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金曜日, 3月 30, 2012

弟切草

○弟切草(おとぎりそう)

 日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するオトギリソウ科(Hypericum erectum)の全草を用いる。この近縁植物でやや大きめのトモエソウ(H.ascyron)は紅旱蓮あるいは大連翹という。オトギリソウは日本の民間薬として有名であるが、中国でもおもに民間療法として用いられている。オトギリソウは弟切草と書き、平安時代の伝説に、これを鷹の秘伝の傷薬としていた鷹飼いが、この秘密を他人に漏らした弟を切り殺したという話が残っている。

 全草にタンニンを多く含むほか、アントラキノン類のヒペリシンやフラボノイドのケルセチンなども含まれる。ヒペリシンは紫外線を強く吸収する黒紫色色素であり、これを含む植物は有毒牧草で、ウシやウマなどの家畜が多量に食べて日光に当たると皮膚炎を起こして脱毛する。

 日本の民間療法では主に外用薬として、生の葉や茎の汁を切傷や腫れ物の塗布薬に、煎液を打ち身や捻挫の湿布薬に使用する。ただ生の汁で皮膚炎を起こすこともある。また、内服では煎じて生理不順や扁桃炎、咳嗽に用いるほか、酒に浸したものをリウマチや神経痛、中風などに用いる。中国でも止血・消腫・通乳、調経の薬として鼻血や月経不順、乳汁不足、腫れ物、外傷出血、捻挫などに用いている。欧米では同属植物のセントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)をうつ病に有効なハーブとして利用されている。

水曜日, 3月 28, 2012

黄連

○黄連(おうれん)

 日本の本州以南に自生するキンポウゲ科の常緑多年草オウレン(Coptis japonica)の根茎を用いる。オウレンには葉の形の違いによりキクバオウレン、セリバオウレン、コセリバオウレンなどがあるが、いずれも薬用とする。中国では四川・湖北・ 西省などで栽培されている黄連(C.chinensis)をはじめ三角葉黄連(C.deltoidea)、峨眉野連(C.omeiensis)、雲南黄連(C.teeta)が基原植物とされている。

 根は球を連ねたように短く節くれ、折ると断面が濃黄色のため黄連の名がある。江戸時代に日本の野生種の黄連が中国などに輸出されたとの記録があり、良質と知られていた。幕末のころより丹波黄連などの栽培が始まったといわれるが、現在、兵庫県ではほとんど栽培されておらず、福井県(越前黄連)、鳥取県(因州黄連)などでわずかに栽培されているだけである。中国産では四川省に産する黄連が有名で、とくに川連といわれている。なお、代用にされる胡黄連はゴマノハグサ科の植物の根茎である。

 黄連にはアルカロイドのベルベリン、パルマチン、コプチシンのほか、酸性物質のフェルラ酸などが含まれる。ベルベリンは苦味が強く、抗菌作用や整腸作用が知られている。このベルベリンは黄柏の主成分でもある。黄連エキスには鎮静、抗潰瘍、抗炎症、抗菌作用などが認められている。

 漢方では黄連の性質は大苦・大寒で瀉火・燥湿・解毒の効能があり、チフスなどの流行性熱性疾患、細菌性腸炎、肺結核、嘔吐、鼻血、下血、咽頭炎、口内炎、湿疹などに用いる。古くから「心火を瀉し、胃腸の湿熱を清し、湿と熱の欝結を治療する要薬」といわれている。

火曜日, 3月 27, 2012

黄薬子

○黄薬子(おうやくし)

 本州の関東地方以西、朝鮮半島、中国、東南アジアなどに分布するヤマノイモ科のつる性多年草ニガカシュウ(別名:カシュウイモ Dioscorea bulbifera)の塊根を用いる。ニガカシュウにはヒゲ根を多く付けた大きな偏球形の塊根がある。この塊根は食用にもなるが、苦味が強いため灰汁でよく煮て水にさらし、十分にアクを抜く必要がある。苦味の少ない栽培品種にカシュウイモがある。

 ニガカシュウの塊根にはジオスゲニン、ジオスブルピンなどのステロイドサポニンが含まれ、エキスを用いた動物実験では心抑制作用、子宮興奮作用、抗甲状腺作用、抗菌・抗真菌作用などが報告されている。また黄薬子酒の胃癌、食道癌に対する抗腫瘍作用も注目されている。

 漢方では清熱涼血・清熱解毒・止血・散結の効能があり、鼻血、吐血、喀血などの出血、咽頭腫痛、皮膚化膿症、甲状腺腫などに用いる。また出血や腫れ物に、つき潰したものや粉末にしたものを患部に塗布する方法もある。なお中国ではキンポウゲ科のセンニンソウの植物名を黄薬子というので注意を要す。

月曜日, 3月 26, 2012

王不留行

○王不留行(おうふるぎょう)

 王不留行は、ヨーロッパ、アジアに広く分布するナデシコ科の一年草、ドウカンソウ(Vaccaria pyramidata)の種子を用いる。日本には江戸時代に渡来し、おもに観賞用に栽培されている。中国の広東省産はクワ科のオオイタビ(Ficus pumila)の果実であり、日本に輸入されている王不留行はおもにこれといわれている。

 ドウカンソウの種子にはバクセゴシド、バッカロシドなどのサポニンが含まれる。一般に生のままでは煎じ難いため、鍋で炊いてはじかせてから薬用とする。漢方では通乳・通経・止痛などの作用があり、乳汁不足や乳腺炎、月経閉止、難産、腫れ物、外傷などに用いる。特に中国では乳汁分泌の不足に応用されている。

 金匱要略では外傷の後が腫れて痛むときに用いている。また腫れ物には外用薬としても応用できる。ただし内服では妊婦に禁忌である。

土曜日, 3月 24, 2012

桜皮

○桜皮(おうひ)

 日本各地、朝鮮半島などの温帯に分布しているバラ科の落葉高木ヤマザクラ(Prunus jamasakura)やソメイヨシノなど桜類の樹皮を用いる。桜皮というのは和名であり、中国にはない。サクラ類は日本に多く、数十種が知られているが、一般に植えられているのはソメイヨシノである。

 サクラは北半球の温帯に広く分布し、美しい花の咲く種類は東アジアを中心に自生している。ヨーロッパのサクラ類はおもに西アジアを原産とするセイヨウミザクラ(P.avium)で、サクランボなど食用に栽培されている。ヤマザクラやソメイヨシノの果実は苦くて食用にならない。薬用には主にヤマザクラの樹皮を用いるが、主幹が20cm以上の太くない木を利用する。桜皮の外観は赤褐色ないし灰褐色で光沢があり、特有の匂いとかすかな渋みがある。

 樹皮にはフラボノイドのサクラニン、サクラネチン、グルコゲンカニン、ナリンゲニンなどが含まれ、葉にはクマリン配糖体が含まれる。クマリン配糖体が分解されると芳香物質が生じるが、これが桜餅の独特の香りである。江戸時代の民間療法として桜皮は様々に応用され、魚の中毒、蕁麻疹、腫れ物などの皮膚病の治療、また解熱、止咳、収斂薬として知られていた。日本の漢方家も解毒・排濃の効能があるとし、華岡青洲は桜皮を配合した十味敗毒湯をよく用いた。

 十味敗毒湯は荊防敗毒湯の内容を加減したもので化膿傾向のある湿疹などに対する処方である。現在でも桜皮のエキス製剤は鎮咳虚痰薬として臨床に用いられている。北米でも先住民が古くからワイルドチェリー(Wild Cherry)の樹皮を下痢や呼吸器疾患の治療に用いていたが、その後、咳止めドロップなどの原料に利用されている。

金曜日, 3月 23, 2012

黄柏

○黄柏(おうばく)

 日本全土、朝鮮半島、中国北部、アムール地方に分布するミカン科の落葉高木キハダ(Phellodendron amurense)の樹皮を用いる。中国産にはシナキハダ(P.chinense)の樹皮も市場に出ている。日本では樹皮科の剥がしやすい梅雨明け頃に採取され、周皮を除いて乾燥する。

 キハダという名は樹皮を剥ぐと内側が黄色いことを表している。この内皮は古くから黄色染料として用いられていた。この染料には防虫作用もあるため、中国ではかつて公式文書は黄柏で染めた黄紙が用いられていたと記録されている。実際、黄柏で染色された写経用紙が今日まで正倉院にも残されている。

 樹皮にはアルカロイドのベルベリン、パルマチン、マグノフロリンや苦味トリテルペノイドのオーバクノン、リモニンなどが含まれる。ベルベリンや黄柏エキスには抗菌、抗炎症、中枢抑制、降圧、健胃・止瀉作用などが知られている。

 古来より日本各地で黄柏を主成分とする民間薬が多くあり、奈良の陀羅尼助信州のお百草、山陰の練熊などが胃腸薬として有名である。なお陀羅尼助の名は、苦いため経を読む時の眠気防止に利用されたことによるといわれている。

 漢方では清熱燥湿・解毒・清虚熱の効能があり、下痢、糖尿病、黄疸、膀胱炎、痔、帯下、肺結核、湿疹、腫れ物などに用いる。特に下焦の湿熱の症状に対して効果があり、下痢や排尿以上、性器疾患、下肢の神経症などに用いる。民間では黄柏を酢でねって湿疹や打撲傷などの外用薬として用いる。また煎液を目薬や口内炎、扁桃炎の含嗽薬として用いる。

木曜日, 3月 22, 2012

黄土

○黄土

 中国の西北部から華北にかけて広がる第四紀層に沈積した土を黄土という。アジア内陸のモンゴル、タクラマカンなどの砂漠から偏西風によって渡来した微細な砂粒の風成堆積物で、黄河流域に谷壁をなして露出している。日本には産しないが、関東ロームが比較的近いといわれる。

 K、Na、Ca、SiO2などの塩を含む灰黄色の土である。ただし、日本漢方では一般に伏竜肝のことを黄土と称して用いている。黄土の性味は甘・平・無毒で、和胃・解毒の効能があり、嘔吐、下痢、腫れ物、打撲傷に用いる。金匱要略の黄土湯などに用いる灶心黄土は、この黄土で作ったかまどの土、つまり伏竜肝を用いる。

水曜日, 3月 21, 2012

罌粟殻

○罌粟殻(おうぞくこく)

 西アジアを原産とするケシ科の越年草ケシ(Papaver somniferum)の果殻を用いる。いわゆるケシ坊主の乳液を採取したあとの果実であり、割って種子を除いたものである。乳液を乾燥させたものは阿片といい、種子は罌粟という。

 中国には5、6世紀ごろにインドから伝えられ、唐代の「新修本草」(659年)には底野迦(アヘン製剤)に関する記述がみられる。日本には室町時代にとらいしたといわれるが、芥子と書いてカラシとケシの両方の読み方があるなどのため詳細は不明である。また津軽地方で栽培されたためツガルとも呼ばれていた。江戸時代には津軽地方に阿片の配合された「一粒金丹」という胃腸薬や強壮強精薬として用いる秘薬があった。今日、津軽のケシは絶えて子孫がない。

 現在ではナイル河畔、ヨーロッパ頭部、カザフ及びキルギス、イラン、アフガニスタン、インド北部、東南アジアなどで栽培されている。東南アジアのラオス、タイ、ミャンマーの三国に接する山岳部はゴールデントライアングルといわれ、かつて非合法な栽培地として有名であった。

 成分にはモルヒネ、コデイン、パパベリン、ナルコチンなど20種以上のアルカロイドが含まれ、鎮痛・催眠・鎮咳などの作用がある。漢方では止痛・止咳・止瀉の効能があるが、最初、罌粟殻は北宋の時には止瀉薬として用いられ、止痛薬として用いられるのは元の時代からである。ただし日本では麻薬及び向精神薬取締法によって使用が制限されている。なお、ケシ粒といわれる小さな種子のケシノミはポピーシードとも呼ばれ、しばしばアンパンやクッキーなどに粒のまま用いられている。

火曜日, 3月 20, 2012

鴨跖草

○鴨跖草(おうせきそう)

 日本全土、朝鮮半島、中国、シベリア地方に分布するツユクサ科の一年草ツユクサ(Commelina communis)の全草を用いる。ツユクサは古くはツキクサと呼ばれ、青い花の色素を布に浸けて染める着草の意味であった。花で和紙を染めたものが青花紙であり、この紙から浸出した青色液は友禅染めの下絵を描くのに利用されている。また中国や日本では若芽を食用として利用する。

 薬用には、一般に夏の開花期に全草を採取した日干しにする。全草にはフラボノイドのアオバニン、アオバノールが含まれ、花にはアントシアニン系色素のフラボコンメリニン、デルフィニジンなどが含まれる。中国や日本で民間薬として知られ、利水消腫・清熱・解毒の効能があり、浮腫、脚気、尿量減少、感冒、咽頭炎、耳下腺炎、肝炎、陽炎、帯下、丹毒、腫れ物などに用いる。

 近年、中国ではリウマチにより関節が赤く腫れて痛むときに蒼朮・石膏・知母などと配合した加減蒼朮石膏知母湯がよく用いられている。また日本の民間療法に花の絞り汁を腫れ物や口内炎、痔などに外用する方法がある。

月曜日, 3月 19, 2012

黄精

○黄精(おうせい)

 本州から九州、朝鮮半島に分布しているユリ科の多年草ナルコユリ(Polygonatum falcatum)の根茎を用いる。中国産の黄精はカギクルマバナナユコユリ(P.sibiricum)およびその近縁植物の根茎である。花の咲く様子を鳴子に見立ててナルコユリという。同属植物のアマドコロとよく似ているが、アマドコロの根茎は玉竹である。

 ナルコユリはアマドコロより暖地性で、花が一ヶ所から3個以上つけることが多い。しかしこのアマドコロ属は非常に種類が多く、区別しがたいものも少なくない。このため薬材では太いものを黄精、また一般に黄精よりも玉竹のほうが甘い。

 ナルコユリの根茎には粘液質のファカタンやポリゴナキノンなどが含まれ、降圧作用や強心作用、降血糖作用などが報告されている。ただ、生で用いると咽を刺激するため、蒸した熟黄精を使用する。漢方では補気・潤肺・強壮の効能があり、胃腸虚弱や慢性の肺疾患、糖尿病、病後などによる食欲不振、咳嗽、栄養障害などに用いる。

 日本の民間では江戸時代に滋養・強精薬としてブームとなり、砂糖漬けにした黄精が売られていた。現在でも東北地方には黄精のエキスを入れた黄精飴が売られている。黄精に砂糖を加え、焼酎につけたものを黄精酒といい、精力減退や病後回復の滋養・強壮薬として知られている。小林一茶も黄清酒を愛飲したと書き記している。

土曜日, 3月 17, 2012

黄芩

○黄芩(おうごん)

 朝鮮半島、中国、モンゴルなどに分布するシソ科の多年草コガネバナ(別名コガネヤナギ Scutellaria baicalensis)および同属植物の根を用いる。日本では江戸時代に朝鮮から種子を輸入し、小石川御薬園で栽培されたのが始まりで、今日でも薬用や観賞用として栽培されている。

 コガネバナは葉が狭いのでコガネヤナギともいうが、コガネとは根が黄色いことを指すもので花は紫紅色である。根の断面は濃い黄色で中に赤褐色の芯があるが、古い根の内部は黒く空洞状となっており、枯黄芩または枯芩と呼ばれている。

 根にはフラボノイドのバイカリン、バイカレイン、オウゴニンなどが含まれ、バイカリン、バイカレインには利胆、抗炎症、抗アレルギー、降圧、利尿、鎮静作用などがある。また黄芩エキスでは抗微生物、解熱、鎮痙、抗動脈硬化作用なども報告されている。

 漢方では清熱・燥湿・解毒・安胎の効能があり、咳嗽、下痢、黄疸、膀胱炎、吐き気、皮膚化膿症、胎動不安などに用いる。黄芩は代表的な清熱燥湿薬のひとつで呼吸器、消化器、泌尿器などの炎症や熱性疾患に幅広く応用され、とくに肺熱(呼吸器感染症)を清するといわれている。また頭痛やのぼせ、不眠など頭部に熱が上がっている肝陽上亢の状態や、妊娠中の胎動不安や切迫流産のときにも用いる。

金曜日, 3月 16, 2012

黄狗腎

○黄狗腎(おうくじん)

 食用である。イヌ科のイヌ(Canis familiaris)の雄の睾丸、陰茎を用いる。牡狗陰茎、狗鞭、狗腎、あるいは広東省広州産が有名なため広狗腎ともいわれる。ただし単に狗腎といえば腎臓を指すこともある。ちなみに海狗腎といえばオットセイの陰茎・睾丸のことである。

 犬の種類は非常に多いが、一般に柴犬のような家犬が飼育されている。そのほか中国ではイヌの肉は狗肉、胃の中の結石を狗宝として薬用にしている。冬に陰茎と睾丸を切り取って、まっすぐにして乾燥する。乾燥した陰茎は長さ12cmくらいで、3~4cmの楕円形をした睾丸が輪精管とつながっている。

 漢方では補陽・強壮の効能があり、インポテンツや帯下などの症状に用いる。滋養・強壮薬の至宝三鞭丸に含まれる三鞭とは黄狗腎と海狗腎、および鹿の外生殖器である鹿鞭のことである。なお狗肉には温腎・滋養の効能があり、狗宝には降逆・開欝・解毒の効能がある。

木曜日, 3月 15, 2012

黄耆

○黄耆(おうぎ)

 中国の東北、華北地方、朝鮮半島などに分布するマメ科の多年草キバナオウギ(Astragalus membranaceus)、または中国東北部から蒙古にかけて分布するナイモオウギ(A.membranaceus var.mongholicus)などの根を用いる。品質の良いものは外部が淡褐色、内部は黄白色で、甘くて香気があり、断面は繊維性で毛状となっている。とくに山西省綿山に産する綿黄耆は上質とされている。日本の本州中部以北や朝鮮半島などに分布するマメ科のイワオウギ(Hedysarum vicioides)を和黄耆と称し、かつては黄耆の代用にされたこともあるが、現在では使用しない。また中国ではイワオウギの近縁植物である多序岩黄耆の根を晋耆あるいは紅耆といい、黄耆の一種として用いている。晋耆は品質良好とされるが、日本薬局方では黄耆から除外されている。

 黄耆の成分にはイソフラボノイドのホルモノネチン、トリテルペンサポニンのアストラガロシドのほか、コリン、ベタインなどが含まれ、黄耆エキスには利尿、強壮、降圧、抹消血管拡張、抗アレルギー作用などが報告されている。近年、黄耆の降圧作用のある成分としてγ-アミノ酪酸(ギャバ、GABA)が注目されている。また最近の研究で、免疫機能を高める効果が注目されており、T細胞やNK細胞を活性化することが認められ、エイズ(免疫不全症候群)や癌に対する効果が期待されている。

 アメリカではアストラガルスという名で健康食品にも利用され、アンチエイジングや男性用強壮剤として利用されている。日本でもオウギの葉をペイチー茶と称し、健康茶として市販されている。漢方では補気・利水消腫・止汗・托毒の効能があり、疲労倦怠、胃腸虚弱、内臓下垂、浮腫、盗汗、自汗、皮膚化膿症などに用いる。

水曜日, 3月 14, 2012

黄瓜

○黄瓜(おうか)

 インド北部のヒマラヤ地帯の原産で現在では世界中で栽培されているウリ科のつる性多年草キュウリ(Cucumis sativus)の果実を用いる。日本には平安時代にすでに渡来していたが、長い間、完熟して黄色くなったものを食べていたとされる。キュウリとは黄瓜のことである。かつてキュウリは苦味が強かったためか、評判はあまりよくなく江戸時代の末期ごろまでは普及しなかった。

 果実の苦味質はククルビタシンCで、そのほかビタミンA・C、イソクエルシトリンなども含まれる。イソクエルシトリンには利尿作用があり、ククルビタシンCは抗腫瘍作用が報告されている。薬用には新鮮な果実を用いる。

 漢方では利水・止瀉・解毒の効能があり、熱病や浮腫に用いられる。日本ではつるを切って得られる浸出液をキュウリ水、つるを乾燥させたものをキュウリズル(胡瓜蔓)として用いている。キュウリズルには熱をとり、口渇を抑え、利尿する効能がある。キュウリ水も口渇や浮腫、二日酔いに用いるほか、火傷やあかぎれ、汗疹などの外用薬としても利用されている。

火曜日, 3月 13, 2012

王瓜仁

○王瓜仁(おうかにん)

 日本の本州、四国、九州、台湾、中国に分布するウリ科のつる性多年草カラスウリ(Trichosanthes cucumeroides)の種子を用いる。カラスウリは王瓜あるいは土瓜とも称し、王瓜仁は土瓜仁とも呼ばれる。根も薬用にされ、土瓜根という。なお同属植物のキカラスウリ(T.kirilowii var.japonica)は栝楼と称し、漢方薬としては、この栝楼仁栝楼根の方が重要である。

 カラスウリの種子の中央には特徴的な帯状の隆起がある。種子の成分としてはトリコサント酸などの脂肪酸や有機酸などが知られている。官報では清熱・涼血の効能があり、肺結核などによる喀血や鼻血、下血、黄疸などに用いる。なおカラスウリの果汁や果肉はしもやけやあかぎれの外用薬として用いられる。

