミカンの栽培が広まった。現在、愛媛・和歌山・静岡・佐賀・熊本の各県などでおもに生産されている。以前、陳皮は日本で自給可能であったが、工場で皮を向く工程が自動化されるようになって、国内で生産されなくなった。

 陳皮の陳は陳旧の意味であり、古いほうが良品とされる六陳(枳実・呉・呉茱萸・半夏・陳皮・麻黄・狼毒)のひとつである。果皮にはリモネンやテルピネンを成分とする精油、フラボノイド配糖体のヘスペリジン、ナリンギンなどが含まれ、健胃・蠕動促進作用、中枢抑制・鎮静作用、抗炎症作用などが知られている。近年、ウンシュウミカンの果皮や果肉に含まれるカロテノイドの一種、βクリプトキサンチンに抗腫瘍作用のあることが注目されている。

 漢方では理気・健脾・化痰の効能があり、消化不良による腹満感や嘔気、痰が多くて胸が苦しいときなどに用いる。ちなみに日本の七味唐辛子や中国料理の五香粉などにも配合されている。

月曜日, 12月 30, 2013

猪苓

○猪苓(ちょれい)

 日本の北海道や東北地方、朝鮮半島、中国各地などに分布する担子菌類サルノコシカケ科のチョレイマイタケ(Polyporus umbellatus)の乾燥した菌核を用いる。

 チョレイマイタケは山林中のブナ、ミズナラ、カエデ、クヌギなどの腐食した根に寄生するキノコで、地上部は食用になる。薬用にする菌核は落葉の堆積した浅い地中に生じ、表面が黒褐色をした凹凸のある不成形の塊状で、この塊がブタ(猪)の糞に似ていることから猪苓の名がある。

 薬材は5~15cmくらいの黒褐色をした塊であり、新鮮なものは内部は白色であるが、時間が経つと褐色を帯びる。現在、日本の流通品のほとんどは中国産であり、中国では陜西省や雲南省に多く産し、とくに陜西産の品質がよいといわれる。

 猪苓にはエルゴステロール、αヒドロキシテトラコザン酸、多糖類のグルカンなどが含まれ、利尿、抗菌、抗腫瘍作用などが認められている。漢方では利水消腫・通淋の効能があり、排尿減少、浮腫、脚気、下痢などに用いる。

 猪苓の利尿作用は茯苓よりも強いとされ、また清熱の性質も若干あるため熱象(炎症)を伴う浮腫にも応用できる。癌治療の臨床研究として、猪苓は癌患者の細胞性免疫機能を向上させ、抗癌剤と併用すれば、その副作用を軽減することが報告されている。

金曜日, 12月 27, 2013

苧麻根

○苧麻根(ちょまこん)

 中国からマレーシアを原産とするイラクサ科の多年草ナンバンカラムシ(Boehmeria nivea)の根を用いる。また茎皮を苧麻皮、葉を苧麻葉、花を苧麻花という。

 古くから日本でも栽培され、野生化した帰化植物で、カラムシという名は韓国から渡来したことを表している。カラムシはチョマ(苧麻)ともいい、現在でも繊維用作物として各地で栽培され、茎の強い繊維を漁網や船舶用のロープなどの原料としている。弥生時代の遺跡からカラムシの布がみつかり、日本における最初の織物と考えられている。

 根にはエモジン型アントラキノンが含まれ、止血作用が知られている。漢方では清熱・通淋・止血・安胎・解毒の効能があり、膀胱炎など(五淋)の治療や妊娠時の性器出血や胎動不安、小児の丹毒などに用いる。化膿性の皮膚疾患にはつき汁や煎液で患部を洗う方法もある。

 苧麻皮や苧麻葉は肛門の腫れや痛み、泌尿器疾患、乳腺炎に、苧麻花は麻疹の治療に用いる。

木曜日, 12月 26, 2013

猪胆

○猪胆(ちょたん)

 イノシシ科の動物ブタ(Sus scrofa domestica)の胆嚢を猪胆といい、胆汁を猪胆汁という。ブタは主要な家畜であり、中国では紀元前2800年頃から飼育されていたという。

 ブタはイノシシを飼い慣らした家畜であり、品種はかなり多い。性質は温和で、人に慣れ、雑食性で適応力が強い。ブタはあらゆる部分が薬用にされ、皮膚(猪膚)、脂肪(猪脂)、肝臓(猪肝)、胃(猪肚)、大腸(死猪腸)などがある。

 胆汁の成分は胆汁酸、胆汁色素などが含まれ、鎮咳、消炎、抗菌作用などが知られている。漢方では清熱・止咳・解毒の効能があり、熱性疾患、黄疸、下痢、便秘、百日咳、腫れ物などに用いる。

 下痢が続いて脈がかすかなときには白通湯に猪胆汁を加える(白通加猪胆汁湯)。なお猪肚は頻尿治療薬の猪肚丸、猪腸は痔出血に用いる臓連丸に配合されている。

火曜日, 12月 24, 2013

楮実

○楮実(ちょじつ)

 日本の中部地方以南および中国、台湾に分布するクワ科の落葉高木カジノキ(Broussonetia papyrifera)の成熟果実を用いる。コウゾ(B.kazinoki)とともに和紙の製紙原料として栽培されている。

 果実にはサポニン、ビタミンB、脂肪酸のリノール酸などが含まれている。漢方では強壮・利尿の効能があり、インポテンツや腰や膝の萎弱、浮腫などの症状に用いる。

金曜日, 12月 20, 2013

釣藤鉤

○釣藤鉤(ちょうとうこう)

 中国南部、日本では関東以西の産地に自生するつる性木本、アカネ科のカギカズラ(Uncaria rhynchophylla)の鉤の付いた茎を用いる。中国にはトウカギカズラ(U.sinensis)など多種の同属植物があり、それらも使用している。

 中国ではかつては釣藤と記していたが、現在では鉤(鈎)藤と書く。鉤とはかぎのことで、つるの側枝がかぎ状に曲がり、絡みつくようになっているので鉤藤といカギカズラの名がある。古くは民間療法法として樹皮を用いていたが、経験的に鉤刺を用いるようになり、漢方薬に配合されるようになった。

 茎にはアルカロイドのリンコフィリンやヒルスチン、コリナンテインなどが含まれ、鎮静・降圧・血管拡張などの作用が認められている。漢方では平肝・止痙の効能があり、高血圧の随伴症状や精神的な興奮症状、不眠、心悸亢進などに用いる。なお長時間煎じると効力が弱くなるため、後入れ(後下)する。

 近年、釣藤鉤にアルツハイマー病の原因といわれるβアミロイドに対して凝集作用が認められ、認知症に対する臨床効果が研究されている。

木曜日, 12月 19, 2013

丁字

○丁字(ちょうじ)

 インドネシアやマレーシア、東アフリカなどで栽培されているフトモモ科のチョウジ(Syzygium aromaticum)の蕾を用いる。果実は母丁香といい、また古代中国では果実の形が鶏の舌に似ているとして鶏舌香とも呼ばれていた。チョウジという名前の由来は蕾の形が釘に似ているためであり、英語のクローブも仏語のクルー(釘)に由来する。

 チョウジはインドネシアのモルッカ諸島原産で、18世紀までモルッカの特産であったが、現在では東アジア(ザンジバル)の生産が90%を占めている。チョウジは香料として紀元前よりインドやヨーロッパにまで知られ、今日、スパイスとして肉料理やケーキ、プディングなどによく用いられている。かつて日本女性の使っていた「びんつけ油」の匂いも丁字であり、現在では石鹸や整髪料に広く使われている。インドネシアでは丁字入りのタバコも有名である(クレテック)。

 丁字を水蒸気蒸留して得られた精油を丁字油といい、成分としてオイゲノールやチャビコール、フムレン、カリオフェレンなどが含まれている。オイゲノールには殺菌・防腐のほか、鎮静・鎮痙作用なども認められている。またオイゲノールは口腔内殺菌や虫歯の鎮痛にも用いられている(今治水)。オイゲノールをアルカリと熱を加えて異性化させた後に酸化すると香料のバニリンが得られる。

 漢方では温裏・健胃・止嘔・補陽の効能があり、おもに芳香性健胃薬として用いる。たとえば胃腸が冷えたために生じる嘔吐、下痢、腹痛、消化不良に茯苓・半夏などと配合する(丁香茯苓湯)るまた吃逆(しゃっくり)には柿蒂などと配合する(丁香柿蒂湯)。

 中国では古くから口臭を消すために口に含む習慣があり、口中清涼剤の仁丹にも配合されている。また多くの家庭薬の薬香料としてチョウジ末やチョウジ油、オイゲノール、バニリンの名で配合されている。母丁香には芳香はないが、同じく温裏の効能があり、嘔吐、腹痛、ヘルニア、口臭などに用いる。

月曜日, 12月 16, 2013

地楡

地楡(ちゆ)

 日本各地およびアジアからヨーロッパにかけて分布するバラ科の多年草ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)の根および根茎を用いる。ワレモコウは秋の野草の一つで生け花にも用いられ、また春先には若い葉をおひたしにして食べる。

 ワレモコウは「吾木香」とか「吾亦紅」と書くが、語源は明らかではない。吾木香とはジャコウソウやオケラなど芳香のある植物に付けられた名前とされているが、ワレモコウには特によい匂いはないため吾亦紅という字を当てることもある。赤い花穂は染料にも用いられている。

 成分として根にタンニンが約17%、サポニンが3~4%含まれ、サポニン成分としてサンギソルビン、チユグルコサイドなどが知られている。薬理学的に出血時間の短縮や血管収縮などの止血作用が認められているほか、抗菌作用、抗火傷作用なども知られている。

 漢方では清熱涼血・止血の効能があり、吐血、鼻血、下血、湿疹、腫れ物、外傷、火傷などに用いる。止血には地楡の外が黒くなるまで炒った地楡炭が適している。とくに慢性の血便や下痢に伴う血便、痔出血、不正性器出血など下半身の出血に適するとされている。

