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金曜日, 2月 17, 2012

烏頭

○烏頭(うず)

 キンポウゲ科トリカブト属の母根を烏頭という。一般にトリカブトには茎に続く塊根(母根)の周囲に数個の新しい塊根(子根)が錬生している。この母根を烏頭といい、子根を附子という。塊根の形が烏の頭に似ていることから烏頭、母根に付着した根ということから附子という名がある。ただし、近年、中国においてその区別は曖昧であり、一般には減毒処理したものを附子、減毒処理されていないもの烏頭としている。また、子根を有しない細長い根は天雄と称し、子根の小さいものを側子、さらに小さくて籠の目から漏れるほどのものを漏藍子という。

 トリカブト属は種類が多く、中国では宋の時代からカラトリカブト(A.carmichaeli)が四川省で栽培されている。このため中国では栽培品種である川烏頭と野生種の草烏頭とが区別されている。このカラトリカブトはハナトリカブトとも呼ばれ、日本でも薬用や切花用に栽培されている。一方、日本では佐渡島などに産する野生種を草烏頭と呼んでいる。

 一般に烏頭は附子よりもアコニチンの含有量が多く、鎮痛作用は附子よりも強いが、温熱・強心作用は附子よりも弱いといわれる。烏頭は毒性が強いため専門家でない限り、使用すべきではない。

 漢方では去風湿・温裏・止痛の効能があり、傷寒論、金匱要略でし関節痛や神経痛に麻黄・オウギと配合した烏頭湯、腹痛に桂枝湯に烏頭・蜂蜜を加えた烏頭桂枝湯などが収載されている。

木曜日, 2月 16, 2012

鳥賊骨

○鳥賊骨(うぞくこつ)

 日本の近海や中国の沿岸に生育する軟体動物コウイカ(Sepia esulenta)などの内殻、すなわちイカの甲を用いる。日本近海には100種以上のイカが知られているが、コウイカ類は楕円形をした胴の左右に薄いひれを有するという特徴がある。

 一般にイカの甲はセルロイド質であるが、コウイカ類の甲は石灰質である。コウイカの甲は長さ10~15cmくらいの紡錘系で、後端にはするどい針がある。成分は主に炭酸カルシウムであるが、そのほかリン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなども含まれる。炭酸カルシウムには制酸作用があり、胃・十二指腸潰瘍に効果がある。

 薬用には細かく砕いて使用するが、一般には焙って粉末にしたものを用いる。漢方では止血・止帯・固精・生肌の効用があり、鼻血、吐血、血便、性器出血、帯下、皮膚潰瘍等に用いる。代表的な収斂薬の一つで、収斂作用には各種の出血に対する止血、傷口や潰瘍に対する斂瘡、精液の漏れるのを防ぐ固精、婦人の帯下を止める止帯などがある。

 不正性器出血や帯下には茜草・オウギなどと配合する(清帯湯)。胃酸過多や胃・十二指腸潰瘍などによる疼痛、出血などに白芨と配合する(烏芨湯)。外用薬としての応用範囲も広く、鼻出血や外傷性の出血、中耳炎、臍周囲炎、皮膚潰瘍、湿疹などに粉末を塗布する。とくに分泌物の多い化膿瘡や湿疹、潰瘍などに適している。日本でも膿の吸い出しに有名な破敵膏に配合されている。

水曜日, 2月 15, 2012

鬱金

○鬱金(うこん)

 熱帯アジア原産で、インド、東南アジア、中国南部などで栽培されているショウガ科の多年草ウコン(Curcuma longa)の根茎を用いる。ウコンの根茎の皮を除いた乾燥し、粉末にしたものが香辛料のターメリックである。カレー粉の黄色の主原料として、また沢庵やピクルスの着色料としても用いられている。

 日本には江戸時代中期に渡来し、沖縄県や九州南部で栽培されている。ウコンのことをウッチンというのは沖縄県の方言である。ところで日本と中国ではウコンの植物名や生薬名が錯綜しているので注意が必要である。

 植物名では日本でいうウコンは中国では姜黄といい、日本のキョウオウ(春ウコン)は中国では鬱金という。一方、生薬名では日本でいう鬱金は、ウコンの根茎と規定されているのに対し、中国の生薬で鬱金といえば、ウコン、キョウオウ、ガジュツの根の先にある紡錘形の塊根のことであり、姜黄といえば、ウコン、キョウオウの茎と続いている根茎の部分をいう。すなわち、日本市場の鬱金は、中国の姜黄のことであり、その中のウコンを基原植物とするもののみをいう。一方、中国の鬱金は玉金とも呼ばれ、市場ではウコン(C.longa)のものを広玉金、キョウオウ(C.aromatica)のものを川玉金と称している。

 ところで、健康食品市場において利用されているウコンには、秋ウコン、春ウコン、紫ウコンの3種類がある。秋ウコンはC.longa、春ウコンはC.aromatica、紫ウコンはガジュツC.zedoariaのことを指している。これとは別にインドネシア原産のクスリウコン(C.xanthorrhiza)というウコンも注目されている。また、白ウコンと呼ばれているのは、ハナショウガ(Zingiber zerumbet)のことであり、ショウガ科ではあるが、全く種類の違う植物である。

 このうち秋ウコンは香辛料ターメリックの原料として、また健康食品として最も多く利用されている。春ウコンは秋ウコンに比べ強い苦味と辛さがあるため、食用には不向きであり、専ら薬用として栽培されているが、生産量もあまり多くない。根茎の切断面では秋ウコンは赤みがかった黄橙色であり、春ウコンは明るい黄色である。ガジュツは根茎の切断面が紫色がかった青白色のため紫ウコンと呼ばれている。

 黄色い色素成分はクルクミンであり、秋ウコンには春ウコンの約10倍も多く含まれ、一方ガジュツにはクルクミンはほとんど含まれていない。黄色色素のクルクミンはウコン(秋ウコン)の方が多く含有するが、クルクモール、クルクメンなどの精油成分はキョウオウ(春ウコン)のほうが豊富である。動物実験で、クルクミンに皮膚癌の発生を抑制することが報告され、クルクモールにも抗癌作用が認められており、中国では子宮癌の臨床に用いられている。

 日本では中国名の鬱金(玉金)はほとんど流通していないが、中国医学では鬱金に関して次のように説明されている。中国医学では鬱金は姜黄と同じく活血・理気薬であるが、鬱金(日本名:川玉金)の薬性は寒であるのに対し、姜黄(日本名:鬱金)は温として区別して扱われている。

 漢方では理気・活血・止血・退黄の効能があり、胸脇部や腹部の疼痛、乳房の痛み、月経痛、鼻血、吐血、煩燥、黄疸、肝炎などに用いる。鬱金は血中の気薬といわれ、気滞と同時にお血を改善して疼痛を緩和する。ストレスなどによる胸や腹の痛みや月経痛には柴胡・香附子などと配合する。腹部の腫塊には丹参・ガジュツ・青皮・別甲などと配合する。熱病による意識障害には牛黄・黄連などと配合する(牛黄清心丸)。また痔や切り傷には粉末を水に溶いて外用薬として用いる(中黄膏)。

火曜日, 2月 14, 2012

烏骨鶏

○烏骨鶏

 キジ科の鶏の一種、ウコッケイの肉または内臓を除いた全体を用いる。鶏冠は紫色であるが、皮膚や足、くちばし、肉や骨まで黒いため烏骨鶏と呼ばれ、全身は柔らかい糸状の絹糸状に覆われている。羽毛の色は白や黒などがあるが、一般に白毛烏骨鶏が珍重される。普通の鶏よりもやや小型で、性質は温順であり、美しいため愛玩用に飼育されている。

 江西省泰和県が原産地であるが、現在は世界各地で飼育されている。日本にも江戸時代に輸入され、天然記念物に指定されているが、特別指定ではないため鶏肉や鶏卵は流通している。成分としてビタミンA・B2・E、カルシウム、鉄などが豊富に含まれている。

 漢方では滋陰・清熱の効能があり、虚労や胃腸虚弱、慢性熱性疾患などに用いる。虚弱体質や結核などの慢性消耗性疾患、慢性胃腸炎などの時には肉や骨を煮て食べるとよい。薬膳料理に烏骨鶏の腹の中に種々の生薬を入れて煮込む料理がよく知られている(烏骨鶏湯:オゴルゲタン)。また虚弱な女性の月経不順や生理痛などには四物湯をはじめ人参・枸杞子・鹿茸などを配合した烏骨鶏白鳳丸を用いる。

月曜日, 2月 13, 2012

烏桕根皮

○烏桕根皮(うきゅうこんぴ)

 中国原産のトウダイグサ科の落葉高木ナンキンハゼ(Sapium sebiferum)の根の皮を用いる。日本には江戸時代に中国から渡来し、紅葉がハゼノキに似ているためナンキンハゼという。九州では野生しているところもある。落葉した後の白い小さな果実の様子は晩秋特有の風情がある。

 ナンキンハゼの種子を烏桕子といい、これは過熱・圧縮すると蝋様物質が得られる。これは中国木蝋といい、油煙の少ないローソクの原料となる。また油脂は石鹸や灯油としても用いられる。薬用には根の皮を剥ぎ、コルク層を除去して用いる。

 樹皮にはキサントキシリン、セビフィル酸などが含まれる。また葉に含まれるTPAは強烈な皮膚刺激性の発癌プロモーターとして知られている。

 漢方では逐水・消腫の効能があり、浮腫や腹水、湿疹、腫れ物などに用いる。とくに全身に浮腫があって大小便の排出が悪いときに用いる。巴豆や牽牛子などより薬効は穏やかだが、副作用で嘔吐することがある。このほか外用薬として毒蛇による咬傷や湿疹や虫刺されに用いる。烏桕子も薬用とするが毒性が強いので内服はされず、ひびやあかぎれ、湿疹の外用薬として用いる。

土曜日, 2月 11, 2012

茴香

○茴香(ういきょう)

 ヨーロッパ地中海沿岸地方を原産とするセリ科の多年草ウイキョウ(Foeniculum vulgare)の果実を用いる。現在では世界中で栽培され、日本にも明治初期に渡来し、長野県、岩手県などで栽培されている。全草に独特の芳香があり、とくに果実は香りが強く、わずかに辛味がある。果実はフェンネルの名で香辛料として知られ、魚や肉の料理によく合い、フランス料理やイタリア料理などによく用いられている。欧米では新鮮な茎、とくに根に近い白い部分を生で食べることもある。

 古代エジプト時代には既に栽培され、また中世ヨーロッパでは魔術の草としても知られていた。中国には4~5世紀に西域から伝わり、腐った魚肉に混ぜると香気を回復するので「回香」と呼ばれたのが茴香の語源である。シキミ科のダイウイキョウ(大茴香)と区別するため、とくに小茴香とも称する。市場には中国からの輸入品がほとんどを占めており、90%は香辛料に使われている。日本産の茴香は精油の含量が多く最良の品質といわれている。芳香性の精油成分にはアネトール、エストラゴール、ピネン、フェンコン、アニスアルデヒドなどが含まれ、腸の蠕動運動を促進し、駆風作用がある。

 漢方では理気・止痛・健胃の効能があり、胃痛、嘔吐、下腹部痛、腰痛などに用いる。茴香は温裏薬のひとつで、冷えを原因とする胃痛をはじめとする種々の内臓痛に応用される。また蒸留して得られる精油のウイキョウ油は健胃薬、去痰薬、矯味・矯臭薬として用いられる。

金曜日, 2月 10, 2012

淫羊藿

○淫羊藿(いんようかく)

 メギ科の多年草で、日本の温帯から暖帯に分布するイカリソウ(Epimedium grandiflorum)や、本州中部以西に分布するトキワイカリソウ(E.sempervirens)の地上部全草を用いる。中国では主にホザキノイカリソウ(E.sagittatum)や心葉淫羊藿(E.brevicornum)などが用いられている。和名のイカリソウという名は花の形が錨に似ているためで、中国では葉の付き方から三枝九葉草と呼ばれている。

 淫羊藿は古くから代表的な強精、催淫薬として知られ、その名も雄の羊がこれを食べると1日に100回交合するという言い伝えによるものである。また、仙霊脾とか放杖草という別名もその効能を表している。

 成分にはフラボノール配糖体のイカリイン、エピメジンなどが20余種、そのほかアルカロイドのマグノフロリンなどが含まれる。イカリインには、一酸化窒素(NO)レベルを上昇させて海綿体血流を増やし、勃起状態を保つ物質を分解する酵素、PDE-5に対して阻害する作用があり、バイアグラと同じ効果があると説明されている。また、エピメジンには性ホルモンの分泌を促し、神経を刺激する作用がある。また淫羊藿の煎液には催淫作用のほか、抗ウイルス・抗菌作用、鎮咳・去痰作用などが報告されている。

 漢方では強壮・補陽・去風湿・強筋骨の効能があり、生殖機能の低下、老化に伴う衰弱、関節の痛みなどに用いる。インポテンツや遣精には仙芽・熟地黄・枸杞子・肉蓯蓉などと配合し、足腰の萎弱やしびれ感には杜仲・狗脊などと配合する。女性の月経不順や更年期の高血圧には仙芽・当帰・黄柏など配合する(二仙湯)。リウマチなどによる関節痛や筋肉痛、麻痺やしびれ感などに威霊仙・肉桂・川芎などと配合する。

 日本でも市販されている体力や精力の低下を補う滋養強壮薬やドリンク剤、薬用養命酒などの薬用酒などに淫羊藿は幅広く配合されている。ただし淫羊藿は燥性が強く、服用しすぎると嘔吐・口渇・口苦・鼻血などの症状が出現する。

木曜日, 2月 09, 2012

印度蛇木

○印度蛇木(いんどじゃぼく)

 インド、ビルマ、マレー半島などに分布し、熱帯に生えるキョウチクトウ科の常緑低木インドジャボク(Rauwolfia serpentina)の根を用いる。日本でも九州南部で栽培されている。この植物の根が蛇に似ていることからインディアンスネイクウッド(インド蛇木)と呼ばれ、実際に蛇の咬傷に用いられていた。

 学名は、ドイツ人の植物学者ラウヴォルフにちなみラウオルフィア・セルペンチナという。中国では同属植物の根を羅芙木と称して用いている。インドでは、この木は「月の病(精神病)」と関係するチャンドラの名で呼ばれていた。ヒマラヤ地方では古くから子供が蛇に咬まれたときの薬草として知られていた。インド伝承医学の古典アユルヴェーダの中にも、精神病や不眠症、高血圧、さらに解熱薬として用いられていたという記載がある。

 根の成分にはインドール系のアルカロイド、レセルピンやレシナミン、アジマリンなどが含まれ、レセルピンには著しい中枢性鎮静作用及び血圧降下作用、アジマリンには抗不整脈作用がみられる。レセルピンは1950年代には血圧降下薬及び精神病治療薬として脚光を浴びたが、眠気、脱力感、性欲減退、さらには抑うつ状態をもたらす深刻な副作用があるため、精神病薬としては、近年あまり用いられなくなった。今日では、レセルピン(アポプロン)などのラウオルフィア製剤が降圧剤として、アジマリンは抗不整脈剤として利用されている。

水曜日, 2月 08, 2012

茵蔯蒿

○茵蔯蒿(いんちんこう)

 日本の本州以南、朝鮮半島、台湾、中国などに分布するキク科の多年草カワラヨモギ(Artemisia capillaris)を用いる。日本では専ら初秋に採取した花の蕾(頭花)を用いるが、中国では春に収穫した幼苗(開花前の地上部)も用いられている。この幼苗は特に綿茵蔯と呼ばれる。沖縄県では近縁植物のリュウキュウヨモギ(A.campestris)をハママーチと呼んで用いている。カワラヨモギの名は川原や海岸に生えているヨモギという意味で、日本では徳島県や長野県より出荷されている。

 葉の成分にはクマリン類のスコパロン(エスクレチン-ジメチルエーテル)、精油成分のカピレンやカピロン、カピリン、クロモン類のカピラリシンなどが含まれる。そのうちスコパロンやカピラリシンなどには利胆作用が知られている。ただし、このスコパロンは花や種子、蕾などに多く含まれるが、幼苗には含まれていない。そのほか茵蔯蒿の薬理作用として肝障害改善、抗炎症、解熱、利尿、抗真菌作用などが報告されている。

 漢方では退黄・清熱燥湿の効能があり、黄疸、尿量減少、湿疹、掻痒症などに用いる。茵蔯蒿は古来より黄疸を治療する代表薬として知られているが、このような退黄(利胆)作用のある生薬としてその他には大黄・黄柏・鬱金・竜胆などがある。

月曜日, 2月 06, 2012

茵芋

○茵芋(いんう)

 台湾や中国南部に分布するミカン科の常緑低木インウ(Skimmia reevesiana)の茎や葉を用いる。日本の関東地方以西には同属植物のミヤマシキミ(S.japonica)が自生している。沖縄に自生する変種のリュウキュウミヤマシキミを中国の茵芋と同一とする説もあるが定かではない。これらの属名はスキミアといい、シキミ科のシキミと混同されるが、葉が似ているだけでまったく別の植物である。

 日本のミヤマシキミと同様に、インウのは及び茎には毒性のアルカロイドスキミアニン、配糖体のスキミンなどが含まれる。ミヤマシキミは古くから有毒植物として知られ、殺虫作用があるため農薬として使用されていた。中毒症状は少量で軽い痙攣が生じ、大量の場合には血圧が降下して死に至る。

 漢方では去風湿・止痛の効能があり、リウマチなどによる関節痛や筋肉痛、下肢萎弱に用いる。日本の民間療法でも頭痛、めまいなどに応用されている。ただし内服には注意が必要で、漢方処方としてもあまり用いない。中国では一般に酒に浸すか丸剤として服用する。

日曜日, 2月 05, 2012

岩ぢしゃ

○岩ぢしゃ

 本州から琉球諸島、台湾に分布しているイワタバコ科の多年草イワタバコ(Conandron ramondioides)の全草を用いる。山地の湿った岩場に生え、葉の形がタバコの葉に似ていることからイワタバコという。「チシャ」というのは野菜のサラダ菜のことで、山菜として利用されてきたことを表している。

 苦味は少しあるが、独特の風味で天ぷらや和え物に適している。また淡紅色の花が美しいため、山野草として観賞用に栽培されたりもする。成分には苦味配糖体のコナンドロシドやアクテオシドが含まれる。民間療法では開花時に葉をつみとり日干しにし、健胃・整腸薬として煎じて服用する。中国では葉の汁を傷口に塗布して止血薬として用いている。

土曜日, 2月 04, 2012

威霊仙

○威霊仙

 沖縄県、台湾、中国南部、インドシナ半島東部に分布するつる性低木キンポウゲ科のサキシマボタルヅル(別名:シナセンニンソウ Clematis chinensis)の根を用いる。そのほか中国では同属植物のセンニンソウ(C.terniflora)や東北鉄線蓮(C.manshurica)などの根も使用されている。日本でも同属のテッセン(C.florida)やカザグルマ(C.patens)などの根を威霊仙として代用している。これらはいずれもクレマチス属(センニンソウ属)のつる性植物である。ただし、中国ではセンニンソウの根を特に鉄脚威霊仙と称している。また「開宝本草」や「救荒本草」などではゴマノハグサ科のクガイソウ(Veronicastrum sibiricum)を威霊仙あるいは草本威霊仙と記しているが、現在は使用されていない。生薬名の威霊仙の威とはその性質が猛、霊仙とはその効果が速やかなことをいう。

 威霊仙の成分にはアネモニン、アネモノール、有機酸などが含まれ、血糖降下作用や鎮痛作用が報告されている。ちなみにセンニンソウには毒性があり、生汁が皮膚につくと発赤・水泡ができるが、生の葉を手首に貼り、水泡を作って扁桃炎を治療するという民間療法もある。かつて葉は魚毒やウジ退治などにも利用されていた。

 漢方では去風湿・通経絡の効能があり、リウマチや痛風などによる関節痛や筋肉痛、手足のしびれ、脳卒中後遺症による半身不随などに用いる。また魚の骨がのどに刺さったときには威霊仙を水あるいは米酢で煎じて、ゆっくりと飲めばよいといわれている(去骨湯)。

金曜日, 2月 03, 2012

委陵菜

○委陵菜(いりょうさい)

 日本の本州以南、朝鮮半島、中国、台湾などに分布するバラ科の多年草カワラサイコ(Potentilla chinensis)の根または根のついた全草を用いる。川原や海岸の砂地などに生え、根の形がセリ科のミシマサイコ(柴胡)に似ているためカワラサイコといわれる。この全草は中国の東北・華北地区で翻白草、中国南部の地区では白頭翁として作用されている。日本では柴胡の代用品として解熱薬に用いられたこともあるが、効果は疑問視されている。

 中国医学では清熱解毒・去風湿の効能があり、アメーバ赤痢や細菌性腸炎などによる下痢や腹痛、あるいはリウマチなどによる関節炎や四肢の麻痺に用いる。また出血や皮膚化膿症に止血・解毒薬としても外用する。

木曜日, 2月 02, 2012

伊保多蠟

○伊保多蠟(いぼたろう)

 カタカイガラムシ科の昆虫イボタロウカイガラムシ(Ericerus pela)の幼虫がモクセイ科の樹木の枝や幹に分泌した蠟状の物質を精製したものを用いる。この昆虫の寄生する樹木として日本ではモクセイ科のイボタノキ(Ligustrum obtusifolium)やトネリコ(Fraxinus japonica)が知られているが、中国ではトウネズミモチ(L.lucidum)やシナトリネコ(F.chinensis)が有名である。

 イボタノキは日本各地の山林中に見られる落葉低木である。伊保多蠟は富山県や福島県で多く産する。イボタロウカイガラムシの成虫のオスは翅開張は4mmくらいの小さな虫である。メスは受精すると著しく膨大して球形となり、イボタノキに産卵する。孵化した幼虫のオスは枝にじっとしたまま樹液を吸って体から白色の蠟物質を分泌し、体外を包み、この蠟が相互につながって枝が白く覆われる。夏の早朝にこの枝を切り、沸騰した湯の中に入れて蠟を溶かし、水面に浮いたものを冷やして固めたものが伊保多蠟(虫白蠟)である。このロウは戸のすべりや家具のつや出しに、中国ではロウソクの原料に用いられる。

 成分には脂肪酸のセロチン酸、イボタセロチン酸、セリルアルコールなどが含まれる。民間では疣(いぼ)の根元を絹糸で縛り、その上からロウをつけて治療するため、イボタノキ(イボ取リノ木)の名前がある。漢方では止血・生肌・止痛の効能があり、おもに膏薬として外科の治療に用いる。