月曜日, 3月 12, 2012

延命草

延命草

 北海道から四国、九州、朝鮮半島などに分布するシソ科の多年草ヒキオコシ(Isodon japonicus)の茎葉を用いる。長野県、新潟県、石川県、富山県などを主産地とする日本の民間薬で、中国では知られていない。生薬名を延命草というが、漢名ではない。弘法大師が腹痛で倒れていた行者を回復させたという故事にちなんでヒキオコシとか延命草という名がある。

 茎葉には苦味成分のジテルペノイドのエンメイン、イソドカルピン、ノドシン、オリドニンなどが含まれ、エンメインやオリドニンには抗菌作用、抗腫瘍作用などが報告されている。日本では苦味健胃薬として家庭薬などに配合され、消化不良、食欲不振、腹痛などの治療に用いられている。ただし苦味質はアルカリによって容易に分解するため、重曹などとの配合は適さない。

 戦時中に供給が不足したゲンチアナの代用品として小豆島の寺院で栽培されていたヒキオコシが有名となり、全草を粉末とした延命草末が苦味健胃薬として全国で用いられるようになった。

土曜日, 3月 10, 2012

鉛粉

○鉛粉(えんぷん)

 酢酸鉛に炭酸塩を加えると生成する鉛白を鉛粉という。鉛に酢酸を加熱した蒸気を作用させると酢酸鉛となり、さらに二酸化炭素が反応して白色の塩基性炭酸鉛2pBCO3・Pb(OH)2の粉末ができる。古くから知られている白色顔料であり、ペンキや油絵の具のシルバー・ホワイトなどに用いられる。しかし有毒であり、硫化水素によって硫化鉛PbSとなって黒変する欠点がある。

 鉛白はすでに平安時代の貴婦人が白粉として用い、江戸時代には京白粉の名で知られ、塩化第一水銀の伊勢白粉(軽粉)とともに広く普及していた。このため江戸時代の遊女や役者たちが鉛中毒に悩まされたといわれる。またその毒性が胎児や乳児にも影響するため、昭和9年に化粧品に入れることが禁止された。

 漢方では駆虫・解毒・生肌の効能があり、寄生虫症や腹部の硬結、慢性下痢、マラリア及び皮膚疾患などに用いる。かつて腹痛や硬結、下痢などの治療に内服としても用いられたが、今日では外用薬として疔瘡、湿疹、潰瘍、火傷、脇臭などに用いられる。皮膚化膿症の外用薬にもしばしば炭酸鉛が配合されている。

金曜日, 3月 09, 2012

鉛丹

○鉛丹(えんたん)

 鉛(黒色鉛)を鉄の鍋に入れて動かしながら長時間加熱(300~400℃)し、空気中の酸素により酸化されて得られる赤色の結晶性の粉末を鉛丹という。黄丹あるいは光明丹ともいい、主成分は四酸化三鉛でPb3O4あるいは2PbO・PbO2と記される。一般には赤色顔料として鉄材のさび止めに用いられるほか、鉛ガラスの原料や陶磁器のうわ薬として用いられる。

 漢方では解毒・生肌の効能があり、おもに外科の要薬として疔、瘡蓋などの皮膚化膿症や湿疹、潰瘍、外傷、蛇咬傷などに外用される。また日本では江戸時代から疔瘡など皮膚化膿の吸出し薬として知られる雨森無二膏、あかぎれや打ち身、筋肉痛の貼り薬として知られるあかぎれ膏や万金膏などにも配合されている。

 傷寒論の柴胡加竜骨牡蠣湯には鎮静の目的で鉛丹が配合されていたが、一般に省略されたり、生鉄落や代赭石で代用される。また、かつてマラリアや癲癇、下痢などの内服にも

木曜日, 3月 08, 2012

鼴鼠

○鼴鼠(えんそ)

 モグラ科ニオイモグラ属のニオイモグラ(Scaptochirus moschata)などモグラ全体のあるいは肉を用いる。モグラは体調15~20cmで茶色ビロード状の毛で覆われ、耳介はなくなり、目は退化し、シャベル状の大きな手と細い尾が特徴的である。一生地下の中でトンネルを掘って生活し、地中のミミズや昆虫、植物の根などを食べる。

 生薬では黒焼きにして粉末にした鼴鼠霜(別名:土竜霜)を用いる。漢方では解毒・止咳などの効能があり、腫れ物などの皮膚病、痔、喘息などに用いる。咳が止まらず、諸薬の効果がないときに単独で用いる(勝聖散)。梅毒などによる皮膚病や胎毒などには軽粉・赤小豆などと配合する(鼴鼠丸)。また黒焼きを皮膚病の患部に塗布する。

火曜日, 3月 06, 2012

延胡索

○延胡索(えんごさく)

 浙江省をはじめとする中国各地で栽培されているケシ科の多年草エンゴサク(C.ambigua)、本州、九州、朝鮮半島、中国東北部に分布するヤマエンゴサク(C.lineariloba)など同属植物の塊茎を用いる。なおジロボウエンゴサク(C.decumbens)の塊茎や全草を中国では夏天無と称している。延胡索はかつて玄胡索という名であったが、宋代の眞宗の諱を避けて玄を延に改め、以来、延胡索と呼ばれるようになった。

 エンゴサクの塊茎にはアルカロイドのコリダリン、テトラヒドロパルマチン、コリブルビン、プロトピンなどが含まれ、コリダリンやコリブルビンには弱い麻痺作用、テトラヒドロパルマチンには鎮静・鎮痛作用が認められている。

 漢方では活血・理気・止痛の効能があり、胸痛、腹痛、脇腹部痛、月経痛、打撲痛などに用いる。延胡索は気血の流れを促進するため、「血中の気、気中の血を行らせる」といわれている。また止痛薬として気滞や血瘀による痛みに効果があり、「一身上下の諸痛を治す」といわれ、特に胃痛や月経痛の治療に優れている。日本でも胃薬や婦人用保健薬などの家庭薬にしばしば配合されている。止痛作用は乳香・没薬などよりも強く、酢で炒めれば止痛効果はさらに強くなる(醋延胡索)。

月曜日, 3月 05, 2012

燕窩

○燕窩(えんか)

 熱帯地域の沿海部や島に生息するアナツバメ科のアナツバメ(Collocalia esculenta)の巣を用いる。アナツバメは体調9cmくらいの小さなツバメで、主に東南アジアのマレー半島、インドネシア及び南洋諸島に分布し、海岸の絶壁や洞窟に巣を作る習性がある。産卵期になると雄鳥は肥大化した唾液腺から粘質の唾液を出し、この唾液を約1ヶ月かけて固めて巣を作る。この巣は唾液と絨毛からなり、白くてハスの花弁のような形をしている。中国料理では最高級の材料とされ、採取するのが困難なため非常に珍重されている。

 燕窩にはたんぱく質、ビタミンA・B1・B2、カルシウム、鉄分などのミネラルのほかに、糖タンパク質のシアル酸が含まれている。近年、細胞表面に存在する糖鎖が研究されているが、燕窩には糖鎖を構成する8種類のうち6種類が含まれており、中でもシアル酸(N-アセチルノイラミン酸)を含むことから、健康食品の素材として注目されている。

 シアル酸の誘導体にはさまざまな生理機能があり、抗インフルエンザ作用のほか、癌の転移抑制、アルツハイマー病予防などにも期待されている。また燕窩には表皮成長因子(EGF)が含まれ、DNA合成を活性化すると報告されている。

 漢方では養陰・益気の効能があり、虚弱体質の改善、疲労回復、労す予防をはじめ、結核などの慢性病、咳嗽、下痢、悪心、嘔吐などに用いる。一般に薬膳料理として用いられるが、近年ではサプリメントとしても商品化されている。

土曜日, 3月 03, 2012

エブリコ

○エブリコ

 北海道、択捉島、色丹島、中国の東北部、シベリア、ヨーロッパの北部などに分布し、カラマツなどのマツの幹に寄生するサルノコシカケ科の担子菌類エブリコ(Fomes officinalis)の子実体を用いる。樹幹から垂れ下がり、下方が膨らんで馬蹄形ないし釣鐘型をしている。エブリコはアイヌ語で、東北地方ではトボシ(トウボシ)とも称され、また江戸時代の本草書にはテレメンテイコの名でも呼ばれていた。

 エブリコにはアガリチン酸やエブリコ酸が含まれ、アガリチン酸は汗の分泌を抑制する作用があると報告されている。旧ソ連ではアガリチン酸は製剤化され、結核などによる盗汗の治療に応用されているという。副作用として胃に対する刺激がある。噛むと苦味が強く、苦味のため時に悪心がみられる。

 エブリコはイケマ(牛皮消根)とともにアイヌの霊薬のひとつで、疝気、腹痛、食あたり、眼病、脚気、結核、盗汗、火傷、創傷などの万能薬として用いていた。江戸自体に緩経湯という四物湯にエブリコを加えた処方があり、月経痛の治療に用いられた。中国の民間療法では気管支炎や胃酸過多、関節リウマチなどに用いられている。

 最近、毛穴を収縮し、皮膚分泌を抑制すると同時に、皮膚を乾燥から防ぐことから化粧品にも配合されている。

金曜日, 3月 02, 2012

エニシダ枝

○エニシダ枝

 地中海沿岸部を原産とするマメ科の落葉低木エニシダ(Cytisus scoparius)の枝を用いる。日本には江戸時代に渡来し、今日では庭園などに広く栽培されている。エニシダという名はオランダ語のヘニタス、あるいはスペイン語のイエニスタに由来する。4~6月に鮮黄色の蝶形の花が小枝に群がるように咲く。

 枝や葉にはアルカロイドのスパルティン、サロタムニン、ゲニステインなどが含まれ、スパルティンには強心作用がある。エニシダは浮腫や頻脈、不整脈の治療に用いられるほか、また抹消血管収縮作用があり、月経過多にも効果がある。

 現在、スパルティン硫酸塩は子宮収縮薬として微弱陣痛に用いられている(ウテロスパン)。ただ、毒性が強く、誤って服用すると流涎、胃腸痙攣、知覚麻痺、嘔吐、下痢などをひきおこす危険性がある。現在、スパルティン硫酸塩は子宮収縮薬として家畜の微弱陣痛に用いられている。

木曜日, 3月 01, 2012

衛矛

○衛矛(えいぼう)

 日本各地、朝鮮半島、中国、サハリンなどに分布するニシキギ科の落葉低木ニシキギ(Euonymus alatus)の翼状物のついた枝を用いる。紅葉が美しいためにニシキギといわれ、庭木としてよく植えられている。枝に沿ってはコルク質の薄い翼状物が2~4枚つくが、中国ではこれを矛や矢羽にみたてて衛矛、鬼翦羽という。一般に中国でも日本でもこの翼状部分のみを用いる。煎液には血糖降下作用が報告されている。

 漢方では活血・通経の効能があり、無月経や産後の腹痛などに用いる。日本漢方では枝を煎じて心痛の治療に用いている。また日本の民間では昔からトゲ抜きの妙薬としてよく知られ、黒焼きにしたものを米飯とねって、紙にのばしてトゲの部分に貼り、1~2時間たって紙を剥がすとトゲが出るといわれている。秩父地方ではニシキギをシラミコロシと呼ぶが、これはニシキギの果実に毒性があり、すり潰してアタマジラミの治療に用いたことによる。

水曜日, 2月 29, 2012

営実

○営実

 日本の各地、朝鮮半島に分布するバラ科のつる性落葉低木ノイバラ(Rosa multiflora)の果実を用いる。中国ではノイバラの花を薔薇花、根を薔薇根と称して薬用にする。そのほか近縁種のテリハノイバラ(R.wichuraiana)やフジイバラ(R.fujusanensis)などの果実も用いる。これら果実は偽果であるが、薬用には赤く成熟する一歩手前の、少し青味がかったものを採取し、それを乾燥して用いる。

 営実にはフラボノイドのムルチフロリンA・B、ムルチノサイドA・B、紅色素のリコピンなどが含まれる。漢方では通便・利水消腫・活血・解毒の効能があり、浮腫や脚気、瘡毒、月経痛などに用いる。

 実証の腹水に大黄・甘草と配合する(営実湯)。営実は神農本草経の上品に収載されているが、中国では余り用いられず、むしろ日本の民間薬としてよく知られている。日本の民間では古くより便秘や浮腫の瀉下・峻下薬として知られ、今日でも家庭薬の下剤にはしばしば配合されている。ただし使用量が多くなると激しい下痢となるので注意を要する。また腫れ物や痤瘡には煎液で洗ったり、冷湿布として用いる。

 欧米では近縁種のドッグローズ(R.canina)などの偽果をローズヒップと呼んで花弁とともに、ビタミンCの豊富なハーブティーとして愛飲している。

火曜日, 2月 28, 2012

雲母

○雲母

 おもに花崗岩ペグマタイトに産する珪酸塩鉱物の白雲母を用いる、かつてヨーロッパでウラル山地の白雲母をモスクワ(マスコ)経由で輸入し、窓ガラスに用いたためマスコバイト(Muscovite)という。中国では雲は岩石の精気が立ち上って凝集したと考えられたことから雲母と呼ばれ、日本ではガラス様の光沢があることから「きらら」および奇良といわれる。千枚はがしの異名があるように非常に剥がれやすく、薄片は透明で弾力性と絶縁性とがある。

 雲母はカリウム、アルミニウム、ケイ素、酸素、水素、フッ素などからできており、電気関係や断熱材として重要である。漢方では平喘・止帯・止血・斂瘡の効能があり、喘息や婦人の帯下、出血などには内服し、切り傷や悪瘡には外用する。婦人の帯下が止まらないときには蒲黄と配合する(蒲雲散)。

月曜日, 2月 27, 2012

ウワウルシ

○ウワウルシ

 ヨーロッパ、アジア、北米などの北半球の寒冷地に分布するツツジ科の常緑低木ウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi)の葉を用いる。ウワウルシの名は熊のブドウという意味であり、英語ではベアベリー、日本でもクマコケモモと呼ばれている。ヨーロッパでは17世紀ごろより実が薬用とされ、18世紀中ごろから葉が治療に盛んに用いるようになった。

 葉には主成分のフゥノール配糖体アルブチンのほか、メチルアルブチン、ハイドロキノン、タンニン、ケルセチンなどが含まれる。アルブチンは尿中で分解されてハイドロキシノンを生じ、ハイドロキシノンには殺菌作用のほか、腎細胞を刺激するため利尿作用もある。ケルセチンにも利尿作用が認められている。

 葉の煎液は尿路消毒薬、利尿薬として膀胱炎や腎炎などの尿路感染症、尿路結石などに用いる。また膣洗浄液としても利用されている。このウワウルシ葉の粗粉末を精製水を用いて熱水抽出したものがウワウルシ流エキスである。家庭薬として膀胱炎などに用いる利尿剤にはウワウルシの配合されたものも少なくない。

 近年、アルブチンにメラニン色素の生成を抑制する効果があることから、ウワウルシエキスが美白のハーブとして化粧品などに配合されている。

土曜日, 2月 25, 2012

烏斂莓

○烏斂莓(うれんぼ・うれんも)

 日本各地、台湾、中国、インドなどに分布するブドウ科のつる性多年草ヤブガラシ(Cayratia japonica)の根及び根茎を用いる。ヤブガラシとは、繁殖力が旺盛で「藪を枯らす」という意味であり、俗にいうビンボウカズラ(貧乏葛)ともいわれる雑草である。新芽を塩ゆでにして水によくさらし、和え物にして食べる。

 根にはアラバンを含む粘液質や多量の硝酸カリウム、タンニンが含まれる。漢方では清熱・解毒・利尿の効能があり、化膿性疾患や扁桃炎、膀胱炎、関節炎、打撲傷などに用いる。民間療法としては生の根茎を突き砕いて出てきた粘液を腫れ物や化膿、虫刺されなどの患部に塗布する。ただし、かなり刺激があるのでかぶれないように注意が必要である。

木曜日, 2月 23, 2012

裏白樫

○裏白樫

 日本の東北地方以南の地域から台湾にかけて分布するブナ科の常緑高木ウラジロガシ(Quercus salicina)の小枝や葉を用いる。ウラジロガシのはその名の通り葉の裏は白い蝋質でおおわれ、その白粉は熱によって溶ける。木材は農耕器具や薪炭用として、また庭園の樹木として利用されている。ウラジロガシは近年になって知られた日本の民間薬の一つで、おもに徳島県や和歌山県に産する。

 小枝や葉にはフラボノイドのケルセチン、ケンフェロール、トリテルペノイドのフリーデリン、タラクセロールなどのほか、カテコール、ピロガロールなどが含まれ、エキスの動物実験では膀胱内結石の生成抑制や溶解作用が認められている。徳島県地方では早くから胆石、腎結石、尿路結石などの民間治療薬として用いられていた。

 本来、胆石症に効果があるということから研究されたが、現在では尿路結石にも応用されている。尿路結石にはカキドオシ(連銭草)と配合して服用する。ウラジロガシエキスは尿路結石の治療薬として医療用に用いられている。

水曜日, 2月 22, 2012

兎余粮

○兎余粮(うよりょう)

 兎余粮は不純な褐鉄鉱あるいは沼鉄鉱のひとつであり、さまざまな形の塊や土状をしている。本来、余粮とは鉄質の殻の中に粘土質の核を有する鉱物のことであり、薬用には中の粘土を用いたとされる。その中の粘土が淡黄~灰色のものを兎余粮といい、鉄分を多く含んだ濃赤色のものを太一余粮と称していたと考えられている。ときに中の空洞のできてることもあり、振ると音がするため一般に鈴石とか鳴石、子持ち石などと呼ばれている。

 この中の粘土の多くは加水ハロサイト(Al2o3・2Sio2・2H2O)である。本草綱目の中には「池沢に産出するものが兎余粮であり、山谷に産出するものが太一余粮であり、その中の黄濁した水が石中黄水であり、それが粉のように凝結したものが余粮であり、石のように乾燥して凝結したものが石中黄である」と記載されている。

 古くから基原に関して諸説があって一定せず、現在の市場では兎余粮と太一余粮とを区別しない。また中国医学のテキストでは兎余粮の基原を褐鉄鉱とし、主成分はFe2O3で砂石有機物、リン酸塩などを含むとある。通常、無味・無臭で、水飛によって細末にしてから用いる。

 漢方では止瀉、止血の効能があり、慢性的な下痢や子宮出血、帯下、痔などに用いる。傷寒論では赤石脂と配合した赤石脂兎余粮湯を下痢の治療に用いている。

火曜日, 2月 21, 2012

烏薬

○烏薬(うやく)

 中国原産のクスノキ科の落葉低木テンダイウヤク(Lindera strychuifolia)の根を用いる。日本の近畿や九州にも野生化している。秦の始皇帝の命により、不老長寿の薬をもとめに来た徐福が、この木を日本に伝えたという伝説が和歌山県新宮市に残っている。浙江省天台産の品質が優れているため天台烏薬または台烏薬ともいわれる。一方、ツヅラフジ科のイソヤマアオキ(Cocculus laurifolius)の根を衡州烏薬と呼ぶが、現在ではあまり使用されない。

 烏薬には精油成分としてボルネオール、リンデラン、リンデレン、リンデリロールなどが含まれ、芳香性の健胃作用がある。漢方では理気・止痛・温裏の効能があり、消化不良、腹痛、嘔吐、頻尿などに用いる。烏薬は「上下の諸気を通理する」といわれ、冷えやストレスなど気滞や気逆による腹痛に広く用いられる。とくに下腹部の張った痛みに効果がある。烏薬は木香・香附子と同じく理気止痛薬のひとつで、木香は胃腸の気滞に、香附子は肝の気滞に、烏薬は下腹部や膀胱(下焦)の気滞に効果がある。

月曜日, 2月 20, 2012

烏梅

○烏梅(うばい)

 中国中部を原産とし古くから日本に渡来したバラ科の落葉小高木ウメ(Prunus mume)の未成熟果実を用いる。薬材は未熟な果実、つまり青梅を薫蒸して乾燥したものである。外面が黒いため烏梅といい、和名では「ふすべうめ」という。日本には樹木よりも先に薬として烏梅(うめい)が渡来したため、木そのものをウメと呼ぶようになったといわれる。ウメの花蕾は白梅花といい、種子は梅核仁という。

 梅の核には青酸配糖体のアミグダリンが含まれているが、未熟な果実の核はやわらかくて砕けやすいため、核を出たアミグダリンは酵素分解により青酸を生じる。このため青ウメは生で食べると中毒を起こして腹が痛むことがある。ただし、この青酸は熟するにつれて蒸散する。

 ウメの果肉の酸味としてクエン酸やコハク酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸が含まれるが、未熟な果実にはリンゴ酸が多く含まれ、成熟するとクエン酸のほうが多くなる。クエン酸は胃液の分泌を高め、ペプシンを活性化してタンパク質の消化を促進する。また烏梅の煎液には抗菌・抗真菌作用がある。中国や台湾では暑気ばらいの飲料として、烏梅に山査子や甘草、砂糖などを加えた酸梅湯がよく知られている。

 漢方では止渇・止嘔・止瀉・安蛔の効能があり、口渇や悪心・慢性の下痢、回虫症による腹痛、咳嗽、燥熱などに用いる。例えば老人の消化不良などのために下痢や食欲不振のみられるときには蒼朮・麝香などと配合する。(人参養胃湯)。日本の民間療法としては頭痛にコメカミにウメボシの果肉を貼り付ける治療がよく知られている。また青ウメを加工した日本独自の梅肉膏がある。

土曜日, 2月 18, 2012

烏蛇

○烏蛇(うだ)