 たとえば痔の出血や下血には槐花・阿膠などと配合したり(清肺湯)、槐角・黄芩などと配合する(浸膏槐角丸)。また火傷や切り傷の創面に細末を油でねって軟膏にしたものや、チンキにしたものを外用する。また煎じた液も湿疹、打ち身、捻挫などに外用する。民間療法では下痢のときに煎じて服用したり、扁桃炎や口内炎ではうがいに用いる。

 近年、根から抽出したエキス、ワレモコウエキスに収斂、チロナーゼ活性阻害、抗菌・抗炎症作用などがあるとして、スキンケア製品の素材として利用されている。

金曜日, 12月 13, 2013

茶葉

○茶葉(ちゃよう)

 中国原産のツバキ科の常緑小高木チャ(Camellia sinensis)の葉の乾燥したものを用いる。茶の変種としてインドのアッサム地方原産のアッサム茶もある。

 中国では紀元前10世紀の周の時代に薬用とされ、紀元前3世紀ごろに嗜好品とされ始め、8世紀の唐の時代に栽培や製茶が普及した。日本には天平時代に最澄が種子を持ち帰ったとされている。さらに鎌倉時代には栄西が「喫茶養生記」を著し、喫茶の風習が広まった。ヨーロッパには16世紀に中国や日本から紹介され、喫茶が流行した。

 一般に普及している茶はその加工法で大別すると乾燥茶の緑茶、発酵茶の紅茶、半発酵茶の烏龍茶に区別される。茶の葉を摘んでそのまま放置すると葉の中の酸化酵素により黒く変化する。このため緑茶は採取した新鮮な若葉をせいろの中で高温加熱して酸化酵素の作用を止め、さらに加熱しながら揉んで乾燥させて製品化する。日本の煎茶や玉露、番茶は緑茶の種類である。

 茶葉にはポリフェノール(カテキン類)、アルカロイドのカフェイン、アミノ酸の一種のテアニン、ビタミンCやビタミンB群などが含まれ、茶の苦味はカフェイン、渋味はカテキン類、旨味はテアニンに起因する。茶ポリフェノールは、その性質からタンニンと呼ばれていた成分であるが、その茶ポリフェノールの約70%はフラボノールのカテキン類である。この茶カテキンには、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートがあり、とくにエピガロカテキンガレートが一番多く含まれ、しかも生理活性が最も強いといわれている。

 茶ポリフェノールには、抗う蝕、消臭、コレステロール吸収阻害、抗菌・抗ウイルス、抗腫瘍、脂肪燃焼、腸内細菌改善、抗酸化作用などが知られている(サンフェノン)。さらに高濃度の茶カテキンを摂取することにより、脂質代謝が活発になり、脂質の燃焼が促進され、体脂肪が減少することが明らかとなり、特定保健用食品として認められている(ヘルシア緑茶)。また、カフェインには中枢神経興奮、強心利尿、胃酸分泌刺激、熱酸性量の増加、体脂肪の分解などの作用が認められている。一方、テアニンには、脳神経をリラックスさせ、イライラや過食を抑え、睡眠の質を向上させる働きがあるといわれている。

 漢方では清頭目・利尿・止瀉の効能があり、頭痛、多眠、下痢などに用いる。感冒などによる頭痛には白芷・川芎などと配合する(川芎茶調散)。細菌性下痢に濃く煎じた渋茶を服用する。民間では煎液を火傷やオムツかぶれの湿布薬として、また口内炎や咽頭炎、感冒予防などの含嗽薬としても利用している。ただし、不眠症の人の服用には注意が必要である。

 近年、摘んだ茶葉を数時間、窒素ガスの中に保存してから通常の方法でお茶を製造するとγ-アミノ酪酸(ギャバ:GABA)の含有量が通常のお茶の20~30倍に増加することが発見され、このお茶を服用することで血圧降下や精神安定などの効果があると期待されている。

木曜日, 12月 12, 2013

知母

○知母(ちも)

 中国東北部から北西部にかけて分布し、日本にも江戸時代に渡来し、栽培されているユリ科のハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides)の根茎を用いる。葉がスゲに似て花がそれより美しいためその名がある。中国河北省が主産地として有名で、品質の良いことから西陵知母ともいわれている。

 知母にはステロイドサポニンのチモサポニンやキサントン配糖体のマンギフェリンなどが含まれ、抗菌・解熱・血糖降下作用などが認められている。漢方では清熱瀉火・滋陰清熱の効能があり、発熱による脱水や煩躁、肺病の咳嗽、便秘、排尿障害などに用いる。

 とくに実熱と虚熱の区別なく、高熱や微熱のいずれにも応用できる特徴がある。また滋潤作用があるため、熱病による口渇や煩熱など脱水症状のほか、陰虚による口渇やのぼせ、手足のほてり、興奮症状にも効果がある。このため知母は「上にて肺熱を清し、下にて腎を滋潤する」といわれている。

 近年、ハナスゲの根の成分サルササポゲニンに由来するポルフィリンに脂肪細胞の分化を促進し、増殖させ、脂質を蓄積させる作用が発見され塗るだけでバストアップ効果があると注目されている。

水曜日, 12月 11, 2013

蜘蛛

○蜘蛛(ちしゅ)

 コガネグモ科のオニグモ(Aranea ventricosa)の全虫を用いる。オニグモはダイミョウグモともいわれ、日本各地に分布する。全体が黄褐色で腹部は丸くて大きく、体長はオスが約2cm、メスが約3cmである。夕方になると大きな円い網を張り、朝にたたむ習性がある。このクモを捕獲した後、沸騰した湯につけて殺し、取り出して乾燥する。

 漢方では解毒・消腫の効能があり、陰囊ヘルニアや顔面神経麻痺、ひきつけ、腫れ物、毒虫の咬刺傷などに用いる。金匱要略では陰狐疝気(陰囊ヘルニア)のときに蜘蛛をあぶったものを桂枝と配合して用いている(蜘蛛散)。

火曜日, 12月 10, 2013

竹瀝

○竹瀝(ちくれき)

 イネ科ハチク(Phyllostachys nigra)の茎を火であぶって流れ出た液汁を竹瀝という。新鮮な竹棹を縦に割って火であぶると両端から液が流れ出る。竹瀝はこれを集めたもので、青黄色ないし黄褐色の透明な液体で焦げた臭いがある。

 漢方では清熱化瘀・定驚・通竅の効能があり、痰家の聖薬といわれ、脳卒中や癲癇、ひきつけ、熱病、肺炎などで咽に痰の音がして胸が苦しいときに用いる。単独で服用させたり、生姜汁などと混ぜて服用する。また丸剤や膏剤として用いることが多い。

 熱病で粘調稠のあるときや意識状態が混濁しているときに生姜汁・青礞石などと配合する(竹瀝達痰丸)。竹瀝は入手が困難なため、天竺黄で代用することもある。しかし竹瀝は天竺黄よりも痰を除く作用が強い。

月曜日, 12月 09, 2013

竹葉

○竹葉(ちくよう)

 イネ科ハチク(Phyllostachys nigra)の葉のことを竹葉という。イネ科のササクサ(Lophatherum gracile)り全草を淡竹葉といいう。しかし竹葉と淡竹葉とはしばしば混同され、日本ではハチクの葉を和淡竹葉ということもある。

 ハチクは中国原産であるが西日本にも野生化しており、モウソウチクやマダケとともに日本三大竹のひとつで、呉竹とも呼ばれる。上下の太さが一様で、硬くて細割れしやすいので茶筌や菓子の容器などにも利用される。ハチクの内皮は竹筎、あぶって流れ出た液を竹瀝、巻いて開かない幼葉を竹巻心という。

 葉の成分にはトリテルペンのグリチノール、グルチノンなどのほかペントーザン、リグニンなどが含まれ、解熱・利尿作用が知られている。漢方では淡竹葉の効能とほぼ同じで、清熱・除煩・利水の効能がある。一般に心熱を清する作用は竹葉のほうが強いといわれる。このため煩熱、口渇の症状には竹葉を用いるのがよい。

 熱性疾患後の余熱の治療に石膏などと配合する(竹葉石膏湯)。糖尿病などによる口渇の症状には麦門冬・人参などと配合する(麦門冬飲子)。

土曜日, 12月 07, 2013

竹節人参

○竹節人参(ちくせつにんじん)

 北海道から九州までの山地に自生するウコギ科の多年草トチバニンジン(Panax japonicus)の根茎を用いる。竹節人参は竹参、土参ともいう。葉がトチノキの葉に似ているところからトチバニンジンといわれ、根は竹の根に似て節くれだっているため竹節人参という。また幼年期の根は小さな直根のため直根人参と称されている。

 江戸時代の初期に中国から亡命して帰化した何欽吉が日向(宮崎県)にてこれを発見し、人参の代用として用いたのが始まりと伝えられている。古方派の吉益東洞が竹節人参を好んで用い、心下痞硬には人参よりも効果があると述べている。

 成分にはサポニンやステロールなどが知られており、オレアノール酸のサポニンであるチクセツサポニンには去痰作用が認められている。そのほかエキスには、抗炎症、抗潰瘍、抗腫瘍、血糖降下、中枢抑制、育毛などの作用が報告されている。

 漢方では去痰・解熱・健胃の効能があり、咳嗽や心下部の痞えを伴う場合の処方で人参の代用として用いる。ただし人参のような滋養・強壮効果はあまり期待できない。ちなみに毛乳頭細胞を活性化し、発毛促進効果があるとして、育毛剤に配合されている(カロヤン)。

木曜日, 12月 05, 2013

竹筎

○竹筎(ちくじょ)

 イネ科のハチク(Phyllostachys nigra)の茎の中間層を用いる。まず第一層の緑色の外皮を薄く削り取り、つぎに中間層を削って帯状にする。黄緑色ないし淡黄白色で、ざらざらしており、よい香りがする。

 成分にはトリテルペノイドのアルンドイン、シリンドリンなどが含まれ、抗炎症作用などが知られている。漢方では清熱・化痰・除煩・止嘔の効能があり、肺熱を清して痰を除き、胃熱を清して嘔吐を止める。また熱痰による煩躁、不眠、動悸などの症状や鼻血、不正性器出血、妊娠悪阻、胎動不安などにも用いる。