水曜日, 2月 01, 2012

イヌサフラン

○イヌサフラン

 北アフリカ、ヨーロッパ南部を原産とするユリ科の球根植物イヌサフラン(Colchicum autmnale)の種子(コルヒクム子)や根茎(コルヒクム根)を用いる。秋にサフランに似た花が咲くが、葉がないうちに花が咲くので「裸の貴婦人」という呼び名もあり、日本でも観賞用に栽培される。

 古代エジプトにおいてイヌサフランを種々の痛みに用いたといわれているが、非常に有毒であるため、その後はあまり利用されなかった。摂取すれば嘔吐、下痢、皮膚の知覚障害、呼吸困難などが出現し、死に至ることがある。6世紀にヒマラヤ地方に成育するイヌサフランの近縁植物が痛風に効果があることが記述されているが、イヌサフランが薬用として注目されたのは18世紀以降である。フランスにおいて薬用酒が痛風の特効薬として売り出され、ヨーロッパ大陸やイギリスで大変よく売れた。

 イヌサフランの全ての部位にアルカロイドのコルヒチンが含まれ、コルヒチンには中枢性の知覚麻痺、末梢性の血管麻痺作用があり、痛風の痛みに特異的に奏功する。コルヒチンは痛風の原因である尿酸の合成や排泄には作用せず、白血球の代謝活性を抑制し、尿酸の微細結晶に対する食作用を減少させ、結晶沈着の循環を阻害すると説明されている。

 ヨーロッパではチンキ剤として、日本では精製した純品が痛風の治療に用いられている。近年ではベーチェット病の眼症状の治療にも用いられる。副作用として悪心や嘔吐、下痢、脱毛などがみられる。このほかコルヒチンは植物の細胞分裂を妨げるが、染色体の分裂は阻害しないため染色体数を倍化させる特異な性質があり、種なしスイカや収穫量の多いワタなど新品種の開発などに応用されている。

火曜日, 1月 31, 2012

一角

○一角

 北極海に生息するイッカク科の哺乳類イッカク(Monodon monoceros)の牙を用いる。イッカクはイルカの近縁動物で、体調は約5mで、雄の上顎に1対ある歯牙のひとつの門歯が長くなり、細長く2m以上に伸びるため、イッカクあるいはウニコルン(ユニコーン Unicorn)と呼ばれている。牙は象牙質で螺旋形になっている。

 イッカクの角は中世ヨーロッパにおいて神秘的な解毒薬として珍重されていた。日本にはオランダ医学とともに江戸時代に伝えられた。漢方薬ではないが、サイカク(犀角)と同様の解熱・鎮静の効能があるといわれ、粉末にして服用する。和田東郭は精神病の激しい症状に対して大承気湯に配合して用いている(治狂一方)。

月曜日, 1月 30, 2012

一位葉

○一位葉(いちいよう)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するイチイ科の常緑針葉高木イチイの葉を用いる。日本では特に中部地方以北の深山に多く自生し、アララギやオンコなどの呼び名もある。中国ではイチイの枝や葉を紫杉の菜で生薬として用いている。

 かつて高官の笏(しゃく)に用いていたため一位という名があり、建築材や家具材、彫刻材、鉛筆材として知られている。今日でも飛騨高山の一位細工は有名である。また心材は紅褐色であり、浸出液は蘇芳色の染料としても利用されている。

 赤く熟した仮種皮は甘く食べられるが、種子には毒性がある。葉や枝にはアルカロイドのタキシン、タキシニンなどが含まれ、血糖降下作用や中枢神経抑制作用が報告されている。民間では葉や小枝を通経、利尿薬として用いている。また糖尿病にも効果があるといわれ、糖尿病用剤として知られる家庭薬にも配合されている。ただし毒性があるので過量にならないようにする。

 近年、アメリカ北西部に自生するタイヘイヨウイチイ(T.brevifolia)の樹皮から、パクリタキセル(タキソール)という抗癌活性のある成分が分離され、さまざのな癌の治療に用いられている。パクリタキセルは中国産の紅豆杉や日本産のイチイなどにも含まれているが、工業的にはセイヨウイチイ(T.caccata)の葉から抽出したバッカチンという成分が合成されている。

 現在、欧米では西洋イチイはユー(Yew)と呼ばれ、免疫力を高めるサプリメントとして販売されている。ちなみにイチイの同属植物である雲南紅豆杉の材部を原料にした紅豆杉茶が健康食品として輸入され、花粉症などに効果があると紹介されている。

土曜日, 1月 28, 2012

伊豆縮砂

○伊豆縮砂(いずしゅくしゃ)

 関東地方以西、四国、九州、台湾、中国に分布するショウガ科の多年草ハナミョウガ(Alpinia japonica)の種子を用いる。中国の生薬名ではハナミョウガの種子を土砂仁、全草を山姜という。葉がミョウガに似て、花が目立つことからハナミョウガの名がある。

 日本では熱帯アジアに産するショウガ科の植物の種子、縮砂の代用品として江戸時代から利用されている。さらに伊豆縮砂の代用品として同じくショウガ科のアオノクマタケラン(A.intermedia)の種子(黒手)やゲットウ(A.speciosa)の種子(白手)が用いられた。この黒手と白手では黒手のほうが品質がよいといわれている。いずれも西南日本、得に沖縄県などに自生しているが、南方より帰化したものともいわれている。

 ゲットウ(月桃)という名は台湾の呼称であり、沖縄の方言ではサンニン、つまり砂仁(縮砂の異名)とも呼ばれている。ちなみに台湾産の縮砂はゲットウの種子である。

 ハナミョウガの種子には精油のシネオール、β-ピネンのほか、フラボノイドのイザルピニンなどが含まれる。種子はソースなどの香辛料や芳香健胃の家庭薬の原料として用いられている。漢方では健胃・理気の効能があり、縮砂の代用として腹痛や嘔吐、下痢、生理痛の治療に用いる。

金曜日, 1月 27, 2012

郁李仁

○郁李仁(いくりにん)

 中国北部原産のバラ科の落葉低木ニワウメ(Prunus japonica)やコニワザクラ(P.humilis)などの種子を用いる。根も郁李根として用いる。現在、郁李仁の市場品には大李仁と小李仁の2種類がある。ただし、大李仁は主にバラ科のユスラウメ(P.tomentosa)の種子であり、薬用には小李仁を正品とする。

 ニワウメは江戸時代に渡来し、花が美しいため観賞用として栽培されている。果実はサクランボ状で食べられる。熟したニワウメの果実を摘みとり、果肉を除去し、核の殻を割って、種子を取り出す。この種子、郁李仁は6×4mmくらいの小さなアーモンドの形をしている。種子の成分には青酸配糖体のアミグダリンのほか、サポニン、フィトステロール、ビタミンB1などが含まれる。

 漢方では潤腸・利水消腫の効能があり、便秘や排尿減少、浮腫に用いる。郁李仁は麻子仁よりもやや強い潤下作用があり、高齢者や産後の慢性の便秘に柏子仁・桃仁などと配合する(五仁丸)、顔面及び手足の浮腫に防已・青皮などと配合する(郁李仁湯)、また脚気の浮腫にはヨクイニン・杏仁などと配合して用いる(三仁丸)。なお郁李根は歯の治療薬としてよく知られ、歯痛や歯肉炎には煎じた液でうがいする。

木曜日, 1月 26, 2012

硫黄

○硫黄

 天然に産する硫黄の単体、硫黄鉱(サルファSulphur)を加熱、加工したものを用いる。火山国の日本で盛んに採掘され、海外へ輸出していたこともある。現在、硫黄は石油精製過程で得られるため、日本の硫黄鉱山はほとんど閉山となっている。また金属硫化物や硫黄塩として地球上に広く分布し、生物体内にもタンパク質および有機化合物の成分として含まれている。

 古くから燃える不思議な物質として知られ、西洋の錬金術でも、中国の錬丹術でも重要な原料であった。単体のままマッチや黒色火薬の原料にされるが、精製硫黄はパルプ製造用の亜硫酸や二硫化炭素の原料になる。薬材の硫黄は表面がざらざらした軽い黄色の塊で、質はもろく砕けやすい。特異な臭いがあり、燃やすと炎を出し刺激性のある二酸化硫黄(亜硫酸ガス)の臭気を発する。粗製硫黄を昇華させて固定したものは硫黄華といい、無味無臭の黄色い粉末である。

 硫黄イオンは細胞膜を通過しないため薬理的作用はないとされているが、服用すると腸内細菌により還元され、硫化物や硫化水素となって腸壁を刺激し、また水が腸内に滲出して下痢をおこす。また硫黄を皮膚に外用するとSH基をS-Sに変えて角化した皮膚を軟化させ、また硫化水素やペンタチオン酸となって抗菌作用が発現する。かつては痤瘡の治療にクンメルフェルド液、湿疹や疥癬の治療に硫黄軟膏などがよく使用された。

 漢方では止痒・補陽の効能があり、湿疹や疥癬、痤瘡などの外用薬として用いるほか、インポテンツや慢性の下痢、老人性便秘などに用いる。小児の寄生虫症で腹痛、夜泣きするときには平胃散に硫黄を加える。老人性の虚寒の便秘に半夏と配合する(半硫丸)、老婦人の腰冷えや帯下に竜骨と配合する(竜硫丸)。近年、北米原産のテーダ松から抽出された有機硫黄成分MSM(メチルスルフォニルメタン)に鎮痛作用や抗炎症作用、抗アレルギー作用があり、関節炎や筋肉痛の緩和、アレルギー性鼻炎の改善、髪や爪の成長促進などに効果があるとして注目されている。

水曜日, 1月 25, 2012

安息香

○安息香(あんそくこう)

 エゴノキ科の高木で、インドネシアに分布するアンソクコウノキ(Styrax benzoin)、タイや東南アジアや中国南部に分布するシャムアンソクコウノキ(S.tonkinensis)の樹脂を用いる。樹幹に傷つけると黄色の樹液と白色の樹脂が徐々に分泌されるが、この樹脂を採取し乾燥させたものを薬材とする。薬材の表面は黄褐色ないし赤褐色、内部は乳白色の硬くてもろい不定形の塊で、芳香があり、過熱するとすぐに軟化する。

 インドネシア産のものはスマトラ安息香、タイを主産地とするものはシャム安息香といい、世界市場の90%はスマトラ安息香である。日本に輸入される安息香もほとんどはスマトラ安息香であるが、シャム安息香のほうが高級とされる。

 スマトラ安息香の成分には芳香族化合物の安息香酸、ケイヒ酸、バニリンなどが含まれる。一方、シャム系には安息香酸やバニリンが多く含まれるが、ケイヒ酸は含まれない。安息香酸には中枢神経興奮作用や殺菌作用があり、安息香酸ナトリウムは抗カビ、防腐剤として利用されている。また安息香チンキは呼吸器の局所粘膜を刺激して分泌物を増加させる作用があるため、かつて吸入剤の去痰薬として使用されたことがある。

 一方、古代エジプト時代から香料として、また宗教儀式の薫香として使用されてきた歴史があり、現在では、主に石鹸やポマードの香料やアロマテラピーの精油(ベンゾイン)として用いられている。

 漢方では開竅・理気・活血の効能があり、意識障害、胸や腹の痛み、産後のめまい、小児のひきつけなどに用いる。失神などの意識障害や胸痛、腹痛には蘇合香・麝香・沈香などの芳香薬と配合する(蘇合香丸)。一般に内服では丸剤や散剤として用いる。そのほか白癬症などの外用薬として有名な華陀膏にも蝋梅とともに配合されている。

火曜日, 1月 24, 2012

アロエ

○アロエ

 アロエはアフリカの地中海沿岸部を原産とするユリ科の植物であり、アロエとは、アラビア語で苦いという意味である。中国では蘆薈薈と記し、日本に渡来して蘆薈をロカイと読み、和名となった。アロエは600種類ぐらいが知られているが、代表的なものにケープアロエ(Aloe ferox)、キダチアロエ(A.arborescen)、アロエベラ(A.barbadenisis)がある。このうちケープアロエは、日本薬局方に収載されており、医薬品以外の食品や化粧品への使用は禁止されている。

 ケープアロエに含まれるアントロン配糖体の苦味成分、アロインには瀉下作用があり、大腸性下剤として常習性便秘に用いられる。またアントラキノン類のアロエエモジンも苦味成分で胃液の分泌促進、緩下作用がある。健康食品として日本では主にキダチアロエ(木立蘆薈)が利用されており、ヨーグルトなどに入っているアロエはアロエベラの葉肉である。日本の家庭で栽培されているアロエは一般的にキダチアロエであり、アロエベラは日本では沖縄でしか栽培されていない。ちなみに欧米でアロエといえば、アロエベラのことである。

 キダチアロエにはアントラキノン類があまり含まれておらず、下剤の効果が期待できないが、葉全体を食品として利用できるのに対し、アロエベラには薬局方成分のアロインが多く含まれているため表皮を除いた葉肉のみが利用されている。

月曜日, 1月 23, 2012

アルカロイド

○アルカロイド

 植物の中には分子内に窒素を含み塩基性を示す成分があり、これらをアルカリのようなものということからアルカロイドと総称する。アミノ酸から生合成され、ヒトの生理活性アミンと類似の構造を持つため、強い生物活性を持つ。植物毒の多くはアルカロイドであり、薬用植物の主成分もアルカロイドであることが多い。

 代表的なアルカロイドとして麻黄のエフェドリンや附子のアコニチンがある。一般にアルカロイドは、湯液の酸性度が高い場合や酒で煎じた場合には成分の抽出量が増加する。また、長時間加熱することで分解され、活性が低下する。一方、アルカロイドの吸収にも、pHが関与し、胃酸によってイオン化するため、胃での吸収が低下する。食後や多量の湯と一緒に摂取すれば、胃酸は薄まり、アルカロイドの吸収量は増える。アルカロイドの抽出量や吸収量が増加すれば、作用は強くなるが、副作用(中毒)が出現する危険性も増大する。このため、麻黄や附子を煎じたり、服用する場合には、専門家の指示に随うことが必要である。現在までに数千種のアルカロイドが知られており、アルカロイドを含有する植物として、キンポウゲ科、ケシ科、ナス科、ヒガンバナ科、マメ科、メギ科、ユリ科、トウダイグサ科、ウマノスズクサ科などがある。

土曜日, 1月 21, 2012

あり

○あり(蟻)

 中国南部の広西省、雲南省に分布するアリ(Polyrhachis vicina)を用いる。アリは南極と北極を除いて世界中に分布し、現在約8800種が知られており、日本でも277種のアリが報告されている。

 中国南部や東南アジアではツムギアリを、オーストラリアのアボリジニはミツツボアリを食用にする習慣がある。日本ではアリを薬用に用いた記録が名類聚抄(932年)にあり、中国の本草書、本草綱目(1578)にも記載されている。中薬大辞典には、四川中薬誌を出典として黒蟻(Formica fusca)を黒螞蟻として収載されている。擬黒多刺蟻は、中国政府衛生部が唯一、食用と薬用に認定している種類といわれている。

 アリには、タンパク質と脂肪、ビタミンB1・B2・B12、Eなどのビタミン類、蟻酸、クエン酸、酢酸などの有機酸のほか、亜鉛、カルシウム、鉄、マンガン、セレンなどのミネラルのほか、昆虫脱皮ホルモンのエクジステロンなどが含まれている。

 中国では補腎、扶正、止痛、安神などの効能があるとして、滋養強壮、免疫機能の改善、抗炎症、老化防止などの目的で用いられている。臨床的には、リウマチ、関節痛、神経痛、生活習慣病、慢性肝炎、性機能減退などに効果があると謳われている。中薬大辞典では黒螞蟻を蛇咬傷や腫れ物の外用薬として紹介している。

金曜日, 1月 20, 2012

あまにん

○あまにん(亜麻仁)

 中央アジア原産のアマ科の一年草アマ(Linum usitatissimum)の種子を用いる。アマは茎に強い繊維があり古くからリンネル(リネン)として用いられ、また種子からはアマニ油(亜麻仁油)という良質の乾性油が採れる。亜麻の品種は繊維用と油用とで異なり、繊維用は旧ソ連、ベルギー、採油用はアメリカ、カナダなどと世界各地で栽培されている。日本には17世紀に薬用として亜麻仁油をとるのが目的で中国から伝わったが、明治初期になって繊維用が北海道に導入された。リンネルとは亜麻布のことで、夏用の服地、肌着、シーツ、キャンバスなどに利用されている。アマニ油はペンキや油絵具、印刷インキなどの工業用としても重要である。日本は生薬名を亜麻仁というが、中国では一般に亜麻子とか胡麻子と称しているため、胡麻と混同しやすいので注意が必要である。

 亜麻油には、他の植物性油にあまり含まれていない必須脂肪酸のα-リノレン酸が多く含まれている。亜麻リグナンは、腸内細菌によって代謝され、女性ホルモン様の作用があるとして注目されている。このため更年期障害の改善や乳癌、結腸癌などの予防に効果があると期待されている。その他、亜麻仁には緩下作用や刺激緩和作用があり、便秘や咽頭の痛みなどにも用いられている。

 漢方では潤腸・止痒の効能があり、便秘や湿疹、脱毛などの治療に用いる。また、かつてハンセン病や肺結核の治療にも用いられた。民間療法では皮膚の痒みに種子をすりつぶして外用する。健康食品ではオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸の補給として亜麻仁油(フラックスシードオイル)が、亜麻リグナンや食物繊維の摂取には亜麻仁(フラックスシード)が薦められている。ただし亜麻仁油には微量の青酸配糖体が含まれており、過量に使用しないほうがいい。また亜麻仁油は酸化されやすいため、なるべく新しいものを摂取する。

木曜日, 1月 19, 2012

あまちゃづる

○あまちゃづる(甘茶蔓)

 日本では北海道から九州、朝鮮半島、中国、インドなどに分布するウリ科のつる性多年草アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)の葉あるいは全草を用いる。中国では生薬名を七葉胆といい、欧米では絞股藍(jiaogulan)の発音からジアオグランと呼んでいる。ブドウ科のヤブガラシによく似たつる性植物であり、葉を噛むと甘味があるのでこの名があるが、アマチャとは関係ない。1976年に日本生薬学会でアマチャヅルのサポゲニンが発表され、朝鮮人参の成分と類似することから注目されてアマチャヅルが健康茶としてブームとなった。

 アマチャヅルにはトリテルペノイドサポニンのジペノサイドが含まれ、高脂血症改善作用のほか、抗酸化作用や免疫機能の向上、抗癌作用などが認められ、欧米ではジアオグランという名でアンチエイジングサプリメントとして注目されている。中国の民間では七葉胆に解毒・止咳・去痰の効能があるとされ、粉末を老人性の慢性気管支炎などに用いている。

水曜日, 1月 18, 2012

あまちゃ

○あまちゃ(甘茶)

 本州の山間に自生し、日本各地で庭木などとして栽培されているユキノシタ科の落葉低木アマチャ(Hydrangea macrophylla var.thunbergii)の葉を用いる。アマチャはヤマアジサイと外見は区別できないが、このヤマアジサイの甘味変種とされる。日本の民間薬のため、中国の生薬名はない。

 アマチャの生の葉は苦くて甘味はないが、発酵させると甘くなる。夏に葉を採取し日干しにしたものを水をうって桶の中に積み重ね、一晩ぐらい発酵させ、揉んでから日干しにする。つまり葉の中の甘味成分は配糖体として含まれているため甘くないが、この配糖体が酵素の作用で加水分解されると甘味の強いフィロズルチンに変化する。フィロズルチンは砂糖の約1000倍の甘さがあり、かつて砂糖が普及するまでは甘味料として利用されていた。なお4月8日の灌仏会(花まつり)に、甘露の法雨の代わりとしてアマチャを誕生仏に注ぐようになったのは江戸時代からだといわれている。漢方では用いないが、今日、甘味料及び矯味薬として用いられている。

火曜日, 1月 17, 2012

あへん

○あへん(阿片)

 西アジア原産のケシ科の越年草ケシ(Papaver somniferum)の未熟果の乳液を凝固したものを用いる。果皮を刃物で浅く傷つけると直ちに白色の乳液が分泌する。この乳液は大気中で次第に微紅色から褐色に変化して粘稠化するが、翌朝に竹の刀でそぎとり、乾燥させたものが阿片である。阿片の名はアラビア語のアフィウーンに由来する。英語名のオピウム(opium)は乳汁という意味である。また漢方では成熟したケシの果殻を罌粟殻という。なお、50種以上あるケシの仲間のうちアヘンを生産できるのはこのケシとパパベル・セティゲルム(P.setigerum)の2種類のみである。

 アヘンには成分としてモルヒネ、コデイン、パパベリン、ノスカピンなど20種以上のアルカロイドが含まれ、モルヒネやコデインには中枢神経に作用して鎮痛、催眠、鎮咳などの効果がみられる。アヘンを過量に用いると大脳の機能が麻痺して陶酔感や幻覚が出現し、さらに量が多いと小脳・延髄の機能が冒され、呼吸中枢が麻痺して死に至る。九精中毒症状として昏睡・瞳孔縮小・呼吸抑制の特徴がある。アヘンは習慣性が非常に強いため慢性中毒の状態となり、耐性を生じるので次第に量が増える。慢性中毒では服用後に多幸的な陶酔状態が出現し、不安や苦痛を感じなくなり、効果が切れると強い禁断症状が出現する。

 現在、アヘンは麻酔性鎮痛薬のモルヒネ塩酸塩や鎮咳薬のコデインリン酸塩の原料となるが、麻薬及び向精神薬取締法によって使用は制限されている。また麻薬のヘロインとはモルヒネをアセチル化したジアセチルモルヒネのことで、鎮痛作用は弱いが多幸作用や習慣性は強くなっている。漢方でも止痛・止咳・止瀉の効能があるが、止痛・止咳より、むしろ止瀉薬として用いられていた。津軽藩の秘薬として知られる一粒金丹にもアヘンが配合されていたが、明治10年に阿片配合の売薬は禁止された。

月曜日, 1月 16, 2012

あせんやく

○あせんやく(阿仙薬)