 ヘビの一種ウショウダ(Zaocys dhumnades)の内臓を除去した全体を用いる。烏梢蛇の脱皮した皮は蛇退皮という。ウショウダは全長2m以上で、体は青味を帯びた灰褐色、背中央に黄褐色の二列の縞と、その外側に細い黒の縦線の模様がある。

 中国各地に分布するが、主に揚子江以南の平地や丘陵地帯の草むらに生息し、カエルやトカゲ、魚などを捕食する。無毒であり、捕獲した後、腹部を裂いて内蔵を去り、円盤状に丸めて柴草で薫じて乾燥する。煎じたり、酒に浸して服用するほか、あぶって乾かしてから粉末にし、散剤や丸剤として用いる。

 漢方では去風湿・通経絡の効能があり、リウマチなどによる関節の痛みや手足のしびれ、麻痺、皮膚疾患などに用いる。脳卒中後遺症やリウマチなどによる関節痛に用いる大活絡丹や風湿舒筋丸に配合されている。

金曜日, 2月 17, 2012

烏頭

○烏頭(うず)

 キンポウゲ科トリカブト属の母根を烏頭という。一般にトリカブトには茎に続く塊根(母根)の周囲に数個の新しい塊根(子根)が錬生している。この母根を烏頭といい、子根を附子という。塊根の形が烏の頭に似ていることから烏頭、母根に付着した根ということから附子という名がある。ただし、近年、中国においてその区別は曖昧であり、一般には減毒処理したものを附子、減毒処理されていないもの烏頭としている。また、子根を有しない細長い根は天雄と称し、子根の小さいものを側子、さらに小さくて籠の目から漏れるほどのものを漏藍子という。

 トリカブト属は種類が多く、中国では宋の時代からカラトリカブト(A.carmichaeli)が四川省で栽培されている。このため中国では栽培品種である川烏頭と野生種の草烏頭とが区別されている。このカラトリカブトはハナトリカブトとも呼ばれ、日本でも薬用や切花用に栽培されている。一方、日本では佐渡島などに産する野生種を草烏頭と呼んでいる。

 一般に烏頭は附子よりもアコニチンの含有量が多く、鎮痛作用は附子よりも強いが、温熱・強心作用は附子よりも弱いといわれる。烏頭は毒性が強いため専門家でない限り、使用すべきではない。

 漢方では去風湿・温裏・止痛の効能があり、傷寒論、金匱要略でし関節痛や神経痛に麻黄・オウギと配合した烏頭湯、腹痛に桂枝湯に烏頭・蜂蜜を加えた烏頭桂枝湯などが収載されている。

木曜日, 2月 16, 2012

鳥賊骨

鳥賊骨(うぞくこつ)

 日本の近海や中国の沿岸に生育する軟体動物コウイカ(Sepia esulenta)などの内殻、すなわちイカの甲を用いる。日本近海には100種以上のイカが知られているが、コウイカ類は楕円形をした胴の左右に薄いひれを有するという特徴がある。

 一般にイカの甲はセルロイド質であるが、コウイカ類の甲は石灰質である。コウイカの甲は長さ10~15cmくらいの紡錘系で、後端にはするどい針がある。成分は主に炭酸カルシウムであるが、そのほかリン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなども含まれる。炭酸カルシウムには制酸作用があり、胃・十二指腸潰瘍に効果がある。

 薬用には細かく砕いて使用するが、一般には焙って粉末にしたものを用いる。漢方では止血・止帯・固精・生肌の効用があり、鼻血、吐血、血便、性器出血、帯下、皮膚潰瘍等に用いる。代表的な収斂薬の一つで、収斂作用には各種の出血に対する止血、傷口や潰瘍に対する斂瘡、精液の漏れるのを防ぐ固精、婦人の帯下を止める止帯などがある。

 不正性器出血や帯下には茜草・オウギなどと配合する(清帯湯)。胃酸過多や胃・十二指腸潰瘍などによる疼痛、出血などに白芨と配合する(烏芨湯)。外用薬としての応用範囲も広く、鼻出血や外傷性の出血、中耳炎、臍周囲炎、皮膚潰瘍、湿疹などに粉末を塗布する。とくに分泌物の多い化膿瘡や湿疹、潰瘍などに適している。日本でも膿の吸い出しに有名な破敵膏に配合されている。

水曜日, 2月 15, 2012

鬱金

○鬱金(うこん)

 熱帯アジア原産で、インド、東南アジア、中国南部などで栽培されているショウガ科の多年草ウコン(Curcuma longa)の根茎を用いる。ウコンの根茎の皮を除いた乾燥し、粉末にしたものが香辛料のターメリックである。カレー粉の黄色の主原料として、また沢庵やピクルスの着色料としても用いられている。

 日本には江戸時代中期に渡来し、沖縄県や九州南部で栽培されている。ウコンのことをウッチンというのは沖縄県の方言である。ところで日本と中国ではウコンの植物名や生薬名が錯綜しているので注意が必要である。

 植物名では日本でいうウコンは中国では姜黄といい、日本のキョウオウ(春ウコン)は中国では鬱金という。一方、生薬名では日本でいう鬱金は、ウコンの根茎と規定されているのに対し、中国の生薬で鬱金といえば、ウコン、キョウオウ、ガジュツの根の先にある紡錘形の塊根のことであり、姜黄といえば、ウコン、キョウオウの茎と続いている根茎の部分をいう。すなわち、日本市場の鬱金は、中国の姜黄のことであり、その中のウコンを基原植物とするもののみをいう。一方、中国の鬱金は玉金とも呼ばれ、市場ではウコン(C.longa)のものを広玉金、キョウオウ(C.aromatica)のものを川玉金と称している。

 ところで、健康食品市場において利用されているウコンには、秋ウコン、春ウコン、紫ウコンの3種類がある。秋ウコンはC.longa、春ウコンはC.aromatica、紫ウコンはガジュツC.zedoariaのことを指している。これとは別にインドネシア原産のクスリウコン(C.xanthorrhiza)というウコンも注目されている。また、白ウコンと呼ばれているのは、ハナショウガ(Zingiber zerumbet)のことであり、ショウガ科ではあるが、全く種類の違う植物である。

 このうち秋ウコンは香辛料ターメリックの原料として、また健康食品として最も多く利用されている。春ウコンは秋ウコンに比べ強い苦味と辛さがあるため、食用には不向きであり、専ら薬用として栽培されているが、生産量もあまり多くない。根茎の切断面では秋ウコンは赤みがかった黄橙色であり、春ウコンは明るい黄色である。ガジュツは根茎の切断面が紫色がかった青白色のため紫ウコンと呼ばれている。

 黄色い色素成分はクルクミンであり、秋ウコンには春ウコンの約10倍も多く含まれ、一方ガジュツにはクルクミンはほとんど含まれていない。黄色色素のクルクミンはウコン(秋ウコン)の方が多く含有するが、クルクモール、クルクメンなどの精油成分はキョウオウ(春ウコン)のほうが豊富である。動物実験で、クルクミンに皮膚癌の発生を抑制することが報告され、クルクモールにも抗癌作用が認められており、中国では子宮癌の臨床に用いられている。

 日本では中国名の鬱金(玉金)はほとんど流通していないが、中国医学では鬱金に関して次のように説明されている。中国医学では鬱金は姜黄と同じく活血・理気薬であるが、鬱金(日本名:川玉金)の薬性は寒であるのに対し、姜黄(日本名:鬱金)は温として区別して扱われている。

 漢方では理気・活血・止血・退黄の効能があり、胸脇部や腹部の疼痛、乳房の痛み、月経痛、鼻血、吐血、煩燥、黄疸、肝炎などに用いる。鬱金は血中の気薬といわれ、気滞と同時にお血を改善して疼痛を緩和する。ストレスなどによる胸や腹の痛みや月経痛には柴胡・香附子などと配合する。腹部の腫塊には丹参・ガジュツ・青皮・別甲などと配合する。熱病による意識障害には牛黄・黄連などと配合する(牛黄清心丸)。またや切り傷には粉末を水に溶いて外用薬として用いる(中黄膏)。

火曜日, 2月 14, 2012

烏骨鶏

○烏骨鶏

 キジ科の鶏の一種、ウコッケイの肉または内臓を除いた全体を用いる。鶏冠は紫色であるが、皮膚や足、くちばし、肉や骨まで黒いため烏骨鶏と呼ばれ、全身は柔らかい糸状の絹糸状に覆われている。羽毛の色は白や黒などがあるが、一般に白毛烏骨鶏が珍重される。普通のよりもやや小型で、性質は温順であり、美しいため愛玩用に飼育されている。

 江西省泰和県が原産地であるが、現在は世界各地で飼育されている。日本にも江戸時代に輸入され、天然記念物に指定されているが、特別指定ではないため鶏肉や鶏卵は流通している。成分としてビタミンA・B2・E、カルシウム、鉄などが豊富に含まれている。

 漢方では滋陰・清熱の効能があり、虚労や胃腸虚弱、慢性熱性疾患などに用いる。虚弱体質や結核などの慢性消耗性疾患、慢性胃腸炎などの時には肉や骨を煮て食べるとよい。薬膳料理に烏骨鶏の腹の中に種々の生薬を入れて煮込む料理がよく知られている(烏骨鶏湯:オゴルゲタン)。また虚弱な女性の月経不順や生理痛などには四物湯をはじめ人参・枸杞子・鹿茸などを配合した烏骨鶏白鳳丸を用いる。

月曜日, 2月 13, 2012

烏桕根皮

○烏桕根皮(うきゅうこんぴ)

 中国原産のトウダイグサ科の落葉高木ナンキンハゼ(Sapium sebiferum)の根の皮を用いる。日本には江戸時代に中国から渡来し、紅葉がハゼノキに似ているためナンキンハゼという。九州では野生しているところもある。落葉した後の白い小さな果実の様子は晩秋特有の風情がある。

 ナンキンハゼの種子を烏桕子といい、これは過熱・圧縮すると蝋様物質が得られる。これは中国木蝋といい、油煙の少ないローソクの原料となる。また油脂は石鹸や灯油としても用いられる。薬用には根の皮を剥ぎ、コルク層を除去して用いる。

 樹皮にはキサントキシリン、セビフィル酸などが含まれる。また葉に含まれるTPAは強烈な皮膚刺激性の発癌プロモーターとして知られている。

 漢方では逐水・消腫の効能があり、浮腫や腹水、湿疹、腫れ物などに用いる。とくに全身に浮腫があって大小便の排出が悪いときに用いる。巴豆や牽牛子などより薬効は穏やかだが、副作用で嘔吐することがある。このほか外用薬として毒蛇による咬傷や湿疹や虫刺されに用いる。烏桕子も薬用とするが毒性が強いので内服はされず、ひびやあかぎれ、湿疹の外用薬として用いる。

土曜日, 2月 11, 2012

茴香

○茴香(ういきょう)

 ヨーロッパ地中海沿岸地方を原産とするセリ科の多年草ウイキョウ(Foeniculum vulgare)の果実を用いる。現在では世界中で栽培され、日本にも明治初期に渡来し、長野県、岩手県などで栽培されている。全草に独特の芳香があり、とくに果実は香りが強く、わずかに辛味がある。果実はフェンネルの名で香辛料として知られ、魚や肉の料理によく合い、フランス料理やイタリア料理などによく用いられている。欧米では新鮮な茎、とくに根に近い白い部分を生で食べることもある。

 古代エジプト時代には既に栽培され、また中世ヨーロッパでは魔術の草としても知られていた。中国には4~5世紀に西域から伝わり、腐った魚肉に混ぜると香気を回復するので「回香」と呼ばれたのが茴香の語源である。シキミ科のダイウイキョウ(大茴香)と区別するため、とくに小茴香とも称する。市場には中国からの輸入品がほとんどを占めており、90%は香辛料に使われている。日本産の茴香は精油の含量が多く最良の品質といわれている。芳香性の精油成分にはアネトール、エストラゴール、ピネン、フェンコン、アニスアルデヒドなどが含まれ、腸の蠕動運動を促進し、駆風作用がある。

 漢方では理気・止痛・健胃の効能があり、胃痛、嘔吐、下腹部痛、腰痛などに用いる。茴香は温裏薬のひとつで、冷えを原因とする胃痛をはじめとする種々の内臓痛に応用される。また蒸留して得られる精油のウイキョウ油は健胃薬、去痰薬、矯味・矯臭薬として用いられる。

金曜日, 2月 10, 2012

淫羊藿

○淫羊藿(いんようかく)

 メギ科の多年草で、日本の温帯から暖帯に分布するイカリソウ(Epimedium grandiflorum)や、本州中部以西に分布するトキワイカリソウ(E.sempervirens)の地上部全草を用いる。中国では主にホザキノイカリソウ(E.sagittatum)や心葉淫羊藿(E.brevicornum)などが用いられている。和名のイカリソウという名は花の形が錨に似ているためで、中国では葉の付き方から三枝九葉草と呼ばれている。

 淫羊藿は古くから代表的な強精、催淫薬として知られ、その名も雄の羊がこれを食べると1日に100回交合するという言い伝えによるものである。また、仙霊脾とか放杖草という別名もその効能を表している。

 成分にはフラボノール配糖体のイカリイン、エピメジンなどが20余種、そのほかアルカロイドのマグノフロリンなどが含まれる。イカリインには、一酸化窒素(NO)レベルを上昇させて海綿体血流を増やし、勃起状態を保つ物質を分解する酵素、PDE-5に対して阻害する作用があり、バイアグラと同じ効果があると説明されている。また、エピメジンには性ホルモンの分泌を促し、神経を刺激する作用がある。また淫羊藿の煎液には催淫作用のほか、抗ウイルス・抗菌作用、鎮咳・去痰作用などが報告されている。

 漢方では強壮・補陽・去風湿・強筋骨の効能があり、生殖機能の低下、老化に伴う衰弱、関節の痛みなどに用いる。インポテンツや遣精には仙芽・熟地黄・枸杞子・肉蓯蓉などと配合し、足腰の萎弱やしびれ感には杜仲・狗脊などと配合する。女性の月経不順や更年期の高血圧には仙芽・当帰・黄柏など配合する(二仙湯)。リウマチなどによる関節痛や筋肉痛、麻痺やしびれ感などに威霊仙・肉桂・川芎などと配合する。

 日本でも市販されている体力や精力の低下を補う滋養強壮薬やドリンク剤薬用養命酒などの薬用酒などに淫羊藿は幅広く配合されている。ただし淫羊藿は燥性が強く、服用しすぎると嘔吐・口渇・口苦・鼻血などの症状が出現する。

木曜日, 2月 09, 2012

印度蛇木

○印度蛇木(いんどじゃぼく)

 インド、ビルマ、マレー半島などに分布し、熱帯に生えるキョウチクトウ科の常緑低木インドジャボク(Rauwolfia serpentina)の根を用いる。日本でも九州南部で栽培されている。この植物の根が蛇に似ていることからインディアンスネイクウッド(インド蛇木)と呼ばれ、実際に蛇の咬傷に用いられていた。

 学名は、ドイツ人の植物学者ラウヴォルフにちなみラウオルフィア・セルペンチナという。中国では同属植物の根を羅芙木と称して用いている。インドでは、この木は「月の病(精神病)」と関係するチャンドラの名で呼ばれていた。ヒマラヤ地方では古くから子供が蛇に咬まれたときの薬草として知られていた。インド伝承医学の古典アユルヴェーダの中にも、精神病や不眠症、高血圧、さらに解熱薬として用いられていたという記載がある。

 根の成分にはインドール系のアルカロイド、レセルピンやレシナミン、アジマリンなどが含まれ、レセルピンには著しい中枢性鎮静作用及び血圧降下作用、アジマリンには抗不整脈作用がみられる。レセルピンは1950年代には血圧降下薬及び精神病治療薬として脚光を浴びたが、眠気、脱力感、性欲減退、さらには抑うつ状態をもたらす深刻な副作用があるため、精神病薬としては、近年あまり用いられなくなった。今日では、レセルピン(アポプロン)などのラウオルフィア製剤が降圧剤として、アジマリンは抗不整脈剤として利用されている。

水曜日, 2月 08, 2012

茵蔯蒿

○茵蔯蒿(いんちんこう)

 日本の本州以南、朝鮮半島、台湾、中国などに分布するキク科の多年草カワラヨモギ(Artemisia capillaris)を用いる。日本では専ら初秋に採取した花の蕾(頭花)を用いるが、中国では春に収穫した幼苗(開花前の地上部)も用いられている。この幼苗は特に綿茵蔯と呼ばれる。沖縄県では近縁植物のリュウキュウヨモギ(A.campestris)をハママーチと呼んで用いている。カワラヨモギの名は川原や海岸に生えているヨモギという意味で、日本では徳島県や長野県より出荷されている。

 葉の成分にはクマリン類のスコパロン(エスクレチン-ジメチルエーテル)、精油成分のカピレンやカピロン、カピリン、クロモン類のカピラリシンなどが含まれる。そのうちスコパロンやカピラリシンなどには利胆作用が知られている。ただし、このスコパロンは花や種子、蕾などに多く含まれるが、幼苗には含まれていない。そのほか茵蔯蒿の薬理作用として肝障害改善、抗炎症、解熱、利尿、抗真菌作用などが報告されている。

 漢方では退黄・清熱燥湿の効能があり、黄疸、尿量減少、湿疹、掻痒症などに用いる。茵蔯蒿は古来より黄疸を治療する代表薬として知られているが、このような退黄(利胆)作用のある生薬としてその他には大黄・黄柏・鬱金・竜胆などがある。

月曜日, 2月 06, 2012

茵芋

○茵芋(いんう)

 台湾や中国南部に分布するミカン科の常緑低木インウ(Skimmia reevesiana)の茎や葉を用いる。日本の関東地方以西には同属植物のミヤマシキミ(S.japonica)が自生している。沖縄に自生する変種のリュウキュウミヤマシキミを中国の茵芋と同一とする説もあるが定かではない。これらの属名はスキミアといい、シキミ科のシキミと混同されるが、葉が似ているだけでまったく別の植物である。

 日本のミヤマシキミと同様に、インウのは及び茎には毒性のアルカロイドスキミアニン、配糖体のスキミンなどが含まれる。ミヤマシキミは古くから有毒植物として知られ、殺虫作用があるため農薬として使用されていた。中毒症状は少量で軽い痙攣が生じ、大量の場合には血圧が降下して死に至る。

 漢方では去風湿・止痛の効能があり、リウマチなどによる関節痛や筋肉痛、下肢萎弱に用いる。日本の民間療法でも頭痛、めまいなどに応用されている。ただし内服には注意が必要で、漢方処方としてもあまり用いない。中国では一般に酒に浸すか丸剤として服用する。

日曜日, 2月 05, 2012

岩ぢしゃ

○岩ぢしゃ

 本州から琉球諸島、台湾に分布しているイワタバコ科の多年草イワタバコ(Conandron ramondioides)の全草を用いる。山地の湿った岩場に生え、葉の形がタバコの葉に似ていることからイワタバコという。「チシャ」というのは野菜のサラダ菜のことで、山菜として利用されてきたことを表している。

 苦味は少しあるが、独特の風味で天ぷらや和え物に適している。また淡紅色の花が美しいため、山野草として観賞用に栽培されたりもする。成分には苦味配糖体のコナンドロシドやアクテオシドが含まれる。民間療法では開花時に葉をつみとり日干しにし、健胃・整腸薬として煎じて服用する。中国では葉の汁を傷口に塗布して止血薬として用いている。

土曜日, 2月 04, 2012

威霊仙

○威霊仙

 沖縄県、台湾、中国南部、インドシナ半島東部に分布するつる性低木キンポウゲ科のサキシマボタルヅル(別名:シナセンニンソウ Clematis chinensis)の根を用いる。そのほか中国では同属植物のセンニンソウ(C.terniflora)や東北鉄線蓮(C.manshurica)などの根も使用されている。日本でも同属のテッセン(C.florida)やカザグルマ(C.patens)などの根を威霊仙として代用している。これらはいずれもクレマチス属(センニンソウ属)のつる性植物である。ただし、中国ではセンニンソウの根を特に鉄脚威霊仙と称している。また「開宝本草」や「救荒本草」などではゴマノハグサ科のクガイソウ(Veronicastrum sibiricum)を威霊仙あるいは草本威霊仙と記しているが、現在は使用されていない。生薬名の威霊仙の威とはその性質が猛、霊仙とはその効果が速やかなことをいう。

 威霊仙の成分にはアネモニン、アネモノール、有機酸などが含まれ、血糖降下作用や鎮痛作用が報告されている。ちなみにセンニンソウには毒性があり、生汁が皮膚につくと発赤・水泡ができるが、生の葉を手首に貼り、水泡を作って扁桃炎を治療するという民間療法もある。かつて葉は魚毒やウジ退治などにも利用されていた。

 漢方では去風湿・通経絡の効能があり、リウマチや痛風などによる関節痛や筋肉痛、手足のしびれ、脳卒中後遺症による半身不随などに用いる。また魚の骨がのどに刺さったときには威霊仙を水あるいは米酢で煎じて、ゆっくりと飲めばよいといわれている(去骨湯)。

金曜日, 2月 03, 2012

委陵菜

○委陵菜(いりょうさい)