 気管支炎などで咳嗽とともに黄色の粘稠痰がみられるときには桑白皮・貝母などと配合する(清肺湯)。大病の後に痰が欝結して眠れずに煩躁するときには半夏・麦門冬などと配合する(竹筎温胆湯)。産後に胸が煩躁して嘔吐やからえずきのみられるときには石膏・白薇などと配合する(竹皮大丸)。気の上逆によるしゃっくりには橘皮・生姜などと配合する(橘皮竹筎湯)。

 一般に痰熱を治療するときには生を用い、嘔吐を治療するときには生姜汁で炒して用いる。

水曜日, 12月 04, 2013

竹巻心

○竹巻心(ちくけんしん)

 イネ科ハチク(Phyllostachys nigra)のまだ開いていない幼葉を用いる。マダケ(P.bambusoides)などの幼葉も用いられる。通常は明け方に摘み取った新鮮なものを用いる。

 ハチクは葉を竹葉、内皮を竹筎といい、薬用にする。竹巻心の効能は竹葉とほぼ同じであるが、清心除煩の効能は竹葉よりも強いといわれている。熱入心包の証で高熱とともに意識の混濁や譫語などのみられるときには犀角・連翹などと配合する(清営湯)。

火曜日, 12月 03, 2013

胆礬

○胆礬(たんぱん)

 銅の鉱石中に含まれる藍色の結晶、天然の硫酸銅を胆礬という。また硫酸と銅を反応させて人工的に硫酸銅をつくることもできる。不規則な塊状の結晶体で藍色であり、ガラス様の光沢がある。

 成分は硫酸第二銅の5水塩(CuSO4・5H2O)であり、加熱すると結晶水を失い白色粉末の無水塩になる。工業用には木材の防腐剤、染料や顔料に使用されるほか、農薬のボルドー液の原料でもある。皮膚や結膜に刺激性があり、飲むと反射的に嘔吐を催す。

 漢方では有毒で、催嘔・去腐・解毒の効能があり、おもに口内炎や歯槽膿漏、痔、結膜炎、腫れ物などに外用薬として用いる。歯槽膿漏には麝香・竜骨などと粉末にして塗布する(麝香雄礬散)。疔、瘡などの化膿性皮膚疾患の排膿薬として用いる(青膏)。また、脳卒中や癲癇などで咽に痰が詰まる喉痺状態に催嘔剤として内服させる。

月曜日, 12月 02, 2013

タンニン

○タンニン

 18世紀末、動物の皮をなめす作用のある植物の水溶性の成分にタンニンという名がつけられた。また、その味から渋ともいわれている。

 「鞣す」とは動物の皮の腐敗を防ぎ、通気性、柔軟性、耐久性を持たせることをいい、紀元前から植物の根や樹皮を利用して行われていた。その成分はポリフェノールに属しており、このため近年では鞣皮性の有無にかかわらず植物起源の水溶性ポリフェノールをタンニンと称するようになった。

 タンニンはタンパク質と結合して難溶性の沈殿物を作るほか、金属や塩基性物質とも強い親和性がみられる。タンニンは酸によって加水分解を受け、糖を生じる加水分解型タンニンと、それ以外の縮合型タンニンとに区別される。さらに縮合型タンニンはプロアントシアニジンと呼ばれる酸でアントシアニジン系色素を作るものと、酸で分解されるが糖を生じない中間型のタンニンに分けられる。

 薬用植物には加水分解型タンニンが多く五倍子、没食子、現之証拠、赤芽柏、石榴皮、訶子などに含まれる。一方、渋柿や茶葉、大黄、虎耳草などは、中間型のタンニンを含む。一般にタンニンを含む生薬には収斂作用があり、健胃薬、止瀉薬、止血薬として応用されている。

土曜日, 11月 30, 2013

淡竹葉

○淡竹葉(たんちくよう)

 イネ科ササクサ(Lophatherum gracile)の全草を淡竹葉という。日本ではイネ科のマダケ(Phynostachys bambusoides)やハチク(P.nigra)の葉を和淡竹葉ということもある。淡竹葉は竹葉としばしば混同され、中国ではハチクの葉は竹葉という。

 ササクサは関東地方から西の日本各地、朝鮮半島根中国やインドに分布し、山地や湿地に生えている草丈40~70cmの雑草である。ササクサの名は葉が笹に似ているが草であることを意味している。

 葉にはトリテルペノイドのアルンドインやシリンドリンが含まれ、解熱作用、利尿作用が認められている。漢方では安神・除煩・利尿・通淋の効能があり、心火の熱を清するといわれている。心火とは炎症などによる発熱、脱水、神経の興奮などの症状で、煩躁、顔面紅潮、口渇、口内炎、鼻血、濃縮尿などがみられる。

 口内炎や口渇、尿路感染症などには生地黄・木通・甘草などと配合する(導赤散)。淡竹葉と竹葉には、いずれも清心除煩、利尿の作用があり、しばしば同様に用いられる。ただし、心熱を清する作用は竹葉のほうが、利尿作用は淡竹葉のほうが強いとされている。民間では糖尿病の予防に淡竹葉を煎じてお茶代わりに利用している。

金曜日, 11月 29, 2013

丹参

○丹参(たんじん)

 中国各地に分布するシソ科の多年草タンジン(Salvia miltiorhiza)の根を用いる。名医別録には赤参とあり、赤参や丹参の名は根が赤いことに由来する。この色は根にフェニンスラキノン系の色素であるタンシノンⅠ(紫褐色)、タンシノンⅡ(赤色)、クリプトタンシノン(橙色)などが含まれていることによる。日本ではあまり用いられないが、中国では単味の錠剤や注射薬なども開発されている。

 漢方では活血・通経・涼血・安神などの効能があり、月経不順、月経困難症、産後の腹痛などの婦人科疾患をはじめ、胸痛や腹痛、乳腺腫脹、癰腫、リウマチ、神経衰弱などに用いる。

 婦人明理論には「ただ一味の丹参散の主治は四物湯と同じである」と記されている。月経不順や産後の腹痛には丹参末として酒で服用する(丹参散)。心筋梗塞や狭心症の治療薬として知られる冠心Ⅱ号方には川芎・降香・紅花・赤芍などとともに配合されている。

 また中国では慢性肝炎や肝脾腫、甲状腺腫などの治療にも用いている。アルコールで浸出した丹参酊は神経衰弱や眩暈症などに用いる。近年では丹参の注射薬を慢性肝炎や心筋梗塞などの治療に応用している。

木曜日, 11月 28, 2013

淡菜

○淡菜(たんさい)

 軟体動物のイガイ目イガイ科の二枚貝、イガイ(Mytilus coruscus)などの貝類の肉を用いる。イガイは北海道南部から九州、朝鮮半島、中国北部沿岸に分布し、水深20mまでの岩礁に群生する。

 イガイはガラスガイ、ニタリガイなどの別名があり、殻長は13cmくらいで表面が黒っぽい二枚貝で、肉は美味しく、中国や日本で食用にされる。中華料理では淡菜または東海美人と呼ばれている。

 漢方では肝腎を補い、精血を益する効能があり、肺結核などの慢性病や体力低下、盗汗などに用いる。一方、ニュージーランド産の緑イ貝、モエギイガイ(Perna canaliculus)には抗炎症作用があり、リウマチ、関節炎、腰痛などの健康食品として市販されている。ちなみに近縁種のムラサキイガイ(M.galloprovincialis)はムール貝とも呼ばれ、フランス料理などで珍重されている。

水曜日, 11月 27, 2013

タラ木

タラ木(たらぼく)

 日本全土、朝鮮半島、中国東北部に分布するウコギ科の落葉低木タラノキ(Aralia elata)の根皮や樹皮を用いる。日本市場ではタラ木、タラ木皮、タラ根皮などという。

 ニホンではタラノキを漢字の楤木にあてるが、タラノキは中国名の遼東楤木に相当し、中国ではタラノキの根皮あるいは樹皮を刺老鴉という。中国産の楤木(A.chinensis)は楤木根、樹皮を楤木白皮という。

 タラノキの幹は2~4mくらいに直立し、樹皮の表面には多数の鋭い刺がある。タラの若芽(タラの芽)は独特の香味のある山菜としてよく知られている。

 タラノキの根皮や樹皮にはサポニンのα・βタラリンやエラトサイド、プロトカテキュ酸などが含まれ、エラトサイドには糖やアルコールの吸収を抑制する作用のあることが報告されている。日本の民間ではタラ根皮の煎じたものを「たら根湯」と称し、糖尿病の妙薬として用いられている。またトゲを煎じて服用すれば高血圧にもよいといわれている。

 中国の楤木皮はリウマチ痛風などによる関節痛に用いられるほか、胃潰瘍や腎臓病、神経痛にも使われている。また腎炎による浮腫や肝硬変による腹水、糖尿病などの民間療法としても用いられている。

 一方、タラノキの樹皮である刺老鴉は安神薬や強壮・強精薬として知られている。ちなみに美白作用のあるエラグ酸の原料に用いられているタラ(Tara)は、ペルー原産のマメ科の植物(Caesalpinia spinosa)のことである。

火曜日, 11月 26, 2013

煙草

○煙草(たばこ)

 南米のボリビア南部のアンデス山地を原産とするナス科の多年草タバコ(Nicotiana tabacum)の葉と茎を用いる。現在では中国、アメリカ、インドなど世界中で広く栽培されている。

 紀元前からすでに中米のインディオの間ではタバコの喫煙が行われ、700年ころにはユカタン半島のマヤ族などにも伝わった。15世紀末、コロンブス一行はサンサルバドル島で原住民の喫煙を知り、1518年にはタバコの種子がスペインへともたらされた。

 タバコ(Tobacco)という語源は原住民が喫煙に用いていたパイプの名に由来し、属名のニコチアーナというのは種子をフランスに伝えたフランス大使のジャン・ニコーの名に由来する。日本へは16世紀末の戦国時代に南蛮船により伝えられ、九州で栽培されるようになり、喫煙の習慣は急速に広まった。