 アカネ科のつる性常緑低木ガンビールノキ(Uncaria gambir)の葉や枝を煮詰めて濾過した後、濃縮・乾燥したエキスをいう。これとは別にマメ科の落葉高木アセンヤクノキ(Acacia catechu)の心材を煎じて濃縮・乾燥したペグ阿仙薬というのがある。中国では両者をともに孩児茶といい、商品名では児茶膏という。中国では主にペグ阿仙薬を用いるが、日本ではペグ阿仙薬はあまり用いない。ガンビールノキはマレー半島やスマトラ、ボルネオなどで栽培され、アセンヤクノキはインド、インドシナに分布し、中国南部などで栽培されている。いずれもタンニンを多く含み、皮なめしか、褐色染料などにも用いられている。東南アジア、台湾などではガンビールと檳椰子に石灰を加え、キンマの葉で包んだものをベテルと称して咀嚼する習慣がある。

 一般に阿仙薬の薬材は1辺が3cmの方形状のもので、茶褐色~黒褐色をし、表面ににかわ様の光沢がある。阿仙薬にはカテキンなどのタンニン、ケルセチン、アルカロイドのガンビリンなどが含まれ、抗菌作用や止瀉作用が認められている。収斂性があり、口に入れると苦くて渋い。このため仁丹などの口中清涼剤や正露丸などの家庭薬の原料として大量に使用されている。

 漢方では止瀉・止血・化痰の効能があり、咳嗽や咽頭炎、種々の出血、下痢、皮膚炎などに用いる。声を出しすぎて声がしゃがれた時には連翹・訶子などと配合する(響声破笛丸)。咽頭炎に用いる家庭薬のクララにも配合されている。ちなみに江戸時代の倍薬としてよく知られている万金丹などの胃腸薬の主成分も阿仙薬である。また江戸時代には五倍子のエキスから百薬煎を作り、これを阿仙薬と偽称したため、阿仙薬のことを百薬煎とも読んでいた。

金曜日, 1月 13, 2012

あせび

○あせび(馬酔木)

 東北地方以南、四国、九州の暖温帯の山地に自生するツツジ科の常緑低木アセビ(Pieris japonia)の茎葉を用いる。生垣などの庭園樹としてもよく植えられ、春に白い鈴のような花が並んで下垂する。アセビは日本特産のため馬酔木というのは和製漢名である。有毒植物で、ウマやウシが誤ってこの葉を食べると麻痺することからアセビ(アシシビレ)とか馬酔木の名がある。普通、ウマやウシはこの葉を食べることをせず、奈良公園ではシカが食べないためこのアセビの木が多く繁殖している。

 葉には有毒成分のアセボトキシン(グラヤノトキシンⅠ)やグラヤノトキシンⅢ、ピエリストキシンなどが含まれ、中毒すると悪心、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、四肢麻痺、呼吸麻痺などをおこす。古くから葉の粉末や煎液は農用殺虫剤としてウマやウシの皮膚寄生虫の駆除、農作物の害虫駆除、便槽のウジ駆除などに用いられた。

木曜日, 1月 12, 2012

あしたば

○あしたば(明日葉)

 関東、東海地方、紀伊半島などの温暖な海岸地帯に生えるセリ科の多年草アシタバ(Angelica keiskei)の葉を用いる。成長が早く、葉を摘んでも明日になるとまた葉がのび出すことからアシタバの名がある。春先の若葉は食用にでき、ゆでて浸し物、和え物にする。多少苦味が残るが、特有の香りがある。八丈島の島民が蔬菜として利用したのが始まりで、ハチジョウソウ(八丈草)とも呼ばれている。

 葉にはルテオリン配糖体やイソケルセチンのほか、各種のビタミンが含まれる。茎や葉を切ると黄色い汁が出るが、その主成分はカルコン類のキサントアンゲロール、4-ハイドロキシデリシンであり、抗菌、抗炎症、胃酸分泌抑制、血管拡張といった作用があると報告されている。近年、アシタバの抽出成分に糖尿病の合併症を防ぐ効果、神経成長因子や骨形成蛋白の産生増強物質が含まれていることが発表され、糖尿病や認知症、骨粗しょう症への効果が検討されている。かつて痘瘡の治療に用いられていた。

 また乳牛の牧草にすると乳の出がよくなるといわれ、催乳・強精作用も伝えられている。最近では健康食品として生活習慣病、便秘、貧血などに用いられているほか、ダイエット効やセルライト解消などの効果も謳われている。

水曜日, 1月 11, 2012

あきょう

○あきょう(阿膠)

 ウマ科動物のロバ(Equus asinus)の皮を、毛を取り除いてから煮て膠(にかわ)にしたものをいう。にかわとは煮皮のことで、粗製のゼラチンのことである。現在はロバ以外にも牛、馬、羊などの皮も用いる。主産地は中国の山東・浙江省で、古くから山東省の東阿に産するものが優れていたため阿膠の名がある。ロバの皮を用いたものは驢皮膠といい、ウシの皮を用いたものは黄明膠とい。驢皮膠が漆黒の色をしているのに対し、黄明膠は黄褐色である。日本では主としてウシの皮や骨からとる局方のゼラチンが用いられている。このほか鹿角膠や鹿茸膠などもあるが、効能は異なる。膠は接着剤などに用いるほか、現在でもカプセルや坐薬、ゼラチンスポンジなどの医薬品の原料として応用されている。

 阿膠の成分は硬質タンパク質のコラーゲンとゼラチンで、ゼラチンとはコラーゲンを熱処理により精製した変性タンパク質のことである。これらのタンパク質のアミノ酸の組成としてグリシン、プロリン、オキシプロリンなどが多い特徴がある。ただし阿膠の代用にゼラチンが適するかは議論の余地がある。

。漢方では止血・補血・補陰の効能があり、種々の出血や虚労、慢性的な咳嗽などに用いる。阿膠は加熱すれば溶けるが、低温ではゼリー状に凝固するため、煎剤に用いるときは滓をこした後に溶かしながら服用する。またタンニン酸によって沈殿するので配合に注意する。

火曜日, 1月 10, 2012

あぎ

○あぎ(阿魏)

 中央アジア、イラン、チベット自治区、新疆ウイグル自治区などの乾燥地帯で産するセリ科の多年草アギ(Ferula assa-foetid)の茎や根茎からとれる樹脂を用いる。

 開花前の茎を切断すると断面に乳液が進出して10日ほどで凝固するので、これを削りとる。ニンニクの腐ったような臭いがあり、インドでは香辛料(ヒーング)、中近東ではソースなどの味付けとして、またヨーロッパでは香料に用いている。ニンニク様の不快臭は精油成分に二硫化物(2-ブチルプロペニルジスルフィド)が含まれているためである。かつてはこの臭いが嗅覚神経を刺激して作用する汚臭性神経安定薬、たとえばヒステリーに対する嗅ぎ薬や刺激性の去痰薬として使用された。現在でもインドや南西アジアでは重要な生薬とされている。

 漢方では消積・駆虫・駆お血の効能があり、消化不良などによる腹部硬結や寄生虫症、マラリア、婦人の腹中の血塊などに用いる。近年、内服はあまり用いられず、膏薬に配合して腹部種瘤の外用薬として用いる(阿魏化痞膏)。

土曜日, 1月 07, 2012

あかめがしわ

○あかめがしわ(赤目柏)

 本州以南、中国南部、台湾などに分布しているトウダイクサ科の落葉高木アカメガシワ(Mallotus japonica)の樹皮を用いる。若芽が赤いためアカメといい、柏餅の柏の葉のように食べ物を包んだりしたためアカメガシワという。ただし、葉の形はブナ科のカシワとは似ていない。

 日本の民間療法として、古くは「切らずに治す腫れ物の薬」として用いられていたが、明治以降は煎じて胃潰瘍や胆石症の治療に用いられることが多い。樹皮にはゲラニインなどのタンニンやベルゲニン、ルチンなどが含まれる。成分のベルゲニンには胃液分泌抑制作用や抗潰瘍作用がみられ、樹皮のエキスは潰瘍治療薬として製剤化されている(マロゲン)。また胆汁排出に関して葉のエキスは少量で促進、大量で抑制、樹皮のエキスには抑制作用がある。胃、十二指腸潰瘍、胃酸過多、胆石症には樹皮を煎じて服用する。

 近年、樹皮エキスには腸壁の腸平滑筋に直接作用し、腸の緊張を高め、便秘、下痢、便秘下痢交代といった便通異常に効果のあることが見出され、過敏性腸症候群の治療にも期待されている。そのほか痔や腫れ物には樹皮の煎液を内服したり、葉の煎液で洗ったりする。痔の痛みには生の葉の汁を患部に塗る療法もある。またあせもの治療に葉を浴湯料として用いる。

金曜日, 1月 06, 2012

あかしょうま

○あかしょうま(赤升麻)

 日本の北海道から九州にかけて北から南に分布するユキノシタ科の多年草アカショウマ(Astilbe thunbergii)の根茎を用いる。アカショウマの近縁植物であるトリアシショウマ(A.thinbergii var.congesta)、チダケサシ(A.microphylla)、アワモリショウマ(A.japonica)などの根茎も赤升麻として用いる。かつて黒升麻、すなわち升麻(サラシナショウマ)の代用にされたため、その名がある。しかしサラシナショウマはキンポウゲ科の植物であり、現代では代用されない。

 根茎にはフラボノイドのアスチルビンのほか、イソクマリン系のベルゲニンが含まれる。アスチルビンとベルゲニンは体内で脂肪に働きかける作用を持つノルアドレナリンを補助する作用があり、ダイエット効果が期待されている。またアカショウマポリフェノールはリパーゼの酵素活性を阻害し、腸管からの脂質吸収を抑制することも報告されている。

 民間療法では煎じて風邪、頭痛、下痢などのときに服用する。また口内炎や咽頭炎には煎液でうがいする。あせもや湿疹などには煎液を塗布する。脱肛には浴湯料として用いる。

木曜日, 1月 05, 2012

あかざ

○あかざ(藜)

 インドや中国が原産である。古くから日本にも渡来しているアカザ科の一年草アカザ(Chenpopdium album var.centrorubrum)の葉を用いる。新芽や若い葉は紅色がかっているためアカザの名があるが、赤味のない変種をシロザという。かつては世界各地でアカザやシロザの若葉や種子を食用にしていたが、今日ではほとんど利用されず、荒地や畑地の雑草として扱われている。若葉を食べた後に強い日光に当たると局所的に発赤、腫脹、皮下出血などが出現することがある(アカザ日光アレルギー性皮膚炎)。

 葉にはロイシン、ベタイン、ビタミンA・B・Cなどが含まれる。民間療法では生の葉を揉んで虫刺されや湿疹に塗る。煎じて健胃・強壮薬として用いれることもある。歯痛には葉を乾燥させた粉末と昆布の粉末と混ぜて痛む部分につける。また茎は太くて軽く、強いため杖として用いると中風にならないという言い伝えがある。

水曜日, 1月 04, 2012

あおき

○あおき(青木)

 関東地方以西の本州、四国に分布する日本特産のミズキ科の常緑低木アオキ(Aucuba japonica)の生の葉を用いる。北海道や東北地方、山陰地方には変種のヒメアオキ、九州や沖縄にも変種のナンゴクアオキが分布している。中国ではアオキの同属植物であるアカサンゴ(桃葉珊瑚、A.chinensis)の葉を天脚板と称し、薬用にしている。一年中、葉だけでなく枝も青いことからアオキ(青木)という名がある。また冬になると赤くて光沢のある実が熟すため、庭木や室内観葉植物として利用されている。アオキは1783年に観賞用植物としてヨーロッパへ伝えられ、学名のアウクバはアオキバ(青木葉)に由来する。

 葉や茎にはイリドイドのアウクビンやアウクビゲニンが含まれ、葉をあぶったり、乾燥させたりするとアウクビンが酸化されて黒変する。日本の民間療法では生の葉を火であぶって柔らかくしたものや、あぶった後すりつぶして泥状にしたものを火傷や腫れ物、切り傷、凍瘡などに外用する。また忍冬の茎葉と一緒に煎じて脚気や胃腸薬、陀羅尼助にアオキ葉が配合されているが、これは固形エキスの表面に色つやを出すためといわれている。

金曜日, 12月 30, 2011

フランス海岸松

○フランス海岸松

 フランス海岸松は南仏の大西洋沿岸のみに生息する海洋性の松である。この樹皮から得られる抽出物には40種類を超えるフラボノイドが含まれており、半世紀以上も前からヨーロッパを中心に抗酸化物質として活用されてきた。現在は一般にピクノジェノール、フラバンジェノール(いずれも商標)という名称で世界的に知られている。

 樹皮が生薬となる例は多々あるが、これは16世紀のフランスの探検家J・カルチェの率いる探検隊がカナダを探索中に壊血病にかかった時、現地の先住民に松の樹液を飲むことを教えられて助かったという記録が発見のきっかけとなった。1940年代にケベック大学(カナダ)の客員教授をしていたJ・マスケリエがこの記録を知り、帰仏後も樹皮成分(フラボノイド)の研究を続ける中で、生理活性の高いこのフランス海岸松エキス(以下、海岸松エキス)に辿り着いたのである。以後、フランス厚生相が血管の保護効果がある医薬品として認可すると共に、90年代に入ってからはアメリカでも研究が進み、サプリメント市場に登録するや爆発的な評判を得た。

 海岸松エキスには数多くのフラボノイドが含まれているが、なかでも注目度が高いのはプロアントシアニジンで、通常のフラボノイドに比べて水への溶解性が高いため、抗酸化物質として即効的に働くという特徴がある。また、多数の有機酸からなる機能成分が連携して高いSOD活性を示すことが明らかにされている。このことから、海岸松エキスは毛細血管を保護し、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・静脈瘤などを予防する効果のあることが明らかにされ、多くの研究者によって報告されている。

 海岸松エキスにはこのほか、月経困難症・生理痛・子宮内膜症・冷え性・更年期障害など、女性特有の疾患を劇的に改善する効果のあることが日本の医師や研究者によって明らかにされている。1998年に金沢市で開催された日本補完・代替医療学会の第1回学術集会で、医師の小濱隆文(恵寿総合病院)、神奈川大学医学部の鈴木信孝らによって海岸松エキス(ピクノジェノール)による886例の臨床予備治験の結果が報告され医療関係者の注目を集めた。小濱はその翌年も発表を行い、子宮内膜症患者に対してピクノジェノールの投与により重度の月経痛と骨盤痛が軽減したこと、また子宮内膜症以外の原因による月経痛・骨盤痛も軽減されたことを報告している。また、藤野武彦(九州大学)らはサントリー健康科学研究所との共同研究により、フラバンジェノールに血液の流れをよくする作用のあることを確認し、学会発表を行っている(第44回日本人間ドック学会)。

木曜日, 12月 29, 2011

たらの葉茶

○たらの葉茶

 日本各地に自生するウコギ科の落葉低木タラの木(楤木)は、春先にそのほろ苦い若芽がタラの芽として天ぷらや和え物に用いられるのでよく知られているが、日本では古くから樹皮、根皮を糖尿病・腎臓病・胃腸病の民間薬として用い、中国でも根皮を強壮・神経衰弱に、韓国では咳止め・糖尿日・ガンなどに用いてきた歴史がある。

 タラの木の葉を茶材に用いることに着目したのは長村洋一(藤田保健衛生大学)らの研究グループである。長村らは、種子島ではタラの木の樹皮を糖尿病の特効薬のごとく見なして繁用しているという事実を知り、糖尿病ラットに抽出エキスを飲ませて血糖値効果を確認、その葉を採取して洗浄・乾燥した得た茶材(タラの葉茶)にも同じ効果があることを知り、さらに実験を重ねて、その抽出エキスに肝細胞へのグルコースの取り込みを促進するインスリンと同様の作用のあることを見出した。また、この作用の原因物質を調べて斉藤節生(城西大学薬学部)は11種類の新しいトリテルペン系のサポニン(タラの芽のほろ苦さの原因物質もサポニン)を分析し、その化学構造のいくつかが肝臓病の薬とされるグリチルリチンによく似ていることを発見しており、長村の四塩化炭素で肝障害を起こさせたラットによってGOTの抑制率を調べ、タラの葉サポニンがグリチルリチンと比較しても遜色のない治療効果を見せることを確認している。さらに、薬物性の肝炎だけでなく、ウイルス性肝炎にも有効であることが明らかにされた。ウイルス性肝炎が進行するときには、本来ウイルスを攻撃すべき免疫力(抗体)が逆に感染者自身の肝細胞を破壊するという厄介な障害が起こる場合があるが、タラの葉サポニンはその自滅的な破壊作用を抑制することを突き止めている。

水曜日, 12月 28, 2011

シジュウム茶

○シジュウム茶

 シジュウム(psidium)はフトモモ科の落葉小高木で、南米(部汁、ペルー、コスタリカなど)が原産。古くからインカ帝国のインディオによって栽培され、甘酸っぱい果実は食用のほか皮膚病の薬にも使われていた。その葉を干して粉末にしたシジュウム茶は、見かけは黄色みの強い粉茶に似ており、少々抵抗感のある薬臭さが気になるが、飲んでみると苦味も後味の悪さもない。

 シジュウムの葉にはミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウムなど)やビタミンC、タンニンが含有されているが、抽出エキスにはアレルギー性症状を引き起こす原因となるヒスタミン遊離を非常に強く抑制する作用があるため、花粉症に効果的であるほか、入浴剤として使用するとアトピー性皮膚炎、湿疹、老人性皮膚掻痒症などによるかゆみを抑える作用がある。北中進(日大薬学部)が行ったラットへのエキス投与実験ではこの作用を立証するデータが得られたという。また、馬場俊一(日大駿河台病院)はあらゆるタイプのアレルギーに有効があると発表している。

 シジュウム属には50~70種の植物が数えられ、グァバ茶として知られるグァバもその一種で、その性状や成分には非常に似通ったものがあることは興味深い。

火曜日, 12月 27, 2011

水溶性ビタミン(4)

※ビオチン

 ネズミの成長因子として卵黄から発見された物質で、ビタミンB複合体、ビタミンH、補酵素Rとも呼ばれる。細胞の成長やDNA合成、血糖値の維持に作用し、毛髪や皮膚の健康維持、貧血予防に有効とされる。食品ではレバー、イワシなどの魚介類、ピーナツ、クルミなどに多い。「食事摂取基準05年版」では、ビオチンの目安量は1日あたり成人男女とも45ug(妊婦は+2ug、授乳婦は+4ug)としている。また保健機能食品制度では、ビオチンを1日摂取量あたり14~500ug含む食品にはビオチンの機能を表示することができる。

※ビタミンC

 抗壊血病の因子として発見されたビタミン。物質名はアスコルビン酸。ストレスや疲労、風邪、喫煙の害、高コレステロールなどさまざまな場面でビタミンCを補給することによって症状が軽くなったり、予防する働きを持つことがわかっている。また、発ガン物質であるニトロソアミンの生成を阻止する働きがある。ビタミンCはアルカリ性の環境や加熱によって分解されやすく、また空気や酸化酵素によって酸化され、効果が低下する。食品では新鮮な野菜、果物、緑茶、イモ類に多く含まれ、動物性食品や穀物には少ない。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンCの推奨量は1日あたり成人男女とも100mg(妊婦は+10mg、授乳婦は+50mg)としている。また保健機能食品制度では、ビタミンCを1日摂取量あたり24~1000mg含む食品にはビタミンCの機能を表示することができる。また、健康食品については(財)日本健康栄養食品協会による「ビタミンC含有食品規格基準」(1986年8月公示、93年7月一部改正)がある。

月曜日, 12月 26, 2011

水溶性ビタミン(3)

※ナイアシン

 抗ペラグラ因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はニコチン酸。酸化還元補酵素の構成成分として重要。糖質や脂質の代謝に作用し、血行改善、脳神経の働きを高める効果がある。体内ではアミノ酸のトリプトファンから合成されるが、トリプトファンの含有が少ないトウモロコシを常食としている中南米では、欠乏症としてペラグラ(顔や手足の発赤や浮腫、皮膚炎、下痢などを伴う全身性疾患)が見られる。食品では魚肉、レバー、酵母、小麦胚芽、米糠、緑黄色野菜、豆類、穀物に比較的多く含まれている。「食品摂取基準05年版」では、ナイアシンの推奨量は男性は18~49歳で15mgNE(ナイアシン当量)、50~69歳で14mgNE、女性は18~49歳で12mgNE、50~69歳で11mgNE、上限量は男女とも100mg(ニコチン酸として)としている。また保健機能食品制度では、ナイアシンを1日摂取量あたり3.3~60mg含む食品にはナイアシンの機能を表示することができる。

※パントテン酸

 鶏のペラグラ治療因子として発見されたビタミンB2複合体。エネルギーの産生に関わる補酵素A(CoA)の主要成分。多くの食品に広く含まれているので欠乏症(皮膚炎、手足の痺れ、灼熱足症候群、知覚障害など)は少ないが、妊産婦や授乳婦は多く摂る必要がある。食品では酵母、レバー、牛乳、魚肉、大豆(納豆)などに多く含まれている。「食品摂取基準05年版」では、パントテン酸の目安量は1日あたり成人男性6mg、女性で5mg(妊婦は+1mg、授乳婦は+4mg)としている。また保健機能食品制度では、パントテン酸を1日摂取量あたり1.65~30mg含む食品にはパントテン酸の機能を表示することができる。

金曜日, 12月 23, 2011

水溶性ビタミン(2)

※ビタミンB6

 ネズミの皮膚炎症を改善する因子として発見された水溶性ビタミンで、ピリドキシン、ピリドキソール、ピリドキサミンなど同様の作用を持つ化合物の総称。アミノ酸の代謝に関与する補酵素として働く。また、近年は抗アレルギー作用など免疫機能の正常化に役立つことが指摘されている。通常の食生活では欠乏する例は少ないが、不足すると皮膚炎、多発性神経炎、動脈硬化性血管障害、貧血、口内炎、舌炎、食欲不振などの原因になる。ビタミンB6はどの食品にも比較的多く含まれているが、特にマグロやサンマなどの魚類、肉類、レバー、鶏卵に多い。「食品摂取基準05年版」では、ビタミンB6の推奨料は成人男性で1.4mg、成人女性で1.2mg、上限量は男女共に60mgとしている。また保健機能食品制度では、ビタミンB6を1日摂取量あたり0.3~10mg含む食品にはビタミンB6の機能を表示することができる。

※ビタミンB12

 抗悪性貧血因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はシアノコバラミン。タンパク質や核酸の体内合成に欠かせないビタミン。細胞のエネルギー獲得にも有効である。葉酸と共に造血に関わるため赤いビタミンとも呼ばれ、肝機能強化にも有効である。欠乏すると貧血になり、息切れ、めまいのほか、神経系に作用して各種神経炎、神経痛、うつ状態、記憶力の減退などの原因ともなる。含有量が多い食品は魚肉、牡蠣、あさり、帆立貝などの貝類、レバー、牛肉、卵、牛乳などだが、よほど偏食しない限り日常の食生活で不足することはない。「食品摂取基準05年版」では、ビタミンB12の推奨量は1日あたり成人男女とも2.4ugとしている。また保健機能食品制度では、ビタミンB12を0.6~60ug含む食品にはビタミンB12の機能を表示することができる。