 日本の本州以南、朝鮮半島、中国、台湾などに分布するバラ科の多年草カワラサイコ(Potentilla chinensis)の根または根のついた全草を用いる。川原や海岸の砂地などに生え、根の形がセリ科のミシマサイコ(柴胡)に似ているためカワラサイコといわれる。この全草は中国の東北・華北地区で翻白草、中国南部の地区では白頭翁として作用されている。日本では柴胡の代用品として解熱薬に用いられたこともあるが、効果は疑問視されている。

 中国医学では清熱解毒・去風湿の効能があり、アメーバ赤痢や細菌性腸炎などによる下痢や腹痛、あるいはリウマチなどによる関節炎や四肢の麻痺に用いる。また出血や皮膚化膿症に止血・解毒薬としても外用する。

木曜日, 2月 02, 2012

伊保多蠟

○伊保多蠟(いぼたろう)

 カタカイガラムシ科の昆虫イボタロウカイガラムシ(Ericerus pela)の幼虫がモクセイ科の樹木の枝や幹に分泌した蠟状の物質を精製したものを用いる。この昆虫の寄生する樹木として日本ではモクセイ科のイボタノキ(Ligustrum obtusifolium)やトネリコ(Fraxinus japonica)が知られているが、中国ではトウネズミモチ(L.lucidum)やシナトリネコ(F.chinensis)が有名である。

 イボタノキは日本各地の山林中に見られる落葉低木である。伊保多蠟は富山県や福島県で多く産する。イボタロウカイガラムシの成虫のオスは翅開張は4mmくらいの小さな虫である。メスは受精すると著しく膨大して球形となり、イボタノキに産卵する。孵化した幼虫のオスは枝にじっとしたまま樹液を吸って体から白色の蠟物質を分泌し、体外を包み、この蠟が相互につながって枝が白く覆われる。夏の早朝にこの枝を切り、沸騰した湯の中に入れて蠟を溶かし、水面に浮いたものを冷やして固めたものが伊保多蠟(虫白蠟)である。このロウは戸のすべりや家具のつや出しに、中国ではロウソクの原料に用いられる。

 成分には脂肪酸のセロチン酸、イボタセロチン酸、セリルアルコールなどが含まれる。民間では疣(いぼ)の根元を絹糸で縛り、その上からロウをつけて治療するため、イボタノキ(イボ取リノ木)の名前がある。漢方では止血・生肌・止痛の効能があり、おもに膏薬として外科の治療に用いる。

水曜日, 2月 01, 2012

イヌサフラン

○イヌサフラン

 北アフリカ、ヨーロッパ南部を原産とするユリ科の球根植物イヌサフラン(Colchicum autmnale)の種子(コルヒクム子)や根茎(コルヒクム根)を用いる。秋にサフランに似た花が咲くが、葉がないうちに花が咲くので「裸の貴婦人」という呼び名もあり、日本でも観賞用に栽培される。

 古代エジプトにおいてイヌサフランを種々の痛みに用いたといわれているが、非常に有毒であるため、その後はあまり利用されなかった。摂取すれば嘔吐、下痢、皮膚の知覚障害、呼吸困難などが出現し、死に至ることがある。6世紀にヒマラヤ地方に成育するイヌサフランの近縁植物が痛風に効果があることが記述されているが、イヌサフランが薬用として注目されたのは18世紀以降である。フランスにおいて薬用酒が痛風の特効薬として売り出され、ヨーロッパ大陸やイギリスで大変よく売れた。

 イヌサフランの全ての部位にアルカロイドのコルヒチンが含まれ、コルヒチンには中枢性の知覚麻痺、末梢性の血管麻痺作用があり、痛風の痛みに特異的に奏功する。コルヒチンは痛風の原因である尿酸の合成や排泄には作用せず、白血球の代謝活性を抑制し、尿酸の微細結晶に対する食作用を減少させ、結晶沈着の循環を阻害すると説明されている。

 ヨーロッパではチンキ剤として、日本では精製した純品が痛風の治療に用いられている。近年ではベーチェット病の眼症状の治療にも用いられる。副作用として悪心や嘔吐、下痢、脱毛などがみられる。このほかコルヒチンは植物の細胞分裂を妨げるが、染色体の分裂は阻害しないため染色体数を倍化させる特異な性質があり、種なしスイカや収穫量の多いワタなど新品種の開発などに応用されている。

火曜日, 1月 31, 2012

一角

○一角

 北極海に生息するイッカク科の哺乳類イッカク(Monodon monoceros)の牙を用いる。イッカクはイルカの近縁動物で、体調は約5mで、雄の上顎に1対ある歯牙のひとつの門歯が長くなり、細長く2m以上に伸びるため、イッカクあるいはウニコルン(ユニコーン Unicorn)と呼ばれている。牙は象牙質で螺旋形になっている。

 イッカクの角は中世ヨーロッパにおいて神秘的な解毒薬として珍重されていた。日本にはオランダ医学とともに江戸時代に伝えられた。漢方薬ではないが、サイカク(犀角)と同様の解熱・鎮静の効能があるといわれ、粉末にして服用する。和田東郭は精神病の激しい症状に対して大承気湯に配合して用いている(治狂一方)。

月曜日, 1月 30, 2012

一位葉

○一位葉(いちいよう)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するイチイ科の常緑針葉高木イチイの葉を用いる。日本では特に中部地方以北の深山に多く自生し、アララギやオンコなどの呼び名もある。中国ではイチイの枝や葉を紫杉の菜で生薬として用いている。

 かつて高官の笏(しゃく)に用いていたため一位という名があり、建築材や家具材、彫刻材、鉛筆材として知られている。今日でも飛騨高山の一位細工は有名である。また心材は紅褐色であり、浸出液は蘇芳色の染料としても利用されている。

 赤く熟した仮種皮は甘く食べられるが、種子には毒性がある。葉や枝にはアルカロイドのタキシン、タキシニンなどが含まれ、血糖降下作用や中枢神経抑制作用が報告されている。民間では葉や小枝を通経、利尿薬として用いている。また糖尿病にも効果があるといわれ、糖尿病用剤として知られる家庭薬にも配合されている。ただし毒性があるので過量にならないようにする。

 近年、アメリカ北西部に自生するタイヘイヨウイチイ(T.brevifolia)の樹皮から、パクリタキセル(タキソール)という抗癌活性のある成分が分離され、さまざのな癌の治療に用いられている。パクリタキセルは中国産の紅豆杉や日本産のイチイなどにも含まれているが、工業的にはセイヨウイチイ(T.caccata)の葉から抽出したバッカチンという成分が合成されている。

 現在、欧米では西洋イチイはユー(Yew)と呼ばれ、免疫力を高めるサプリメントとして販売されている。ちなみにイチイの同属植物である雲南紅豆杉の材部を原料にした紅豆杉茶が健康食品として輸入され、花粉症などに効果があると紹介されている。

土曜日, 1月 28, 2012

伊豆縮砂

○伊豆縮砂(いずしゅくしゃ)

 関東地方以西、四国、九州、台湾、中国に分布するショウガ科の多年草ハナミョウガ(Alpinia japonica)の種子を用いる。中国の生薬名ではハナミョウガの種子を土砂仁、全草を山姜という。葉がミョウガに似て、花が目立つことからハナミョウガの名がある。

 日本では熱帯アジアに産するショウガ科の植物の種子、縮砂の代用品として江戸時代から利用されている。さらに伊豆縮砂の代用品として同じくショウガ科のアオノクマタケラン(A.intermedia)の種子(黒手)やゲットウ(A.speciosa)の種子(白手)が用いられた。この黒手と白手では黒手のほうが品質がよいといわれている。いずれも西南日本、得に沖縄県などに自生しているが、南方より帰化したものともいわれている。

 ゲットウ(月桃)という名は台湾の呼称であり、沖縄の方言ではサンニン、つまり砂仁(縮砂の異名)とも呼ばれている。ちなみに台湾産の縮砂はゲットウの種子である。

 ハナミョウガの種子には精油のシネオール、β-ピネンのほか、フラボノイドのイザルピニンなどが含まれる。種子はソースなどの香辛料や芳香健胃の家庭薬の原料として用いられている。漢方では健胃・理気の効能があり、縮砂の代用として腹痛や嘔吐、下痢、生理痛の治療に用いる。

金曜日, 1月 27, 2012

郁李仁

○郁李仁(いくりにん)

 中国北部原産のバラ科の落葉低木ニワウメ(Prunus japonica)やコニワザクラ(P.humilis)などの種子を用いる。根も郁李根として用いる。現在、郁李仁の市場品には大李仁と小李仁の2種類がある。ただし、大李仁は主にバラ科のユスラウメ(P.tomentosa)の種子であり、薬用には小李仁を正品とする。

 ニワウメは江戸時代に渡来し、花が美しいため観賞用として栽培されている。果実はサクランボ状で食べられる。熟したニワウメの果実を摘みとり、果肉を除去し、核の殻を割って、種子を取り出す。この種子、郁李仁は6×4mmくらいの小さなアーモンドの形をしている。種子の成分には青酸配糖体のアミグダリンのほか、サポニン、フィトステロール、ビタミンB1などが含まれる。

 漢方では潤腸・利水消腫の効能があり、便秘や排尿減少、浮腫に用いる。郁李仁は麻子仁よりもやや強い潤下作用があり、高齢者や産後の慢性の便秘に柏子仁・桃仁などと配合する(五仁丸)、顔面及び手足の浮腫に防已・青皮などと配合する(郁李仁湯)、また脚気の浮腫にはヨクイニン・杏仁などと配合して用いる(三仁丸)。なお郁李根は歯の治療薬としてよく知られ、歯痛や歯肉炎には煎じた液でうがいする。

木曜日, 1月 26, 2012

硫黄

○硫黄

 天然に産する硫黄の単体、硫黄鉱(サルファSulphur)を加熱、加工したものを用いる。火山国の日本で盛んに採掘され、海外へ輸出していたこともある。現在、硫黄は石油精製過程で得られるため、日本の硫黄鉱山はほとんど閉山となっている。また金属硫化物や硫黄塩として地球上に広く分布し、生物体内にもタンパク質および有機化合物の成分として含まれている。

 古くから燃える不思議な物質として知られ、西洋の錬金術でも、中国の錬丹術でも重要な原料であった。単体のままマッチや黒色火薬の原料にされるが、精製硫黄はパルプ製造用の亜硫酸や二硫化炭素の原料になる。薬材の硫黄は表面がざらざらした軽い黄色の塊で、質はもろく砕けやすい。特異な臭いがあり、燃やすと炎を出し刺激性のある二酸化硫黄(亜硫酸ガス)の臭気を発する。粗製硫黄を昇華させて固定したものは硫黄華といい、無味無臭の黄色い粉末である。

 硫黄イオンは細胞膜を通過しないため薬理的作用はないとされているが、服用すると腸内細菌により還元され、硫化物や硫化水素となって腸壁を刺激し、また水が腸内に滲出して下痢をおこす。また硫黄を皮膚に外用するとSH基をS-Sに変えて角化した皮膚を軟化させ、また硫化水素やペンタチオン酸となって抗菌作用が発現する。かつては痤瘡の治療にクンメルフェルド液、湿疹や疥癬の治療に硫黄軟膏などがよく使用された。

 漢方では止痒・補陽の効能があり、湿疹や疥癬、痤瘡などの外用薬として用いるほか、インポテンツや慢性の下痢、老人性便秘などに用いる。小児の寄生虫症で腹痛、夜泣きするときには平胃散に硫黄を加える。老人性の虚寒の便秘に半夏と配合する(半硫丸)、老婦人の腰冷えや帯下に竜骨と配合する(竜硫丸)。近年、北米原産のテーダ松から抽出された有機硫黄成分MSM(メチルスルフォニルメタン)に鎮痛作用や抗炎症作用、抗アレルギー作用があり、関節炎や筋肉痛の緩和、アレルギー性鼻炎の改善、髪や爪の成長促進などに効果があるとして注目されている。

水曜日, 1月 25, 2012

安息香

○安息香(あんそくこう)

 エゴノキ科の高木で、インドネシアに分布するアンソクコウノキ(Styrax benzoin)、タイや東南アジアや中国南部に分布するシャムアンソクコウノキ(S.tonkinensis)の樹脂を用いる。樹幹に傷つけると黄色の樹液と白色の樹脂が徐々に分泌されるが、この樹脂を採取し乾燥させたものを薬材とする。薬材の表面は黄褐色ないし赤褐色、内部は乳白色の硬くてもろい不定形の塊で、芳香があり、過熱するとすぐに軟化する。

 インドネシア産のものはスマトラ安息香、タイを主産地とするものはシャム安息香といい、世界市場の90%はスマトラ安息香である。日本に輸入される安息香もほとんどはスマトラ安息香であるが、シャム安息香のほうが高級とされる。

 スマトラ安息香の成分には芳香族化合物の安息香酸、ケイヒ酸、バニリンなどが含まれる。一方、シャム系には安息香酸やバニリンが多く含まれるが、ケイヒ酸は含まれない。安息香酸には中枢神経興奮作用殺菌作用があり、安息香酸ナトリウムは抗カビ、防腐剤として利用されている。また安息香チンキは呼吸器の局所粘膜を刺激して分泌物を増加させる作用があるため、かつて吸入剤の去痰薬として使用されたことがある。

 一方、古代エジプト時代から香料として、また宗教儀式の薫香として使用されてきた歴史があり、現在では、主に石鹸やポマードの香料やアロマテラピーの精油(ベンゾイン)として用いられている。

 漢方では開竅・理気・活血の効能があり、意識障害、胸や腹の痛み、産後のめまい、小児のひきつけなどに用いる。失神などの意識障害や胸痛、腹痛には蘇合香・麝香・沈香などの芳香薬と配合する(蘇合香丸)。一般に内服では丸剤や散剤として用いる。そのほか白癬症などの外用薬として有名な華陀膏にも蝋梅とともに配合されている。

火曜日, 1月 24, 2012

アロエ

○アロエ

 アロエはアフリカの地中海沿岸部を原産とするユリ科の植物であり、アロエとは、アラビア語で苦いという意味である。中国では蘆薈薈と記し、日本に渡来して蘆薈をロカイと読み、和名となった。アロエは600種類ぐらいが知られているが、代表的なものにケープアロエ(Aloe ferox)、キダチアロエ(A.arborescen)、アロエベラ(A.barbadenisis)がある。このうちケープアロエは、日本薬局方に収載されており、医薬品以外の食品や化粧品への使用は禁止されている。

 ケープアロエに含まれるアントロン配糖体の苦味成分、アロインには瀉下作用があり、大腸性下剤として常習性便秘に用いられる。またアントラキノン類のアロエエモジンも苦味成分で胃液の分泌促進、緩下作用がある。健康食品として日本では主にキダチアロエ(木立蘆薈)が利用されており、ヨーグルトなどに入っているアロエはアロエベラの葉肉である。日本の家庭で栽培されているアロエは一般的にキダチアロエであり、アロエベラは日本では沖縄でしか栽培されていない。ちなみに欧米でアロエといえば、アロエベラのことである。

 キダチアロエにはアントラキノン類があまり含まれておらず、下剤の効果が期待できないが、葉全体を食品として利用できるのに対し、アロエベラには薬局方成分のアロインが多く含まれているため表皮を除いた葉肉のみが利用されている。

月曜日, 1月 23, 2012

アルカロイド

○アルカロイド

 植物の中には分子内に窒素を含み塩基性を示す成分があり、これらをアルカリのようなものということからアルカロイドと総称する。アミノ酸から生合成され、ヒトの生理活性アミンと類似の構造を持つため、強い生物活性を持つ。植物毒の多くはアルカロイドであり、薬用植物の主成分もアルカロイドであることが多い。

 代表的なアルカロイドとして麻黄のエフェドリンや附子のアコニチンがある。一般にアルカロイドは、湯液の酸性度が高い場合や酒で煎じた場合には成分の抽出量が増加する。また、長時間加熱することで分解され、活性が低下する。一方、アルカロイドの吸収にも、pHが関与し、胃酸によってイオン化するため、胃での吸収が低下する。食後や多量の湯と一緒に摂取すれば、胃酸は薄まり、アルカロイドの吸収量は増える。アルカロイドの抽出量や吸収量が増加すれば、作用は強くなるが、副作用(中毒)が出現する危険性も増大する。このため、麻黄や附子を煎じたり、服用する場合には、専門家の指示に随うことが必要である。現在までに数千種のアルカロイドが知られており、アルカロイドを含有する植物として、キンポウゲ科、ケシ科、ナス科、ヒガンバナ科、マメ科、メギ科、ユリ科、トウダイグサ科、ウマノスズクサ科などがある。

土曜日, 1月 21, 2012

あり

○あり(蟻)

 中国南部の広西省、雲南省に分布するアリ(Polyrhachis vicina)を用いる。アリは南極と北極を除いて世界中に分布し、現在約8800種が知られており、日本でも277種のアリが報告されている。

 中国南部や東南アジアではツムギアリを、オーストラリアのアボリジニはミツツボアリを食用にする習慣がある。日本ではアリを薬用に用いた記録が名類聚抄(932年)にあり、中国の本草書、本草綱目(1578)にも記載されている。中薬大辞典には、四川中薬誌を出典として黒蟻(Formica fusca)を黒螞蟻として収載されている。擬黒多刺蟻は、中国政府衛生部が唯一、食用と薬用に認定している種類といわれている。

 アリには、タンパク質と脂肪、ビタミンB1・B2・B12、Eなどのビタミン類、蟻酸、クエン酸、酢酸などの有機酸のほか、亜鉛、カルシウム、鉄、マンガン、セレンなどのミネラルのほか、昆虫脱皮ホルモンのエクジステロンなどが含まれている。

 中国では補腎、扶正、止痛、安神などの効能があるとして、滋養強壮、免疫機能の改善、抗炎症、老化防止などの目的で用いられている。臨床的には、リウマチ、関節痛、神経痛、生活習慣病、慢性肝炎、性機能減退などに効果があると謳われている。中薬大辞典では黒螞蟻を蛇咬傷や腫れ物の外用薬として紹介している。

金曜日, 1月 20, 2012

あまにん

○あまにん(亜麻仁)

 中央アジア原産のアマ科の一年草アマ(Linum usitatissimum)の種子を用いる。アマは茎に強い繊維があり古くからリンネル(リネン)として用いられ、また種子からはアマニ油(亜麻仁油)という良質の乾性油が採れる。亜麻の品種は繊維用と油用とで異なり、繊維用は旧ソ連、ベルギー、採油用はアメリカ、カナダなどと世界各地で栽培されている。日本には17世紀に薬用として亜麻仁油をとるのが目的で中国から伝わったが、明治初期になって繊維用が北海道に導入された。リンネルとは亜麻布のことで、夏用の服地、肌着、シーツ、キャンバスなどに利用されている。アマニ油はペンキや油絵具、印刷インキなどの工業用としても重要である。日本は生薬名を亜麻仁というが、中国では一般に亜麻子とか胡麻子と称しているため、胡麻と混同しやすいので注意が必要である。

 亜麻油には、他の植物性油にあまり含まれていない必須脂肪酸のα-リノレン酸が多く含まれている。亜麻リグナンは、腸内細菌によって代謝され、女性ホルモン様の作用があるとして注目されている。このため更年期障害の改善や乳癌、結腸癌などの予防に効果があると期待されている。その他、亜麻仁には緩下作用や刺激緩和作用があり、便秘や咽頭の痛みなどにも用いられている。

 漢方では潤腸・止痒の効能があり、便秘や湿疹、脱毛などの治療に用いる。また、かつてハンセン病や肺結核の治療にも用いられた。民間療法では皮膚の痒みに種子をすりつぶして外用する。健康食品ではオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸の補給として亜麻仁油(フラックスシードオイル)が、亜麻リグナンや食物繊維の摂取には亜麻仁(フラックスシード)が薦められている。ただし亜麻仁油には微量の青酸配糖体が含まれており、過量に使用しないほうがいい。また亜麻仁油は酸化されやすいため、なるべく新しいものを摂取する。

木曜日, 1月 19, 2012

あまちゃづる

○あまちゃづる(甘茶蔓)

 日本では北海道から九州、朝鮮半島、中国、インドなどに分布するウリ科のつる性多年草アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)の葉あるいは全草を用いる。中国では生薬名を七葉胆といい、欧米では絞股藍(jiaogulan)の発音からジアオグランと呼んでいる。ブドウ科のヤブガラシによく似たつる性植物であり、葉を噛むと甘味があるのでこの名があるが、アマチャとは関係ない。1976年に日本生薬学会でアマチャヅルのサポゲニンが発表され、朝鮮人参の成分と類似することから注目されてアマチャヅルが健康茶としてブームとなった。

 アマチャヅルにはトリテルペノイドサポニンのジペノサイドが含まれ、高脂血症改善作用のほか、抗酸化作用や免疫機能の向上、抗癌作用などが認められ、欧米ではジアオグランという名でアンチエイジングサプリメントとして注目されている。中国の民間では七葉胆に解毒・止咳・去痰の効能があるとされ、粉末を老人性の慢性気管支炎などに用いている。

水曜日, 1月 18, 2012

あまちゃ

○あまちゃ(甘茶)

 本州の山間に自生し、日本各地で庭木などとして栽培されているユキノシタ科の落葉低木アマチャ(Hydrangea macrophylla var.thunbergii)の葉を用いる。アマチャはヤマアジサイと外見は区別できないが、このヤマアジサイの甘味変種とされる。日本の民間薬のため、中国の生薬名はない。