 かつてインディオにとってタバコは宗教的な儀式の道具であり、またタバコの煙によって病人の体に入っている「病気の精霊」を追い出すものと考えられていた。ヨーロッパでも喘息、頭痛、痛風などの万病の霊薬として伝えられたが、次第に嗜好品として広がっていった。

 タバコの葉の成分はアルカロイドのニコチンのほか、ノルニコチン、アナバシンなどが含まれている。ニコチンは交感神経次いで副交感神経を興奮させるが、のちに抑制する。中枢神経に対しても全体を興奮させるが、のちに抑制が生じる。

 急性ニコチン中毒の症状では嘔吐、腹痛、下痢、流涎、冷汗、眩暈、脱力発作、精神錯乱がみられ、さらには失神、痙攣を生じて呼吸麻痺で死亡する。ニコチンは毒性が強いため医療には用いられないが、ニコチンの硫酸塩は殺虫剤として農薬などに利用されている。

 一般にタバコの喫煙は抗ストレス作用があり、一時的に精神活動を活発にする効果があるといわれている。しかし煙の中にはピリジン、タール様物質、フェノール様物質などの化合物が含まれ、タバコ肺癌、喘息、咽喉頭癌、慢性閉塞性肺疾患、虚血性心疾患、バージャー病などの疾患との因果関係が指摘されている。

月曜日, 11月 25, 2013

○獺肝(たっかん)

 ほぼ世界全域に生息するイタチ科の動物カワウソ(Lutra lutra)の肝臓を用いる。かつて日本各地にニホンカワウソが生息していたが、毛皮はラッコに似ていて良質のために乱獲され、1979年に高知県の須崎で目撃されたのを最後に、現在では絶滅したと考えられている。

 体長約70cmくらい、尾の長さは40cmくらいの細長い茶褐色の動物で、脚には水かきがある。川や湖の岸辺に生息し、半水生動物で、夜間活動して魚介類や小鳥、ネズミ、カエルなどを食べている。薬材の肝臓は6片に分かれた黒褐色のもので、ひとつが5cmくらいである。

 漢方では滋陰清熱・止咳・止血の効能があり、虚労や結核、慢性疾患などによる発熱、盗汗、咳嗽、喘息、下血などに用いる。金匱要略では獺肝一味をあぶって粉末にしたものを肺結核に用いている(獺肝散)。

土曜日, 11月 23, 2013

竹蜂

○竹蜂(たけばち)

 中国の華南地方や台湾に分布するミツバチ科のタイワンタケクマバチ(Xylocopa dissimilis)の乾燥した全虫体を用いる。このクマバチは竹に営巣するもので、竹の各室に花粉と蜜を貯えて産卵し、冬には巣内で越冬する。

 このクマバチを秋から冬に採取するが、まずハチの群れが竹の中にいるときに穴を塞ぎ、切り倒したものを火で燃やし、ハチが死ぬのを待って竹を割って取り出す。2~4匹をあぶって乾燥し、粉末にして服用する。

 漢方では清熱解毒・定驚の効能があり、咽頭炎や扁桃炎、歯痛、口内炎、のぼせ、小児のひきつけなどに用いる。

金曜日, 11月 22, 2013

沢蘭

○沢蘭(たくらん)

 日本各地から東アジアにかけて分布するシソ科の多年草シロネ(Lycopus lucidus)の開花期全草を用いる。シロネの根は地筍という。根が白いためにシロネといい、春に肥大した根を掘り出して食用にすることができる。

 シロネは水辺や湿地に生え、葉はキク科のフジバカマ(Eupatorium japonicum)に似ていることから沢蘭といわれるが、香りはない。古くから蘭草としばしば混同され、フジバカマやサワヒヨドリ(E.lindleyanum)を沢蘭にあてている本草書もある。中国でも地方によってはフジバカマなどが沢蘭と呼ばれて用いられている。

 全草には精油、配糖体、タンニン、サポニンなどが含まれ、強心作用や血行促進作用が知られているが、詳細は不明である。漢方では活血・調経・利水消腫の効能があり、瘀血による月経の遅れや生理痛、産後の浮腫などに用いる。

 婦人科の常用薬であり、月経不順や生理痛には香附子・当帰などと配合する(四制香附丸)。また打撲による内出血や捻挫、腰痛などにも効果がある。腫れに沢蘭の生の葉をすりつぶして塗布する民間療法もある。

木曜日, 11月 21, 2013

沢瀉

○沢瀉(たくしゃ)

 中国東北部や朝鮮、日本の北部に分布し、沼沢地や浅い水中に生えるオモダカ科の多年草サジオモダカ(Alisma plantago-aquatica)の塊茎を用いる。北海道や信州で栽培されているが、市場品のほとんどは中国などからの輸入品で、四川省の川沢瀉や福建省の建沢瀉などが有名である。

 沢瀉という名は水中(沢)にあって水を弾く性質(瀉)があることに由来するとか、薬の効能が「水を去ること(瀉)」に由来するといわれている。水面から出た葉が人の顔のように見えることからオモダカの名がある。

 サジオモダカの根茎には多量のデンプンやアミノ酸、レシチンのほか、トリテルペノイドのアリソールA・B・Cなどが含まれ、利尿作用やコレステロール低下作用、血糖降下作用などが報告されている。

 漢方では利水・清熱の効能があり、体内に水分が停滞した浮腫や胃ない停水、尿量の減少、排尿障害、嘔吐、下痢、口渇などの症状に用いる。

水曜日, 11月 20, 2013

沢漆

○沢漆(たくしつ)

 日本各地、アジア、ヨーロッパに分布するトウダイグサ科の越年草トウダイグサ(Euphorbia helioscopia)の全草を用いる。中国では開花期に採り、根を除いて用いる。枝先に杯状の花序が多数密生する様子を、昔の灯台にみたててトウダイグサという。

 茎や根から出る白い乳液に触れると炎症や水泡などの皮膚炎や結膜炎などがおこり、誤って内服すれば咽が腫れて嘔吐や腹痛、下痢となり、さらには眩暈や痙攣の症状もみられる。ただし、死亡するほどは強くない。

 峻下薬の巴豆や甘遂、大戟、蓖麻子はいずれもトウダイグサ科の植物である。日本ではトウダイグサの根茎をと称し、大戟の代用にしたこともある。全草にはケルセチンやトリヒマリンなどのフラボノイドなどが知られているが、有毒成分は明らかではない。

 漢方では利水・化痰・散結の効能があり、浮腫や腹水、瘰癧(頸部リンパ腺腫)などに用いる。効能は大戟とほぼ同じであるが、作用は緩和であり、毒性も大戟より弱い。

 腹水や全身性の浮腫には単独あるいは大棗と併用して用いる。全身の浮腫とともに咳嗽や呼吸困難のみられるときには紫苑・白前などと配合する(沢漆湯)。近年、中国ではリンパ節結核や食道癌などに対する臨床研究がされている。日本の民間では乳汁を疣贅に塗る治療法がある。

火曜日, 11月 19, 2013

槖吾

○槖吾(たくご)

 北日本を除く日本各地や朝鮮、中国などに分布するキク科の常緑多年草ツワブキ(Farfugium japonicum)の茎や根茎、葉を用いる。中国では前走を蓮蓮草と称して薬用にする。ツワブキは艶蕗と書き、葉がフキの葉に似てしかもツヤがあることによる。春先のやわらかい葉柄は食用にもなる。

 葉にはアルカロイドのセンキルキンのほか、ヘキセナールなどが含まれ、ヘキセナールには強い抗菌作用がある。ただしセンキルキンには肝毒性があるとも報告されている。

 日本の民間療法ではフグやカツオなどの魚の中毒のときに煎じた液や生の葉の絞り汁を服用する。また化膿や湿疹などに生の葉を火で炙って軟らかくしたものを患部に貼ったり、痔疾に煎じた液で患部を洗うという療法もある。

 胃腸薬として知られる恵命我神散には莪朮末などと配合されている。中国でも民間薬として感冒や扁桃炎、皮膚病の治療に用いている。

金曜日, 11月 15, 2013

高遠草

○高遠草(たかとうぐさ)

 日本全土、朝鮮半島、中国東北部に分布するキンポウゲ科の多年草アキカラマツ(Thalictrum minus)の全草を用いる。中国ではアキカラマツの根を煙鍋草という。日本では秋の開花期で結実する前に採取する。

 名前は花の形がカラマツの葉に見えることから名付けられたカラマツソウと同属植物で、秋に咲く唐松草という意味である。江戸時代より長野県の高遠藩で利用されていた腹痛の薬草であることから高遠草と呼ばれ、戦時中に苦味健胃薬が不足したことから有名となった。

 苦味成分にアルカロイドのタカトニン、マグノフロリンなどが含まれ、少量では健胃・整腸・解熱の効果があるが、多量に服用するとクラーレ様作用が出現し、神経麻痺、血圧降下などが発現する。

 日本の民間薬として食べ過ぎ、食欲不振、腹痛、下痢など胃腸の症状に用いられる。中国では煙鍋草を歯痛、皮膚炎、湿疹などに内服・外用として用いている。ただしアキカラマツは有毒植物であり、注意が必要であるる

木曜日, 11月 14, 2013

タイム

○タイム

 地中海沿岸地方の原産で日本には明治時代に渡来したシソ科の常緑小高木タチジャコウソウ(Thymus vulgaris)の開花期の全草を用いる。初夏に薄紫色の小さな花を咲かせ、独特の芳香がある。この香りから麝香草の名がある。

 タイムとは「力」を意味し、この香りをかぐと力が湧くといわれる。古くからタイムは勇気のシンボルとされ、ローマ時代にはタイムを浸した水を兵士たちが浴びたといわれる。タイムは独特の香りと苦味のある香辛料としても知られ、クラムチャウダーやソーセージ、魚のソースなどに用いられる。この芳香は石鹸などの香料としても知られている。