木曜日, 12月 22, 2011

水溶性ビタミン(1)

※ビタミンB1

 抗脚気因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はチアミン。1910年、農芸化学者の鈴木梅太郎が米糠より単離に成功し、オリザニンと名づけた。糖質代謝に関与する補酵素として働き、成長促進、心臓の機能の安定、中枢神経や末梢神経の正常化、消化液の分泌、食欲増進などに影響する。B1を多く含む食品は酵母や米糠であるが、通常の食品として豚肉、うなぎ、カツオ、鶏レバー、大豆、落花生、ニンニクなどに含有量が多い。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンB1の推奨量は1日当たり男性は18~49歳で1.4mg、50~69歳で1.3mg、女性は18~49歳で1.1mg、50~69歳で1mgとしている。また保険機能食品制度では、ビタミンB1を1日摂取量あたり0.3~25mg含む食品にはビタミンB1の機能を表示することができる。

※ビタミンB2

 動物の成長因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はリボフラビン。細胞の再生などに関与するフラビン酵素の働きを助け、特に脂質の代謝を促し、発育や粘膜保護に役立つ。体内で過酸化脂質の生成を防止する作用もある。B2が不足すると脂質をエネルギーに利用しにくくなって発育不良をきたすほか、咽頭桶口内炎を経て口角炎、舌炎、角膜炎、肛門や陰部の皮膚炎、脂蝋性皮膚炎、白内障などに冒されやすくなる。B2を多く含む食品は酵母、八つ目ウナギ、レバー(豚・牛・鶏)、ウナギ、サバ、サンマ、牛乳、納豆、アーモンドなど。「食事摂取基準05年版」では、ビタミンB2の推奨量は1日あたり男性は18~49歳で1.6mき、50~69歳で1.4mg、女性は18~69歳で1.2mgとしている。また保険機能食品制度では、ビタミンB2を1日摂取量あたり0.33~12mg含む食品にはビタミンB2の機能を表示することができる。

水曜日, 12月 21, 2011

その他の肉類

※鹿肉

 フランスではジビエ(野禽獣)料理の代表的素材の一つ。日本ではもみじ肉とも呼ばれ、古くから食されてきたが、今日では一般家庭で食べる機会は少ない。現在、食用として出回っているのはニュージーランドなどから輸入された飼育鹿か、エゾシカなど冬季の解禁時に狩猟した野生鹿である。

 栄養的には高タンパク・低脂肪でエネルギーは110kcal(生肉100gあたり)と低め。他の食肉に比べて鉄や銅などのミネラルを多く含んでいるのが特徴である。肉色は赤く、あっさりとした味である。鍋物や煮込み、ローストにする。

※兎肉

 家畜化されたイエウサギと野性のノウサギがいるが、食肉用として市販されているのはイエウサギの肉である。鶏肉に似た肉質でやわらかく、脂肪は約6%と少ない。ビタミンB12の含有量が生肉100g中5.6ugと、他の肉類に比べ2~5倍程度含まれるのが特徴である。

 兎肉はパテやテリーヌ、パエリア、煮込み料理、焼き物など、西洋料理ではよく使われる食材である。日本でも昔は貴重なタンパク源として食べられており、現在では地方によってウサギ汁や煮付け、味噌煮、たたき、鍋などの伝統料理がある。最近ではまた、アレルギー対策食品として注目されている。

※鴨肉

 鴨肉は鳥肉類の中でもっとも美味といわれている。食用として流通しているのはマガモ、アヒル、アイガモの3種類である。マガモは全長60cmほどで、雄は頭部が光沢のある暗緑色、首に白い輪があり、”あおくび”ともいわれる。雌は全体が地味な褐色である。日本には9月から11月にかけて渡来してくる冬鳥で、猟鳥に指定されている。

 アヒルは野生のマガモを改良した家禽で、チェリーバレー種、バルバリー種、北京種などがある。アイガモ(合鴨)は野生のマガモとアヒルの交配種である。鴨料理では多くの場合、アイガモが使われている。

 鴨肉は鶏肉に比べてビタミンB1・B2が多く含まれている。B1は鶏肉(若鶏胸肉)が0.07mgに対してアイガモは0.24mg、B2は鶏肉0.09mgに対してアイガモ0.35mg(いずれも生肉100g中)である。また、鴨肉の脂肪は牛肉や豚肉に比べて不飽和脂肪酸の割合が高い。東洋医学では微熱を治め、むくみを解消するとしている。

※七面鳥

 英名はターキー(turkey)。わが国では日常的に食べられることはほとんどないが、欧米では、詰め物をしてローストした七面鳥はクリスマスや感謝祭に欠かせない料理である。重さが約5kgと大型の鳥で、雌より雄の方が美味しいとされている。鳥肉類の中では最も脂質が少なく(生肉100g中0.7g)、味は淡白である。食物アレルギーを起こしにくい食材とされている。

火曜日, 12月 20, 2011

色々な魚介類(3)

※しらうお(白魚)

 シラウオ科の小型魚で日本全国の内湾に棲み、1年で全長約10cmの成魚となり、3~5月頃、川を遡って産卵する。肉質のあぶらぴれがあり、頭に”葵の紋様があるとして江戸時代には特別に管理されたという。脂肪が少ないので(生100g中2g)、吸い物、寿司ネタ寿司ネタ、酢の物、茶碗蒸し、卵とじ、唐揚げ、天ぷら、素干しなどに調理される。クセがなく美味で、いずれにしても丸ごと食べるのでカルシウム(同150mg)の補給によい。

 名前の似ているシロウオ(素魚)はハゼ科の魚で、シラウオとは別種。シロウオは全長約5cm、体は半透明で鱗・側線はなく、本州から九州の海岸近くに棲み、春先に川に遡って産卵する。生きている時は半透明で美味だが、死ぬと真っ白に変色して味が落ちる。生きたまま食べる”踊り食い”は福岡市室見川の名物料理になっている。

※あゆ(鮎)

 日本全国の清流に生息する淡水魚。稚魚は川を下って海で冬を越し、春に再び川に遡って成魚(全長20~30cm)となり、秋に産卵する。川底の石についている藍藻類を食べて成長するため、6月頃のものはアユ特有の香気が強くなり美味である。そのため香魚とも呼ばれる。天然のものは年々少なくなり、近年は養殖アユが多く出回っている。

 アユはビタミンAを多く含んでおり、特に養殖アユの内臓に多い。焼いた養殖アユ100g中、身には480ug(天然は120ug)、内臓には6000ug(同2000ug)含まれている。また、魚には珍しく少量ながらビタミンCを含んでおり、こちらは天然アユに多い(焼き100g中、身に2mg、内臓に5mg)。このほか天然・養殖共にカルシウム、鉄、ビタミンE・B12・Dが比較的多く含まれている。

 アユは内臓も一緒に食べられるので、季節感あふれる香りを楽しみながらビタミン・ミネラルの補給ができる初夏の魚である。なお、内蔵や卵巣を塩辛にしたものは「うるか」と呼ばれ、酒の肴として珍重されている。

※たこ(蛸)

 食用とされるマダコ、テナガタコ、イイダコ、ミズダコなどが代表種である。いずれも水分が80%を超えるが、タンパク質は意外に多く、マダコで16.4g、イイダコで14.6g(いずれも生100g中)を含む。脂質、糖質はほとんどない。かつてタコやイカはコレステロールが多い食品として敬遠される嫌いがあったが、タウリンという含有流アミノ酸に脚光が当たったことで、タコもまた健康食材として出番を迎えることとなった。この、”準必須アミノ酸”ともいわれるタウリンには血中コレステロールを減少させる作用があるため、動脈硬化や心筋梗塞の予防につながる。

※おきあみ(沖醤蝦)

 オキアミ科の甲殻類の総称で、大型プランクトンの一種。海生で主として南氷洋に生息し、ヒゲクジラ類の餌となるほか、養殖魚の餌(年間1万数千トンが充てられる)にされてきたオキアミであるが、近年は健康素材として見直されてきている。食用にされるのは全長3mのナンキョクオキアミで、カルシウム360mg、銅が2.3mg、鉄が0.8mg(いずれも生100g中)と多く、リンやカリウムなどにも富む。加えてエビ類には見られないビタミンA(レチノール)が180ugと優れており、ビタミンB1・B2・C、ナイアシンを含むことでも見逃せないものがある。このほか血圧を下げるのに有効なペプチド類も含むので、動脈硬化や心筋梗塞などの予防にもつながる。オキアミは佃煮や塩辛にされるが、乾燥させた干しアミは大根おろしと和え物にしたり、野菜と共にかき揚げにするとかなりの量を摂ることができる。

月曜日, 12月 19, 2011

色々な魚介類(2)

※てんぐさ(天草)

 テングサは紅藻類のテングサ科の総称で、マクサ、オニクサ、オオブサ、キヌクサ、ヒラクサなど多くの種類があるが、一般にはマクサのことをいう。インド洋や大西洋など広く世界に分布している。わが国では黒潮が流れる海域に育ち、春から秋に掛けて採取し、若いものはそのままサラダにして食べられるが、大半は寒天やところてんの原料になる。心太は、テングサの粘質物を煮溶かして冷却して固めたもので、1000年前には既につくられていたとされる。夏の味覚として親しまれ、細く天突きしたものを醤油、酢、辛子などで食べる。

※かます(魳)

 カマス科の海産魚で全長50~60cmにもなるが、市場に出ているのは20cmくらいのものが多い。アオカマスとアカカマスがあり、いずれも本州の中部以南に分布する。アオカマスは水っぽいので”水カマス”ともいわれ、干物として多く出回っている。アカカマスは塩焼きに適しており、秋から冬にかけてが旬である。アカカマスといっても皮が赤いわけではなく、多少赤みを帯びた白身魚である。味は淡白ではあるが美味で、乳幼児や病人、高齢者などに喜ばれる食材である。白身魚にしてはカルシウムが多い。骨は硬いが取りやすいので、身をほぐして病人食や離乳食などにも適している。

※たちうお(太刀魚)

 タチウオ科の海産魚で、銀白色で刀の太刀のように見えるのでこの名がある。また”立ち魚”に通じ、早朝や夕方、海上に浮いて頭を上にして立ち泳ぎすることでも知られている。全長約1.5m、体は平たくて細長く、背びれが尾部まで続き、鱗がない。本州中部以南の暖海に分布し、夏に浅海で産卵する。体表の銀粉は模造真珠の材料に利用されている。

 タチウオは白身でほどよい脂があり、関西地方で好まれるが、近年は関東でも切り身で出回っている。脂質が多い(生100g中20.9g)割りにさっぱりしているので、子供から高齢者まで調理の仕方で摂りやすい食材といえよう。シーズンは夏から秋であるが、塩焼き、味噌漬け、立田揚げのほか、ムニエルにしてレモンを添えると洋風の一品になる。ビタミンB1・B2・D、亜鉛や銅などのミネラルもほどよく含むので活力を補うのに役立ち、口内炎・味覚障害・前立腺肥大・骨粗しょう症にも効果がある。

土曜日, 12月 17, 2011

色々な魚介類(1)

※わかめ(若布)

 若布は褐藻類のチガイソ科に属する海藻で、日本のいたる所で採れるが、なかでもナルトワカメが有名である。ワカメは幼いものの方が味がよいといわれ、地方によっては新芽を干した板ワカメを炭火であぶって食べるところもある。ワカメはミネラル類を豊富に含んでいる。素干し100g中にカルシウムが780mg、リン350mg、鉄2.6mgとバランスがよい。反面、タンパク質や脂肪は少ないので、ミネラル補給の美容食として人気がある。最近は味噌汁の具や酢の物だけでなく、サラダにも取り入れられるなど料理法も多様になってきている。

※のり(海苔)

 一般にノリと呼んでいるが正確にはアマノリ(甘海苔)で、紅藻類ウシケノリ科アマノリ属の総称である。アサクサノリ、スサビノリ、ウップルイノリ、マルバアマノリなどの種類がある。わが国で最も食べられているのはアサクサノリだが、最近は天然のものは姿を消し、ほとんどが養殖か韓国からの輸入物である。

 アマノリの栄養成分の特徴は、他の海藻類に比べてビタミン類が多いことである。特にビタミンB12は、干しノリ100g中77.6ugと豊富である。ビタミンB12は造血に関係するビタミンでレバーや肉類や動物性食品に多く含まれているが、これらの食品が苦手な人はノリを多めに摂ることを心掛けるといいだろう。このほかビタミンCが100g中160mgと海藻中トップで、これはレモン(同100mg)を遥かに凌ぐ数値である。アマノリは韓国や中国はもとより、北ヨーロッパ、スコットランド、カナダなどでも産し、ことは青野菜が不足する極北地近くではビタミン供給源として盛んに利用されている。

※青のり

 青ノリは緑藻類のアオサ科アオノリ属の総称で、青苔、阿乎乃利などの字も宛てる。日本各地の沿岸に分布し、やや深い所の岩の上や、他の海藻に付着して育つ。スジアオノリ、ヒラアオノリ、ボウアオノリ、ウスバアオノリなどの種類がある。寒い時期のものが良質で12~2月頃までが旬。栄養成分はミネラルが多く、ことにカルシウムは素干し100g中720mgで、アマノリの5倍以上含む。リンの含有量が380mgなのでバランスもよい。青ノリは炙ると芳香があるところから、菓子やお好み焼き、焼きソバをはじめ用途も多様である。

金曜日, 12月 16, 2011

その他のキノコ類

※ホンシメジ

 キシメジ科のシメジ属の食用キノコで、学名はLyophyllum shimeji。ダイコクシメジ、ギンシメジ、ネズなどの別名がある。昔は天然ものが多く出回っていたが、最近はほとんど見かけなくなった。今日”ホンシメジ”として市場に出ているのはブナシメジやヒラタケがほとんどである。ブナシメジはキシメジ科シロタモギタケ属、ヒラタケはヒラタケ科のキノコでそれぞれ異なる種類である。

 ホンシメジは赤松の混ざった雑木林などに5~10本が束生したり、ときに輪を描いて群生する。傘ははじめは半球体だが、やがて丸山形を経て扁平に開くと直径10cmくらいになる。柄は12~13cmにもなって根元が太く、肉は白く緻密で”匂いマツタケ、味シメジ”といわれる通り美味である。味のよさの秘密は、旨味成分となるアミノ酸の含有量による。グルタミン酸やアスパラギン酸が非常に多く含まれ、日本人に不足しやすいリジンも多い。アミノ酸以外ではナイアシンが豊富なのも特徴で、強い日差しに当たると湿疹ができる太陽アレルギーの人はナイアシン不足の可能性があるので好適な食材といえる。ビタミンB2も多く、100g中0.5mgと生シイタケの2.6倍に達する。B2は脂肪の代謝を浴するので肥満を防ぐ、湿疹や吹き出物にも有効である。

※なめこ(滑子)

 モエギダケ科の食用キノコで、学名はPholiota nameko。晩秋、広葉樹の中でも主にブナの倒木や枯れ幹、切り株などに群生する。柄は根元で数本が癒合し、傘ははじめ半球体だが、やがて丸山形を経て扁平へと転じ、直径は最大10cmにもなる。淡い黄褐色で粘性が強い。シイタケと並び栽培キノコの代表格で、市販品のほとんどは小さな半球形の人工栽培品である。特有のぬめりはペクチン質(多糖類)で動脈硬化を防ぐとされている。タンパク質、ビタミンB1・B2、カリウム、リンの含有量が比較的多い。国立がんセンターの熱水抽出物による抗腫瘍活性試験(池川哲郎、1968年)では、マツタケに次いで86.5%という高い阻止率を示した。

※マッシュルーム

 ハラタケ科の食用キノコで、学名はAgaricus bisporus。ツクリタケ、セイヨウマツタケ、シャンピニオン(仏名)ともいう。世界各地で栽培されており、白色種、クリーム種、ブラウン種などがある。一般には白色種とブラウン種が出回っている。タンパク質の含有量が多く100g中2.9g、また、ビタミンB1・0.06mg、B2・0.29mg、ナイアシン3mgと多く、ことにB2は5~6個で1日の必要量の1/8を満たし、口内炎・口角炎・肌荒れ・指先のささくれ・フケなどの予防に役立つ。缶詰より生のほうがもちろん食効がある。このほかマッシュルームには消臭作用のあることが認められており、そのエキスは消臭素材として利用されている。

 マッシュルームの旨味は他のキノコと異なり、グルタミン酸のほか必須アミノ酸が多いためで、生でも食べられるキノコとしてサラダなどに適している。切り口がすぐ変色するが酢水に浸せば防げる。

※ひらたけ(平茸)

 ヒラタケ科の食用キノコで、学名はPleurotus ostreatus。オイスターマッシュルーム、アワビタケとも呼ばれている。温帯地域に分布し、秋に広葉樹の枯れ木や切り株に重なり合って生える。ホンシメジに似ているところからシメジの名で売られることもある。ヒラタケはホンシメジよりもタンパク質が多く、100g中3.3g含む。又ビタミンB1・B2共に0.4mg、ナイアシンが10.7mgとキノコ類ではトップクラスである。そのほかカリウム340mgを含んでいる。ビタミンB1が不足すると脚気・多発性神経炎・便秘・むくみ・心臓肥大などを招く。またB2の欠乏は口内炎・口角炎・角膜炎などのほか生長にも悪影響を及ぼす。ナイアシンはペラグラ・口舌炎・胃腸病・皮膚炎などに関与する。

木曜日, 12月 15, 2011

色々な野菜類(8)

※みつば

 セリ科の多年草で、東アジアの湿地などに自生している。日本では江戸時代から野菜として栽培するようになった。現在は、促成栽培された切りミツバ、水栽培で葉柄10~15cmで収穫する糸ミツバ、畑で栽培して根付きのまま出荷される根ミツバの3種類がある。ビタミン、ミネラルは糸ミツバと根ミツバの方が多いが、カリウムだけは根ミツバが一番である。カロテンは糸ミツバで3200ug(100g中)と豊富だ。

 ミツバは香りを賞味するのが種で大量には食べない野菜なので、それ自体の栄養価を問題にするよりは、ミツバを添えて美味しく食べることに注意を向けるべきであろう。従って食効の第一は香りと色が誘う食欲増進効果で、茶わん蒸しや卵とじには欠かせないし、病後の味気ないお粥もミツバを加えるだけで素晴らしい料理に一変する。そのほか頭をスッキリさせ神経の興奮を鎮めて安眠を誘うほか、健脳効果もあるといわれている。

※パセリ

 セリ科の二年草で地中海沿岸が原産。和名はオランダセリ。明治初期にわが国に渡来した当時は特殊な西洋野菜として扱われ、以来、洋食の飾り物として使い捨てられてしまう傾向が続いたことは、パセリの持つ栄養成分からみて誠に残念といわざるを得ない。

 欧米では古くから、あの特有の香りと鮮明な緑色が”食を進める”働きを持つとして尊重されてきたハーブであるが、事実、ビタミンが豊富で、とりわけカロテンは100g中7400ugと他の野菜よりも飛び抜けて多く、ビタミンCの120mgも野菜・果物中のトップクラスである。また、鉄は7.5mgと小松菜の2.5倍含まれ、極めて優れた緑黄色野菜なのである。もちろん他の野菜のように大量に食べられるものではないが、さまざまな料理に付け合せることで毎日少しずつでも摂れば貧血の改善、血中コレステロール値の低下などにも効用が期待できる。食効としてはアピオールという精油成分が腸内の有害細菌の繁殖を抑えるほか、食中毒の防止・口臭防止、食欲増進効果がある。

※せり(芹)

 日本原産で1000年以上前から栽培されてきたセリ科の野菜。春の七草の筆頭に数えられる香り高い野草でもある。初春から初夏までが旬で、野ゼリや田ゼリなどの名で店頭を賑わす。また近年は、栽培した背丈の高い水ゼリも食卓を彩るようになった。

 特有の香りはミリスチン、カンフェンなどの精油成分によるもので、発汗・解熱作用があり、病後の内熱(体温は平熱でも内臓諸器官が熱っぽい状態にあること)を取るのに有効だとされる。また健胃効果もあり、その香りにあずかって食欲が増進する。ほかに血圧を下げ、血の道を通し、酒毒を消し、黄疸にも効用があるとされている。これには茹でたものを食べてもよいが、新鮮なセリをすり鉢で擂り潰し、水を加えて裏漉しした汁をひと煮立ちさせて飲む。また、陰干ししたものを煎じるのもよい。

水曜日, 12月 14, 2011

色々な野菜類(7)

※モロヘイヤ

 中近東やアフリカを主産地とするシナノキ科の一年草で、エジプトでは古くから幼茎や葉を摘んで食用とされてきた。モロヘイヤはエジプト名である。

 日本でも近年、健康野菜の見直し気運の中で注目を集め、沖縄県などで栽培されるようになった。多少ヌメリがあってわずかにほろ苦さがあるが、若い芽は柔らかくクセのがないので生葉のままでも食べられるし、お浸し、和え物、サラダ、酢の物にも合い、味噌汁の具やスープにもよい。さらに天ぷらにしても美味しいばかりか、人参を上回るカロテンを効率よく摂るには油を使った調理が最善である。

 その栄養価を見ると、可食部100g中(カッコ内は人参の場合)、カルシウム260mg(28mg)、リン110mg(25mg)、鉄1mg(0.2mg)、カリウム530mg(280mg)、カロテン10000ug(9100ug)、ビタミンB1・0.18mg(0.05mg)、B2・0.42mg(0.04mg)、C65mg(4mg)と、いずれも野菜類ではトップクラスの圧倒的な数字が並んでいる。

※エシャロット

 ユリ科の二年草で、ラッキョウに近縁の西洋野菜。鱗茎をおろしたり刻んで香味料として使われる。エシャロットは仏名。

 わが国で酒のつまみとして生食されるエシャロットはラッキョウを土寄せして葉鞘部まで軟白にして若採りしたもの。エシェレット、エシャラッキョウ、エシャなどとも称して出回っている。ラッキョウのように漬け物にはせず、鱗茎と葉鞘の軟白部を味噌につけて食べたり、細かく刻んで、洋風料理にも用いられる。エシャロットは疲労回復、抗炎症作用、風邪の予防などによい。なお、同じくエシャロットと呼ばれる小型の分球性タマネギがあって混同されやすいが、これはラッキョウのエシャロットとは別物である。