 アマチャの生の葉は苦くて甘味はないが、発酵させると甘くなる。夏に葉を採取し日干しにしたものを水をうって桶の中に積み重ね、一晩ぐらい発酵させ、揉んでから日干しにする。つまり葉の中の甘味成分は配糖体として含まれているため甘くないが、この配糖体が酵素の作用で加水分解されると甘味の強いフィロズルチンに変化する。フィロズルチンは砂糖の約1000倍の甘さがあり、かつて砂糖が普及するまでは甘味料として利用されていた。なお4月8日の灌仏会(花まつり)に、甘露の法雨の代わりとしてアマチャを誕生仏に注ぐようになったのは江戸時代からだといわれている。漢方では用いないが、今日、甘味料及び矯味薬として用いられている。

火曜日, 1月 17, 2012

あへん

○あへん(阿片)

 西アジア原産のケシ科の越年草ケシ(Papaver somniferum)の未熟果の乳液を凝固したものを用いる。果皮を刃物で浅く傷つけると直ちに白色の乳液が分泌する。この乳液は大気中で次第に微紅色から褐色に変化して粘稠化するが、翌朝に竹の刀でそぎとり、乾燥させたものが阿片である。阿片の名はアラビア語のアフィウーンに由来する。英語名のオピウム(opium)は乳汁という意味である。また漢方では成熟したケシの果殻を罌粟殻という。なお、50種以上あるケシの仲間のうちアヘンを生産できるのはこのケシとパパベル・セティゲルム(P.setigerum)の2種類のみである。

 アヘンには成分としてモルヒネ、コデイン、パパベリン、ノスカピンなど20種以上のアルカロイドが含まれ、モルヒネやコデインには中枢神経に作用して鎮痛、催眠、鎮咳などの効果がみられる。アヘンを過量に用いると大脳の機能が麻痺して陶酔感や幻覚が出現し、さらに量が多いと小脳・延髄の機能が冒され、呼吸中枢が麻痺して死に至る。九精中毒症状として昏睡・瞳孔縮小・呼吸抑制の特徴がある。アヘンは習慣性が非常に強いため慢性中毒の状態となり、耐性を生じるので次第に量が増える。慢性中毒では服用後に多幸的な陶酔状態が出現し、不安や苦痛を感じなくなり、効果が切れると強い禁断症状が出現する。

 現在、アヘンは麻酔性鎮痛薬のモルヒネ塩酸塩や鎮咳薬のコデインリン酸塩の原料となるが、麻薬及び向精神薬取締法によって使用は制限されている。また麻薬のヘロインとはモルヒネをアセチル化したジアセチルモルヒネのことで、鎮痛作用は弱いが多幸作用や習慣性は強くなっている。漢方でも止痛・止咳・止瀉の効能があるが、止痛・止咳より、むしろ止瀉薬として用いられていた。津軽藩の秘薬として知られる一粒金丹にもアヘンが配合されていたが、明治10年に阿片配合の売薬は禁止された。

月曜日, 1月 16, 2012

あせんやく

○あせんやく(阿仙薬)

 アカネ科のつる性常緑低木ガンビールノキ(Uncaria gambir)の葉や枝を煮詰めて濾過した後、濃縮・乾燥したエキスをいう。これとは別にマメ科の落葉高木アセンヤクノキ(Acacia catechu)の心材を煎じて濃縮・乾燥したペグ阿仙薬というのがある。中国では両者をともに孩児茶といい、商品名では児茶膏という。中国では主にペグ阿仙薬を用いるが、日本ではペグ阿仙薬はあまり用いない。ガンビールノキはマレー半島やスマトラ、ボルネオなどで栽培され、アセンヤクノキはインド、インドシナに分布し、中国南部などで栽培されている。いずれもタンニンを多く含み、皮なめしか、褐色染料などにも用いられている。東南アジア、台湾などではガンビールと檳椰子に石灰を加え、キンマの葉で包んだものをベテルと称して咀嚼する習慣がある。

 一般に阿仙薬の薬材は1辺が3cmの方形状のもので、茶褐色~黒褐色をし、表面ににかわ様の光沢がある。阿仙薬にはカテキンなどのタンニン、ケルセチン、アルカロイドのガンビリンなどが含まれ、抗菌作用や止瀉作用が認められている。収斂性があり、口に入れると苦くて渋い。このため仁丹などの口中清涼剤や正露丸などの家庭薬の原料として大量に使用されている。

 漢方では止瀉・止血・化痰の効能があり、咳嗽や咽頭炎、種々の出血、下痢、皮膚炎などに用いる。声を出しすぎて声がしゃがれた時には連翹・訶子などと配合する(響声破笛丸)。咽頭炎に用いる家庭薬のクララにも配合されている。ちなみに江戸時代の倍薬としてよく知られている万金丹などの胃腸薬の主成分も阿仙薬である。また江戸時代には五倍子のエキスから百薬煎を作り、これを阿仙薬と偽称したため、阿仙薬のことを百薬煎とも読んでいた。

金曜日, 1月 13, 2012

あせび

○あせび(馬酔木)

 東北地方以南、四国、九州の暖温帯の山地に自生するツツジ科の常緑低木アセビ(Pieris japonia)の茎葉を用いる。生垣などの庭園樹としてもよく植えられ、春に白い鈴のような花が並んで下垂する。アセビは日本特産のため馬酔木というのは和製漢名である。有毒植物で、ウマやウシが誤ってこの葉を食べると麻痺することからアセビ(アシシビレ)とか馬酔木の名がある。普通、ウマやウシはこの葉を食べることをせず、奈良公園ではシカが食べないためこのアセビの木が多く繁殖している。

 葉には有毒成分のアセボトキシン(グラヤノトキシンⅠ)やグラヤノトキシンⅢ、ピエリストキシンなどが含まれ、中毒すると悪心、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、四肢麻痺、呼吸麻痺などをおこす。古くから葉の粉末や煎液は農用殺虫剤としてウマやウシの皮膚寄生虫の駆除、農作物の害虫駆除、便槽のウジ駆除などに用いられた。

木曜日, 1月 12, 2012

あしたば

○あしたば(明日葉)

 関東、東海地方、紀伊半島などの温暖な海岸地帯に生えるセリ科の多年草アシタバ(Angelica keiskei)の葉を用いる。成長が早く、葉を摘んでも明日になるとまた葉がのび出すことからアシタバの名がある。春先の若葉は食用にでき、ゆでて浸し物、和え物にする。多少苦味が残るが、特有の香りがある。八丈島の島民が蔬菜として利用したのが始まりで、ハチジョウソウ(八丈草)とも呼ばれている。

 葉にはルテオリン配糖体やイソケルセチンのほか、各種のビタミンが含まれる。茎や葉を切ると黄色い汁が出るが、その主成分はカルコン類のキサントアンゲロール、4-ハイドロキシデリシンであり、抗菌、抗炎症、胃酸分泌抑制、血管拡張といった作用があると報告されている。近年、アシタバの抽出成分に糖尿病の合併症を防ぐ効果、神経成長因子や骨形成蛋白の産生増強物質が含まれていることが発表され、糖尿病や認知症、骨粗しょう症への効果が検討されている。かつて痘瘡の治療に用いられていた。

 また乳牛の牧草にすると乳の出がよくなるといわれ、催乳・強精作用も伝えられている。最近では健康食品として生活習慣病、便秘、貧血などに用いられているほか、ダイエット効やセルライト解消などの効果も謳われている。

水曜日, 1月 11, 2012

あきょう

○あきょう(阿膠)

 ウマ科動物のロバ(Equus asinus)の皮を、毛を取り除いてから煮て膠(にかわ)にしたものをいう。にかわとは煮皮のことで、粗製のゼラチンのことである。現在はロバ以外にもなどの皮も用いる。主産地は中国の山東・浙江省で、古くから山東省の東阿に産するものが優れていたため阿膠の名がある。ロバの皮を用いたものは驢皮膠といい、ウシの皮を用いたものは黄明膠とい。驢皮膠が漆黒の色をしているのに対し、黄明膠は黄褐色である。日本では主としてウシの皮や骨からとる局方のゼラチンが用いられている。このほか鹿角膠や鹿茸膠などもあるが、効能は異なる。膠は接着剤などに用いるほか、現在でもカプセルや坐薬、ゼラチンスポンジなどの医薬品の原料として応用されている。

 阿膠の成分は硬質タンパク質のコラーゲンとゼラチンで、ゼラチンとはコラーゲンを熱処理により精製した変性タンパク質のことである。これらのタンパク質のアミノ酸の組成としてグリシン、プロリン、オキシプロリンなどが多い特徴がある。ただし阿膠の代用にゼラチンが適するかは議論の余地がある。

。漢方では止血・補血・補陰の効能があり、種々の出血や虚労、慢性的な咳嗽などに用いる。阿膠は加熱すれば溶けるが、低温ではゼリー状に凝固するため、煎剤に用いるときは滓をこした後に溶かしながら服用する。またタンニン酸によって沈殿するので配合に注意する。

火曜日, 1月 10, 2012

あぎ

○あぎ(阿魏)

 中央アジア、イラン、チベット自治区、新疆ウイグル自治区などの乾燥地帯で産するセリ科の多年草アギ(Ferula assa-foetid)の茎や根茎からとれる樹脂を用いる。

 開花前の茎を切断すると断面に乳液が進出して10日ほどで凝固するので、これを削りとる。ニンニクの腐ったような臭いがあり、インドでは香辛料(ヒーング)、中近東ではソースなどの味付けとして、またヨーロッパでは香料に用いている。ニンニク様の不快臭は精油成分に二硫化物(2-ブチルプロペニルジスルフィド)が含まれているためである。かつてはこの臭いが嗅覚神経を刺激して作用する汚臭性神経安定薬、たとえばヒステリーに対する嗅ぎ薬や刺激性の去痰薬として使用された。現在でもインドや南西アジアでは重要な生薬とされている。

 漢方では消積・駆虫・駆お血の効能があり、消化不良などによる腹部硬結や寄生虫症、マラリア、婦人の腹中の血塊などに用いる。近年、内服はあまり用いられず、膏薬に配合して腹部種瘤の外用薬として用いる(阿魏化痞膏)。

土曜日, 1月 07, 2012

あかめがしわ

○あかめがしわ(赤目柏)

 本州以南、中国南部、台湾などに分布しているトウダイクサ科の落葉高木アカメガシワ(Mallotus japonica)の樹皮を用いる。若芽が赤いためアカメといい、柏餅の柏の葉のように食べ物を包んだりしたためアカメガシワという。ただし、葉の形はブナ科のカシワとは似ていない。

 日本の民間療法として、古くは「切らずに治す腫れ物の薬」として用いられていたが、明治以降は煎じて胃潰瘍や胆石症の治療に用いられることが多い。樹皮にはゲラニインなどのタンニンやベルゲニン、ルチンなどが含まれる。成分のベルゲニンには胃液分泌抑制作用や抗潰瘍作用がみられ、樹皮のエキスは潰瘍治療薬として製剤化されている(マロゲン)。また胆汁排出に関して葉のエキスは少量で促進、大量で抑制、樹皮のエキスには抑制作用がある。胃、十二指腸潰瘍、胃酸過多、胆石症には樹皮を煎じて服用する。

 近年、樹皮エキスには腸壁の腸平滑筋に直接作用し、腸の緊張を高め、便秘、下痢、便秘下痢交代といった便通異常に効果のあることが見出され、過敏性腸症候群の治療にも期待されている。そのほかや腫れ物には樹皮の煎液を内服したり、葉の煎液で洗ったりする。痔の痛みには生の葉の汁を患部に塗る療法もある。またあせもの治療に葉を浴湯料として用いる。

金曜日, 1月 06, 2012

あかしょうま

○あかしょうま(赤升麻)

 日本の北海道から九州にかけて北から南に分布するユキノシタ科の多年草アカショウマ(Astilbe thunbergii)の根茎を用いる。アカショウマの近縁植物であるトリアシショウマ(A.thinbergii var.congesta)、チダケサシ(A.microphylla)、アワモリショウマ(A.japonica)などの根茎も赤升麻として用いる。かつて黒升麻、すなわち升麻(サラシナショウマ)の代用にされたため、その名がある。しかしサラシナショウマはキンポウゲ科の植物であり、現代では代用されない。

 根茎にはフラボノイドのアスチルビンのほか、イソクマリン系のベルゲニンが含まれる。アスチルビンとベルゲニンは体内で脂肪に働きかける作用を持つノルアドレナリンを補助する作用があり、ダイエット効果が期待されている。またアカショウマポリフェノールはリパーゼの酵素活性を阻害し、腸管からの脂質吸収を抑制することも報告されている。

 民間療法では煎じて風邪、頭痛、下痢などのときに服用する。また口内炎や咽頭炎には煎液でうがいする。あせもや湿疹などには煎液を塗布する。脱肛には浴湯料として用いる。

木曜日, 1月 05, 2012

あかざ

○あかざ(藜)

 インドや中国が原産である。古くから日本にも渡来しているアカザ科の一年草アカザ(Chenpopdium album var.centrorubrum)の葉を用いる。新芽や若い葉は紅色がかっているためアカザの名があるが、赤味のない変種をシロザという。かつては世界各地でアカザやシロザの若葉や種子を食用にしていたが、今日ではほとんど利用されず、荒地や畑地の雑草として扱われている。若葉を食べた後に強い日光に当たると局所的に発赤、腫脹、皮下出血などが出現することがある(アカザ日光アレルギー性皮膚炎)。

 葉にはロイシン、ベタイン、ビタミンA・B・Cなどが含まれる。民間療法では生の葉を揉んで虫刺されや湿疹に塗る。煎じて健胃・強壮薬として用いれることもある。歯痛には葉を乾燥させた粉末と昆布の粉末と混ぜて痛む部分につける。また茎は太くて軽く、強いため杖として用いると中風にならないという言い伝えがある。

水曜日, 1月 04, 2012

あおき

○あおき(青木)

 関東地方以西の本州、四国に分布する日本特産のミズキ科の常緑低木アオキ(Aucuba japonica)の生の葉を用いる。北海道や東北地方、山陰地方には変種のヒメアオキ、九州や沖縄にも変種のナンゴクアオキが分布している。中国ではアオキの同属植物であるアカサンゴ(桃葉珊瑚、A.chinensis)の葉を天脚板と称し、薬用にしている。一年中、葉だけでなく枝も青いことからアオキ(青木)という名がある。また冬になると赤くて光沢のある実が熟すため、庭木や室内観葉植物として利用されている。アオキは1783年に観賞用植物としてヨーロッパへ伝えられ、学名のアウクバはアオキバ(青木葉)に由来する。

 葉や茎にはイリドイドのアウクビンやアウクビゲニンが含まれ、葉をあぶったり、乾燥させたりするとアウクビンが酸化されて黒変する。日本の民間療法では生の葉を火であぶって柔らかくしたものや、あぶった後すりつぶして泥状にしたものを火傷や腫れ物、切り傷、凍瘡などに外用する。また忍冬の茎葉と一緒に煎じて脚気や胃腸薬、陀羅尼助にアオキ葉が配合されているが、これは固形エキスの表面に色つやを出すためといわれている。

金曜日, 12月 30, 2011

フランス海岸松

○フランス海岸松

 フランス海岸松は南仏の大西洋沿岸のみに生息する海洋性の松である。この樹皮から得られる抽出物には40種類を超えるフラボノイドが含まれており、半世紀以上も前からヨーロッパを中心に抗酸化物質として活用されてきた。現在は一般にピクノジェノールフラバンジェノール(いずれも商標)という名称で世界的に知られている。

 樹皮が生薬となる例は多々あるが、これは16世紀のフランスの探検家J・カルチェの率いる探検隊がカナダを探索中に壊血病にかかった時、現地の先住民に松の樹液を飲むことを教えられて助かったという記録が発見のきっかけとなった。1940年代にケベック大学(カナダ)の客員教授をしていたJ・マスケリエがこの記録を知り、帰仏後も樹皮成分(フラボノイド)の研究を続ける中で、生理活性の高いこのフランス海岸松エキス(以下、海岸松エキス)に辿り着いたのである。以後、フランス厚生相が血管の保護効果がある医薬品として認可すると共に、90年代に入ってからはアメリカでも研究が進み、サプリメント市場に登録するや爆発的な評判を得た。

 海岸松エキスには数多くのフラボノイドが含まれているが、なかでも注目度が高いのはプロアントシアニジンで、通常のフラボノイドに比べて水への溶解性が高いため、抗酸化物質として即効的に働くという特徴がある。また、多数の有機酸からなる機能成分が連携して高いSOD活性を示すことが明らかにされている。このことから、海岸松エキスは毛細血管を保護し、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・静脈瘤などを予防する効果のあることが明らかにされ、多くの研究者によって報告されている。

 海岸松エキスにはこのほか、月経困難症・生理痛・子宮内膜症・冷え性・更年期障害など、女性特有の疾患を劇的に改善する効果のあることが日本の医師や研究者によって明らかにされている。1998年に金沢市で開催された日本補完・代替医療学会の第1回学術集会で、医師の小濱隆文(恵寿総合病院)、神奈川大学医学部の鈴木信孝らによって海岸松エキス(ピクノジェノール)による886例の臨床予備治験の結果が報告され医療関係者の注目を集めた。小濱はその翌年も発表を行い、子宮内膜症患者に対してピクノジェノールの投与により重度の月経痛と骨盤痛が軽減したこと、また子宮内膜症以外の原因による月経痛・骨盤痛も軽減されたことを報告している。また、藤野武彦(九州大学)らはサントリー健康科学研究所との共同研究により、フラバンジェノールに血液の流れをよくする作用のあることを確認し、学会発表を行っている(第44回日本人間ドック学会)。

木曜日, 12月 29, 2011

たらの葉茶

○たらの葉茶

 日本各地に自生するウコギ科の落葉低木タラの木(楤木)は、春先にそのほろ苦い若芽がタラの芽として天ぷらや和え物に用いられるのでよく知られているが、日本では古くから樹皮、根皮を糖尿病腎臓病・胃腸病の民間薬として用い、中国でも根皮を強壮・神経衰弱に、韓国では咳止め・糖尿日・ガンなどに用いてきた歴史がある。

 タラの木の葉を茶材に用いることに着目したのは長村洋一(藤田保健衛生大学)らの研究グループである。長村らは、種子島ではタラの木の樹皮を糖尿病の特効薬のごとく見なして繁用しているという事実を知り、糖尿病ラットに抽出エキスを飲ませて血糖値効果を確認、その葉を採取して洗浄・乾燥した得た茶材(タラの葉茶)にも同じ効果があることを知り、さらに実験を重ねて、その抽出エキスに肝細胞へのグルコースの取り込みを促進するインスリンと同様の作用のあることを見出した。また、この作用の原因物質を調べて斉藤節生(城西大学薬学部)は11種類の新しいトリテルペン系のサポニン(タラの芽のほろ苦さの原因物質もサポニン)を分析し、その化学構造のいくつかが肝臓病の薬とされるグリチルリチンによく似ていることを発見しており、長村の四塩化炭素で肝障害を起こさせたラットによってGOTの抑制率を調べ、タラの葉サポニンがグリチルリチンと比較しても遜色のない治療効果を見せることを確認している。さらに、薬物性の肝炎だけでなく、ウイルス性肝炎にも有効であることが明らかにされた。ウイルス性肝炎が進行するときには、本来ウイルスを攻撃すべき免疫力(抗体)が逆に感染者自身の肝細胞を破壊するという厄介な障害が起こる場合があるが、タラの葉サポニンはその自滅的な破壊作用を抑制することを突き止めている。

水曜日, 12月 28, 2011

シジュウム茶

○シジュウム茶

 シジュウム(psidium)はフトモモ科の落葉小高木で、南米(部汁、ペルー、コスタリカなど)が原産。古くからインカ帝国のインディオによって栽培され、甘酸っぱい果実は食用のほか皮膚病の薬にも使われていた。その葉を干して粉末にしたシジュウム茶は、見かけは黄色みの強い粉茶に似ており、少々抵抗感のある薬臭さが気になるが、飲んでみると苦味も後味の悪さもない。

 シジュウムの葉にはミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウムなど)やビタミンC、タンニンが含有されているが、抽出エキスにはアレルギー性症状を引き起こす原因となるヒスタミン遊離を非常に強く抑制する作用があるため、花粉症に効果的であるほか、入浴剤として使用するとアトピー性皮膚炎、湿疹、老人性皮膚掻痒症などによるかゆみを抑える作用がある。北中進(日大薬学部)が行ったラットへのエキス投与実験ではこの作用を立証するデータが得られたという。また、馬場俊一(日大駿河台病院)はあらゆるタイプのアレルギーに有効があると発表している。

 シジュウム属には50~70種の植物が数えられ、グァバ茶として知られるグァバもその一種で、その性状や成分には非常に似通ったものがあることは興味深い。

火曜日, 12月 27, 2011

水溶性ビタミン(4)

ビオチン

 ネズミの成長因子として卵黄から発見された物質で、ビタミンB複合体、ビタミンH、補酵素Rとも呼ばれる。細胞の成長やDNA合成、血糖値の維持に作用し、毛髪や皮膚の健康維持、貧血予防に有効とされる。食品ではレバー、イワシなどの魚介類、ピーナツ、クルミなどに多い。「食事摂取基準05年版」では、ビオチンの目安量は1日あたり成人男女とも45ug(妊婦は+2ug、授乳婦は+4ug)としている。また保健機能食品制度では、ビオチンを1日摂取量あたり14~500ug含む食品にはビオチンの機能を表示することができる。