 成分にはチモール、カルバクロール、シメンなどからなる精油が含まれ、水蒸気蒸留すればチアミン油(タイム油)が得られる。チモールには抗菌・抗真菌作用、駆虫作用、チモールやカルバクロールなどには去痰作用がある。このチモールは局所殺菌剤や軟膏剤として用いられるほか、うがい薬、洗浄薬、歯みがき剤に添加されたり、家畜の駆虫薬としても利用されている。

 タイムのハーブティーには発汗作用や去痰作用、消化器系の鎮静作用も認められている。このためヨーロッパでは鎮咳薬、感冒薬として感冒、気管支炎、咽頭炎、百日咳などに用いられている。また、うがい薬や口内洗浄薬として咽頭炎や歯肉炎に効果があり、入浴剤として利用すればリウマチの痛みを和らげる。

 タイム油は皮膚および粘膜の刺激剤として用いられる。日本には同属植物のイブキジャコウソウ(T.quinquecostatus)が自生し、百里香とも呼ばれている。

水曜日, 11月 13, 2013

大麻

○大麻(たいま)

 中央アジア原産のクワ科の一年草アサ(Cannabis sativa)の雌株の未熟果穂をつけた枝先や葉を用いる。本来、この植物をアサ(麻)と呼んでいたが、いつの間にか繊維植物の総称として麻というようになり、現在では亜麻や苧麻の繊維のことを麻と表示するようになった。このためアサのことをタイマ(大麻)と称して区別している。

 紀元前20世紀には中東地域で栽培され、紀元前に中国に伝わり、日本にも弥生時代にすでに栽培されていたと考えられている。古くは大麻を苧と称し、戦前までは日本各地で栽培され、現在でも栃木県では「とちぎしろ」と呼ばれる品種が栽培されている。

 アサの茎を収穫し、蒸して皮を剥ぎとり、さらに加工して細くほぐして麻糸とする。この麻糸は織物、ロープ、魚網などに利用される。アサの種子は生薬の麻子仁で、一般には苧実とか麻実とも呼ばれて七味唐辛子や小鳥の飼料、製油原料などにも用いられている。一般に麻の穂や葉などには幻覚物質が含まれるが、その含有量は品種によって異なり、日本の栽培品種にはほとんど含まれない。

 幻覚薬の大麻として用いるのは熱帯品種のインドアサ(C.indica)であり、東南アジアやメキシコなどで栽培されている。ところがこの大麻を温帯で栽培すると樹脂を含まなくなるという。米国では繊維作用として品種改良してアサをヘンプ(hump)と呼び、麻薬性のある品種をカナビス(cannabis)と呼んで区別している。

 インドでは紀元前9世から医薬用として用いられた。その後、回教徒によって各地に伝えられて、アラビアでは幻覚薬として知られ、17世紀にはヨーロッパでも薬として用いられるようになった。しかし東南アジアの民間では鎮静薬とするのみで、麻薬的には使用しない。

 中国の本草書では麻蔶、麻花、麻葉などの名で収載され、神農本草経には「多食すると人を狂い走らせる」とある。2世紀ごろの外科医、華陀は大麻を配合した麻沸散で全身麻酔をかけ、開腹手術などを行ったと伝えられている。ただし、漢方では種子の麻子仁は用いても、大麻はあまり利用していない。麻薬として用いる大麻の乾燥した葉などはマリファナと呼ばれ、琥珀色の樹脂を粉にしたものをハシシュという。一般に内服よりも喫煙のほうが効力は強い。

 葉にはカンナビノイドのテトラヒドロカンナビノール(THC)などが含まれている。このTHCには鎮静・鎮痛・多移民・麻酔作用とともに幻覚などの精神作用がある。大麻を喫煙すると身体的には頻脈、目の充血、口渇作用がみられ、精神的には多幸感、感覚の変化、注意力低下、被暗示性亢進、さらには非現実感、幻覚、妄想なども出現する。一般に精神的依存はあるが、身体的依存はないとされている。つまり弱いながらも習慣性があり、慢性中毒では無気力となる。

 現在、大麻に関する規制は国や州によって異なり、オランダやスイスなどは比較的自由であるが、日本では大麻取締法により栽培や使用が規制されている。

火曜日, 11月 12, 2013

大腹皮

○大腹皮(だいふくひ)

 マレー半島原産でインドネシア、フィリピン、中国南部に植栽されるヤシ科の常緑高木ビンロウ(Areca catechu)の果実の果皮を大腹皮という。種子は檳椰子という。日本には奈良時代にこの果実が薬用や染料の目的で輸入された記録がある。

 一般に果実を半割りにして種子を除いているため、長さ6cm、幅3cm、厚さ1cmぐらいのお碗形をしており、外側はシュロ状の繊維で覆われ、内側は黄褐色でつやがある。本来、この部分は種子を包んでいる繊維性の果肉である。

 漢方では降気・寛中・止瀉・利水消腫の効能があり、消化不良や腹部の膨満感を改善し、脚気や腹水などの浮腫に用いる。

月曜日, 11月 11, 2013

大風子

○大風子(だいふうし)

 東南アジアやインドなどで栽培されているイイギリ科の常緑高木ダイフウシノキ(Hydnocarpus anthelmintica)の種子を用いる。大風というのはハンセン病(癩病)のことである。

 インドには古くからチャウルムグラ(H.wightiana)の種子を食べるとハンセン病が改善するという言い伝えがあり、それが元代に中国に伝えられ、明代には同属植物が大風子と名付けられてハンセン病の治療に盛んに用いられるようになった。ヨーロッパには1854年に英国の医師によってハンセン病に有効であることが紹介され、1920年にはオーストリアの植物学者ロックによってその基原植物が明らかになった。

 チャウルムグラ油(大風子油)はこれまで治療のなかったハンセン病に対して非常に有効で、とくに初期治療に優れていた。今日、サルファ剤が開発されてからはあまり用いられなくなった。

 種子成分のヒドノカルプス酸やチャウルムグラ酸などの脂肪酸にはレプラ菌やムグラ菌に対して抗菌作用が認められている。ただし、副作用も強く、内服では嘔吐や腹心、眩暈、腹痛などの反応が現れ、注射液では局所痛が強く、全身的な症状が出る。

 漢方でもハンセン病に丸薬として用いるほか、軟膏などに配合して外用薬として用いる。外用薬では疥癬や梅毒などの皮膚疾患にも応用される。

土曜日, 11月 09, 2013

大棗

○大棗(たいそう)

 ヨーロッパ南部からアジア西南部が原産とされているクロウメモドキ科の落葉高木ナツメ(Zizphus jujuba var.inermis)の半熟果実を用いる。ナツメの枝には刺はないか、あるいは少ないが、この母種といわれるサネブトナツメ(Z.jujuba)には刺が多い。このサネブトナツメの果実は小さくて酸味が強く、核が大きいので食用にはならないが、種子は生薬の酸棗仁である。

 ナツメは中国では紀元前よりモモやアンズとともに重要な五果のひとつとして栽培され、日本にも奈良時代に渡来した。ナツメの名前の由来は初夏に芽が出ることによるとされ、また茶の湯の道具のナツメは器の形がナツメの実に似ているためといわれる。日本でもよく庭に植えられているが、中国では子供の誕生にこの樹を植えて、嫁ぐときに持参するという風習がある。

 果実は熟すと甘くなり、生のままでも食べられているが、中国では薫製にした烏棗や砂糖に漬けた密棗などの菓子もよく親しまれている。薬用には成熟しきらずに赤くなった頃に採取し、そのままあるいは湯通しして用いる。加工により色が変化するため紅棗や黒棗に区別される。薬用には主として紅棗を用いる。虫やカビがつきやすいので保管には注意が必要である。

 ナツメの成分には糖類、有機酸、トリテルペノイド、サポニンが含まれ、また水浸液に多量のc-AMP、c-GMPが存在することが注目されている。薬理作用としては抗アレルギー、抗潰瘍、抗ストレスのほか、細胞内のc-AMPを増加させる作用などが報告されている。

 漢方では脾胃を補い、精神を安定させ、刺激の強い薬性を緩和する効能があり、食欲不振、下痢、動悸、ヒステリーなどに用いる。中国ではアレルギー性紫斑症や血小板減少症の治療効果に関して研究されている。ただし、過量に用いると便秘や腹部膨満感を生じることもある。

金曜日, 11月 08, 2013

大青葉

○大青葉(たいせいよう)

 クマツヅラ科のマキバクサギ(Clerodendron cyrtophyllum)、タデ科のアイ(Polygonum tinctorium)、アブラナ科のホソバタイセイ(Isatis tinctoria)やタイセイ(I.indigotica)、キツネノマゴ科のリュウキュウアイ(Strobilanthes cusia)などの葉や枝葉を用いる。

 日本ではアイの全草を藍草という。マキバクサギの根は大青根、ホソバタイセイやタイセイ、リュウキュウアイなどの根は板藍根、アイの果実は藍実という。これらから精製された藍色の色素は青黛という。いずれも藍染の原料として知られているが、化学染料の出現とともに栽培がすたれてきている。

 成分には配糖体のインジカンがほぼ共通して含まれ、抗菌・抗ウイルス作用が認められている。漢方では清熱涼血・解毒の効能があり、高熱や発疹などを伴う感染症、例えば麻疹、流感、肝炎、脳炎、急性腸炎、肺炎、丹毒などの疾患に用いる。

 感冒で高熱、頭痛、咽頭痛などのみられるときには羗活・柴胡などと配合する(清瘟解毒丸)。上気道炎や扁桃炎などには板藍根・草河車などと配合する(感冒退熱冲剤)。日本の民間では藍草を発熱、外傷、月経不順、痔などに用いる。

木曜日, 11月 07, 2013

大豆黄巻

○大豆黄巻(だいずおうけん)

 マメ科のダイズ(Glycine max)の種子を発芽させ、1cmくらいのもやしになったものを用いる。ダイズはアメリカをはじめ、ブラジル、中国、アルゼンチンなど世界各地で栽培され、ダイズもやしは中華料理、韓国料理で多く利用されている。

 ダイズの種皮の色には淡黄、茶、緑、黒色などがあり、一般に黄色い黄大豆がダイズとしてよく知られているが、通常、薬用には黒大豆(クロマメ)が用いられ、大豆黄巻もクロマメもやしを用いる。