※みょうが(茗荷)

 日本原産のショウガ科の多年草。夏秋に根茎から花穂を出し淡黄色の花が咲く。花穂と若い茎を食用にするが、我が国以外では食習慣のない野菜である。栄養的には特筆すべきものはないが、独特の香りとシャキシャキとした歯ざわりが食欲増進につながる。昔から不眠症や生理不順に効くとされ、また抗菌作用があるので口内炎や風邪などにもよいといわれている。

 夏場は素麺などの薬味にしたり、削り節と和えて酒の肴の一品にしたり、卵とじや味噌田楽、天ぷらなど調理法がいろいろあり、捨てがたい季節の食材である。ミョウガの葉は、笹と同じく腐敗を防ぐ目的で、おにぎりなどを包むのに利用されてきた。

火曜日, 12月 13, 2011

色々な野菜類(6)

※菜花

 アブラナ科の一、二年草で、ナタネ、ナノハナ、ナタネナの別名がある。春に黄色の小花を房状につけ、2~3月ごろには九州や房総半島など温暖な土地で栽培したものが出回る。食用には黄色い花が蕾のものがよく、葉も茎も柔らかくクセがない。さっと茹でてお浸しや辛し和えにするほか、軽い塩漬けなども美味である。春らしい色彩から、ひな祭りの頃にはうってつけの一品になる。種子からは菜種油を採り、油かすは肥料になる。

 菜花の栄養価は高く、ホウレン草に比べてカロテンこそ約半分(100g中2200ug)だが、カルシウムは3倍、ビタミンCは生では4倍近くにもなる。そのほかビタミンB1、B2、ナイアシンなどをバランスよく含み、食物繊維も豊富だ。浅漬けや和え物は栄養素を失わずに食膳を飾るので積極的に食べるようにしたい食材である。若々しい肌を保ち、ストレス・自律神経失調症・便秘・風邪の予防などに有効である。

※かぶ(蕪)

 アブラナ科の一、二年草で、白菜やツケナ類と同種である。日本最古の野菜の一つとされ、春の七草のスズナとしても知られている。食用の主体は白い根部分であるが、アクが少ないので一夜漬けや糠漬けにすれば、ビタミンC(生100g中19mg)も増加する(皮むき塩漬けで21mg、皮つき糠漬けで28mg)。デンプン類の消化を助けるジアスターゼやアミラーゼなどの酵素が含まれているので、カブのおろし汁は食べ過ぎや胸やけ、胃炎などに効く。また胃腸を温める効用があり、この場合はみぞれ煮や粕煮など熱を加えた調理法が適している。このほか咳を鎮め、声がれを治すともいわれている。

※人参

 セリ科の一、二年草で、緑黄色野菜の代表である。人参の赤い色素カロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚の細胞を強くし粘膜を丈夫にして病気への抵抗力をつける。また夜盲症や口角炎を防ぐ働きがあることもよく知られている。人参のカロテン量は生100g中に9100ug(760ugRE)と、ホウレン草の2倍以上である。ただビタミンB1は0.05mg、Cは4mgというよにそれほど大きい数字ではないので、無理に生ジュースなどの形で摂ることにこだわる必要はない。

 カロテンは脂溶性で熱に強いので、適量の油を使って食べやすいように調理して十分な量を摂るようにしたい。ニンジンには補血効果があり、貧血を改善し冷え性や低血圧を治すと共に、疲労回復、体力づくりにも有効である。また最近の研究では肺ガンや膵臓ガンなど、悪性腫瘍を抑制する効能のあることが報告されており、これは人参に含まれるβ-カロテンの働きによると考えられている。

月曜日, 12月 12, 2011

色々な野菜類(5)

※ズッキーニ

 ウリ科つる性一年草で、外観はキュウリに似ているがカボチャ(ペポカボチャ)の仲間である。キュウリよりも一回り大きく、皮には光沢があり、濃緑色のものと黄色のものがある。カボチャは塾果を食べるが、ズッキーニは実をつけて3~4日で収穫した未熟果を食べる。ヨーロッパ、特に南フランスからイタリアにかけて普及し、その後アメリカにも広まった。

 栄養的にはカロチンとビタミンCが豊富で、糖質が少なく(100g中2.8g)、カロリーは低い(14kcal)。ズッキーニは生食は不向きで、熱を加えて調理するのが基本。歯ごたえ、味ともにナスに似ている。南フランス料理やイタリア料理に欠かせない野菜で、スライスしてバターで炒めて食べたり、油で炒めてから煮物の材料とする。中をくり抜いて詰め物にしても良い。最近は、花ごと採取した花ズッキーニも料理素材として注目されている。花の中にキノコやトマト、鶏肉、魚介類などを詰めて蒸し、バターソースをかけて食べる。

※さやいんげん(莢隠元)

 マメ科インゲン属の一品種で、未成熟の若いインゲンを莢ごと食べることからサヤインゲンという。丸莢のドジョウインゲン、細莢のサーベルインゲン、平莢のモロッコインゲンなどがある。

 サヤインゲンの栄養成分はバランスよく、乾燥種に欠けているビタミンCのほか、カロテンも多い(100g中590ug)。カロテンは油を使うと吸収がよくなるので天ぷらや炒め物などにするとよい。視力回復や皮膚のかさつきを改善する効果もある。また莢の部分にはインスリンの産生に関与する亜鉛を多く含むので、糖尿病によいといわれる。

※グリーンピース

 エンドウ豆の野菜種で、4~5月ごろ、未熟の内に収穫される。缶詰や冷凍品で一年中手に入るが、生のものは春から初夏にしか市場に出ない。莢から出して生の実と炊き込んだ豆ご飯は、春を感じさせる旬のご馳走のひとつである。

 グリーンピースは発芽途上を収穫するのでタンパク質や糖質、ビタミンB群をはじめ、ビタミンCやカロテン、葉緑素などが豊富に含まれている。ビタミンB群はB1・B2・B6・ビオチン、コリンを多く含み、体の代謝を円滑にし疲労物質を分解するのに役立っている。カロテンも100g420ugとかなり多いので、貧血・冷え性・便秘・肌荒れなどに効果的である。食物繊維も100g中7.7gと、枝豆の5gを上回っている。

土曜日, 12月 10, 2011

色々な野菜類(4)

※スプラウト

 植物の新芽を英語でスプラウトというが、最近、各種野菜の新芽が健康野菜としてスーパーの店頭に並びだした。ブロッコリーやマスタードなどの新芽があり、目新しさも手伝ってちょっとしたブームにもなっている。

 スプラウトの人気の発端は、米国のジョンズ・ポプキンズ大学の研究者らがブロッコリーの新芽に優れた抗ガン作用があると発表したことによる。発芽3日目の新芽には、成長したブロッコリーの20~50倍のサルフォラフェインという抗ガン成分があるという。また、スプラウト類は全般に植物性タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維に富み、ローファット・ノンコレステロールというのが健康志向の強い米国人に受けたようだ。

 スプラウト野菜はブロッコリーのほか、小豆や蕎麦、クローバー、レンズ豆、ラディッシュ、ヒマワリ、レッドキャベツ、マスタード、クレス、小麦など種類が多彩だ。サンドイッチの具やサラダ、スープの材料など食べ方の自由度も高い。過程でも栽培できるようにスプラウトの栽培キットも販売されている。

※トマピー

 トマピーは、トマトに似た扁平な形をした新種のパプリカで、鮮やかな濃い赤色をし、肉厚で甘味があり、ピーマンのように苦味や臭みがないために食べやすい野菜である。

 栄養面では特にビタミンCとカロテンに富む。100g中にビタミンCが200mg含まれ、同じ仲間の青ピーマンの2.6倍、赤ピーマンと比べても1.2倍ある。カロテンは100g中1900ugで、青ピーマンの4.8倍、赤ピーマンの1.7倍になる。このほかクセがないのでサラダなど生で食べても美味しい。油との相性もよく、天ぷらやスープ類、ピザなどにもよい。トマピーに含まれるカプサイシンに発ガンプロモータ活性抑制作用のあることが第56回日本癌学会総会(1997年)で発表されている。

※ししとう(獅子唐)

 ナス科トウガラシの甘味種でピーマンと同系種。南米が原産。栽培には温度を要するが、流通の発達で初夏から秋頃まで出回っている。ビタミン類を多く含み、とりわけカロテンは青と黄のピーマンを上回る。油で炒めるとカロテンが生きるが、この時あまり加熱し過ぎると栄養価も色も風味も損なってしまうので注意したい。天ぷらにしてさっと揚げると彩りも美しく食欲も増す。

 食物繊維もピーマンより多い。またカリウムも多く含むので塩分過多による高血圧の予防にもなる。シシトウを選ぶときは緑が濃く、細く小さめのものがよい。つやがあり、匂いの強いほうが良質である。

金曜日, 12月 09, 2011

色々な野菜類(3)

※つるな(蔓菜)

 わが国の太平洋岸の砂地に自生しており、レタスやサラダ菜と同じくチシャの仲間であることから浜ヂシャの呼び名もある。レタスはキク科だが、ツルナはツルナ属に属する多肉質の葉を持つつる性植物である。日本ではあまり食用にされなかったが、世界各国、特に欧米では好まれ、広く栽培されている。

※にら(韮)

 ニラはネギやニンニクと同じユリ科の植物で、この仲間のように強い臭気を持ったものは葷菜と呼ばれ、いずれもその精力増強効果が尊ばれてきた。古事記に記載のあるほど、中国からの渡来は古いが、当時は薬草として扱われていたようでミラ、コミラなどと呼ばれた。その後、いかにもスタミナがつく強精野菜らしく起陽草という別名を与えられている。

 ビタミンA・B群を多く含むが、特徴的なのは臭気成分のアリシンで、この物質には抗菌性と共にビタミンB1の腸内での吸収利用率を高める働きがある。また、体内に吸収されて自律神経を刺激しエネルギー代謝を高め、内蔵を温めて消化を促進する作用がある。そのため冷え性の人は体が温まってくる。

 ニラの種子を乾燥したものを漢方薬では韮子といい、強壮・強精のほか、頻尿・下痢などに用い、根と鱗茎は韮菜と呼んで胃炎・鼻血はもとより、解毒などにも処方している。

※こごみ(屈)

 シダ科の植物でクサソテツともいう。東北地方で雪解けと共に収穫される代表的な山菜。本州から九州まで分布し、木漏れ日の当たる山地などでも自生しているものをよく見かける。ソテツに似た姿で4~5月に根株からワラビのような新葉が伸び、その葉が巻き込んだ形の柔らかいものを収穫する。

 ワラビよりやわらかくクセが少ないので食べやすい。お浸しやゴマ和え、天ぷらなどが一般的である。カロテン、ビタミンB群・C・Kなどのほか、ミネラルもたっぷり含んでいる。カロテン(100gあたり1200ug)は赤ピーマンなみで、ビタミンCの抗酸化活性を守り、皮膚粘膜の再生と維持に役立つ。また消化器や呼吸器の感染症への抵抗力を高めるなどの効用がある。加えて食物繊維がワラビよりも多く、便秘の改善なども期待できる。

水曜日, 12月 07, 2011

色々な野菜類(2)

○おかひじき(尾鹿尾菜)

 シベリア、中国、日本のを原産地とするアカザ科の一年草で、わが国では各地の海岸の砂地に自生しており古くから食用にされてきた。明治以降、目新しい野菜が紹介されるにつれて市場を追われるようになったが、近年、健康野菜として見直されて復活した。

 海藻のヒジキを緑色にしたような姿をしている。若い茎葉を熱湯で4~5分間茹でて、お浸し、辛し和え、酢味噌などで食べるが、シャキッとして歯ざわりが好まれている。カロテンが多いので、油で効率よい活用が期待できる天ぷら料理にも適している。

 栄養的には生100gにつきカロテン3300ug(280ugRE)とホウレン草なみに高いのが特徴で、カルシウムは約3倍の150mgも含む。ビタミンB類は少ないが、Cは21mgと枝豆なみにある。これらの成分と葉緑素の相乗効果で皮膚が丈夫になって風邪をひきにくくなるほか、ビタミンAの働きで気管や胃腸の粘膜の上皮組織に抵抗力がつき、ガンの発生を抑えることが期待できる。

※エンサイ

 ヒルガオ科の一年生つる性草木で、中国名は蕹菜(ヨウサイ)、空芯菜。花がアサガオに似ているので朝顔菜という別名もある。東南アジアでは水生野菜として広く栽培されており、茎葉が広東料理などに使われている。最近はわが国でも栽培されるようになり、6~9月にはスーパーなどにも並んでいる。

 空芯菜という名が示すように、茎は中空で水に浮く。アクのない若い茎葉は味が淡白なので煮物、お浸し、油炒め、汁の実などに使われる。栄養的にはカロテンが特に多く、生100g中に4300ug(360ugRE)含まれている。またビタミンB1や鉄も多い。夏場の健康維持に活躍が期待される新顔の野菜である。

※春菊

 キク科の一年草でヨーロッパの地中海沿岸が原産地であるが、欧米人は食べる習慣を持たず、もっぱら東洋人の食材となっている。日本へは中国を経由して戦国時代に伝来したとも、また江戸初期に招来されたともいわれ、特に西日本を中心に菊菜の名で親しまれてきた。

 特有の香りを好まない人もいるが、日本の緑黄色野菜としてはホウレン草、小松菜と並ぶ代表格で、栄養的にもカロテンが4500ug(380ugRE)もあり、ホウレン草の4200ugを凌いでいる。カロテンは脂溶性なので、茹でたり加熱しても失われることが少ない点も見逃せない。カルシウム120mgという数字は牛乳110mgを上回る数字である。造血に必要な鉄分も1.7mgとホウレン草なみである。

 春菊は料理法次第で100gなど簡単に食べられるから、他の成分も考え合わせるとミネラルの補給源として好適であるというる。天ぷらにして油と共に摂るとカロテンの吸収がよく、特有のクセも気にならなくなる。春菊の濃い緑色は豊富なクロロフィル(葉緑素)のためであるが、クロロフィルには血中コレステロールを下げる働きがある。

※エンダイブ

 キク科キクニガナ属の一、二年草で、同属のチコリと野菜のキクニガナの交配でできたとされ、菊チシャ、苦チシャともいう。エンダイブは英名で、仏名はシコレだが、チコリと混同されやすいためフランスではエスカロールと呼ばれることも多い。日本で普通見られるのは葉に切れ込みの多いものだが、広葉のもの(スカロール)もある。

 春播き、秋播きがあり、いずれね歯切れがよく少し苦味があってサラダに適する。サニーレタスに近い栄養素を含み、カロテンは100g中1700ug(140ugRE)とサラダ菜には及ばないが、亜鉛は0.4mgとサラダ菜の2倍含み、食物繊維も多い。便秘を防ぎ、新陳代謝を盛んにして高血圧の予防に有効である。ドレッシングなど油と共に食べることでビタミンAの吸収を良くし、さっと炒めると量的にも多く摂取することができる。

火曜日, 12月 06, 2011

色々な野菜類(1)

※からしな(芥子菜)

 アブラナ科の一年草。葉カラシナ類、タカナ(高菜)類、茎タカナ類、根ガラシ類など多種類ある。この内、葉が食用とされるのは葉カラシナとタカナ類で漬け物にして食べられることが多い。葉タカナの肥大した茎を漬け物にしたのが、中国料理で使われる搾菜(ザーサイ)である。

 カラシナやタカナには葉カラシナ、山潮、大葉タカナ、カツオ菜などがあるが、いずれも特有の辛味がある。この辛味成分はシニグリンという配糖体である。栄養成分としてはカロテン、ビタミンC、鉄分を多く含む。

 カラシナ、タカナの漬け物はチャーハンやラーメンに入れても美味い。ピリッとした辛味が食欲をそそぎ、暑い夏の季節の一品として最適である。

※なずな(薺)

 アブラナ科の越年草で、道端や土手など日当たりのよい場所に生えている。果実が三味線の撥に似ているのでバチグサやペンペン草ともいわれる。春の七草の一つで七草粥の材料になる。お浸しや和え物にして食べる。カロテンの含有量が多く、100g中5200ug(430ugRE)と野菜類の中でも特に多い。また、ビタミンC(110mg)はレモン以上であり、ビタミンK(330ug)や葉酸(180ug)も多い。ミネラル類ではカルシウムが多く含まれる。

※ルッコラ

 ヨーロッパの地中海沿岸地方を中心に分布するアブラナ科の一年草。ルッコラは伊名、英名はロケット、和名はキバナスズシロという。繁殖力が旺盛なためアジアやアメリカなどで帰化植物になっている。ギリシャ時代には腎臓病や消化器疾患の治療に使われたという記録もある。

 大根のようなロゼット状の根生葉が広がり、開花期が近づくと茎を伸ばして草丈50cm~1mくらいになる。夏に咲く花は淡黄色または白色で紫の筋があり、大根や菜の花によく似ている。

 葉にはゴマとコショウをミックスさせたような独特の香りと辛味、苦味があり、若い葉を摘んでサラダなどに使う。ロケットサラダなどともいわれ、最近わが国でも食べられるようになった。花も生食でき、種はマスタードの代用になる。

※つるむらさき

 ツルムラサキ科のつる性一年草で、別名バセラ、フジナ、オチアオイ。かつては観葉植物として赤紫色の葉や茎を楽しんだが、近年、その栄養価が見直され食用として家庭菜園などで手軽に栽培されるようになった。もともと東南アジアの特に暑い国では古くから健康野菜として食べられていたようである。旬は夏。蔓が巻きついて1~5mにも伸びるが、蔓先から15cmくらいまでの茎と若葉が好んで食されれる。

 色の濃い葉が栄養素の宝庫で、花や実も天ぷらやサラダに適している。味はやや埃くさい感じだが、ホウレン草のようなアクはなく、茹でてゴマやカラシで和えると埃くささも気にならない。葉の栄養成分はカルシウム150mg、カリウム210mg、カロテン300ug(250ugRE)、ビタミンC41mg(いずれも100g中)などだが、ほかにリン、ナトリウム、鉄、亜鉛などのミネラルを含む。カルシウムが多いので骨折や虫歯予防のほか、神経を鎮めて蕁麻疹などにも効く。

月曜日, 12月 05, 2011

DHA

○DHA

 ドコサヘキサエン酸。炭素数22個、二重結合6ヵ所のn-3系不飽和脂肪酸。融点はマイナス78℃。イワシやタラ、ニシンなどの魚油に多く含まれる。ヒトでは脳細胞の尖端のニューロンという神経突起に多く分布しており、情報伝達や記憶の保持に関与している。そのため”頭のよくなる脂肪酸”として話題になった。

 DHAはEPAと同様、血液中の中性脂肪やコレステロール濃度の低下作用、血小板凝集能の抑制作用などが認められている。特に血液の凝集を抑制して虚血性心疾患を予防し、、動脈硬化の原因となるLDLコレステロールが血管に付着するのを防ぐ働きがEPAよりも強い。健康食品素材としても広く使われており、(財)日本健康栄養食品協会による「ドコサヘキサエン酸(DHA)含有生成魚油加工食品規格基準」(1986年8月公示、96年6月一部改正)がある。

土曜日, 12月 03, 2011

EPA

○EPA

 かつてはエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)と呼ばれていたが、近年、イコサペンタエン酸に改められた。ただし略称のEPAはそのまま使われている。炭素数20個、二重結合5ヵ所のn-3系不飽和脂肪酸で、融点はマイナス54℃。イワシやタラなどの魚油に多く含まれる。血液中の中性脂肪やコレステロール濃度の低下作用、血小板凝集能の抑制作用等が認められている。

 EPAが注目されるようになったのは、1970年代にデンマーク・オールボア病院のダイアベルグがイヌイット(エスキモー人)を対象に行った疫学的調査の結果によってである。それによると、魚やアザラシを主食とするイヌイットは肉食中心にデンマーク人に比べて動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病が大幅に少なかった。例えばデンマーク人の死亡原因が心筋梗塞だけで40%以上も占められているのに、イヌイットは発症率が高い60歳以上だけを対象にしても3.6%でしかなかった。その原因がイヌイットの食生活にあると考えて研究の結果、魚魚肉に含まれるEPAの有効作用にあるとわかったのである。

 最近の研究では、横山光宏(神戸大学)日本人約2万人を対象にした大規模臨床試験(5年間の追跡調査)で、EPA薬の摂取により心臓病のリスクが19%減少したという試験結果を発表している(2005年、米国心臓協会学術集会)。EPAは健康食品素材としても広く使われており、(財)日本健康栄養食品協会による「イコサペンタエン酸(EPA)含有精製魚油加工食品規格基準」(1986年6月一部改正)がある。日本水産は中性脂肪が気になる人向けの飲料としてEPAとDHAを関与成分として初のトクホ「イマーク」を販売している。

木曜日, 12月 01, 2011

魚介タンパク質

○魚介タンパク質

 魚介肉の筋肉(食用部位)には15~25%程度のタンパク質が含まれている。乳タンパク質に匹敵する高い消化吸収率が特徴で、アミノ酸スコアも魚類ではほとんどが100である。アミノ酸組成はグルタミン酸、アスパラギン酸、リジンなどが多い。魚介タンパク質には、筋原繊維タンパク質のミオシン、アクチン、トロポニン、トロポミオシン、筋形質タンパク質のミオグロビン、筋基質タンパク質のコラーゲンなどがある。このほか、魚類の白子の精子核内に存在する塩基性タンパク質のプロタミンなどがある。

※プロタミン

 塩基性の単純タンパク質で、アルギニンを多く含み、魚類の白子の精子核内で核酸と結合している。プロタミンはトリプシン(タンパク質分解酵素)の作用を受けて分解される前に、食品由来の油滴と結合し、リパーゼによる脂肪分解を阻止して脂肪の腸管吸収を低下させる作用がある。また、プロタミンから生じたアルギニンは血管内皮細胞にあるNO(酸化窒素)合成酵素の基質になり、NOを産生して血管を拡張し抹消循環を改善する。魚類プロタミン配合の健康食品がある。

火曜日, 11月 29, 2011

色々なハーブ(3)

※レモングラス

 イネ科オガルカヤ属の多年草で、学名はCymbopogon citratus。原産地はインド。レモンのような香りがあり、タイの伝統的スープであるトムヤムクンに欠かせないハーブとして知られている。葉や茎から抽出される精油にはレモンと同じ芳香成分シトラールが含まれ、レモン系食品の香料に利用される。レモングラスティーは貧血や消化不良によいといわれている。