ビタミンC

 抗壊血病の因子として発見されたビタミン。物質名はアスコルビン酸。ストレスや疲労、風邪、喫煙の害、高コレステロールなどさまざまな場面でビタミンCを補給することによって症状が軽くなったり、予防する働きを持つことがわかっている。また、発ガン物質であるニトロソアミンの生成を阻止する働きがある。ビタミンCはアルカリ性の環境や加熱によって分解されやすく、また空気や酸化酵素によって酸化され、効果が低下する。食品では新鮮な野菜、果物、緑茶、イモ類に多く含まれ、動物性食品や穀物には少ない。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンCの推奨量は1日あたり成人男女とも100mg(妊婦は+10mg、授乳婦は+50mg)としている。また保健機能食品制度では、ビタミンCを1日摂取量あたり24~1000mg含む食品にはビタミンCの機能を表示することができる。また、健康食品については(財)日本健康栄養食品協会による「ビタミンC含有食品規格基準」(1986年8月公示、93年7月一部改正)がある。

月曜日, 12月 26, 2011

水溶性ビタミン(3)

※ナイアシン

 抗ペラグラ因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はニコチン酸。酸化還元補酵素の構成成分として重要。糖質や脂質の代謝に作用し、血行改善、脳神経の働きを高める効果がある。体内ではアミノ酸のトリプトファンから合成されるが、トリプトファンの含有が少ないトウモロコシを常食としている中南米では、欠乏症としてペラグラ(顔や手足の発赤や浮腫、皮膚炎、下痢などを伴う全身性疾患)が見られる。食品では魚肉、レバー、酵母、小麦胚芽、米糠、緑黄色野菜、豆類、穀物に比較的多く含まれている。「食品摂取基準05年版」では、ナイアシンの推奨量は男性は18~49歳で15mgNE(ナイアシン当量)、50~69歳で14mgNE、女性は18~49歳で12mgNE、50~69歳で11mgNE、上限量は男女とも100mg(ニコチン酸として)としている。また保健機能食品制度では、ナイアシンを1日摂取量あたり3.3~60mg含む食品にはナイアシンの機能を表示することができる。

※パントテン酸

 鶏のペラグラ治療因子として発見されたビタミンB2複合体。エネルギーの産生に関わる補酵素A(CoA)の主要成分。多くの食品に広く含まれているので欠乏症(皮膚炎、手足の痺れ、灼熱足症候群、知覚障害など)は少ないが、妊産婦や授乳婦は多く摂る必要がある。食品では酵母、レバー、牛乳、魚肉、大豆(納豆)などに多く含まれている。「食品摂取基準05年版」では、パントテン酸の目安量は1日あたり成人男性6mg、女性で5mg(妊婦は+1mg、授乳婦は+4mg)としている。また保健機能食品制度では、パントテン酸を1日摂取量あたり1.65~30mg含む食品にはパントテン酸の機能を表示することができる。

金曜日, 12月 23, 2011

水溶性ビタミン(2)

※ビタミンB6

 ネズミの皮膚炎症を改善する因子として発見された水溶性ビタミンで、ピリドキシン、ピリドキソール、ピリドキサミンなど同様の作用を持つ化合物の総称。アミノ酸の代謝に関与する補酵素として働く。また、近年は抗アレルギー作用など免疫機能の正常化に役立つことが指摘されている。通常の食生活では欠乏する例は少ないが、不足すると皮膚炎、多発性神経炎、動脈硬化性血管障害、貧血、口内炎、舌炎、食欲不振などの原因になる。ビタミンB6はどの食品にも比較的多く含まれているが、特にマグロやサンマなどの魚類、肉類、レバー、鶏卵に多い。「食品摂取基準05年版」では、ビタミンB6の推奨料は成人男性で1.4mg、成人女性で1.2mg、上限量は男女共に60mgとしている。また保健機能食品制度では、ビタミンB6を1日摂取量あたり0.3~10mg含む食品にはビタミンB6の機能を表示することができる。

ビタミンB12

 抗悪性貧血因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はシアノコバラミン。タンパク質や核酸の体内合成に欠かせないビタミン。細胞のエネルギー獲得にも有効である。葉酸と共に造血に関わるため赤いビタミンとも呼ばれ、肝機能強化にも有効である。欠乏すると貧血になり、息切れ、めまいのほか、神経系に作用して各種神経炎、神経痛、うつ状態、記憶力の減退などの原因ともなる。含有量が多い食品は魚肉、牡蠣、あさり、帆立貝などの貝類、レバー、牛肉、卵、牛乳などだが、よほど偏食しない限り日常の食生活で不足することはない。「食品摂取基準05年版」では、ビタミンB12の推奨量は1日あたり成人男女とも2.4ugとしている。また保健機能食品制度では、ビタミンB12を0.6~60ug含む食品にはビタミンB12の機能を表示することができる。

木曜日, 12月 22, 2011

水溶性ビタミン(1)

※ビタミンB1

 抗脚気因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はチアミン。1910年、農芸化学者の鈴木梅太郎が米糠より単離に成功し、オリザニンと名づけた。糖質代謝に関与する補酵素として働き、成長促進、心臓の機能の安定、中枢神経や末梢神経の正常化、消化液の分泌、食欲増進などに影響する。B1を多く含む食品は酵母や米糠であるが、通常の食品として豚肉、うなぎ、カツオ、鶏レバー、大豆、落花生、ニンニクなどに含有量が多い。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンB1の推奨量は1日当たり男性は18~49歳で1.4mg、50~69歳で1.3mg、女性は18~49歳で1.1mg、50~69歳で1mgとしている。また保険機能食品制度では、ビタミンB1を1日摂取量あたり0.3~25mg含む食品にはビタミンB1の機能を表示することができる。

※ビタミンB2

 動物の成長因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はリボフラビン。細胞の再生などに関与するフラビン酵素の働きを助け、特に脂質の代謝を促し、発育や粘膜保護に役立つ。体内で過酸化脂質の生成を防止する作用もある。B2が不足すると脂質をエネルギーに利用しにくくなって発育不良をきたすほか、咽頭桶口内炎を経て口角炎、舌炎、角膜炎、肛門や陰部の皮膚炎、脂蝋性皮膚炎、白内障などに冒されやすくなる。B2を多く含む食品は酵母、八つ目ウナギ、レバー(豚・牛・鶏)、ウナギ、サバ、サンマ、牛乳、納豆アーモンドなど。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンB2の推奨量は1日あたり男性は18~49歳で1.6mき、50~69歳で1.4mg、女性は18~69歳で1.2mgとしている。また保険機能食品制度では、ビタミンB2を1日摂取量あたり0.33~12mg含む食品にはビタミンB2の機能を表示することができる。

水曜日, 12月 21, 2011

その他の肉類

鹿肉

 フランスではジビエ(野禽獣)料理の代表的素材の一つ。日本ではもみじ肉とも呼ばれ、古くから食されてきたが、今日では一般家庭で食べる機会は少ない。現在、食用として出回っているのはニュージーランドなどから輸入された飼育鹿か、エゾシカなど冬季の解禁時に狩猟した野生鹿である。

 栄養的には高タンパク・低脂肪でエネルギーは110kcal(生肉100gあたり)と低め。他の食肉に比べて鉄や銅などのミネラルを多く含んでいるのが特徴である。肉色は赤く、あっさりとした味である。鍋物や煮込み、ローストにする。

兎肉

 家畜化されたイエウサギと野性のノウサギがいるが、食肉用として市販されているのはイエウサギの肉である。鶏肉に似た肉質でやわらかく、脂肪は約6%と少ない。ビタミンB12の含有量が生肉100g中5.6ugと、他の肉類に比べ2~5倍程度含まれるのが特徴である。

 兎肉はパテやテリーヌ、パエリア、煮込み料理、焼き物など、西洋料理ではよく使われる食材である。日本でも昔は貴重なタンパク源として食べられており、現在では地方によってウサギ汁や煮付け、味噌煮、たたき、鍋などの伝統料理がある。最近ではまた、アレルギー対策食品として注目されている。

※鴨肉

 鴨肉は鳥肉類の中でもっとも美味といわれている。食用として流通しているのはマガモ、アヒル、アイガモの3種類である。マガモは全長60cmほどで、雄は頭部が光沢のある暗緑色、首に白い輪があり、”あおくび”ともいわれる。雌は全体が地味な褐色である。日本には9月から11月にかけて渡来してくる冬鳥で、猟鳥に指定されている。

 アヒルは野生のマガモを改良した家禽で、チェリーバレー種、バルバリー種、北京種などがある。アイガモ(合鴨)は野生のマガモとアヒルの交配種である。鴨料理では多くの場合、アイガモが使われている。

 鴨肉は鶏肉に比べてビタミンB1・B2が多く含まれている。B1は鶏肉(若鶏胸肉)が0.07mgに対してアイガモは0.24mg、B2は鶏肉0.09mgに対してアイガモ0.35mg(いずれも生肉100g中)である。また、鴨肉の脂肪は牛肉や豚肉に比べて不飽和脂肪酸の割合が高い。東洋医学では微熱を治め、むくみを解消するとしている。

七面鳥

 英名はターキー(turkey)。わが国では日常的に食べられることはほとんどないが、欧米では、詰め物をしてローストした七面鳥はクリスマスや感謝祭に欠かせない料理である。重さが約5kgと大型の鳥で、雌より雄の方が美味しいとされている。鳥肉類の中では最も脂質が少なく(生肉100g中0.7g)、味は淡白である。食物アレルギーを起こしにくい食材とされている。

火曜日, 12月 20, 2011

色々な魚介類(3)

※しらうお(白魚)

 シラウオ科の小型魚で日本全国の内湾に棲み、1年で全長約10cmの成魚となり、3~5月頃、川を遡って産卵する。肉質のあぶらぴれがあり、頭に”葵の紋様があるとして江戸時代には特別に管理されたという。脂肪が少ないので(生100g中2g)、吸い物、寿司ネタ寿司ネタ、酢の物、茶碗蒸し、卵とじ、唐揚げ、天ぷら、素干しなどに調理される。クセがなく美味で、いずれにしても丸ごと食べるのでカルシウム(同150mg)の補給によい。

 名前の似ているシロウオ(素魚)はハゼ科の魚で、シラウオとは別種。シロウオは全長約5cm、体は半透明で鱗・側線はなく、本州から九州の海岸近くに棲み、春先に川に遡って産卵する。生きている時は半透明で美味だが、死ぬと真っ白に変色して味が落ちる。生きたまま食べる”踊り食い”は福岡市室見川の名物料理になっている。

※あゆ(鮎)

 日本全国の清流に生息する淡水魚。稚魚は川を下って海で冬を越し、春に再び川に遡って成魚(全長20~30cm)となり、秋に産卵する。川底の石についている藍藻類を食べて成長するため、6月頃のものはアユ特有の香気が強くなり美味である。そのため香魚とも呼ばれる。天然のものは年々少なくなり、近年は養殖アユが多く出回っている。

 アユはビタミンAを多く含んでおり、特に養殖アユの内臓に多い。焼いた養殖アユ100g中、身には480ug(天然は120ug)、内臓には6000ug(同2000ug)含まれている。また、魚には珍しく少量ながらビタミンCを含んでおり、こちらは天然アユに多い(焼き100g中、身に2mg、内臓に5mg)。このほか天然・養殖共にカルシウム、鉄、ビタミンE・B12・Dが比較的多く含まれている。

 アユは内臓も一緒に食べられるので、季節感あふれる香りを楽しみながらビタミン・ミネラルの補給ができる初夏の魚である。なお、内蔵や卵巣を塩辛にしたものは「うるか」と呼ばれ、酒の肴として珍重されている。

※たこ(蛸)

 食用とされるマダコ、テナガタコ、イイダコ、ミズダコなどが代表種である。いずれも水分が80%を超えるが、タンパク質は意外に多く、マダコで16.4g、イイダコで14.6g(いずれも生100g中)を含む。脂質、糖質はほとんどない。かつてタコやイカはコレステロールが多い食品として敬遠される嫌いがあったが、タウリンという含有流アミノ酸に脚光が当たったことで、タコもまた健康食材として出番を迎えることとなった。この、”準必須アミノ酸”ともいわれるタウリンには血中コレステロールを減少させる作用があるため、動脈硬化や心筋梗塞の予防につながる。

※おきあみ(沖醤蝦)

 オキアミ科の甲殻類の総称で、大型プランクトンの一種。海生で主として南氷洋に生息し、ヒゲクジラ類の餌となるほか、養殖魚の餌(年間1万数千トンが充てられる)にされてきたオキアミであるが、近年は健康素材として見直されてきている。食用にされるのは全長3mのナンキョクオキアミで、カルシウム360mg、銅が2.3mg、鉄が0.8mg(いずれも生100g中)と多く、リンやカリウムなどにも富む。加えてエビ類には見られないビタミンA(レチノール)が180ugと優れており、ビタミンB1・B2・C、ナイアシンを含むことでも見逃せないものがある。このほか血圧を下げるのに有効なペプチド類も含むので、動脈硬化や心筋梗塞などの予防にもつながる。オキアミは佃煮や塩辛にされるが、乾燥させた干しアミは大根おろしと和え物にしたり、野菜と共にかき揚げにするとかなりの量を摂ることができる。

月曜日, 12月 19, 2011

色々な魚介類(2)

※てんぐさ(天草)

 テングサは紅藻類のテングサ科の総称で、マクサ、オニクサ、オオブサ、キヌクサ、ヒラクサなど多くの種類があるが、一般にはマクサのことをいう。インド洋や大西洋など広く世界に分布している。わが国では黒潮が流れる海域に育ち、春から秋に掛けて採取し、若いものはそのままサラダにして食べられるが、大半は寒天やところてんの原料になる。心太は、テングサの粘質物を煮溶かして冷却して固めたもので、1000年前には既につくられていたとされる。夏の味覚として親しまれ、細く天突きしたものを醤油、酢、辛子などで食べる。

※かます(魳)

 カマス科の海産魚で全長50~60cmにもなるが、市場に出ているのは20cmくらいのものが多い。アオカマスとアカカマスがあり、いずれも本州の中部以南に分布する。アオカマスは水っぽいので”水カマス”ともいわれ、干物として多く出回っている。アカカマスは塩焼きに適しており、秋から冬にかけてが旬である。アカカマスといっても皮が赤いわけではなく、多少赤みを帯びた白身魚である。味は淡白ではあるが美味で、乳幼児や病人、高齢者などに喜ばれる食材である。白身魚にしてはカルシウムが多い。骨は硬いが取りやすいので、身をほぐして病人食や離乳食などにも適している。

※たちうお(太刀魚)

 タチウオ科の海産魚で、銀白色で刀の太刀のように見えるのでこの名がある。また”立ち魚”に通じ、早朝や夕方、海上に浮いて頭を上にして立ち泳ぎすることでも知られている。全長約1.5m、体は平たくて細長く、背びれが尾部まで続き、鱗がない。本州中部以南の暖海に分布し、夏に浅海で産卵する。体表の銀粉は模造真珠の材料に利用されている。

 タチウオは白身でほどよい脂があり、関西地方で好まれるが、近年は関東でも切り身で出回っている。脂質が多い(生100g中20.9g)割りにさっぱりしているので、子供から高齢者まで調理の仕方で摂りやすい食材といえよう。シーズンは夏から秋であるが、塩焼き、味噌漬け、立田揚げのほか、ムニエルにしてレモンを添えると洋風の一品になる。ビタミンB1・B2・D、亜鉛や銅などのミネラルもほどよく含むので活力を補うのに役立ち、口内炎・味覚障害・前立腺肥大・骨粗しょう症にも効果がある。

土曜日, 12月 17, 2011

色々な魚介類(1)

わかめ(若布)

 若布は褐藻類のチガイソ科に属する海藻で、日本のいたる所で採れるが、なかでもナルトワカメが有名である。ワカメは幼いものの方が味がよいといわれ、地方によっては新芽を干した板ワカメを炭火であぶって食べるところもある。ワカメはミネラル類を豊富に含んでいる。素干し100g中にカルシウムが780mg、リン350mg、鉄2.6mgとバランスがよい。反面、タンパク質や脂肪は少ないので、ミネラル補給の美容食として人気がある。最近は味噌汁の具や酢の物だけでなく、サラダにも取り入れられるなど料理法も多様になってきている。

のり(海苔)

 一般にノリと呼んでいるが正確にはアマノリ(甘海苔)で、紅藻類ウシケノリ科アマノリ属の総称である。アサクサノリ、スサビノリ、ウップルイノリ、マルバアマノリなどの種類がある。わが国で最も食べられているのはアサクサノリだが、最近は天然のものは姿を消し、ほとんどが養殖か韓国からの輸入物である。

 アマノリの栄養成分の特徴は、他の海藻類に比べてビタミン類が多いことである。特にビタミンB12は、干しノリ100g中77.6ugと豊富である。ビタミンB12は造血に関係するビタミンでレバーや肉類や動物性食品に多く含まれているが、これらの食品が苦手な人はノリを多めに摂ることを心掛けるといいだろう。このほかビタミンCが100g中160mgと海藻中トップで、これはレモン(同100mg)を遥かに凌ぐ数値である。アマノリは韓国や中国はもとより、北ヨーロッパ、スコットランド、カナダなどでも産し、ことは青野菜が不足する極北地近くではビタミン供給源として盛んに利用されている。

※青のり

 青ノリは緑藻類のアオサ科アオノリ属の総称で、青苔、阿乎乃利などの字も宛てる。日本各地の沿岸に分布し、やや深い所の岩の上や、他の海藻に付着して育つ。スジアオノリ、ヒラアオノリ、ボウアオノリ、ウスバアオノリなどの種類がある。寒い時期のものが良質で12~2月頃までが旬。栄養成分はミネラルが多く、ことにカルシウムは素干し100g中720mgで、アマノリの5倍以上含む。リンの含有量が380mgなのでバランスもよい。青ノリは炙ると芳香があるところから、菓子やお好み焼き、焼きソバをはじめ用途も多様である。

金曜日, 12月 16, 2011

その他のキノコ類

※ホンシメジ

 キシメジ科のシメジ属の食用キノコで、学名はLyophyllum shimeji。ダイコクシメジ、ギンシメジ、ネズなどの別名がある。昔は天然ものが多く出回っていたが、最近はほとんど見かけなくなった。今日”ホンシメジ”として市場に出ているのはブナシメジやヒラタケがほとんどである。ブナシメジはキシメジ科シロタモギタケ属、ヒラタケはヒラタケ科のキノコでそれぞれ異なる種類である。

 ホンシメジは赤松の混ざった雑木林などに5~10本が束生したり、ときに輪を描いて群生する。傘ははじめは半球体だが、やがて丸山形を経て扁平に開くと直径10cmくらいになる。柄は12~13cmにもなって根元が太く、肉は白く緻密で”匂いマツタケ、味シメジ”といわれる通り美味である。味のよさの秘密は、旨味成分となるアミノ酸の含有量による。グルタミン酸やアスパラギン酸が非常に多く含まれ、日本人に不足しやすいリジンも多い。アミノ酸以外ではナイアシンが豊富なのも特徴で、強い日差しに当たると湿疹ができる太陽アレルギーの人はナイアシン不足の可能性があるので好適な食材といえる。ビタミンB2も多く、100g中0.5mgと生シイタケの2.6倍に達する。B2は脂肪の代謝を浴するので肥満を防ぐ、湿疹や吹き出物にも有効である。

※なめこ(滑子)

 モエギダケ科の食用キノコで、学名はPholiota nameko。晩秋、広葉樹の中でも主にブナの倒木や枯れ幹、切り株などに群生する。柄は根元で数本が癒合し、傘ははじめ半球体だが、やがて丸山形を経て扁平へと転じ、直径は最大10cmにもなる。淡い黄褐色で粘性が強い。シイタケと並び栽培キノコの代表格で、市販品のほとんどは小さな半球形の人工栽培品である。特有のぬめりはペクチン質(多糖類)で動脈硬化を防ぐとされている。タンパク質、ビタミンB1・B2、カリウム、リンの含有量が比較的多い。国立がんセンターの熱水抽出物による抗腫瘍活性試験(池川哲郎、1968年)では、マツタケに次いで86.5%という高い阻止率を示した。

※マッシュルーム

 ハラタケ科の食用キノコで、学名はAgaricus bisporus。ツクリタケ、セイヨウマツタケ、シャンピニオン(仏名)ともいう。世界各地で栽培されており、白色種、クリーム種、ブラウン種などがある。一般には白色種とブラウン種が出回っている。タンパク質の含有量が多く100g中2.9g、また、ビタミンB1・0.06mg、B2・0.29mg、ナイアシン3mgと多く、ことにB2は5~6個で1日の必要量の1/8を満たし、口内炎・口角炎・肌荒れ・指先のささくれ・フケなどの予防に役立つ。缶詰より生のほうがもちろん食効がある。このほかマッシュルームには消臭作用のあることが認められており、そのエキスは消臭素材として利用されている。

 マッシュルームの旨味は他のキノコと異なり、グルタミン酸のほか必須アミノ酸が多いためで、生でも食べられるキノコとしてサラダなどに適している。切り口がすぐ変色するが酢水に浸せば防げる。

※ひらたけ(平茸)