 大豆黄巻の作り方は、まずダイズの外にしわができるまで水に浸した後、ざるの上に湿った状態のままで置いて発芽させる。次いで殻が落ちないように風通しのよいところで半乾きにした後日干しして乾燥させてできあがる。そのうち清水に浸したものを特に清水黄巻という。種子にはソヤサポニンやゲニスチン、ビタミンCなどが含まれる。

 漢方では解表・解暑・利水消腫の効能があり、夏の感冒や脚気などによる発熱や下痢、胸苦しい、体が重いなどの症状に用いる。とくに夏季の常用薬として知られ、また全身性の浮腫や関節の腫痛にも用いる。

 金匱要略では虚労で体力が低下し、さらに風邪に冒されたときの諸症状に用いる薯蕷丸の中に大豆黄巻が配合されている。古くは朱砂や鉛などの配合された石薬による薬害の解毒に特効があるとされていた。

水曜日, 11月 06, 2013

代赭石

○代赭石(たいしゃせき)

 中国各地に産する赤鉄鉱(Hematite)の一種で、多少粘土を混有したものである。日本では新潟県の佐渡に産する。成分は主に酸化鉄(Fe2O3)からなり、ケイ酸(SiO2)やアルミニウム化合物(Al2O3)なども含み、またマンガン、マグネシウム、カルシウム、さらに微量のチタンや砒素を含むことがある。

 全体が赤褐色色をしており、触ると赤褐色の粉末がつく。表面に金槌で打ったような多数の凹凸があり、釘頭代赭ともいわれる。赭とは赤色のことで、中国の山東省代州から良質のものが出るため代赭石の名がある。イボデといわれ、多数のこぶ上の突起があり、質が硬く、紫赤色の光沢があるものがよいとされている。

 中国では代赭石の粉末を硫酸バリウムの代用として胃腸透視に用いている。ただし微量の砒素を含むため、マウスに長期間服用させると砒素中毒がおきるという報告がある。

 漢方では重鎮安神あるいは平肝熄風薬のひとつであり、胃気上逆や肝陽上亢の治療に用いる。嘔吐やゲップ、シャックリ、喘息症などには旋覆花・半夏などと配合する(旋覆花代赭石湯)。高血圧などによる眩暈や頭暈、耳鳴り、動悸などには竜骨・牡蠣などと配合する(鎮肝熄風湯)。

 また血熱妄行による鼻血や吐血には粉末を単独で服用したり、外傷の出血には粉末を塗布する。また温性の瀉下剤の紫円には巴豆の激しい作用を緩和するために代赭石が配合されている。

土曜日, 11月 02, 2013

太子参

○太子参(たいしじん)

 中国、朝鮮半島、日本に分布しているナデシコ科の多年草ワダソウ(Pseudostellaria heterophylla)の塊根を用いる。主産地は江蘇・山東省である。

 太子参とはもともとウコギ科のオタネニンジンの小さいものを指したが、その代用としてワダソウの塊根が広く用いられるようになった。また特に小児の治療に効果があるため別名を児参ともいう。

 漢方では人参と同じく補気・止渇の効能があり、胃腸が弱く、倦怠感や食欲不振、神経衰弱などの症状がみられるとき、病後で口渇や多汗が続くときなどに用いる。とくに小児の虚弱体質や夏かぜで寝汗が続き熱の下がらないものに用いる。

金曜日, 11月 01, 2013

大蒜

○大蒜(たいさん)

 西アジア原産とされるユリ科の多年草ニンニク(Allium sativum)の鱗茎を用いる。ニンニクは前漢の時代に長騫がインド(西域)から中国に持ち帰ったものといわれ、かつては胡蒜とか葫といわれていた。日本にも古くから朝鮮を経由して伝来し、古事記や日本書紀などにも蒜の文字がみられる。

 独特の強い臭気を有し、香辛料ではガーリックとしてさまざまな料理に用いられている。ちなみに和名のニンニクは仏教語の忍辱と書き、強烈な臭いに耐え忍ぶことを意味するとか、僧侶の隠語などという説がある。

 臭気や辛味のある野菜のことを葷というが、ニラ、ヒル、ラッキョウ、ネギなどとともに五葷(五辛)のひとつとされ、仏教では食べることが禁じられている。その影響もあってか日本料理ではあまり利用されず、戦後になって洋風料理や中華料理などの普及とともに、身近な食品になった。

 古代エジプト時代、ピラミッド造成のときに人夫の体力回復に用いられたといわれ、ギリシャ時代には虫下し、咳止め、浮腫の治療に、また世界各地で疫病除け、悪霊除けにとしても扱われた。

 ニンニクの鱗茎にはイオウ化合物のアリイン、スコルニジンのほか、ビタミンB1、ゲルマニウムやセレンが含まれている特徴がある。アリインは無味無臭であるが、細胞が破壊されると同時に含まれているアリナーゼという酵素によって分解され、刺激性の強い臭気のあるアリシンが生じる。アリシンは強い殺菌防腐作用があり、さらにビタミンB1と容易に結合してアリチアミンという化合物を作る。

 アリチアミンは腸から容易に吸収され、ビタミンB1分解酵素によっても分解されず、ビタミンB1作用を有する安定な化合物である。このアリチアミンはとても苦く、臭気も強い。これをモデルとして化学的に合成したビタミンB1誘導体がアリナミンである。またスコルニジンといわれる無臭のニンニク有効成分結晶性物質も医薬品(オキソレジン)として応用されている。最近では、アリシンを加熱してできるアホエンに強い抗酸化作用や抗血小板凝集作用、記憶力向上作用のあることが注目されている。

 一方、ニンニクには食欲増進、健胃、整腸、緩下剤、体温上昇、疲労回復などの作用が知られている。ただしニンニクを空腹時に食べると、胃液の分泌が亢進して酸度が上昇し、胃を荒らす恐れがあり、さらに一度に多く食べると、赤血球を破壊して貧血を招くこともある。また、腸内細菌のバランスを崩し、ビタミンB6欠乏症を起こすことも指摘されている。

 漢方では健胃・駆虫・消腫の効能があり、食滞や腹痛、下痢、寄生虫症、皮膚化膿症などに用いる。ちなみに中国の本草書などでは大蒜に強壮作用があるという記述はみられない。一般に漢方処方として用いられることは余りなく、専ら民間療法として用いられている。

 民間では冷え性、低血圧、慢性疾患、寄生虫症、腰痛、風邪の予防などにニンニクを食べたり、扁桃炎や円形脱毛症、腫れ物、いんきんたむしなどにすりつぶした汁を塗布する。ニンニクを熱灰の中に埋めて蒸し焼きにするなどの加熱処理をすると食べやすくなる。

 そのほかニンニク酒や醤油漬け、蜂蜜漬けなども利用されている。またニンニクを厚さ2~3mmに薄くスライスし、その上からをすえるというニンニク灸もよく知られている。近年、アメリカ国立癌研究所では、癌や生活習慣病を予防する可能性がある食品のリストの上位にニンニクを位置づけている。

木曜日, 10月 31, 2013

大戟

○大戟(たいげき)

 中国、朝鮮半島、日本各地に分布するトウダイグサ科の多年草タカトウダイ(Euphorbia pekunensis)の根を用いる。そのほか中国南西部に分布するアカネ科の多年草コウガタイゲキ(Knoxia valerianodes)の根も大戟として扱われている。一般に大戟の正常条は京大戟とされているが、実際には紅芽大戟が広く使用されており、日本に輸入されているのも紅芽大戟のみである。

 タカトウダイには有毒成分であるオイフォルビンなどの成分が含まれ、茎中の乳液に触れると皮膚炎や結膜炎が生じ、誤飲すれば咽喉腫脹、嘔吐、下痢、血中に入れば眩暈、痙攣などをひきおこす。

 漢方では逐水・消腫・軟堅の効能があり、浮腫や腹水、胸水、皮膚化膿症、瘰癧(頸部リンパ腺腫)などにもちいる。とくに峻下逐水薬として知られ、瀉下作用と利尿作用を有している。腎炎の浮腫、肋膜炎の胸水、肝硬変の腹水などに甘遂・芫花などと配合する(控涎丹・舟車丸)。

 また瘟疫による嘔吐や下痢、咽喉痛などに山慈姑などと配合する(紫金錠)。ただし作用が激しく、有毒であるため慎重に投与し、民間療法としては用いないほうがよい。

水曜日, 10月 30, 2013

大薊

○大薊(だいけい)

 中国の各地、日本の各地に自生しているキク科の多年草ノアザミ(Cirsium japonicum)の全草あるいは根を用いる。一方、小薊というのはキク科のアレチアザミ(Breea segetum)の根または全草である。

 日本の市場では、日本で採取されたノアザミをアザミ根と称して販売している。中国の市場では、大薊としてアレチアザミやその他の植物も混じっており、また地域によって根を用いるか、全草を用いるかも異なっている。

 大薊には清熱涼血・止血作用の効能があり、鼻血、喀血、血便、血尿、不正性器出血などに用いる。とくに熱証の出血に効果があり、単味で濃く煎じた液や生の絞った汁を服用する。

 小薊、荷葉、側柏葉などとともに強火で炒め炭化させ、粉末として十灰散は各種出血に用いる代表的な止血薬である。また絞った汁は外傷性出血のほか、火傷や化膿などの外用薬としても用いる。日本の民間では利尿や健胃薬として煎じて服用したり、葉の汁を腫れ物や乳腺炎、湿疹などに外用する。

月曜日, 10月 28, 2013

大黄

○大黄(だいおう)

 中国などに分布するタデ科の多年草ダイオウ類の根茎を用いる。ダイオウはおもに中国西北部の海抜2000~3000mの高山に自生し、ギシギシとよく似た植物であるが草丈は2mにも及ぶ。