 最近の研究では京都大学農学部の大東肇らによって、レモングラスは消化器系ガンを引き起こす細菌に対して殺傷能力の高いことが確認されている(2000年)。精油には鎮静作用や血行改善、抗炎症作用があり、アロマテラピーではストレスからくる諸症状の改善や筋肉痛の緩和などに用いられる。

※バレリアン

 オミナエシ科カノコソウ属の多年草で、学名はValeriana offcinalis。原産地はヨーロッパと西アジア。和名はセイヨウカノコソウ。ハーバリストが昔から緊張状態をやわらげるために使用してきたハーブで、近年、その作用に新たな注目が集まっている。バレリアンの薬理作用についてはヨーロッパで1980年代から数多くの臨床試験が実施され、鎮静効果や催眠効果が確認されている。

 睡眠薬として利用する場合は、就寝2時間前までに400~900mgのバレリアン抽出物を経口摂取すると効果的である。また、鎮静作用のあるレモンバームと組み合わせると相乗効果を期待できる。生理痛や月経前症候群、筋肉痛にもよいとされている。副作用や依存症はないが、大量摂取すると頭痛・吐き気・不整脈などを生じることがある。ドイツでは医薬品として使用されている。

月曜日, 11月 28, 2011

色々なハーブ(2)

※セージ

 シソ科アキギリ属の常緑性低木で、学名はSalvia offcinalis。ヨーロッパ南部と北アフリカが原産。別名サルビア。開花前の若葉を摘み、乾燥させて使う。セージのある庭に行くものは死なないという格言があるほど、古くから万能の薬草として用いられ、ヨーロッパでは乾燥葉が薬局方に記載されてきた。発汗抑制・利尿・消毒殺菌・収斂・血行促進・疲労回復などの作用が知られている。現在もハーバリストが発汗防止に使用さている。特有の香りや苦味、辛味が食欲を刺激するので、消化不良や食欲不振にもよい。また、煎じたものは口内炎や歯肉炎のうがい薬として使われる。リラックス効果があるので、疲れたときのハーブティーとしても良い。

 食材としてソーセージ作りに欠かせないハーブである。肉料理の臭み消しとしても広く使われ、ラムや七面鳥、鴨、レバー料理に使われる。

※キャットニップ

 ユーラシア原産のシソ科イヌハッカの多年草で、学名はNepeta cataria。和名はイヌハッカ。猫を興奮させるハーブとして有名だが、人に対しては鎮静作用を持つ。ヨーロッパでは古くから病気の治療に使われてきたハーブで、不眠や頭痛、下痢、腹痛などに効果がある。葉はミントに似た香りで、乾燥葉と花の先端部を用いたハーブティーはリラックス効果をもたらす。発汗作用があり、体を暖めてくれるので入浴剤にも使われている。葉をタバコのようにすうと多幸症を引き起こすことが知られている。

※ヒソップ

 シソ科ヤナギハッカ属の多年草で、学名はHysspous offcinalis。地中海と西アジアが原産。和名はヤナギハッカ。ハッカに似た香りがあり、旧約聖書には清めのハーブとして登場している。食用や薬用としてだけでなく、その芳香を生かして病室や台所の床に撒いて消臭剤としても使われたという。

 肉や魚など脂肪分の多い料理やスープ、シチューなどの香り付けによく使われるハーブで、香草系の代表的なリキュール「ベネディクティン」の材料の一つでもある。鎮痙作用や抗菌作用があり、風邪や咳、鼻づまりにはドライハーブをお湯に混ぜて飲むと症状を緩和してくれる。うがい薬や外用薬として利用できる。

※ラベンダー

 地中海沿岸のシソ科ラバンデュラ属の常緑小低木で、学名はLavandula angustifolia。ラベンダーはラテン語のlavara(洗う)を意味し、古代ローマ人は公共浴場に入れて香りを楽しんだという。その香りは精神を落ち着かせる作用があり、睡眠前など気分をリラックスさせたいときにはラベンダーティーを飲むとよい。アロマテラピーでは精油が不安の解消やリラクゼーションに用いられる。また、皮膚への浸透がよく、スキンオイルやマッサージオイル、ブレンドオイルとしても使われている。花を乾燥させたポプリは香りだけではなく殺菌や防虫にも効果的だ。

金曜日, 11月 25, 2011

色々なハーブ(1)

※アニス

 セリ科アニス属の一年草で、学名はPimpinella anisum。。地中海東部沿岸地域やエジプトが原産で、古代エジプト時代から薬用や調味料として愛用されてきた伝統的ハーブである。アニスの完熟種子(アニスシード)には特有の甘い香りと味があり、今日でもパンや菓子、スープの香辛料、リキュールの香料などに用いられている。種子はアネトールを主成分とする精油を2~3%含み、これがアニスシード特有の芳香と味のもとになっている。

 精油には細菌繁殖を抑える効果がある。種子を潰して煎じたお茶は消化を促す働きがあり、食欲不振、消化不良、腹痛などの改善に適している。また、母乳の分泌を促進する作用があり、種子をお湯に浸すアニスティーはヨーロッパでは古くから授乳期の女性のお茶として知られている。この母乳分泌促進作用は動物実験でも確認されている。アメリカの栄養学者E・ミンデルによると、乳牛にアニスオイルのにおいを嗅がせると牛乳の生産量が増加したという(「ハーブバイブル」同朋社)。精油の香りには虫が嫌う成分が含まれており、防虫にも効果的であるとされる。

○チャービル

 セルフィーユとも呼ばれる。ヨーロッパやアジアを原産とするセリ科のシャク属の一年草で学名はAnthricus cerefolium。和名はウイキョウゼリ。上品な甘い香りが特徴。4種類のフレッシュハーブを刻んで混ぜてフィーヌゼルブ(フランスの伝統的なハーブミックス)に使われるほか、葉はサラダやスープ、バーブバターなどに用いられる。古くは薬用として利用され、カルペパー(17世紀英国のハーバリスト)は、チャービルに胃を温める作用があることを見出し、消化促進・利尿・関節痛などの治療に使われた。葉にはビタミンC、カロテン、鉄分、マグネシウムなどが含まれている。

※ディル

 セリ科イノンド属のハーブで、学名はAnethum graveoles。別名はイノンド、ヒメウイキョウ。古くから頭痛の治療薬として使われており、古代エジプトの医学古典「エーベルス・パピルス」にも収載されている。日本には江戸時代に渡来し、種子が蒔蘿子と呼ばれて生薬に使われている。

 葉を煎じて飲むデイルティーは消化を助ける作用があり、胃の調子を整えてくれる。また、種には神経をやわらげる鎮静作用があるとされ、ヨーロッパでは乳児の夜泣きや不眠症の人に種子を煎じて飲ませる。ディルには独特の香りがあり、スパイスとしても広く使われている。魚料理との相性がよく魚のハーブといわれている。種子はピクルスやクッキーなどに、若葉はワインビネガーに入れて香り付けに用いたりする。

※フェンネル

 セリ科ウイキョウ属の多年草で、学名はFoeniculum vulare。原産地はヨーロッパ。和名はウイキョウ。フェンネルは亜種や変種が多く、現在、主に栽培されているのはビターフェンネルスイートフェンネルである。

 フェンネルの生理作用はヨーロッパや中国で古くから認められており、腹痛や風邪の治療などに用いられてきた歴史がある。精油にハチミツを加えてお湯で溶かし、咳止めとして飲まれていた。また健胃作用に優れ、腸の痙攣を抑える小腸の運動を高める作用がある。消化を助けて食欲を増進させると共に、腸内ガスの放出や疝痛の緩和に働く。幼児疝痛にも効果があり、スイートフェンネル種子の精油を含有した乳剤を幼児に与えた試験で疝痛が緩和したという報告がある。これは、種子に多く含まれるトランスアネトール、メチルカビコール、フェンコンなどが有効成分と考えられている。

 食用としては、茎や葉が魚料理の臭い消しに、種子はクッキーやパンなどの風味付けに利用される。フェンネルは近年、ダイエットハーブとしても市販されているが、その有用性についてはまだ実証されていない。

木曜日, 11月 24, 2011

アーティチョーク

○アーティチョーク

 アーティチョークは地中海沿岸のエジプトから南ヨーロッパ地方に分布するキク科の多年草で、学名はCynara scolymus。アザミの仲間で、和名はチョウセンアザミ。成長すると2mほどにより大型の紫色の花をつける。花の付け根のふくらんだ花托は独特の風味と食感があり、フランスやイタリアでは古くから高級野菜としてして珍重されてきた。

 アザミの仲間のハーブは古くから肝臓疾患の症状を和らげる効果のあることが知られており、ヨーロッパ薬草療法では、アーティチョークは肝臓の解毒作用を助ける効果があるほか、肝臓組織の再生にも有効であるとされてきた。20世紀に入ると、多くの生物学者からによってアーティチョークの薬理的研究が行われ、今日では苦味成分を中心とした多種の有効成分が見出されている。それによると、アーティチョークの効果を決定づける成分として、苦味成分のシナリンやフラボノイド、セスキルペンラクトン系のシナロピクリンのほか、イヌリン、キナ酸カフェオイルが単離されている。

 アーティチョークの葉の苦味値は15000単位と報告され、苦味成分の含有量が最も高い数値を示すのは開花直前と果実の成熟時とされている。その成分中の苦味成分シナリンには、胆汁の分泌を促進し、血液中の脂肪代謝を活性化することによって血液中のコレステロール値を正常に戻す効果があるとされている。また軽い利尿作用があるほか、胃のもたれや膨満感を解消し、上腹部の痙攣症状の緩和にも効果のあることが臨床試験において確認されている。今日、ドイツの薬品業界ではこのシナリンがアーティチョーク調剤の品質基準を測る指標と見なされている。アーティチョーク調剤には主として糖衣錠や圧搾エキスがある。

火曜日, 11月 22, 2011

きんかん(金柑)

○きんかん(金柑)

 ミカン科の常緑低木の果実で中国が原産。日本へは鎌倉時代末期に渡来し、主として福岡、和歌山、静岡などの温暖な地域で栽培されている。柑橘類の中では実は一番小さい。果皮には甘味と香気があり、皮ごと生食される。12~2月ごろが出盛だが、時期が短いのと量的にも少ないためミカンのようには目に触れないのが残念である。

 風邪が流行るとキンカンが売れると昔から言われ、民間薬として親しまれてきた。それはビタミンC・B1・B2・E、ヘスペリジン(ビタミンP)、カルシウムを豊富に含み、柑橘類の中では最も栄養価が高いからで、ビタミンCは100g中49mg、カルシウムは80mである。ビタミンCやカルシウムは皮膚の抵抗力を強めるのにも役立ち、ヘスペリジンはビタミンCの吸収を高め毛細血管を強くする働きがある。従って風邪のみならず、動脈硬化や高血圧の予防、血管の老化防止、歯槽膿漏などにも有効である。キンカンの甘露煮は鎮咳・去痰薬として昔から愛用されている。

月曜日, 11月 21, 2011

カボチャ種子

○カボチャ種子

 カボチャはウリ科のつる性植物で、β-カロチンや糖質を豊富に含み、健康食材として人気があるが、この種子には頻尿や尿失禁などを改善する有効成分が含まれており、中米などでは古くから天然の利尿剤として使われてきた。また、植物療法の伝統が根強いヨーロッパでは、カボチャ種子の抽出物を配合した医薬品が前立腺肥大や過剰膀胱の治療を目的に使われている。

 カボチャには日本カボチャ、西洋カボチャ、ペポカボチャの3品種あるが、機能性素材として種子が利用されるのはペポカボチャである。ペポカボチャはメキシコ北部から北米が原産地で、低温に強い品種であることから世界各地で栽培されているが、わが国では西洋カボチャが9割を占め、ペポカボチャはあまり馴染みがない。イタリア料理に使われるズッキーニ、二、三倍酢にして食べる金糸瓜(そうめんカボチャ)はペポカボチャの一種である。

 ペポカボチャの種子が前立腺肥大を改善するのは、種子に含まれる脂肪酸とシトステロールの作用によるものと考えられている。前立腺肥大は、男性ホルモンとテストステロンが変化して生成されるジヒドロテストステロンが蓄積することによって起こるが、ペポカボチャ種子の脂肪酸は、この生成に関与している5-α-リダクダーゼという酵素の活性を阻害することによってジヒドロテストステロンの蓄積を抑制する。また、レセプター(受容体)への結合を阻害する作用も認められている。このほか女性に多いとされる、くしゃみや咳などで尿が漏れてしまう尿失禁の改善にも効果のあることがわかっている。

金曜日, 11月 18, 2011

菊芋

○菊芋

 いもという名が付いているが、キク科の多年草である。キクイモの由来はキクのような花をつけ、根の先端が肥大してイモのような塊茎になることから。原産地は北アメリカ北東部で、先住民が古くから食用としていた。ジャガイモの歯ざわりとゴボウの味を混ぜた風味があり、煮ると甘味が出る。日本には江戸時代に到来したが、食物繊維を多く含むため消化吸収が悪く、栄養価の高くないことから食用よりも飼料として使われてきた。戦時中の一時期、食糧難のために栽培され漬け物の材料にされていたこともあるが、近年ではほとんど栽培されていなかった。ところが、この菊芋に糖尿病を改善する作用のあることが分かったことから、にわかに注目を集める健康機能性素材となった。

 キクイモ(生)の食品成分をみると、炭水化物が15.1%と非常に多く含まれている。特徴的なのはこの糖質にはデンプンがほとんどなく、大部分がイヌリンという糖質で占められていることだ。イヌリンは多糖類の一種で、果糖(フルクトース)が30個ほどつながった構造をしている。キクイモ以外ではダリアの塊茎やアザミの根などに貯蔵多糖として含まれている。デンプンは体内でブドウ糖に分解され、小腸から吸収されて血糖値に反映されるが、イヌリンはヒトの消化酵素では消化されず、分解されてもブドウ糖ではなく果糖になる。そのため血糖値の上昇とは無縁であるばかりか、腸が糖質を吸収するのを抑える作用があり、血糖値の上昇を背後から抑制する働きもしている。わが国では漬け物の材料にしか使われてこなかったキクイモであるが、今後は抗糖尿病食品として大いに期待される素材である。菊芋は海外でも広く栽培、利用されているが、ドイツではトピナンバーという名で機能性食品素材として活用されている。

※トピナンバー

 ドイツのレホルム製品の一つ。キクイモ塊茎に含まれる難消化性多糖のα-イヌリンを中心に、ペクチン、ビタミン、ミネラル、ベタイン、フラボノール・グルコシド、酵素、アミノ酸を配合した機能性素材。300気圧の圧搾装置を使ってキクイモの塊茎から抽出したエキス製品もある。どちらも糖分や糖質の摂取を制限されている糖尿病患者の健康食品として需要がある。

木曜日, 11月 17, 2011

プエラリア・ミリフィカ

○プエラリア・ミリフィカ

 プエラリア・ミリフィカはタイ国産のマメ科クズ属の植物で、現地ではガウクルアと呼ばれ、古くから根茎が回春や長寿などの民間薬として利用されている。その活性成分がミロエステロールと呼ばれる女性ホルモン様の物質=植物性エストロゲンであることを指摘し、その構造式を明らかにしたのは、1960年に英国科学雑誌ネイチャーに掲載された論文である。それによると、ミロエステロールは卵巣ホルモン・エストロゲンと類似した強い活性を持つことが解明され、その民間薬としての効能成分が化学的に裏付けられた形となった。

 その後1980年代になって、プエラリア・ミリフィカにはプエラリン、ダイズィン、ダイゼイン、ゲニステイン、クメステロールなどのイソフラボノイドが豊富に存在するとの報告がなされた。ちなみに、近年、更年期障害を軽減するとして注目を集めている大豆イソフラボンもイソフラボノイドの一種である。

 さらに2000年には、千葉大学薬学部の研究チームが、プエラリア・ミリフィカからミロエステロールを単離すると共に、ミロエステロールの10倍のエストロゲン活性を持つ成分デオキシミロエステロールの単離・同定にも成功するなど、多方面で研究が続けられている。

 エストロゲンは女性の卵胞から分泌される性ホルモンで、子宮の機能、膣粘膜細胞の増殖などに働くほか、血管を広げて血流を促進させ、動脈硬化を防止する、LDL(悪玉コレステロール)を低下させHDL(善玉コレステロール)を上昇させる、体内の水分とナトリウムを貯蓄する、骨量のバランスを保つ、コラーゲンやヒアルロン酸を合成する、などの作用がある。プエラリア・ミリフィカに含まれるミロエステロール、デオキシミロエステロールなどの植物性エストロゲンは、このエストロゲンと非常に似た構造と作用を有する物質であり、女性の美容と健康に関与すると見られている。

 こうした有効成分に着目して、健康食品市場ではプエラリア・ミリフィカを利用した美容・健康食品、化粧品などの製品開発が進んでいる。美容・健康食品としては、従来、バストアップ(豊胸)促進を訴求する製品が主流だったが、近年は若い女性の生理不順、生理痛肌荒れなどホルモン・バランスの崩れからくる症状の改善や、更年期障害症状の軽減のためのサプリメントとして広く利用されるようになってきた。また、最近は上記の作用を生かした化粧品開発も活発化しており、プエラリア・ミリフィカをベースに、細胞賦活作用を持つプロポリス、抗酸化力を有するブドウ種子エキスなどを配合した自然派コスメティックも登場している。これらの化粧品は、皮膚から植物性エストロゲンを吸収させることで、体内でのヒアルロン酸、コラーゲンの生成を促し、皮膚の保湿を促進させるなどのほか、アトピー性皮膚炎などの改善にも効果があるとされている。

水曜日, 11月 16, 2011

米ケフィラン

○米ケフィラン

 米ケフィランは、世界的に有名な長寿地域であるコーカサス地方で、かつて門外不出とされた発酵乳ケフィアに含まれる特徴的な乳酸菌、学名ラクトバチルス・ケフィラノファシエンスを日本人の主食である米を栄養源として単独培養することにより得られる植物性の生成物である。

 同素材は機能性食品の原料メーカーである大和薬品(株)が腸内細菌研究の世界的権威であり、Lactobacillus kefranofaciensの分類・命名に携わった光岡知足(東京大学名誉教授)の技術指導のもと、農林水産省が主管するニューフード・クリエーション技術研究組合の助成を受け開発された。

 米ケフィラン培養物1リットル中には健康に対する有用性が長年注目されながらも大量生産が困難とされていた粘質性多糖「ケフィラン」が約800mgと高濃度含まれている。動物性成分を含まず、低脂質で熱やpHの変動に対して安定という特長を持ち、健康補助食品、一般食品など幅広い商品開発が可能である。

 ケフィランはガラクトース3分子とグルコース3分子を一つのユニットとする水溶性食物繊維の一種(多糖ガラクトグルカン)でこれまでに室伏博士らによるマウス経口投与における抗腫瘍作用(1982)、同マウス経口投与における遅延型アレルギーに対する作用(1983)、同マウス傾向投与における免疫強化作用(1986)、樺山博士らによるストレスホルモンによって抑制された細胞のインターフェロンβ産生促進作用(1997)などの有用性が明らかにされている。近年も数々の動物実験により、整腸作用、血糖上昇抑制作用、血圧上昇抑制作用、脂質代謝改善作用など多彩な機能性が明らかになり、メタボリックシンドローム対応素材としての有用性も期待されている。

 米ケフィランにはケフィランだけでなく、乳酸菌の死菌体や米由来のペプチドなども含まれており、動物実験による抗動脈硬化作用や抗アレルギー作用などのエビデンスが蓄積されつつある。

 光岡名誉教授は2007年5月に発酵乳研究で最も優れた業績を挙げた科学者に贈られる国際賞・メチニコフ賞(国際酪農連盟主催)を微生物部門において受賞、受賞対象となった研究は①腸内細菌の培養法と腸内細菌の同定法の確立、②新種腸内細菌の分離と分類・命名、③腸内細菌の生態系の解析、④腸内細菌の役割の解析、⑤機能性食品創製への応用と展開、の5項目から成り立っている。

火曜日, 11月 15, 2011

ビタミン様作用物質

○ビタミン様作用物質

 ビタミンと類似した作用を持つ有機化合物の総称。コエンザイムQ10、α-リポ酸、コリン、パラアミノ安息香酸、ビタミンPなどがある。

※コリン

 脂肪肝を防ぐ因子として発見された水溶性ビタミン様物質(ビタミンB複合体)。ヒトの体内ではメチオニンから合成される。糖質と脂質の代謝に必要な補酵素として働き、不足すると脂肪肝の原因ともなる。コレステロールの血管壁への沈着を防ぐレシチン(リン脂質)の構成要素でもあるので、動脈硬化予防の効果もあり、食品では卵黄、レバー、小麦胚芽、米胚芽、大豆、酵母などに多く含まれる。

※ビタミンP

 ネズミの壊血病を予防する因子としてレモン果汁から発見された水溶性ビタミン様作用物質。発見当初はシトリンと命名されたが、同様の作用が柑橘類などの黄色・橙色を呈する色素のヘスペリジン、フラボン類、生薬のオウゴンに含まれるバイカレイン、そば(蕎麦)やエンジュ(槐)に含まれるルチンなどにも同様の作用が見い出され、いずれも毛細血管の透過性を保つ働きがあることから、透過性(permeability)のPをとってビタミンPと総称されるようになった。アンズ(杏)やサクランボにも多く含まれている。毛細血管の透過性を保ち、血管壁を丈夫にするほか、毛細血管の収縮作用や血圧降下作用もある。

※ビタミンU

 抗胃潰瘍因子としてキャベツから発見された脂溶性ビタミン様物質。物質名はメチルメチオニン・スルホニウム・クロライド。胃酸の分泌を抑えると共に胃粘膜の新陳代謝を促進させて、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを改善する。キャベツやレタスなどに含まれている。

※パラアミノ安息香酸

 水溶性ビタミン様物質。グルタミン酸から葉酸を合成する材料となり、パントテン酸の吸収を助ける働きがある。葉酸やパントテン酸と一緒に摂ると白髪や皮膚の老化を防ぐ効果がある。レバー、卵、牛乳、玄米などに含まれる。

※レートリル

 アンズ(杏)の種子に含まれるビタミン様作用物質。アミグダリン、ビタミンB17とも呼ばれている。米国の研究では、β-グルコシダーゼ(酵素)を加えたレートリル溶液を腹水ガンに注入したところ、ガン細胞が100%死滅したという報告がある。