 ヒラタケ科の食用キノコで、学名はPleurotus ostreatus。オイスターマッシュルーム、アワビタケとも呼ばれている。温帯地域に分布し、秋に広葉樹の枯れ木や切り株に重なり合って生える。ホンシメジに似ているところからシメジの名で売られることもある。ヒラタケはホンシメジよりもタンパク質が多く、100g中3.3g含む。又ビタミンB1・B2共に0.4mg、ナイアシンが10.7mgとキノコ類ではトップクラスである。そのほかカリウム340mgを含んでいる。ビタミンB1が不足すると脚気・多発性神経炎・便秘・むくみ・心臓肥大などを招く。またB2の欠乏は口内炎・口角炎・角膜炎などのほか生長にも悪影響を及ぼす。ナイアシンはペラグラ・口舌炎・胃腸病・皮膚炎などに関与する。

木曜日, 12月 15, 2011

色々な野菜類(8)

※みつば

 セリ科の多年草で、東アジアの湿地などに自生している。日本では江戸時代から野菜として栽培するようになった。現在は、促成栽培された切りミツバ、水栽培で葉柄10~15cmで収穫する糸ミツバ、畑で栽培して根付きのまま出荷される根ミツバの3種類がある。ビタミン、ミネラルは糸ミツバと根ミツバの方が多いが、カリウムだけは根ミツバが一番である。カロテンは糸ミツバで3200ug(100g中)と豊富だ。

 ミツバは香りを賞味するのが種で大量には食べない野菜なので、それ自体の栄養価を問題にするよりは、ミツバを添えて美味しく食べることに注意を向けるべきであろう。従って食効の第一は香りと色が誘う食欲増進効果で、茶わん蒸しや卵とじには欠かせないし、病後の味気ないお粥もミツバを加えるだけで素晴らしい料理に一変する。そのほか頭をスッキリさせ神経の興奮を鎮めて安眠を誘うほか、健脳効果もあるといわれている。

パセリ

 セリ科の二年草で地中海沿岸が原産。和名はオランダセリ。明治初期にわが国に渡来した当時は特殊な西洋野菜として扱われ、以来、洋食の飾り物として使い捨てられてしまう傾向が続いたことは、パセリの持つ栄養成分からみて誠に残念といわざるを得ない。

 欧米では古くから、あの特有の香りと鮮明な緑色が”食を進める”働きを持つとして尊重されてきたハーブであるが、事実、ビタミンが豊富で、とりわけカロテンは100g中7400ugと他の野菜よりも飛び抜けて多く、ビタミンCの120mgも野菜・果物中のトップクラスである。また、鉄は7.5mgと小松菜の2.5倍含まれ、極めて優れた緑黄色野菜なのである。もちろん他の野菜のように大量に食べられるものではないが、さまざまな料理に付け合せることで毎日少しずつでも摂れば貧血の改善、血中コレステロール値の低下などにも効用が期待できる。食効としてはアピオールという精油成分が腸内の有害細菌の繁殖を抑えるほか、食中毒の防止・口臭防止、食欲増進効果がある。

※せり(芹)

 日本原産で1000年以上前から栽培されてきたセリ科の野菜。春の七草の筆頭に数えられる香り高い野草でもある。初春から初夏までが旬で、野ゼリや田ゼリなどの名で店頭を賑わす。また近年は、栽培した背丈の高い水ゼリも食卓を彩るようになった。

 特有の香りはミリスチン、カンフェンなどの精油成分によるもので、発汗・解熱作用があり、病後の内熱(体温は平熱でも内臓諸器官が熱っぽい状態にあること)を取るのに有効だとされる。また健胃効果もあり、その香りにあずかって食欲が増進する。ほかに血圧を下げ、血の道を通し、酒毒を消し、黄疸にも効用があるとされている。これには茹でたものを食べてもよいが、新鮮なセリをすり鉢で擂り潰し、水を加えて裏漉しした汁をひと煮立ちさせて飲む。また、陰干ししたものを煎じるのもよい。

水曜日, 12月 14, 2011

色々な野菜類(7)

モロヘイヤ

 中近東やアフリカを主産地とするシナノキ科の一年草で、エジプトでは古くから幼茎や葉を摘んで食用とされてきた。モロヘイヤはエジプト名である。

 日本でも近年、健康野菜の見直し気運の中で注目を集め、沖縄県などで栽培されるようになった。多少ヌメリがあってわずかにほろ苦さがあるが、若い芽は柔らかくクセのがないので生葉のままでも食べられるし、お浸し、和え物、サラダ、酢の物にも合い、味噌汁の具やスープにもよい。さらに天ぷらにしても美味しいばかりか、人参を上回るカロテンを効率よく摂るには油を使った調理が最善である。

 その栄養価を見ると、可食部100g中(カッコ内は人参の場合)、カルシウム260mg(28mg)、リン110mg(25mg)、鉄1mg(0.2mg)、カリウム530mg(280mg)、カロテン10000ug(9100ug)、ビタミンB1・0.18mg(0.05mg)、B2・0.42mg(0.04mg)、C65mg(4mg)と、いずれも野菜類ではトップクラスの圧倒的な数字が並んでいる。

※エシャロット

 ユリ科の二年草で、ラッキョウに近縁の西洋野菜。鱗茎をおろしたり刻んで香味料として使われる。エシャロットは仏名。

 わが国で酒のつまみとして生食されるエシャロットはラッキョウを土寄せして葉鞘部まで軟白にして若採りしたもの。エシェレット、エシャラッキョウ、エシャなどとも称して出回っている。ラッキョウのように漬け物にはせず、鱗茎と葉鞘の軟白部を味噌につけて食べたり、細かく刻んで、洋風料理にも用いられる。エシャロットは疲労回復、抗炎症作用、風邪の予防などによい。なお、同じくエシャロットと呼ばれる小型の分球性タマネギがあって混同されやすいが、これはラッキョウのエシャロットとは別物である。

※みょうが(茗荷)

 日本原産のショウガ科の多年草。夏秋に根茎から花穂を出し淡黄色の花が咲く。花穂と若い茎を食用にするが、我が国以外では食習慣のない野菜である。栄養的には特筆すべきものはないが、独特の香りとシャキシャキとした歯ざわりが食欲増進につながる。昔から不眠症や生理不順に効くとされ、また抗菌作用があるので口内炎や風邪などにもよいといわれている。

 夏場は素麺などの薬味にしたり、削り節と和えて酒の肴の一品にしたり、卵とじや味噌田楽、天ぷらなど調理法がいろいろあり、捨てがたい季節の食材である。ミョウガの葉は、と同じく腐敗を防ぐ目的で、おにぎりなどを包むのに利用されてきた。

火曜日, 12月 13, 2011

色々な野菜類(6)

※菜花

 アブラナ科の一、二年草で、ナタネ、ナノハナ、ナタネナの別名がある。春に黄色の小花を房状につけ、2~3月ごろには九州や房総半島など温暖な土地で栽培したものが出回る。食用には黄色い花が蕾のものがよく、葉も茎も柔らかくクセがない。さっと茹でてお浸しや辛し和えにするほか、軽い塩漬けなども美味である。春らしい色彩から、ひな祭りの頃にはうってつけの一品になる。種子からは菜種油を採り、油かすは肥料になる。

 菜花の栄養価は高く、ホウレン草に比べてカロテンこそ約半分(100g中2200ug)だが、カルシウムは3倍、ビタミンCは生では4倍近くにもなる。そのほかビタミンB1、B2、ナイアシンなどをバランスよく含み、食物繊維も豊富だ。浅漬けや和え物は栄養素を失わずに食膳を飾るので積極的に食べるようにしたい食材である。若々しい肌を保ち、ストレス・自律神経失調症・便秘・風邪の予防などに有効である。

※かぶ(蕪)

 アブラナ科の一、二年草で、白菜やツケナ類と同種である。日本最古の野菜の一つとされ、春の七草のスズナとしても知られている。食用の主体は白い根部分であるが、アクが少ないので一夜漬けや糠漬けにすれば、ビタミンC(生100g中19mg)も増加する(皮むき塩漬けで21mg、皮つき糠漬けで28mg)。デンプン類の消化を助けるジアスターゼやアミラーゼなどの酵素が含まれているので、カブのおろし汁は食べ過ぎや胸やけ、胃炎などに効く。また胃腸を温める効用があり、この場合はみぞれ煮や粕煮など熱を加えた調理法が適している。このほか咳を鎮め、声がれを治すともいわれている。

人参

 セリ科の一、二年草で、緑黄色野菜の代表である。人参の赤い色素カロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚の細胞を強くし粘膜を丈夫にして病気への抵抗力をつける。また夜盲症や口角炎を防ぐ働きがあることもよく知られている。人参のカロテン量は生100g中に9100ug(760ugRE)と、ホウレン草の2倍以上である。ただビタミンB1は0.05mg、Cは4mgというよにそれほど大きい数字ではないので、無理に生ジュースなどの形で摂ることにこだわる必要はない。

 カロテンは脂溶性で熱に強いので、適量の油を使って食べやすいように調理して十分な量を摂るようにしたい。ニンジンには補血効果があり、貧血を改善し冷え性や低血圧を治すと共に、疲労回復、体力づくりにも有効である。また最近の研究では肺ガンや膵臓ガンなど、悪性腫瘍を抑制する効能のあることが報告されており、これは人参に含まれるβ-カロテンの働きによると考えられている。

月曜日, 12月 12, 2011

色々な野菜類(5)

※ズッキーニ

 ウリ科つる性一年草で、外観はキュウリに似ているがカボチャ(ペポカボチャ)の仲間である。キュウリよりも一回り大きく、皮には光沢があり、濃緑色のものと黄色のものがある。カボチャは塾果を食べるが、ズッキーニは実をつけて3~4日で収穫した未熟果を食べる。ヨーロッパ、特に南フランスからイタリアにかけて普及し、その後アメリカにも広まった。

 栄養的にはカロチンとビタミンCが豊富で、糖質が少なく(100g中2.8g)、カロリーは低い(14kcal)。ズッキーニは生食は不向きで、熱を加えて調理するのが基本。歯ごたえ、味ともにナスに似ている。南フランス料理やイタリア料理に欠かせない野菜で、スライスしてバターで炒めて食べたり、油で炒めてから煮物の材料とする。中をくり抜いて詰め物にしても良い。最近は、花ごと採取した花ズッキーニも料理素材として注目されている。花の中にキノコやトマト、鶏肉、魚介類などを詰めて蒸し、バターソースをかけて食べる。

※さやいんげん(莢隠元)

 マメ科インゲン属の一品種で、未成熟の若いインゲンを莢ごと食べることからサヤインゲンという。丸莢のドジョウインゲン、細莢のサーベルインゲン、平莢のモロッコインゲンなどがある。

 サヤインゲンの栄養成分はバランスよく、乾燥種に欠けているビタミンCのほか、カロテンも多い(100g中590ug)。カロテンは油を使うと吸収がよくなるので天ぷらや炒め物などにするとよい。視力回復や皮膚のかさつきを改善する効果もある。また莢の部分にはインスリンの産生に関与する亜鉛を多く含むので、糖尿病によいといわれる。

※グリーンピース

 エンドウ豆の野菜種で、4~5月ごろ、未熟の内に収穫される。缶詰冷凍品で一年中手に入るが、生のものは春から初夏にしか市場に出ない。莢から出して生の実と炊き込んだ豆ご飯は、春を感じさせる旬のご馳走のひとつである。

 グリーンピースは発芽途上を収穫するのでタンパク質や糖質、ビタミンB群をはじめ、ビタミンCやカロテン、葉緑素などが豊富に含まれている。ビタミンB群はB1・B2・B6・ビオチン、コリンを多く含み、体の代謝を円滑にし疲労物質を分解するのに役立っている。カロテンも100g420ugとかなり多いので、貧血・冷え性・便秘・肌荒れなどに効果的である。食物繊維も100g中7.7gと、枝豆の5gを上回っている。

土曜日, 12月 10, 2011

色々な野菜類(4)

※スプラウト

 植物の新芽を英語でスプラウトというが、最近、各種野菜の新芽が健康野菜としてスーパーの店頭に並びだした。ブロッコリーやマスタードなどの新芽があり、目新しさも手伝ってちょっとしたブームにもなっている。

 スプラウトの人気の発端は、米国のジョンズ・ポプキンズ大学の研究者らがブロッコリーの新芽に優れた抗ガン作用があると発表したことによる。発芽3日目の新芽には、成長したブロッコリーの20~50倍のサルフォラフェインという抗ガン成分があるという。また、スプラウト類は全般に植物性タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維に富み、ローファット・ノンコレステロールというのが健康志向の強い米国人に受けたようだ。

 スプラウト野菜はブロッコリーのほか、小豆や蕎麦クローバー、レンズ豆、ラディッシュ、ヒマワリ、レッドキャベツ、マスタード、クレス、小麦など種類が多彩だ。サンドイッチの具やサラダ、スープの材料など食べ方の自由度も高い。過程でも栽培できるようにスプラウトの栽培キットも販売されている。

※トマピー

 トマピーは、トマトに似た扁平な形をした新種のパプリカで、鮮やかな濃い赤色をし、肉厚で甘味があり、ピーマンのように苦味や臭みがないために食べやすい野菜である。

 栄養面では特にビタミンCとカロテンに富む。100g中にビタミンCが200mg含まれ、同じ仲間の青ピーマンの2.6倍、赤ピーマンと比べても1.2倍ある。カロテンは100g中1900ugで、青ピーマンの4.8倍、赤ピーマンの1.7倍になる。このほかクセがないのでサラダなど生で食べても美味しい。油との相性もよく、天ぷらやスープ類、ピザなどにもよい。トマピーに含まれるカプサイシンに発ガンプロモータ活性抑制作用のあることが第56回日本癌学会総会(1997年)で発表されている。

※ししとう(獅子唐)

 ナス科トウガラシの甘味種でピーマンと同系種。南米が原産。栽培には温度を要するが、流通の発達で初夏から秋頃まで出回っている。ビタミン類を多く含み、とりわけカロテンは青と黄のピーマンを上回る。油で炒めるとカロテンが生きるが、この時あまり加熱し過ぎると栄養価も色も風味も損なってしまうので注意したい。天ぷらにしてさっと揚げると彩りも美しく食欲も増す。

 食物繊維もピーマンより多い。またカリウムも多く含むので塩分過多による高血圧の予防にもなる。シシトウを選ぶときは緑が濃く、細く小さめのものがよい。つやがあり、匂いの強いほうが良質である。

金曜日, 12月 09, 2011

色々な野菜類(3)

※つるな(蔓菜)

 わが国の太平洋岸の砂地に自生しており、レタスやサラダ菜と同じくチシャの仲間であることから浜ヂシャの呼び名もある。レタスはキク科だが、ツルナはツルナ属に属する多肉質の葉を持つつる性植物である。日本ではあまり食用にされなかったが、世界各国、特に欧米では好まれ、広く栽培されている。

※にら(韮)

 ニラはネギやニンニクと同じユリ科の植物で、この仲間のように強い臭気を持ったものは葷菜と呼ばれ、いずれもその精力増強効果が尊ばれてきた。古事記に記載のあるほど、中国からの渡来は古いが、当時は薬草として扱われていたようでミラ、コミラなどと呼ばれた。その後、いかにもスタミナがつく強精野菜らしく起陽草という別名を与えられている。

 ビタミンA・B群を多く含むが、特徴的なのは臭気成分のアリシンで、この物質には抗菌性と共にビタミンB1の腸内での吸収利用率を高める働きがある。また、体内に吸収されて自律神経を刺激しエネルギー代謝を高め、内蔵を温めて消化を促進する作用がある。そのため冷え性の人は体が温まってくる。

 ニラの種子を乾燥したものを漢方薬では韮子といい、強壮・強精のほか、頻尿・下痢などに用い、根と鱗茎は韮菜と呼んで胃炎・鼻血はもとより、解毒などにも処方している。

※こごみ(屈)

 シダ科の植物でクサソテツともいう。東北地方で雪解けと共に収穫される代表的な山菜。本州から九州まで分布し、木漏れ日の当たる山地などでも自生しているものをよく見かける。ソテツに似た姿で4~5月に根株からワラビのような新葉が伸び、その葉が巻き込んだ形の柔らかいものを収穫する。

 ワラビよりやわらかくクセが少ないので食べやすい。お浸しやゴマ和え、天ぷらなどが一般的である。カロテン、ビタミンB群・C・Kなどのほか、ミネラルもたっぷり含んでいる。カロテン(100gあたり1200ug)は赤ピーマンなみで、ビタミンCの抗酸化活性を守り、皮膚粘膜の再生と維持に役立つ。また消化器や呼吸器の感染症への抵抗力を高めるなどの効用がある。加えて食物繊維がワラビよりも多く、便秘の改善なども期待できる。

水曜日, 12月 07, 2011

色々な野菜類(2)

○おかひじき(尾鹿尾菜)

 シベリア、中国、日本のを原産地とするアカザ科の一年草で、わが国では各地の海岸の砂地に自生しており古くから食用にされてきた。明治以降、目新しい野菜が紹介されるにつれて市場を追われるようになったが、近年、健康野菜として見直されて復活した。

 海藻のヒジキを緑色にしたような姿をしている。若い茎葉を熱湯で4~5分間茹でて、お浸し、辛し和え、酢味噌などで食べるが、シャキッとして歯ざわりが好まれている。カロテンが多いので、油で効率よい活用が期待できる天ぷら料理にも適している。

 栄養的には生100gにつきカロテン3300ug(280ugRE)とホウレン草なみに高いのが特徴で、カルシウムは約3倍の150mgも含む。ビタミンB類は少ないが、Cは21mgと枝豆なみにある。これらの成分と葉緑素の相乗効果で皮膚が丈夫になって風邪をひきにくくなるほか、ビタミンAの働きで気管や胃腸の粘膜の上皮組織に抵抗力がつき、ガンの発生を抑えることが期待できる。

※エンサイ

 ヒルガオ科の一年生つる性草木で、中国名は蕹菜(ヨウサイ)、空芯菜。花がアサガオに似ているので朝顔菜という別名もある。東南アジアでは水生野菜として広く栽培されており、茎葉が広東料理などに使われている。最近はわが国でも栽培されるようになり、6~9月にはスーパーなどにも並んでいる。

 空芯菜という名が示すように、茎は中空で水に浮く。アクのない若い茎葉は味が淡白なので煮物、お浸し、油炒め、汁の実などに使われる。栄養的にはカロテンが特に多く、生100g中に4300ug(360ugRE)含まれている。またビタミンB1や鉄も多い。夏場の健康維持に活躍が期待される新顔の野菜である。

※春菊

 キク科の一年草でヨーロッパの地中海沿岸が原産地であるが、欧米人は食べる習慣を持たず、もっぱら東洋人の食材となっている。日本へは中国を経由して戦国時代に伝来したとも、また江戸初期に招来されたともいわれ、特に西日本を中心に菊菜の名で親しまれてきた。

 特有の香りを好まない人もいるが、日本の緑黄色野菜としてはホウレン草、小松菜と並ぶ代表格で、栄養的にもカロテンが4500ug(380ugRE)もあり、ホウレン草の4200ugを凌いでいる。カロテンは脂溶性なので、茹でたり加熱しても失われることが少ない点も見逃せない。カルシウム120mgという数字は牛乳110mgを上回る数字である。造血に必要な鉄分も1.7mgとホウレン草なみである。

 春菊は料理法次第で100gなど簡単に食べられるから、他の成分も考え合わせるとミネラルの補給源として好適であるというる。天ぷらにして油と共に摂るとカロテンの吸収がよく、特有のクセも気にならなくなる。春菊の濃い緑色は豊富なクロロフィル(葉緑素)のためであるが、クロロフィルには血中コレステロールを下げる働きがある。

※エンダイブ

 キク科キクニガナ属の一、二年草で、同属のチコリと野菜のキクニガナの交配でできたとされ、菊チシャ、苦チシャともいう。エンダイブは英名で、仏名はシコレだが、チコリと混同されやすいためフランスではエスカロールと呼ばれることも多い。日本で普通見られるのは葉に切れ込みの多いものだが、広葉のもの(スカロール)もある。

 春播き、秋播きがあり、いずれね歯切れがよく少し苦味があってサラダに適する。サニーレタスに近い栄養素を含み、カロテンは100g中1700ug(140ugRE)とサラダ菜には及ばないが、亜鉛は0.4mgとサラダ菜の2倍含み、食物繊維も多い。便秘を防ぎ、新陳代謝を盛んにして高血圧の予防に有効である。ドレッシングなど油と共に食べることでビタミンAの吸収を良くし、さっと炒めると量的にも多く摂取することができる。

火曜日, 12月 06, 2011

色々な野菜類(1)

※からしな(芥子菜)

 アブラナ科の一年草。葉カラシナ類、タカナ(高菜)類、茎タカナ類、根ガラシ類など多種類ある。この内、葉が食用とされるのは葉カラシナとタカナ類で漬け物にして食べられることが多い。葉タカナの肥大した茎を漬け物にしたのが、中国料理で使われる搾菜(ザーサイ)である。

 カラシナやタカナには葉カラシナ、山潮、大葉タカナ、カツオ菜などがあるが、いずれも特有の辛味がある。この辛味成分はシニグリンという配糖体である。栄養成分としてはカロテン、ビタミンC、鉄分を多く含む。

 カラシナ、タカナの漬け物はチャーハンやラーメンに入れても美味い。ピリッとした辛味が食欲をそそぎ、暑い夏の季節の一品として最適である。

※なずな(薺)