 中国、朝鮮産のダイオウの基原植物にはショウヨウダイオウ(Rhcum palmatum)、ヤクヨウダイオウ(R.offcinale)、タングートダイオウ(R.tanguticum)、チョウセンダイオウ(R.coreanum)などがある。日本産のダイオウには、シベリア原産で江戸時代に渡来したカラダイオウ(R.undulatum)というのがあり、奈良県で古くから栽培されていた。このカラダイオウの根茎は、とくに和大黄という。現在では、武田薬品が信州八ヶ岳山麓で50年の年月をかけて開発した大黄の品種を信州大黄と呼んで、さかんに北海道で栽培が行われている。

 大黄は古くから世界中で用いられた下剤であり、中国の神農本草経、インドのチャラカ本草、欧州のギリシャ本草にも記載されている。大黄はその薬効が激しいため将軍という別名もあり、とくに有名な四川省のものを川軍という。また生のものを生軍というのに対し、酒と混ぜて加熱し後に乾燥したものを酒軍という。

 大黄の断面には多数の放射状に走る旋紋があり、これを錦紋大黄といい、旋紋のみられないものを品質の劣る土大黄として区別する。ちなみに和大黄はこの土大黄色ひとつである。一般に錦紋系の重質品である西寧大黄が良品とされているが日本では江戸時代からおもに雅黄といわれる軽質品が輸入されている。

 大黄の下剤成分としてセンノシド類が知られており、センノシドは腸内細菌によってレイン・アンスロンという活性成分に変換されて大腸で効果を発現する。またアントラキノン類の抗菌・抗炎症作用、リンドレインの抗炎症作用、ラタンニンの血清BUN低下作用なども明らかにされている。

 漢方では通便・清熱・瀉火・活血化瘀の効能があり、熱性疾患、興奮症状、瘀血、腹部腫瘤、無月経などに用いる。大黄の瀉下成分は熱に不安定であるため30分以上煎じるとその効果は激減するため、下剤として用いるときには一般に後から煎じる。一方、清熱・活血薬として用いるときには長時間煎じる方が効果は強くなり、、瀉下作用は緩和される。

 また酒軍にして用いれば瀉下作用は弱まり、抗炎症作用や駆瘀血作用が強くなる。ただし大黄には子宮収縮作用があり、また母乳に移行するため、妊娠中や授乳中の服用は控えるべきとされている。

金曜日, 10月 25, 2013

大茴香

○大茴香(だいういきょう)

 中国南部、台湾、ベトナム北部に分布するシミキ科(モクレン科)の常緑小高木ダイウイキョウ(Illicium verum)の成熟果実を用いる。単に茴香といえばセリ科のウイキョウ(Foeniculum vulgare)の果実、小茴香(フェンネル)のことである。

 ダイウイキョウの果実は星型に8つに割れており、別名八角あるいは八角茴香という。一般に未熟な果実を乾燥させ、そのままあるいは粉末にして香辛料にする。茴香やアニスに似た風味と苦味があるため、大茴香とかスターアニスともいわれる。日本などに自生するシキミとよく似た植物であり、ダイウイキョウはトウシキミとも呼ばれる。

 シキミはアニサチンやシキミニンなどの痙攣毒を含み有毒である。かつてスターアニスと称してシキミの実がドイツに輸入され、中毒事件を起こしたことがある。ダイウイキョウは中華料理には欠かせないスパイスで、東坡肉などの肉や内臓の煮込みによく入れられる。

 果実にはアネトールを主成分とする精油を含み、そのほかピネン、リモネン、フェランドンなどが含まれる。アネトールには芳香があり、健胃・消化、駆風作用が知られている。漢方で温裏・理気・止痛の効能があり、冷えによる嘔吐や腹痛、食欲不振などに用いる。ちなみに市販のウイキョウ油はほとんどが大茴香であり、歯磨きなどの賦香料、アネトール原料として利用されている。

 近年、抗インフルエンザウイルス剤・タミフルの原料としてトウシキミの成熟果実から抽出されたシキミ酸が利用されていることで大茴香が品不足となり、話題となった。

月曜日, 10月 21, 2013

鼠李子

○鼠李子(そりし)

 日本では北海道、本州、九州、四国に分布するクロウメモドキ科の落葉低木クロウメモドキ(Rhamnus japonica)の果実を用いる。中国産はチョウセンクロツバラ(R.davurica)の果実である。ウメモドキに似て、果実が黒くなるためクロウメモドキの名がある。

 クロウメモドキの果実にはケンフェロール、エモジン、クリソファノールなどが含まれ、いずれも大腸刺激性の瀉下作用がある。漢方では通便・清熱・消癥の効能があり、水腫や腹部脹満感、腹部腫塊、齲歯の痛みなどに用いる。

 日本の民間療法ではもっぱら鼠李子を緩下剤として用いている。鼠李子の新鮮なものを服用すると嘔吐を催すので、採取後1年以上経ったものを使用する。クロウメモドキの同属植物として北米産のカスカラサグラダ(R.purshiana)、ヨーロッパ産のラムヌス・フラングラ(R.frangula)、中央アジア産のラムヌス・カタルチカ(R.cathartica)などがあり、いずれも緩下作用のある薬用植物として有名である。

金曜日, 10月 18, 2013

蘇葉

○蘇葉(そよう)

 中国原産のシソ科の一年草シソ(Perilla frutescens var.acuta)やチリメンジソ(P.frutescens var.crispa)の葉を用いる。シソの種子は紫蘇子、茎は紫蘇梗という。日本にも古くに伝わり、野生化しているものもある。

 紫蘇には特有のペリラアルデヒドのにおいがあり、香りが強いものほど良品である。シソはアントシアニン系の赤い色素、シアニンの有無によって赤ジソ系と青ジソ系に分けられ、青ジソは大葉ともいわれて刺身のつまや薬味として、赤ジソの葉は梅干しの着色などに利用されている。

 薬用には赤ジソを用い、とくにシソの変種で葉の緑がギサギザでシワの多いチリメンジソが用いられる。シソの紫色の葉に含まれるアントシアニン色素は梅のクエン酸などで酸化されると赤紅色に変化するが、梅干しが赤色なのはこのためである。ちなみに梅とシソを漬けた梅干しは日本独特の保存食である。

 葉の成分にはアントシアン色素や精油のペリラアルデヒド、ピネン、リモネン、ペリラケトンなどが含まれ、抗菌・解熱作用や鎮静作用が知られている。また、シソの葉エキスにはロスマリン酸などが含まれ、免疫を活性化させるTNFを抑制し、ヒスタミンの遊離を抑制する作用があり、花粉症などのアレルギー症状に対する効果が認められている。

 漢方では解表・理気・解魚毒・安胎の効能があり、感冒や咳嗽、喘息、腹満、流早産、魚毒による症状などに用いる。蘇葉の発汗作用は麻黄や桂皮に比べると弱いが、理気作用、つまり胸の痞えや悪心、嘔吐などを改善する作用もあり、胃腸型の感冒にしばしば応用される。蘇葉の理気作用は食欲不振のほか妊娠悪阻にも効果がある。

 また魚介類による中毒や蕁麻疹にも効果があり、このため刺身のつまに青ジソが添えられているといわれている。また陰嚢湿疹に蘇葉の煎じた液を外用すると効果がある。

木曜日, 10月 17, 2013

蘇木

○蘇木(そぼく)

 インドからマレー半島原産で中国南部や台湾でも栽培されるマメ科の常緑小高木スオウ(Caesalpinia sappan)の心材を乾燥したものを用いる。スオウというのは中国名の蘇方の転じたもので、蘇芳と蘇方木とも書かれる。

 心材には黄色結晶であるブラジリンを含み、これは空気中で酸化されて紅色のブラジレインとなる。古くから赤色染料(蘇方染め)として有名である。なお同じマメ科の植物にハナズオウがあるが、この花の色が蘇方染めの色に似ていることから名付けられた。ちなみに南米に産する同属の植物をポルトガル人が誤って蘇方木(Pau Brasil)と詠んだが、これがブラジルの国名の由来といわれている。

 木部にはブラジリンのほか、フェランドレンやオシメンなどを主成分とする精油が含まれる。また煎液に心臓の収縮力を増強、中枢神経抑制、抗菌などの作用のあることが知られている。漢方では活血・通経・止血の効能があり、外傷や腹痛、無月経、産後の瘀血など婦人科疾患に用いる。

 打撲傷などの瘀血による諸症状に紅花・当帰・大黄などと配合する(通導散)。産後の悪露や骨盤内の炎症に川芎・桃仁などと配合する(活血散瘀湯)。また東南アジアでは収斂性の止瀉薬として、インドネシアでは痔や梅毒の治療に用いている。

水曜日, 10月 16, 2013

鼠婦

○鼠婦(そふ)

 ダンゴムシ科の動物オカダンゴムシ(Armadillidum vulare)の乾燥した全虫を用いる。オカダンゴムシはユーラシア大陸を原産とするが、現在では世界中に広く分布している。

 体長1~1.5cmくらい、黒灰色の長楕円形で、背中が七節に分かれて、身を守るために体を丸くする。この丸くなった様子が団子に似ていることからダンゴムシの名がある。朽ち木や石の下など湿ったところに普通にみられる。

 漢方では消癥・利水・解毒・止痛みの効能があり、マラリアによる肝脾腫、婦人の腹部腫瘤、排尿障害、歯痛などに用いる。マラリアによる肝脾腫には別甲・柴胡などと配合する(別甲煎丸)。

火曜日, 10月 15, 2013

蘇鉄実

○蘇鉄実(そてつじつ)

 九州南部や沖縄県、中国南部に分布するソテツ科の常緑低木ソテツ(Cycas revoluta)の種子を用いる。日本の民間では一般に蘇鉄実、蘇鉄子というが、中国では鉄樹果という。ソテツはヤシ科の植物に似ているが雌雄異株の裸子植物であり、1895年に池野成一郎がソテツの精子を発見したことでも有名である。

 ソテツ(蘇鉄)という名は元気がなくなれば鉄釘を幹に打ちつけたり、鉄屑を養分として与えると蘇生することに由来する。中国でも蘇鉄というが、鳳尾蕉、鉄樹などとも呼ばれている。