月曜日, 11月 14, 2011

ビタミンD

○ビタミンD

 抗くる病因子としてタラ(鱈)の肝油中から発見された脂溶性ビタミン。キノコなどに含まれるビタミンD2(物質名はエルゴカルシフェロール)と、動物性食品に含まれるD3(コレカルシフェロール)の2種類があるが、どちらも体内では同様の作用を持つ。また、酵母やキノコに含まれるエルゴステロールや動物性食品に含まれる7-デヒドロコレステロールは、紫外線が当たるとD2、D3に変わるプロビタミンDである。

 ビタミンDは体内に入ると肝臓と腎臓で活性型に変わり、甲状腺ホルモンと共に働いてカルシウムとリン酸の骨への沈着を助ける。また、筋肉や血液中のカルシウム濃度をコントロールする働きをしており、カルシウム不足のときには骨からカルシウムを溶出させる調整役もしている。ビタミンDは魚肉、レバー、バター、卵黄、シイタケなどに多く含まれる。「食事摂取基準05年度版」では、ビタミンDの目安量は1日あたり成人男女ともに5ugで、上限量は50ugとしている。また保健機能食品制度では、ビタミンDを1日摂取量あたり1.5~5ug含む食品にはビタミンDの機能を表示することができる。

※エルゴステロール

 不飽和ステロールの一種で、エルゴステリンともいう。シイタケなどキノコ類や酵母に多く含まれており、紫外線が当たるとエルゴカルシフェロールになり、体内に振り込まれてビタミンDに変化する。生シイタケは食べる前に日光に当てるとビタミンD2の含有量を増やすことができる。

土曜日, 11月 12, 2011

深海鮫エキス

○深海鮫エキス

 サメ(鮫)は軟骨魚類からエイ類とギンザメ類を除いたものの総称で、アイザメ、アブラザメ、シュモクザメ、ホシザメ、ネコザメ、ノコギリザメ、ジンベイザメなど大小種々のものが含まれる。肉はカマボコなど練製品に使われるが、肝臓からは肝油が作られる。特にアイザメの肝油は良質で、女性の高級美顔料として使われているほか、健康食品としては深海鮫エキスとして加工されている。

 このエキスに含まれる油性物質のスクアレンは細胞の新陳代謝を活発にし、健康の維持・増進に役立つ機能成分とされている。深海鮫の肝臓は体重の17~27%に及び、特にアイザメは肝臓の重さが体重の25%を占め、その1/4が肝油であり、9割近くをスクアレンが占めている。スクアレンは、日本の油脂科学のパイオニアであって辻本満丸が1906年(明治39)年にアイザメ肝油から発見した高純度不飽和炭化水素(油脂)である。

 この油脂は化学的に安定するために水を還元して水素を取り込み、その結果、酸素を発生させる。これは深海で生息するサメの体内で必要とされる酸素を補給する働きをしているのではないかと考えられている。

 深海鮫エキスは栄養やエネルギー源としてばかりでなく、臓器の機能回復を手助けする”整備エンジニア”のような役目を果たす。その作用として、①浸透性がよい(化粧品素材として利用)、②賦活作用がある(細胞や皮膚の発育を促進させる作用)、③殺菌作用がある、④浄化作用がある(体内の新陳代謝を促す還元作用)、などが挙げられる。

金曜日, 11月 11, 2011

インドボダイジュ

○インドボダイジュ

 クワ科の常緑高木。別名にアッシュバッタ、ピッパラ、菩提樹、印度菩提樹、思惟樹などがある。原産地のインド、スリランカを中心に、南アジアから東南アジアなど熱帯地域に分布する。葉は先のとがった広卵心形で、わずかな風にも揺れてさらさらと音をたてる。花はイチジク形花序(隠頭花序)といって、花軸の先端が大きく膨らんで壷型となり、その壷の内側面に雄しべ・雌しべのいずれか一方だけをもつ単性花をつける。雌花と雄花とを同一の個体につける雌雄同株。同じクワ科のガジュマルのように気根をおろして大きくなる。

 原産地では10数メートルから20メートル以上に及ぶ大木に生長するものもあり、大きな茂みとなる。お釈迦様が49日間の思惟の後、その下で悟りを開いた木とされており、ヒンドゥー教の整地でもあり仏教の最高聖地とされるインドのブッダガヤに植えられ、神聖な木とされている。東アジアでは、仏教寺院に中国原産のシナノキ科シナノキ属の落葉高木ボダイジュが植えられているが、葉の形がインドボダイジュに似ていることから、熱帯植物で栽培しにくいインドボダイジュの代わりに栽培したと考えられている。わが国では、鉢植えの小さなものが観葉植物として販売されている。

 インドボダイジュの樹皮は、収斂作用があり、インドでは歯痛やひび割れして炎症を起こした足の治療などに用いられるほか、中国では歯痛や歯茎の強化に用いられている。薬理効果としては抗菌作用、脂質低下作用、血糖降下作用などが報告され、用途としては止血、月経過多、子宮出血、吐き気、眩暈に50%アルコール抽出物が用いられる。

木曜日, 11月 10, 2011

くま笹(改訂版)

○くま笹

 クマ笹はイネ科の笹の一品種で、葉の緑が白くなる(隈ができる)ために隈笹、冬眠から覚めた熊が好んで食べて体力の回復を図るところから熊笹とも書かれる。古くから若葉を煎じたものが民間薬として胃病・糖尿病・高血圧・喘息などの改善に利用されてきた。

 クマ笹にはタンパク質や葉緑素が豊富に含まれているほか、生体の免疫力を高め、ガン細胞の増殖を抑える作用があるといわれる笹多糖体の存在も注目されている。九州大学農学部の村上浩紀、山藤一雄が、クマ笹の葉から抽出したリグニンに動物実験で制ガン作用を認めたと報告している。また、ささの防腐作用をつかさどる多糖体のパーフォリンにも、生体の免疫力を強くしてガンの増殖を抑えること、なおかつ正常細胞に対する害がないことなどがわかり、その効用が期待されている。

 最近、クマ笹の有効成分を効率よく抽出する循環多段式加圧抽出法(菊地式抽出法)が考案され、より多くの多糖成分が抽出できるようになった。この抽出法は、最初に100℃以下の熱水抽出によって主としてミネラル、ビタミン、アミノ酸を採り出し、その後、加圧のレベルを何段階かに変えることによってさらに多糖成分を抽出するという方法である。近藤勇(東京慈恵会医科大学名誉教授)らは、これによって得られたクマ笹エキス(AHSS)をヘリコバクター・ピロリ菌に作用させ、鞭毛を溶かすことで菌が死滅することを発見、第11回国際ピロリ菌学会(2001年9月、ドイツ)で報告している。

 慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の発症に大きく関わっているとされるピロリ菌だが、日本では50歳以上の70%以上がピロリ菌感染者であるこという報告もあり、ピロリ菌対策が本格的に始まっている。しかし、抗生物質を使った除菌では耐性菌の問題も大きなネックとなっている。近藤らの研究結果は、クマ笹エキスが植物由来の天然物質であることから抗生物質が直面している耐性菌問題にも新しい展望を開く可能性を秘めているといえよう。

水曜日, 11月 09, 2011

穀物酢

○穀物酢

 JAS(日本農林規格)では、醸造酢のうち、原料の穀物使用量が40g/L以上のものを穀物巣としており、米を40g/L以上使用しているものを米酢、それ以外のものを単に穀物酢としている。

※米酢

 わが国を代表する伝統的な穀物酢で、こめずともいう。調味料として最も多く使われている食酢である。蒸米を麹で糖化し、酵母でアルコール発酵させた後、酢酸菌で酢酸発酵してつくる。JASの食酢品質表示基準により、製品に米酢と表示できるのは原料の米を40g/L以上使用しているものである。

 玄米酢に比べるとアミノ酸の含有量は少ないが、米に由来する独特の芳香があり、料理にコクと深みを加えるので寿司飯や酢の物に使われる。市販されている米酢製品の中には、酢1Lにつき100~200g(JAS規格の2~5倍)の米を使い、濃厚な旨味を持つ米酢もある。

※粕酢

 米酢と共にわが国を代表する伝統的な醸造酢で、JASでは穀物酢と果実酢以外の醸造酢に分類される。1年以上貯蔵・熟成された酒粕に水を加えて粥状にし酢酸発酵を経てつくられる。高級品は色が濃く、米酢とは異なる独特の香りと旨味を持ち、江戸前寿司の赤酢として使われている。

※麦芽酢

 イギリスやアイルランドを代表する穀物酢の一種で、モルトビネガーという。大麦や小麦、ライ麦を原料とし、麦芽の酵素で糖化した後、アルコール発酵、酢酸発酵を経てつくられる。麦に含まれるタンパク質からアミノ酸が多量に生成されるため、米酢などとは違った香り、コクがある。イギリスではフィッシュ・アンド・チップス(鱈のフリッター)にかけて食べたり、ピクルスやマヨネーズなどに使われる。

火曜日, 11月 08, 2011

果実酢

○果実酢

 JAS(日本農林規格)では、醸造酢のうち、原料の果実搾汁使用量が300g/L以上のものを果実巣としており、ブドウの搾汁を300g/L以上使用しているものをブドウ酢、りんごの搾汁を300g/L以上使用しているものをリンゴ酢、それ以外のものを果実酢としている。

※ぶどう酢

 フランスを代表する果実酢で、ワインビネガーという。ブドウ果汁を酵母でアルコール発酵させ、酢酸菌による酢酸発酵を経て作られる。ヨーロッパで最も多く使われている酢である。ワインと同じく、白と赤の2種類がある。穀物酢に比べて酸味度が高く、カリウムやポリフェノールの含有量も多い。主にドレッシングソースやマリネなどの調理に使われる。

 フランスなどではわが国の米酢のように古くから伝わる製法で作られるものが多いが、酸敗ワインやブドウ粕を原料にしたものもある。わが国ではJASの食酢品質表示基準で、製品にブドウ酢と表示できるのは原料にブドウの搾汁を300g/L以上使用しているものである。

※バルサミコ酢

 バルサミコ酢は北イタリアのモデナ地方に古くから伝える果実酢で、バルサミコはイタリア語で”芳香がある”を意味する。イタリア産のワインと白ブドウ果汁を煮詰め、木樽で長期間熟成させて作られる。色は濃い茶色で、酸味や香りが強く同時にまろやかな甘味もある。イタリアでドレッシングソースといえば、オリーブオイルとバルサミコ酢の組み合わせである。

 バルサミコ酢はリンゴや赤ブドウ酢に比べてカリウムが2倍以上、ポリフェノールが黒酢の3倍以上含まれている((独)農林水産消費技術センター調べ、2001年)。最近はわが国でもよく知られるようになり、高価ではあるが日常的に利用する家庭も増えている。JASでは、果実酢の中のブドウ酢に分類されている。なおイタリアでは、伝統的なバルサミコ酢は最低12年の熟成と原料となるブドウの種類が厳格に決められており、モデナ産のバルサミコ酢はDOP(原産地保護名称)指定になっている。

※りんご酢

 アメリカを代表とする果実酢で、アップルビネガー、シダービネガーともいう。リンゴ果汁を原料としてアルコール発酵させ、酢酸発酵を経て作られる。リンゴ酸が多く含まれるため酸味がまろやかで甘い香りがあり、サラダドレッシングやマヨネーズ、ソースに使われる。アミノ酸の含有量が少ないが、カリウムを多く含んでいる。

 わが国ではJASの食酢品質表示基準で、製品にリンゴ酢と表示できるのは原料にリンゴの搾汁を300g/L以上使用しているものである。リンゴ酢は調味料のほか、ハチミツで薄めて健康ドリンクとして用いられることも多い。

土曜日, 11月 05, 2011

牛乳

○牛乳

 牛乳は三大栄養素の糖質・脂質・タンパク質をほぼ同じ割合で含み、さらにカルシウムやカリウムなどのミネラル類も豊富に含むことから、子供の成長期には欠かせない栄養食品として古くから用いられてきた。わが国で市販されている牛乳(市乳)は、厚生労働省の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」によって細かく規定されており、大きく「牛乳」「加工乳」「乳飲料」に分けられる。牛乳とは生乳のみを原料とし、無脂乳固形分(水分と乳脂肪分以外のタンパク質、炭水化物、カルシウム、ビタミンなど)を8%以上含むもので、、しぼったままの生乳をそのまま加熱殺菌したものと、生乳から水分、乳脂肪分、ミネラルなどなどの一部を取り除いた成分調整牛乳とがある。前者は、牛乳パックの種類別欄に「牛乳」と表示されている最も一般的な牛乳で、乳脂肪分は3%以上。一方、成分調整牛乳の内、乳脂肪分を0.5~1.5%にしたものを低脂肪乳、0.5%未満にしたものを無脂肪牛乳という。

 加工乳は、生乳のほかに脱脂粉乳や無塩バターなどの乳製品を加え、乳成分を増やしたり、乳脂肪分を減らしたりしたもので、無脂乳固形分は牛乳と同じく8%以上含む。「特濃乳」などがそうである。

 乳飲料は牛乳や脱脂粉乳を主原料とし、これに糖分や香料、コーヒー、果汁、ビタミンやミネラル類を配合したもので、無脂乳固形分の含有量は規定されていない。一般に”コーヒー牛乳””フルーツ牛乳”などとも呼ばれているが、乳飲料の商品名には「牛乳」「ミルク」「乳」という言葉は使用できないことになっている。

 牛乳の摂取で最も期待されている栄養成分はカルシウムで、100g中110mgと豊富に含まれている。カルシウムは体内へ吸収されにくい成分だが、牛乳・乳製品の吸収率は高く、約50%である。因みに古くから日本人のカルシウム供給源となっていた小魚で約30%、青菜で約18%である。牛乳のカルシウム吸収率がよいのは吸収を助ける乳糖やアミノ酸のリジンなどが含まれていることによる。

 さらに牛乳のタンパク質の約80%を占めるカゼインが体内でCPP(カゼインホスホペプチド)に分解され、カルシウムの吸収を高める働きをする。ただし、牛乳を飲んでお腹がゴロゴロする人や下痢をする人(乳糖不耐症)は乳糖を分解する酵素ラクターゼの活性が低く、牛乳からのカルシウムの吸収率も低下する。乳糖不耐症の人用に乳糖分解乳が市販されている。牛乳にはもう一つの効能として安眠作用がある。牛乳に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンが催眠作用のある神経伝達物質セロトニンの原料となるからである。神経を鎮静化する作用はカルシウムにもある。

※粉乳

 牛乳を濃縮して乾燥させ、粉末状にしたもの。そのまま粉末にした全粉乳、乳脂肪を取り除いた脱脂粉乳、成分を調整した調製粉乳がある。母乳の成分に近くなるように調整したものは乳児用粉ミルクである。

※練乳

 練乳は牛乳を濃縮したもので、そのまま濃縮したエバミルク(無糖練乳)、加糖して濃縮したコンデンスミルク(加糖練乳)がある。

金曜日, 11月 04, 2011

中国茶

○中国茶

 中国茶には非常に多くの種類があるが、中国茶葉学会が編集している農業学校用教科書では、次の通り精茶を色によって6つに分類している。

※緑茶

 中国で生産される茶の半数以上(約54%)が緑茶である。日本の緑茶は摘み取ったばかりの生葉を水蒸気で蒸して乾燥させるが、中国緑茶は生葉を釜の上で加熱して酵素活性を止める。そのため日本の緑茶のような青臭さが少なく、軽快な風味がある。不発酵茶に分類される。

※黄茶

 新芽の未成熟の部分を用い、加熱後、悶黄(堆積して変色させる)の工程があるのが特徴である。生産量は極めて少ない。不発酵茶に分類される。

※青茶

 成熟した新梢を用い、製造工程は細かく分けて17工程もあり、上品質のものほど手数をかけている。発酵は最初に葉を日光に当てて行い、その後、室内でも萎凋(葉を萎えさせる)が行われる。做青(青色出し)の工程があるのが特徴である。これらの一連の過程で青茶に特有の香気成分が生じる。中途で加熱により酵素活性を止めて乾燥するので半発酵茶に分類される。ウーロン茶がよく知られている。

※白茶

 大白、小白、水仙白といった特別な茶樹の銀白色の産毛に覆われた若芽からつくられる。わずかに発酵させるので弱発酵茶に分類される。福建省産の「銀針白毫」「白牡丹」などが知られている。点てた茶は色が淡く、香りや刺激性も強くない。

※紅茶

 英語ではブラックティーだが、中国や日本では紅茶と呼んでいる。十分に発酵させるので強発酵茶または全発酵茶に分類される。カテキン類の多くが高分子のテアフラビンに変化しているのが特徴である。

※黒茶

 新梢の成熟した茶葉を用い、最初に緑茶の一種である釜炒り茶を製造し、集散地で黒麹菌を用いて発酵熟成させるので後発酵茶に分類される。茶葉組織が柔らかく易溶性になっており、茶葉のカテキン類や他の成分が前述の5品目と異なった成分となり、栄養学上の有用性を高めている。中医学で「薬茶」と呼んでいるのは、この黒茶のことである。蒸気を加えて加圧成型したものもある。代表的なものにプーアル茶がある。

 中国茶にはまた、花茶と呼ばれる付香茶が数多くある。これは加湿した中国緑茶やウーロン茶に様々な花を加えて香り付けをし、その後に花を除いて乾燥させたもので、中国料理に添えられるジャスミン茶がよく知られている。

木曜日, 11月 03, 2011

茶類

○茶類

 茶の始まりは非常に早く、既に5世紀の中国の農業書にその記録が残されているが、やがて”茶聖”陸羽が「茶は南方の嘉木なり」で書き始められる「茶経」(760年頃成立)を著したことによって中国全土に広められ、その書は茶に関する最も有名な聖典として取り扱われるようになった。

 茶樹そのものはツバキ科のチャ(学名Camellia sinensis L.)で、中国南部・雲南の山岳地帯で発見されたものが最初と伝えられている。大部分の栽培種は喬木で、葉の大きさから小葉種、中葉種、大葉種の3種に分かれる。小葉種は中国や日本の緑茶、大葉種は紅茶の原料となる。中葉種は主にウーロン茶の原料に使われている。

 陸羽によって中国全土に広まった中国茶の栽培は、温暖な地域で昼夜の温度差の多い山岳地方に良品を産するが、その消費は中国全土に及ぶようになり、その消費は中国全土に及ぶようになり、さらにまた中国人の古来の思想である”薬食同源”のもとに、より健康によいものをつくる努力が長い間続けられ、加工方法によっても数えきれないほどの多種類の製品が生産されるようになった。中国茶は葉中の酵素活性を利用して発酵させるが、その程度によって発酵茶、半発酵茶、不発酵茶に分かれる。さらに、微生物を利用して発酵させる後発酵茶がある。

水曜日, 11月 02, 2011

納豆

○納豆

 蒸し煮した大豆に枯葉菌の一種である納豆菌を加えて粘質発酵させた糸引き納豆と、蒸した大豆に麹を加え、塩水につけて熟成させた塩納豆(豆鼓)の2種類がある。近年、機能性食品として注目されているのは糸引き納豆である。植物性タンパク質の供給源であるだけでなく、骨の健康に役立つ、血栓を溶かす、動脈硬化の進行を抑える、お腹の調子を整える、抗菌力があるといった機能性が明らかになってきた。

 納豆の栄養組成を見ると、タンパク質やリノール酸、ビタミンK、パントテン酸、葉酸、ビタミンB2、カリウム、鉄、銅、マグネシウムなどが多く含まれていることがわかる。納豆中のタンパク質は納豆菌によって分解されているため、大豆の状態より消化しやすく、また、ほとんどの栄養成分が大豆(ゆで)の時よりも増えている。そのほか、ナットウキナーゼ、イソフラボン、ポリアミンといった成分も含まれる。

 納豆はビタミンKの含有量がトップクラスの食品である。天然のビタミンKは2種類あって、植物の葉緑体で作り出されるビタミンK1と、微生物が合成するビタミンK2だが、納豆は後者のほうである。ビタミンK2には骨のカルシウムの流出を防ぎ、骨を丈夫にする働きがある。ビタミンK2の作用を生かしたトクホ納豆も市販されている。さらに、納豆には骨量の減少を防ぎ、骨粗鬆症の予防に働くイソフラボン、骨の主成分であるカルシウム、骨の正常な代謝に必要なマグネシウムなど、骨の健康に役立つ成分が多い。厚生労働省の調査によると、中高年女性の骨折の割合は東日本が低く、西日本は高い傾向があり、これは納豆の消費量とほぼ比例しているという。

 納豆のネバネバ部分に含まれる酵素のナットウキナーゼには、脳卒中や心筋梗塞の原因となる血栓を溶かす作用があることが知られている。ナットウキナーゼの血栓溶解作用は強力で、血栓溶解剤ウロキナーゼと同様な効果があるという。また最近では早田邦康(自治医科大学大宮医療センター)らが、納豆に多く含まれるポリアミン(低分子有機化合物)の動脈硬化抑制作用について報告している。日本は動脈硬化の因子となる喫煙率が先進国で最も高く、コレステロールの摂取量もアメリカを超えているといわれているが、動脈硬化による疾患の発生率は低い。その背景には大豆類を多く摂ることが関係しているのではないかという。

 納豆は昔から、”風邪の引き始めにはネギ入り納豆汁がよい”といわれたり、食中毒予防の民間薬に使われたりしたが、これはジコピリン酸やリゾチームといった抗菌成分が含まれているためである。ジコピリン酸は病原性大腸菌O-157への抗菌効果が既に確認されている。納豆1パック(50g)に約10mgのジコピリン酸が含まれている。リゾチームは納豆のネバネバに含まれている溶菌酵素である。さらに、納豆菌は腸内で善玉菌の働きをするので整腸作用もある。また、納豆に含まれる大豆サポニンは強い抗酸化作用を持ち、老化やガン、生活習慣病の予防も期待できる。このように、身近な機能性食品といえる納豆だが、抗血液凝固薬(ワーファリンなど)を服用している場合、ビタミンKが薬の作用を低下させる可能性があるので、納豆の摂取については医師に相談したほうがよい。

火曜日, 11月 01, 2011

酢

○酢

 酢は塩と共に古くから用いられてきた調味料で、世界各地で数多くの種類がつくられている。フランスではビネガー(vinaigre)といい、”ワイン(vin)が酸っぱく(aigre)なったもの”が語源だが、このことが示すように、酢は酒に由来する調味料である。