 アブラナ科の越年草で、道端や土手など日当たりのよい場所に生えている。果実が三味線の撥に似ているのでバチグサやペンペン草ともいわれる。春の七草の一つで七草粥の材料になる。お浸しや和え物にして食べる。カロテンの含有量が多く、100g中5200ug(430ugRE)と野菜類の中でも特に多い。また、ビタミンC(110mg)はレモン以上であり、ビタミンK(330ug)や葉酸(180ug)も多い。ミネラル類ではカルシウムが多く含まれる。

※ルッコラ

 ヨーロッパの地中海沿岸地方を中心に分布するアブラナ科の一年草。ルッコラは伊名、英名はロケット、和名はキバナスズシロという。繁殖力が旺盛なためアジアやアメリカなどで帰化植物になっている。ギリシャ時代には腎臓病や消化器疾患の治療に使われたという記録もある。

 大根のようなロゼット状の根生葉が広がり、開花期が近づくと茎を伸ばして草丈50cm~1mくらいになる。夏に咲く花は淡黄色または白色で紫の筋があり、大根や菜の花によく似ている。

 葉にはゴマとコショウをミックスさせたような独特の香りと辛味、苦味があり、若い葉を摘んでサラダなどに使う。ロケットサラダなどともいわれ、最近わが国でも食べられるようになった。花も生食でき、種はマスタードの代用になる。

※つるむらさき

 ツルムラサキ科のつる性一年草で、別名バセラ、フジナ、オチアオイ。かつては観葉植物として赤紫色の葉や茎を楽しんだが、近年、その栄養価が見直され食用として家庭菜園などで手軽に栽培されるようになった。もともと東南アジアの特に暑い国では古くから健康野菜として食べられていたようである。旬は夏。蔓が巻きついて1~5mにも伸びるが、蔓先から15cmくらいまでの茎と若葉が好んで食されれる。

 色の濃い葉が栄養素の宝庫で、花や実も天ぷらやサラダに適している。味はやや埃くさい感じだが、ホウレン草のようなアクはなく、茹でてゴマやカラシで和えると埃くささも気にならない。葉の栄養成分はカルシウム150mg、カリウム210mg、カロテン300ug(250ugRE)、ビタミンC41mg(いずれも100g中)などだが、ほかにリン、ナトリウム、鉄、亜鉛などのミネラルを含む。カルシウムが多いので骨折や虫歯予防のほか、神経を鎮めて蕁麻疹などにも効く。

月曜日, 12月 05, 2011

DHA

DHA

 ドコサヘキサエン酸。炭素数22個、二重結合6ヵ所のn-3系不飽和脂肪酸。融点はマイナス78℃。イワシやタラ、ニシンなどの魚油に多く含まれる。ヒトでは脳細胞の尖端のニューロンという神経突起に多く分布しており、情報伝達や記憶の保持に関与している。そのため”頭のよくなる脂肪酸”として話題になった。

 DHAはEPAと同様、血液中の中性脂肪やコレステロール濃度の低下作用、血小板凝集能の抑制作用などが認められている。特に血液の凝集を抑制して虚血性心疾患を予防し、、動脈硬化の原因となるLDLコレステロールが血管に付着するのを防ぐ働きがEPAよりも強い。健康食品素材としても広く使われており、(財)日本健康栄養食品協会による「ドコサヘキサエン酸(DHA)含有生成魚油加工食品規格基準」(1986年8月公示、96年6月一部改正)がある。

土曜日, 12月 03, 2011

EPA

EPA

 かつてはエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)と呼ばれていたが、近年、イコサペンタエン酸に改められた。ただし略称のEPAはそのまま使われている。炭素数20個、二重結合5ヵ所のn-3系不飽和脂肪酸で、融点はマイナス54℃。イワシやタラなどの魚油に多く含まれる。血液中の中性脂肪やコレステロール濃度の低下作用、血小板凝集能の抑制作用等が認められている。

 EPAが注目されるようになったのは、1970年代にデンマーク・オールボア病院のダイアベルグがイヌイット(エスキモー人)を対象に行った疫学的調査の結果によってである。それによると、魚やアザラシを主食とするイヌイットは肉食中心にデンマーク人に比べて動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病が大幅に少なかった。例えばデンマーク人の死亡原因が心筋梗塞だけで40%以上も占められているのに、イヌイットは発症率が高い60歳以上だけを対象にしても3.6%でしかなかった。その原因がイヌイットの食生活にあると考えて研究の結果、魚魚肉に含まれるEPAの有効作用にあるとわかったのである。

 最近の研究では、横山光宏(神戸大学)日本人約2万人を対象にした大規模臨床試験(5年間の追跡調査)で、EPA薬の摂取により心臓病のリスクが19%減少したという試験結果を発表している(2005年、米国心臓協会学術集会)。EPAは健康食品素材としても広く使われており、(財)日本健康栄養食品協会による「イコサペンタエン酸(EPA)含有精製魚油加工食品規格基準」(1986年6月一部改正)がある。日本水産は中性脂肪が気になる人向けの飲料としてEPAとDHAを関与成分として初のトクホ「イマーク」を販売している。

木曜日, 12月 01, 2011

魚介タンパク質

○魚介タンパク質

 魚介肉の筋肉(食用部位)には15~25%程度のタンパク質が含まれている。乳タンパク質に匹敵する高い消化吸収率が特徴で、アミノ酸スコアも魚類ではほとんどが100である。アミノ酸組成はグルタミン酸、アスパラギン酸、リジンなどが多い。魚介タンパク質には、筋原繊維タンパク質のミオシン、アクチン、トロポニン、トロポミオシン、筋形質タンパク質のミオグロビン、筋基質タンパク質のコラーゲンなどがある。このほか、魚類の白子の精子核内に存在する塩基性タンパク質のプロタミンなどがある。

※プロタミン

 塩基性の単純タンパク質で、アルギニンを多く含み、魚類の白子の精子核内で核酸と結合している。プロタミンはトリプシン(タンパク質分解酵素)の作用を受けて分解される前に、食品由来の油滴と結合し、リパーゼによる脂肪分解を阻止して脂肪の腸管吸収を低下させる作用がある。また、プロタミンから生じたアルギニンは血管内皮細胞にあるNO(酸化窒素)合成酵素の基質になり、NOを産生して血管を拡張し抹消循環を改善する。魚類プロタミン配合の健康食品がある。

火曜日, 11月 29, 2011

色々なハーブ(3)

※レモングラス

 イネ科オガルカヤ属の多年草で、学名はCymbopogon citratus。原産地はインド。レモンのような香りがあり、タイの伝統的スープであるトムヤムクンに欠かせないハーブとして知られている。葉や茎から抽出される精油にはレモンと同じ芳香成分シトラールが含まれ、レモン系食品の香料に利用される。レモングラスティーは貧血や消化不良によいといわれている。

 最近の研究では京都大学農学部の大東肇らによって、レモングラスは消化器系ガンを引き起こす細菌に対して殺傷能力の高いことが確認されている(2000年)。精油には鎮静作用や血行改善、抗炎症作用があり、アロマテラピーではストレスからくる諸症状の改善や筋肉痛の緩和などに用いられる。

バレリアン

 オミナエシ科カノコソウ属の多年草で、学名はValeriana offcinalis。原産地はヨーロッパと西アジア。和名はセイヨウカノコソウ。ハーバリストが昔から緊張状態をやわらげるために使用してきたハーブで、近年、その作用に新たな注目が集まっている。バレリアンの薬理作用についてはヨーロッパで1980年代から数多くの臨床試験が実施され、鎮静効果や催眠効果が確認されている。

 睡眠薬として利用する場合は、就寝2時間前までに400~900mgのバレリアン抽出物を経口摂取すると効果的である。また、鎮静作用のあるレモンバームと組み合わせると相乗効果を期待できる。生理痛や月経前症候群、筋肉痛にもよいとされている。副作用や依存症はないが、大量摂取すると頭痛・吐き気・不整脈などを生じることがある。ドイツでは医薬品として使用されている。

月曜日, 11月 28, 2011

色々なハーブ(2)

セージ

 シソ科アキギリ属の常緑性低木で、学名はSalvia offcinalis。ヨーロッパ南部と北アフリカが原産。別名サルビア。開花前の若葉を摘み、乾燥させて使う。セージのある庭に行くものは死なないという格言があるほど、古くから万能の薬草として用いられ、ヨーロッパでは乾燥葉が薬局方に記載されてきた。発汗抑制・利尿・消毒殺菌・収斂・血行促進・疲労回復などの作用が知られている。現在もハーバリストが発汗防止に使用さている。特有の香りや苦味、辛味が食欲を刺激するので、消化不良や食欲不振にもよい。また、煎じたものは口内炎歯肉炎のうがい薬として使われる。リラックス効果があるので、疲れたときのハーブティーとしても良い。

 食材としてソーセージ作りに欠かせないハーブである。肉料理の臭み消しとしても広く使われ、ラムや七面鳥、鴨、レバー料理に使われる。

※キャットニップ

 ユーラシア原産のシソ科イヌハッカの多年草で、学名はNepeta cataria。和名はイヌハッカ。猫を興奮させるハーブとして有名だが、人に対しては鎮静作用を持つ。ヨーロッパでは古くから病気の治療に使われてきたハーブで、不眠や頭痛、下痢、腹痛などに効果がある。葉はミントに似た香りで、乾燥葉と花の先端部を用いたハーブティーはリラックス効果をもたらす。発汗作用があり、体を暖めてくれるので入浴剤にも使われている。葉をタバコのようにすうと多幸症を引き起こすことが知られている。

※ヒソップ

 シソ科ヤナギハッカ属の多年草で、学名はHysspous offcinalis。地中海と西アジアが原産。和名はヤナギハッカ。ハッカに似た香りがあり、旧約聖書には清めのハーブとして登場している。食用や薬用としてだけでなく、その芳香を生かして病室や台所の床に撒いて消臭剤としても使われたという。

 肉や魚など脂肪分の多い料理やスープ、シチューなどの香り付けによく使われるハーブで、香草系の代表的なリキュール「ベネディクティン」の材料の一つでもある。鎮痙作用や抗菌作用があり、風邪や咳、鼻づまりにはドライハーブをお湯に混ぜて飲むと症状を緩和してくれる。うがい薬や外用薬として利用できる。

※ラベンダー

 地中海沿岸のシソ科ラバンデュラ属の常緑小低木で、学名はLavandula angustifolia。ラベンダーはラテン語のlavara(洗う)を意味し、古代ローマ人は公共浴場に入れて香りを楽しんだという。その香りは精神を落ち着かせる作用があり、睡眠前など気分をリラックスさせたいときにはラベンダーティーを飲むとよい。アロマテラピーでは精油が不安の解消やリラクゼーションに用いられる。また、皮膚への浸透がよく、スキンオイルやマッサージオイル、ブレンドオイルとしても使われている。花を乾燥させたポプリは香りだけではなく殺菌や防虫にも効果的だ。

金曜日, 11月 25, 2011

色々なハーブ(1)

※アニス

 セリ科アニス属の一年草で、学名はPimpinella anisum。。地中海東部沿岸地域やエジプトが原産で、古代エジプト時代から薬用や調味料として愛用されてきた伝統的ハーブである。アニスの完熟種子(アニスシード)には特有の甘い香りと味があり、今日でもパンや菓子、スープの香辛料、リキュールの香料などに用いられている。種子はアネトールを主成分とする精油を2~3%含み、これがアニスシード特有の芳香と味のもとになっている。

 精油には細菌繁殖を抑える効果がある。種子を潰して煎じたお茶は消化を促す働きがあり、食欲不振、消化不良、腹痛などの改善に適している。また、母乳の分泌を促進する作用があり、種子をお湯に浸すアニスティーはヨーロッパでは古くから授乳期の女性のお茶として知られている。この母乳分泌促進作用は動物実験でも確認されている。アメリカの栄養学者E・ミンデルによると、乳牛にアニスオイルのにおいを嗅がせると牛乳の生産量が増加したという(「ハーブバイブル」同朋社)。精油の香りには虫が嫌う成分が含まれており、防虫にも効果的であるとされる。

○チャービル

 セルフィーユとも呼ばれる。ヨーロッパやアジアを原産とするセリ科のシャク属の一年草で学名はAnthricus cerefolium。和名はウイキョウゼリ。上品な甘い香りが特徴。4種類のフレッシュハーブを刻んで混ぜてフィーヌゼルブ(フランスの伝統的なハーブミックス)に使われるほか、葉はサラダやスープ、バーブバターなどに用いられる。古くは薬用として利用され、カルペパー(17世紀英国のハーバリスト)は、チャービルに胃を温める作用があることを見出し、消化促進・利尿・関節痛などの治療に使われた。葉にはビタミンC、カロテン、鉄分、マグネシウムなどが含まれている。

※ディル

 セリ科イノンド属のハーブで、学名はAnethum graveoles。別名はイノンド、ヒメウイキョウ。古くから頭痛の治療薬として使われており、古代エジプトの医学古典「エーベルス・パピルス」にも収載されている。日本には江戸時代に渡来し、種子が蒔蘿子と呼ばれて生薬に使われている。

 葉を煎じて飲むデイルティーは消化を助ける作用があり、胃の調子を整えてくれる。また、種には神経をやわらげる鎮静作用があるとされ、ヨーロッパでは乳児の夜泣きや不眠症の人に種子を煎じて飲ませる。ディルには独特の香りがあり、スパイスとしても広く使われている。魚料理との相性がよく魚のハーブといわれている。種子はピクルスやクッキーなどに、若葉はワインビネガーに入れて香り付けに用いたりする。

※フェンネル

 セリ科ウイキョウ属の多年草で、学名はFoeniculum vulare。原産地はヨーロッパ。和名はウイキョウ。フェンネルは亜種や変種が多く、現在、主に栽培されているのはビターフェンネルスイートフェンネルである。

 フェンネルの生理作用はヨーロッパや中国で古くから認められており、腹痛や風邪の治療などに用いられてきた歴史がある。精油にハチミツを加えてお湯で溶かし、咳止めとして飲まれていた。また健胃作用に優れ、腸の痙攣を抑える小腸の運動を高める作用がある。消化を助けて食欲を増進させると共に、腸内ガスの放出や疝痛の緩和に働く。幼児疝痛にも効果があり、スイートフェンネル種子の精油を含有した乳剤を幼児に与えた試験で疝痛が緩和したという報告がある。これは、種子に多く含まれるトランスアネトール、メチルカビコール、フェンコンなどが有効成分と考えられている。

 食用としては、茎や葉が魚料理の臭い消しに、種子はクッキーやパンなどの風味付けに利用される。フェンネルは近年、ダイエットハーブとしても市販されているが、その有用性についてはまだ実証されていない。

木曜日, 11月 24, 2011

アーティチョーク

○アーティチョーク

 アーティチョークは地中海沿岸のエジプトから南ヨーロッパ地方に分布するキク科の多年草で、学名はCynara scolymus。アザミの仲間で、和名はチョウセンアザミ。成長すると2mほどにより大型の紫色の花をつける。花の付け根のふくらんだ花托は独特の風味と食感があり、フランスやイタリアでは古くから高級野菜としてして珍重されてきた。

 アザミの仲間のハーブは古くから肝臓疾患の症状を和らげる効果のあることが知られており、ヨーロッパ薬草療法では、アーティチョークは肝臓の解毒作用を助ける効果があるほか、肝臓組織の再生にも有効であるとされてきた。20世紀に入ると、多くの生物学者からによってアーティチョークの薬理的研究が行われ、今日では苦味成分を中心とした多種の有効成分が見出されている。それによると、アーティチョークの効果を決定づける成分として、苦味成分のシナリンやフラボノイド、セスキルペンラクトン系のシナロピクリンのほか、イヌリン、キナ酸カフェオイルが単離されている。

 アーティチョークの葉の苦味値は15000単位と報告され、苦味成分の含有量が最も高い数値を示すのは開花直前と果実の成熟時とされている。その成分中の苦味成分シナリンには、胆汁の分泌を促進し、血液中の脂肪代謝を活性化することによって血液中のコレステロール値を正常に戻す効果があるとされている。また軽い利尿作用があるほか、胃のもたれや膨満感を解消し、上腹部の痙攣症状の緩和にも効果のあることが臨床試験において確認されている。今日、ドイツの薬品業界ではこのシナリンがアーティチョーク調剤の品質基準を測る指標と見なされている。アーティチョーク調剤には主として糖衣錠や圧搾エキスがある。

火曜日, 11月 22, 2011

きんかん(金柑)

○きんかん(金柑)

 ミカン科の常緑低木の果実で中国が原産。日本へは鎌倉時代末期に渡来し、主として福岡、和歌山、静岡などの温暖な地域で栽培されている。柑橘類の中では実は一番小さい。果皮には甘味と香気があり、皮ごと生食される。12~2月ごろが出盛だが、時期が短いのと量的にも少ないためミカンのようには目に触れないのが残念である。

 風邪が流行るとキンカンが売れると昔から言われ、民間薬として親しまれてきた。それはビタミンC・B1・B2・E、ヘスペリジン(ビタミンP)、カルシウムを豊富に含み、柑橘類の中では最も栄養価が高いからで、ビタミンCは100g中49mg、カルシウムは80mである。ビタミンCやカルシウムは皮膚の抵抗力を強めるのにも役立ち、ヘスペリジンはビタミンCの吸収を高め毛細血管を強くする働きがある。従って風邪のみならず、動脈硬化や高血圧の予防、血管の老化防止、歯槽膿漏などにも有効である。キンカンの甘露煮は鎮咳・去痰薬として昔から愛用されている。

月曜日, 11月 21, 2011

カボチャ種子

カボチャ種子

 カボチャはウリ科のつる性植物で、β-カロチンや糖質を豊富に含み、健康食材として人気があるが、この種子には頻尿や尿失禁などを改善する有効成分が含まれており、中米などでは古くから天然の利尿剤として使われてきた。また、植物療法の伝統が根強いヨーロッパでは、カボチャ種子の抽出物を配合した医薬品が前立腺肥大や過剰膀胱の治療を目的に使われている。

 カボチャには日本カボチャ、西洋カボチャ、ペポカボチャの3品種あるが、機能性素材として種子が利用されるのはペポカボチャである。ペポカボチャはメキシコ北部から北米が原産地で、低温に強い品種であることから世界各地で栽培されているが、わが国では西洋カボチャが9割を占め、ペポカボチャはあまり馴染みがない。イタリア料理に使われるズッキーニ、二、三倍酢にして食べる金糸瓜(そうめんカボチャ)はペポカボチャの一種である。

 ペポカボチャの種子が前立腺肥大を改善するのは、種子に含まれる脂肪酸とシトステロールの作用によるものと考えられている。前立腺肥大は、男性ホルモンとテストステロンが変化して生成されるジヒドロテストステロンが蓄積することによって起こるが、ペポカボチャ種子の脂肪酸は、この生成に関与している5-α-リダクダーゼという酵素の活性を阻害することによってジヒドロテストステロンの蓄積を抑制する。また、レセプター(受容体)への結合を阻害する作用も認められている。このほか女性に多いとされる、くしゃみや咳などで尿が漏れてしまう尿失禁の改善にも効果のあることがわかっている。

金曜日, 11月 18, 2011

菊芋

菊芋

 いもという名が付いているが、キク科の多年草である。キクイモの由来はキクのような花をつけ、根の先端が肥大してイモのような塊茎になることから。原産地は北アメリカ北東部で、先住民が古くから食用としていた。ジャガイモの歯ざわりとゴボウの味を混ぜた風味があり、煮ると甘味が出る。日本には江戸時代に到来したが、食物繊維を多く含むため消化吸収が悪く、栄養価の高くないことから食用よりも飼料として使われてきた。戦時中の一時期、食糧難のために栽培され漬け物の材料にされていたこともあるが、近年ではほとんど栽培されていなかった。ところが、この菊芋に糖尿病を改善する作用のあることが分かったことから、にわかに注目を集める健康機能性素材となった。

 キクイモ(生)の食品成分をみると、炭水化物が15.1%と非常に多く含まれている。特徴的なのはこの糖質にはデンプンがほとんどなく、大部分がイヌリンという糖質で占められていることだ。イヌリンは多糖類の一種で、果糖(フルクトース)が30個ほどつながった構造をしている。キクイモ以外ではダリアの塊茎やアザミの根などに貯蔵多糖として含まれている。デンプンは体内でブドウ糖に分解され、小腸から吸収されて血糖値に反映されるが、イヌリンはヒトの消化酵素では消化されず、分解されてもブドウ糖ではなく果糖になる。そのため血糖値の上昇とは無縁であるばかりか、腸が糖質を吸収するのを抑える作用があり、血糖値の上昇を背後から抑制する働きもしている。わが国では漬け物の材料にしか使われてこなかったキクイモであるが、今後は抗糖尿病食品として大いに期待される素材である。菊芋は海外でも広く栽培、利用されているが、ドイツではトピナンバーという名で機能性食品素材として活用されている。

※トピナンバー

 ドイツのレホルム製品の一つ。キクイモ塊茎に含まれる難消化性多糖のα-イヌリンを中心に、ペクチン、ビタミン、ミネラル、ベタイン、フラボノール・グルコシド、酵素、アミノ酸を配合した機能性素材。300気圧の圧搾装置を使ってキクイモの塊茎から抽出したエキス製品もある。どちらも糖分や糖質の摂取を制限されている糖尿病患者の健康食品として需要がある。