 種子は朱色の3~4cmの偏平な卵形である。果実や幹の髄にはデンプンが含まれ、種子の外皮や内皮を除いた胚乳を粉末にして蘇鉄もちを作って食用とする。蘇鉄は救荒植物として古くから利用されていたが、ホルムアルデヒドなどの有毒物質を含むため十分に水洗いしないと中毒を起こす。牛が種子を食べて麻痺症状を起こすことがある。

 種子にはアデニン、ヒスチジン、ホルムアルデヒド、配糖体のサイカシンが含まれ、アデニンには鎮咳作用、ホルムアルデヒドには殺菌作用がある。またサイカシンなどの有毒アゾキシ配糖体は体内で加水分解されて発癌性のあるメチルアゾキシメタノールを遊離する。これはグァム島の住民の筋萎縮性側索硬化症の原因物質ともされている。

 日本の民間療法では種子を煎じて鎮咳・通経・健胃薬として用いたり、煎液で切り傷を洗う方法がある。しかし発癌性が強いので服用しないほうがよい。

土曜日, 10月 12, 2013

蘇合香

○蘇合香(そごうこう)

 東南アジアに分布するマンサク科の落葉小高木レヴァントスティラックス(Liquidambar orientalis)の樹脂を用いる。トルコ産を主産地とするが、中国でも広西省で栽培されている。かつて蘇合香はトルコ近辺に産するエゴノキ科の植物、スティラクス(Styrax offcinal)から得られる樹脂のことであったが、16世紀以降、安価なためこのマンサク科の植物の樹脂に代わってしまった。

 樹脂は粘稠で芳香がある。樹幹を深く傷つけると木部の外側にバルサムが溜る。この樹皮に染み込んだ部分を剥がして圧搾し、さらに水と煮沸して圧搾すると黄白色ないし褐色の粘稠な液体が得られる。これをアルコールに溶かし、濾過してアルコールを蒸発して精製する。この水飴のような半流動性の濃い液体を蘇合香という。蘇合香は水に入れると沈み、芳香があり、苦味を帯びた辛さがある。薬用以外にも化粧用香料として用いられる。

 成分にはケイヒ酸やケイヒ酸エステルなどが含まれ、弱い抗菌作用や刺激性の去痰作用が認められている。漢方では開竅・止痛の効能があり、麝香などと同じく中枢性の興奮薬として知られている。脳卒中や失神、狭心症の発作には犀角・麝香などと配合する(蘇合香丸)。狭心症の痛みには竜脳・乳香などと配合する(冠心蘇合丸)。

金曜日, 10月 11, 2013

素馨花

○素馨花(そけいか)

 インドからイランにかけて野生するモクセイ科のつる性常緑低木ソケイ(Jasminum officinale)の花や花蕾を用いる。硬い蕾は特に素馨針という。

 中国南部や台湾でも栽培され、日本にも19世紀の初めごろに伝えられた。白く小さな花が夜間に開き、芳香を放つ。素馨とい名は中国の美女の名前に由来する。ソケイ属は学名をジャスミンといい、花に芳香のあるものが多く、香料源として栽培されているものが多い。ジャスミン茶といえば同属植物のマツリカ(J.sambac)の花の入ったお茶をいうが、ソケイもジャスミンの一種であり、花から得られるジャスミン油は化粧品や香料として用いられている。

 ジャスミン油にはリナロールやベンジルアセテート、芳香の主成分であるジャスモンが含まれている。漢方では疏肝・理気・止痛の効能があり、理気薬のひとつとしておもに肝気欝結による胸脇部の痛みや腹痛に用いる。例えば消化不良や潰瘍、肝炎などによる上腹部や側腹部の痛みに使用する。お茶として愛飲すれば婦人の更年期障害にも効果がある。

木曜日, 10月 10, 2013

側柏葉

側柏葉(そくはくよう)

 中国または朝鮮半島を原産とするヒノキ科の常緑小高木コノテガシワ(Thuja orientalis)の若枝を含む葉を用いる。種子は柏子仁という。ヒノキに似た葉を有するが、葉は表裏の区別がなく全てが垂直に並び、手掌を立てたように見えるためコノテガシワ(児手柏)という名がある。日本には江戸時代に伝えられ、庭園樹として広く栽培されている。

 葉にはαピネン、セスキテルペン、アルコールなどの精油、エストリド型蠟成分のユニペリン酸やサビニン酸、タンニン、フラボノール類が含まれる。漢方では涼血・止血の効能があり、吐血、鼻血、血便、血尿、不正性器出血、内出血などあるゆる出血症状に用いる。実験では止血作用は新鮮な生の側柏葉(鮮柏葉)が最も強く、炭化させた柏葉炭はそれよりも劣る。

 熱性疾患に伴う鼻血や喀血などには鮮柏葉に鮮荷葉・鮮地黄などと配合する(四生丸)。吐血や歯肉出血、喀血などには大薊・小薊などと一緒に黒焼きにして用いる(十灰散)。また寒証の出血には艾葉や乾姜などと配合して用いる(柏葉湯)。また火傷の治療に側柏葉を粉にして泥状にしたものを外用する。円形脱毛症の治療には新鮮な側柏葉をアルコールにつけた液を患部に塗る。

 近年、中国では側柏葉の鎮咳・去痰作用が注目され、慢性気管支炎や肺結核に側柏葉エキスの錠剤や注射液を用いた治療が報告されている。また高血圧の治療に煎じて茶の代わりに服用する。

水曜日, 10月 09, 2013

続断

○続断(ぞくだん)

 マツムシソウ科のナベナ(Dipsacus japonicus)やトウナベナ(D.asper)の根を用いる。中国ではおもに四川省などで採れるトウナベナ(川続断)の根が用いられるため川断とも呼ばれている。

 ナベナは本州、九州、四国や朝鮮半島、中国東北部に分布するがトウナベナは日本には自生していない。日本産の続断といわれるものはナベナではなく、キク科のノアザミ(Cirsium japonicum)やノハラアザミ(C.tanakae)であり、和続断と呼ばれる。このような混同は中国でも古くからあるが、これは続断という名が骨折や打撲、出血などの外傷の治療に効果があるという意味であり、同様の薬効をもつものが広く続断と呼び慣わされているためである。

 ナベナの根にはアルカロイドが含まれるが、詳細は不明である。漢方では補肝腎・続筋骨・活血の効能があり、筋骨を強める強壮作用がある。とくに腰や下肢の筋力低下や疼痛、打撲、捻挫などの腫張や疼痛に効果がある。これらの作用は杜仲や牛膝と似ており、しばしば併用される。

 足腰の弱りや精力の低下、冷え性、頻尿などに用いる大菟絲子丸や参鹿補片に配合されている。また崩漏(不正性器出血)や胎動不安や乳汁不足にも用いる。月経を延期させるときには蒲黄・枳実などと配合する(延経期方)。外傷には粉末にしたものを患部につける方法もある。

火曜日, 10月 08, 2013

続隋子

○続隋子(ぞくずいし)

 ヨーロッパ南部原産のトウダイグサ科の一年草、ホルトソウ(Euphorbia lathyris)の成熟種子を用いる。別名を千金子ともいい、種子の殻を除き、砕いて油がなくなるまで圧搾したものを千金霜という。

 日本には16世紀(天文年間)に渡来し、薬用および観賞用に栽培されている。ホルトソウという名はポルトガルの油(オリーブ油)に由来するといわれ、かつては種子の油を工業用にも用いていた。属名のユールフォルビア(トウダイグサ属)はローマ時代かの医師エウフォルブスにちなみ、古くから薬用にされていたことを示している。

 茎を切って出る乳液にはユホール、チルカロール、ユホルボールなどのテルペン類が含まれ、石油関連の植物として注目されている。種子には脂肪油の成分としてオイフォルビアステロイドが含まれ、これにはヒマシ油の3倍の強さに匹敵する瀉下作用がある。漢方では瀉下・逐水・破瘀の効能があり、大戟や甘遂と同じ逐水薬として肝硬変による腹水や浮腫、食中毒などに用いる。

 瘟疫による嘔吐や下痢、痙攣、悪瘡などに用いる紫金錠には山慈姑・麝香などと配合する。また駆瘀血薬として無月経やヘビ咬傷などにも用いる。ただし毒性があり、服用し過ぎれば嘔吐、ふらつき、煩躁、発汗などの中毒症状が出現する。

月曜日, 10月 07, 2013

桑葉

○桑葉(そうよう)

 クワ科の落葉高木クワの葉を桑葉という。中国では主にトウグワ(Morus alba)を用い、日本では自生するヤマグワ(M.bombycis)を用いる。クワの根の皮は桑白皮、果実は桑椹子、幼枝は桑枝と称し薬用にする。葉は養蚕のためだけでなく、桑茶としても知られている。ただし日本のクワ茶は一般に桑枝が利用されている。桑葉は習慣的に晩秋の霜に当たったものが良質といわれ、霜桑葉とか冬桑葉などと呼ばれている。

 葉にはフラボノイドのルチンやケルセチン、モラチセン、イノコステロンなどが含まれ、抗菌作用などが知られている。漢方では解熱・明目・止咳の効能があり、感冒などによる発熱、頭痛、結膜炎、口渇、咳嗽、脳卒中、蕁麻疹などに用いる。

 軽い発熱や頭痛、咳嗽、目の充血などを伴う菊花・連翹などと配合する(桑菊飲)。咳嗽や喉の乾燥の強い場合には杏仁・沙参などと配合する(桑杏湯)。慢性気管支炎や肺結核などで乾燥性の咳嗽が続くときに麦門冬・阿膠などと配合する(清燥救肺湯)。視力の低下や眩暈、皮膚の乾燥などに胡麻と配合する(桑麻丸)。また目の充血や痛みには菊花・決明子などと配合する。

 近年、健康食品として桑の葉茶が注目されている。クワの葉にはブドウ糖と構造のよく似た1-デオキシノジリマイシン(DNJ)という成分が含まれ、このDNJは糖質の分解酵素、αグルコシダーゼの働きを阻害して糖の吸収を抑える作用があり、糖尿病肥満の改善効果が認められている。