 酢の一般的な製法は、原料となる穀物や果実を酵母でアルコール発酵させてまず酒をつくり、その後、酢酸菌でアルコールを酢酸に分解する2段階発酵でつくられる。酢酸菌はアルコールの分解能が高いアクトバクター属の菌が使われる。原料となる糖質は東洋では穀物類(米、麦、大豆など)が、西洋では果実類(ブドウ、リンゴなど)が多く使われている。

 日本へは応神天皇の時代に中国から和泉の国(今の堺あたり)に伝えられたといわれる。その後、江戸時代になって相模(神奈川県)の中原、駿河(静岡県)の善徳寺、尾張(愛知県)の半田などでもつくられるようになり、これは日本伝統の米酢であった。

 現在、わが国ではJAS(日本農林規格)により一般的な酢を食酢と呼称し、ポン酢などの加工酢と区別している。食酢は製造法により「醸造酢」と「合成酢」に分けられる。醸造酢は前述のように穀物や果実から酒をつくり、それを酢酸発酵させたもので、「穀物酢」「果実酢」「醸造酢(穀物酢と果実酢以外の醸造酢)」がある。合成酢は希釈した酢酸原液に調味料などを加えて工業的につくられるもので、使用和40年代頃までは相当量が市場に出回っていたが、現在ではほとんど流通していない。

 酢には3~5%程度の酢酸のほか、コハク酸、リンゴ、各種アミノ酸が含まれている。酢の健康機能は古くから知られており、①強い殺菌力と防腐力があり、食品を長期間保存したり、外用の殺菌剤として利用できる、②細胞の新陳代謝を活性化する、③食欲を増進させる、④善玉コレステロールを増やし、動脈硬化や高血圧を改善する、⑤疲労回復、肩こりの解消に良い、⑥唾液や胃液の分泌を促し、消化を促進して便秘を防ぐ働きがある、などの作用がある。

月曜日, 10月 31, 2011

減塩食品

○減塩食品

 わが国で食塩の過剰摂取による弊害が叫ばれるようになったのは、食塩摂取量が他の地域に比べて多いとされる東北地方で脳卒中による死亡率が高いという疫学的調査結果が発表されてからである。これが契機となり1979年には厚生省(当時)の栄養審議会が、72年に決めた1日の塩分所要量15gを10gに下げるべきであるという答申を行い、これを目標値として全国的に減塩意識が高まった。

 現在使われている「日本人の食事摂取基準・2005年度版」で男性成人の目標値は10g未満で従来通りだが、女性は8g未満に改訂されている。平成15(2003)年の国民栄養調査によると、1日あたりの食塩摂取量は20歳以上の男性が11.7~13.5g、女性は9.8~12.0g、全体平均で11.2gである。

 日本人は世界的に見て食塩摂取量が多い民族とされている(欧米諸国の目安量は6g程度)。それは日本料理に欠かせない醤油や味噌などの調味料に塩が多く使われているからである。そのため、減塩食品の多くは醤油と味噌が中心である。

 減塩醤油は厚生労働省の特別用途食品制度で「低ナトリウム食品」に位置づけられており、100gあたり食塩含有量は9g以下とされている。これは一般的な醤油の約半分の量である。これとは別に、塩分濃度を通常醤油の8割程度にした「うす塩醤油」「あさ塩醤油」と呼ばれるものもある。また醤油には濃口と薄口があるが、薄口醤油は色や香りが薄いだけで塩分は濃口よりも多いので注意したい。

 味噌も、ナトリウムの含有量が通常味噌の50%以下のものが減塩味噌として特別用途食品になっている。このほか、塩化ナトリウム含有量を少なくした減塩塩もある。フィンランド製のパンソルトは塩化ナトリウムが57.6%、アメリカ製の岩塩ライトソルトは塩分49.5%の塩である。これらは塩化カリウムや塩化マグネシウムなど他のミネラル成分の配合を増やすことによって、相対的に塩化ナトリウムの割合を減らした製品である。

 減塩食品は確かに塩分は少ないが、塩味が薄いからといって多く使えば絶対量は減らず、元の本阿弥になってしまう。減塩食品による減塩効果を上げるためには調理法を工夫したり、個人の嗜好を変える努力が必要である。

土曜日, 10月 29, 2011

自然塩

○自然塩

 塩が生命の維持に欠かせない最重要物質の一つであることは言を俟たないものの、海に囲まれた日本では”たかが塩”と考えられがちであったが、生成された塩が主流を占めて近年、自然塩に含まれていたミネラル類を含む各種微量成分の働きの重要性が改めて見直されてきている。

 塩は、古くは天日干しの塩田方式や弱い火力によってゆっくり煮詰める方法で生産され、その頃は海水中の成分を全て含んだ塩が供給されていたのであるが、日本では1971年(昭和46年)に塩業近代化がスタートして以来、従来の塩田は全廃されて工業的生産に切り替えられ、やがてイオン交換式が主流を占めるようになった。この方式によって得られる塩を自然塩に対して化学塩とも呼ぶが、これによってほぼ純粋に近い精製塩となった反面、ミネラル類などの微量成分は失われることとなった。栄養素やカロリー偏重の近代栄養学の弱点が見直される中で、食塩の微量成分にも照明が与えられたのは比較的最近のことである。

 純粋なものが最善でないことは玄米と白米の比較でよく知られるようになってきている。白砂糖が虫歯をつくりやすくしたり、骨をもろくしたり、血液の抗菌性を弱めたりすることもわかってきている。こうしたことへの反省から、近年はタワー式天然性塩法などが開発されて自然塩に近いものを供給する努力が払われたり、食塩に天然にがりを加えた”ミネラル強化”型の加工塩も作られてきた。

 自然塩の世界が一気に広がったのは、明治以来90年以上にわたって続いてきた塩の専売制度が廃止された1997年以降である。同年4月に施行された塩事業法により、それまで日本たばこ産業(JT)が独占的に行っていた塩の製造・輸入・卸売が一般企業にも解放され(登録・届出制)、自由に塩を製造・販売することが可能になったのである。塩事業法では、自由性の専売塩(精製塩など)を生活用塩と呼び、自然塩などそれ以外のものは特殊製法塩として「平釜式、蒸気利用式、温泉熱利用式、その他真空式以外の特殊な製造方法で作られたものや、ニガリやゴマなど食品が混ぜられたもの」と定義されている。

 現在、自然塩の多くは天日塩と呼ばれるもので、海水の濃縮をある程度まで天日(太陽と風)で行った後、火を使って釜焚きして結晶させたものである。また、火を使わずに最終仕上げまでを天日のみで行う「完全天日塩」もある。濃縮した海水の約90%は塩化ナトリウムだが、それ以外にもニガリと呼ばれる塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、亜鉛などが含まれている。自然塩は天日による濃縮を行うことによって、これらの微量ミネラル群が損なわれないように工夫した塩であるといえよう。

金曜日, 10月 28, 2011

塩

○塩

 塩は調味料の中で最も基本的なものであり、ヒトの体内では浸透圧調節などの生理作用を担う重要な物質である。世界の塩生産の2/3は岩塩であるが、日本ではもっぱら海水から製塩されている。

 現在、わが国で一般的に使われている塩は食塩、精製塩、並塩である。食塩は海水中の塩化ナトリウム(NaCl)をイオン交換樹脂膜電気透析法という工業的な方法で集めて濃い塩水を作り、これを真空釜で煮詰めて結晶にしたものである。精製塩は食塩よりさらに精製度を高めた塩で、さらさらして固まりにくい。並塩は業務用に使われる塩の標準品で、粗塩とも呼ばれている。塩の主成分は塩化ナトリウムで、食塩、精製塩共に99.1%を占める(並塩は96.5%)。食塩には微量であるがカリウム100mg(精製塩では2mg)、カルシウム22mg(同0mg)が含まれている(いずれも100g中)。

 わが国では明治以降、塩専売法に基づき塩の製造は国の管理下に置かれ、近年では日本専売公社(現・日本たばこ産業)が独占的に行ってきたが、1997年(平成9年)4月に同法が廃止され、新たに塩事業法が施行されて塩の製造や輸入の規制緩和が行われた。これにより、民間企業が昔ながらの塩田方式による製塩事業なども行えるようになり、工業的につくられる専売塩とは別に、自然塩と呼ばれる塩も数多く登場するようになっている。

木曜日, 10月 27, 2011

色々な食用油(2)

○サフラワー油

 キク科の一年草サフラワー(紅花)の種子から採取した食用油。紅花油ともいう。味にクセがなく、さっぱりしており、主にサラダ油として使われている。脂肪酸組成はリノール酸が75%以上を占め、植物油の中で最も多い含有量を示す。

 リノール酸は体内コレステロールを排出し、動脈硬化や高血圧の予防・改善に有効であることから、サフラワー油は一時”健康油”として大きなブームとなった。しかし最近では、リノール酸は酸化されやすく体内で過酸化脂質をつくりガンの原因となったり、リノール酸から合成されるアラキドン酸によってアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患や免疫力の低下を引き起こすことが指摘されるようにもなっている。つまり、過剰摂取による弊害である。そのため、リノール酸の含有量を少なくし、オレイン酸を多く含むように品種改良したオレイックサフラワー油もつくられている。

※ひまわり油

 日本ではなじみが薄いが世界的にはかなり多く使われており、ロシアで植物油といえばひまわり油が第1位である。ロシアではもっぱら種子から食用油を採るためにひまわりを栽培している。ひまわり油はリノール酸の豊富さ(含有率約60%)ではサフラワー油と並び、加えてビタミンEも豊富なために、動脈硬化や高血圧の予防に役立てる食品開発も試みられ、ひまわり油マーガリンやひまわり油サラダオイルも商品化されたが、リノール酸の過剰摂取は逆に動脈硬化やアレルギーの発症を促進するとの報告が多くあるため、摂取量の見直しもなされている。なお、ヒマワリの種子を処理して得られるミルク状の栄養食品はヒマワリ乳と呼ばれ、牛乳、豆乳に次ぐ、”第3の健康乳”として期待されている。

水曜日, 10月 26, 2011

色々な食用油(1)

※大豆油

 わが国ではナタネ油と並んで最も多く使われている食用油で、サラダ油やてんぷら油のほかマーガリンの原料にもなる。脂肪酸組成はリノール酸の含有比率が53.3%と高く、オレイン酸(23.5%)やリノレン酸(6.6%)の含有率も高い。

 フィンランドでは食事と動脈硬化の関係について興味深い実験を行っている。対象は30~69歳の男性で、この内、一つのグループには①牛乳の代わりにスキムミルクを大豆油で溶いたものを与える、②牛肉は脂肪分を除いて用いる、③植物性油は自由に用いる、という条件の食事を与えた。もう一つのグループには普通の食事を与え、コレステロールを1日500mgずつ摂取させた。この実験を7週間行った結果、大豆油を中心に食事制限をしたグループは普通食のグループに比べて動脈硬化の危険性が半分以下に抑えられた。つまり、大豆油のような植物性油を多く摂り、動物性油を減らすことが動脈硬化から派生する心臓病の予防にも役立つことが示されたわけである。こうした効果は、大豆油に含まれているリノール酸に血管に沈着するコレステロールを排除する働きがあるためとされている。

※米油

 米糠には約20%の脂質が含まれているが、これを溶媒抽出して作られるのが米油で、米糠油ともいう。あっさりとした味で、ドレッシングや揚げ物に向く。食用油の中では唯一、国産原料で作られている油である。脂肪酸組成はオレイン酸42.6%、リノール酸35%、リノレン酸1.3%など。米油にはシトステロール(植物ステロール)が多く含まれるため、コレステロールの吸収を防ぎ、動脈硬化の予防効果がある。

※コーンオイル

 コーンスターチ(トウモロコシでんぷん)の製造時に副産物として出る胚芽(脂質含有率約35%)からつくられる食用油。淡黄色から黄金色をしており、独特のコクと旨味がある。熱安定性が高く、揚げ物や炒め物などの加熱料理に向いている。サラダ油やマーガリンの原料にもなる。

 脂肪酸組成は必須脂肪酸である多価不飽和脂肪酸が全体の半分を占め、その中でもリノール酸の割合が54.9%と高い。また、一価不飽和脂肪酸のオレイン酸も29.8%と多い。そのほかビタミンEの含有量も多く、100g中17.1mgと植物性油脂の中では高いほうである。胚芽油であるコーンオイルには、米油と同じくシトステロールが含まれており、コレステロールの体内吸収を抑える作用がある。

火曜日, 10月 25, 2011

機能性食用油

○機能性食用油

 農林水産省が主婦を対象に行った食用油の消費実態調査では、約半数の消費者が健康や栄養面を考えて油を選択しており、植物油独特の風味も重視して料理によって使い分けているという結果が出ている。食用油に対するこのような消費者の健康志向を反映して、数年前から機能性食用油市場が拡大している。製油大手が投入している製品をみると、単に健康によい植物油というイメージ的な訴求ではなく、”体に脂肪が付かない油”、”コレステロールを抑制する油”といった具体的な健康機能性を付加している点が特徴である。

 先陣を切ったのは花王の健康「エコナクッキングオイル」で、1999年2月に脂肪がつきにくい食用油として発売され、半年で400万本を売り上げた。食用油ではじめてトクホ表示が許可されたことでも話題を呼んだ。エコナの主原料はジアシルグリセロールで、同じ脂肪酸組成のトリアシルグリセロール(従来の食用油の主成分)と比較して食後の血中中性脂肪の上昇を抑制する作用がある。また、長期間摂取した場合には内臓脂肪の増加を抑制することが確認されている。

 日清製油が開発した「日清バランスオイル・ダイエット」は中鎖脂肪酸を約10%含む食用油で、酵素を用いて油の構造に特徴を持たせている。中鎖脂肪酸はエネルギーとして分解されやすく、手術後の流動食や未熟児のエネルギー補給などに利用されているが、同社と香川大学との共同研究によって長期栄養試験をヒト対象で行った結果、体脂肪として蓄積されにくい油であることが認められた。

 2001年になると、機能性食用油のターゲットは脂肪からコレステロールへ移り、コレステロールの吸収を抑える食用油が次々と発売された。大豆や米など植物胚芽に含まれる植物性ステロールを配合した製品が多い。これは食事で摂取したコレステロールは胆汁酸と結合して体内で吸収されるが、植物性ステロールは胆汁酸と結合しやすいため、結合できなかったコレステロールが対外に排出されやすくなるからで、花王は健康エコナに植物性ステロール(β-シトステロール)を加えた製品をトクホとして発売した。日清製油は米胚芽油ベースの食用油「バランスオイル・コレステ」を投入した。通常の大豆油に比べて植物ステロールが4.5倍含まれる油だ。

 ホーネンコーポレーションの食用油「健康上々」もコレステロール値の抑制にターゲットを絞っているが、植物性ステロールを使わず、麹菌の一種である紅麹のエキスを配合した。ヒトの体内では肝臓から出る酵素の働きでコレステロールが生成されるが、紅麹に含まれるモナコリンやγ-アミノ駱酸といった成分がこの酵素の働きを抑制することに着目した。同社によると、体内の総コレステロールの2割は体外からの食物の摂取によるが、残りの8割は体内酵素の働きで形成されるという。紅麹エキスはこの8割のコレステロールを抑制するとしている。

 昭和産業の「オレインリッチ」は悪玉コレステロールだけを低下させるといわれるオレイン酸を80%使用したヒマワリ油。酸化に強いため鮮度と風味が長持ちするほか、調理時に油酔いしにくいというのが特長である。このほか最近では、中鎖脂肪酸を関与成分としたナタネ油ベースの「ヘルシーリセッタ」(日清オイリオグループ)が体に脂肪がつきにくい食用油としてトクホを取得、ヒット商品にしている。

月曜日, 10月 24, 2011

黒糖オリゴ

○黒糖オリゴ

 黒糖オリゴとは黒砂糖中に約0.1~0.3%含まれ、白砂糖の害を防ぐ毒消しの役割を持つ非糖黒色成分をいう。

 白砂糖の主成分のショ糖(スクロース)はブドウ糖と果糖の二糖類で、容易に分解されて即席のエネルギー源となり、疲労回復剤となる。また、保水剤として、皮膚や粘膜の乾燥を防ぎ、化粧料、シロップ剤に利用され、その制菌作用で細菌の繁殖を抑制し、砂糖漬け等として広く用いられている。

 しかし、砂糖の大量摂取は胃粘膜の潰瘍を促進し、歯や骨を弱化する。また、血中の中性脂肪、血糖値、過酸化脂質を上昇させ、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、肥満の引き金となり、アトピー性皮膚炎を促進するといった障害をもたらす。

 長寿県として知られる沖縄県には、古くから「白い砂糖は命を縮め、黒い砂糖は命長らえる」ということわざがある。これに注目し、1980年より近畿大学東洋医学研究所と愛媛大学医学部医科学教室との共同で、吸着合成樹脂を用いて黒色成分のみを吸着・分離精製する技術を開発。これにより得られた非糖成分を黒糖オリゴ糖と名づけ、あわせて動物実験も行っている。

 それによると、1群5匹のラットを、①白砂糖75%を含む高ショ糖食を与えたコントロール群、②同じ飼料で1日量に黒糖オリゴ1g/kg、及び0.5g/kgを添加したものを投与した群、③普通食で飼育した群の3群に分け、2ヶ月間、自由摂取させて、それぞれの群の血清中の脂質、インスリン量を比較した。その結果は、①のコントロール群は中性脂肪が③の普通食群に比べて2.40倍に増加したのに対し、②の黒糖オリゴ1g/kg、0.5g/kg添加群はそれぞれ62.3%、87.6%にとどまり、黒糖オリゴが中性脂肪の上昇を抑制することがわかった。ここでは過酸化脂質、インスリン量についても同様の抑制結果がみられ、黒糖オリゴがこれらの値を有意に低下させることが明らかになった。

 また、ラットに0.5gのグルコースを与える負荷試験では、血漿中のグルコース、インスリン濃度は投与20分後に最大に達するが、このとき、グルコースと共に黒糖オリゴを与えた群は、コントロール群に比べて20分以後のグルコース、インスリン値がともに有意な差を持って減少した。マウスを用いた実験でも同様の結果を得た(薬学雑誌102、1982、医学と薬学57、2007)。

 黒糖オリゴは腸管腔灌流法により、グルコースの腸管からの吸収を抑制すると考えられるが、これらの効果はこのことを証明しているといえる。また、これらの効用の有効成分の一つとして、3-4ジメトオキシフェニールβグルコシドが発見されている。

 このように、黒糖オリゴは、臨床面でも高脂血症、糖尿病・動脈硬化、肥満等を予防・改善する働きがある。

金曜日, 10月 21, 2011

機能性ヨーグルト

○機能性ヨーグルト

 最近注目を集めているヨーグルトに機能性ヨーグルトと呼ばれる製品がある。含まれている乳酸菌が持つ生理機能が学術研究のデータによって裏付けられており、それを付加価値として開発されたヨーグルトである。商品のものに効能が表示されているわけではないが、マスコミ等を通じてその機能性が広く知られるようになっている。

 機能性ヨーグルトの草分けは、ピロリ菌を排除する乳酸菌が入っていることで人気を呼んだプロビオヨーグルトLG21(明治乳業)である。2000年3月に発売され、瞬く間にヒット商品となった。ピロリ菌は日本人の半数が保菌者であることや、日本人に多い胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃ガンなどを引き起こすことから新聞や健康雑誌などで盛んに取り上げられ、一般消費者の認知度も高い。同ヨーグルトに使われている乳酸菌はラクトバチルス・ガッセリOKK2716(通称LG21菌)で、経口摂取すると胃粘膜に接着し、乳酸を分泌してピロリ菌を排除する性質がある。東海大学の古賀泰裕らの研究によると、ピロリ菌保菌者の30人にLG21入りヨーグルトを8週間摂取してもらったところ有意な減少が確認できただけでなく、この内の3人はピロリ菌が検出限界以下になったという。また、胃粘膜の荒れも改善されたことが報告されている。

 LC1ヨーグルト(ネスレスノー)も胃のピロリ菌抑制に有効であるとされている。同製品には、スイスのネスレ中央研究所で単離された乳酸菌ラクトバチルス・ジョンソニーLC1(通称LC1菌)が使われており、経口摂取によって腸壁に接着し、病原菌の物理的排除、抗菌物質の分泌、免疫細胞の活性化などに働くことが認められている。

 植物性乳酸菌ヨーグルト(亀田製菓)は、同社が米から分離した日本発の植物性乳酸菌ラクトバチルス・カゼイ・カメダ1株(通称K-1菌)を使った製品で、植物性食品を多く摂っている日本人の胃腸によくフィットする点を売りにしている。東京農業大学菌株保存室との共同研究で、同菌には整腸作用のほか細胞の突然変異を抑える抗変異原性のあることが明らかにされている。

 ラクトフェリンヨーグルト(森永乳業)は牛乳に含まれる微量タンパク質のラクトフェリンを配合した製品。ラクトフェリンは抗微生物活性やビフィズス菌増殖、免疫調節、抗酸化活性、細胞増殖調節といった生理作用がある。

 小岩井KW乳酸菌ヨーグルト(小岩井乳業)は花粉症を改善する乳酸菌が用いられている。この菌はグループ会社のキリンビールフロンティア技術研究所が昭和女子大学大学院生活機構研究所と共同で開発したラクトバチルス・パラカゼイKW3110(通称KW乳酸菌)で、花粉症アレルギーの原因となるヘルパーT細胞の”Th1/Th2バランス”を改善する作用があるという。同社では花粉症に対するヒト試験も実施している。花粉症のボランティア28名を、KW乳酸菌ヨーグルトを接し揺するグループと従来のヨーグルト摂取する対照グループの2つに分け、花粉症飛散期(03年1~4月)に1日200mlのヨーグルトを摂取してもらい4週おきに採血と自覚症状のアンケートを行った。その結果、KW乳酸菌のグループで従来ヨーグルトのグループと比べて2倍以上のTh1/Th2バランスの改善がみられた。また、のどの痛みや目の痒み、鼻水などの症状にも改善傾向が認められたという。

 LGGヨーグルト(タカナシ乳業)はアトピー性皮膚炎の改善が広く認められている乳酸菌ラクトバチルス・ラムノーサスGG(通称LGG菌)を使用している。同菌はフィンランドのバリオ社が保有する乳酸菌で、1997年に同社が乳幼児のアトピー性皮膚炎の症状が抑えられたという研究結果を発表して世界的に注目された。

 ロイテリ菌ヨーグルト(チチヤス乳業)はスウェーデンのバイオガイア社が保有する乳酸菌ラクトバチルス・ロイテリを使った製品で、腸内有害菌や虫歯菌の繁殖を抑える作用がある。